「期末テスト、ですか」
「そうですよ。勉強してます?」
放課後にて、
もうじき期末テストがあるんですよね、来週の月曜に。ぶっちゃけどうでもいいんですけど。
勉強してるかとの問ですが、逆に聞きますけど普段の私の態度から考えてしてるとでも思ってるのでしょうか。
「愚問でしたね。忘れてください」
いい判断です。賢い子ですね。
「だってテストとか別に適当にしてても点数取れますし。あ、そこ間違ってますよ」
「……神様って不公平ですよね……」
数学の問題の間違いを指摘してあげると、なぜかそんなことを言われてしまいました。不公平というなら、私の右手もそうなのですけど。
「天才さんは気楽でいいですよね。最近赴任してきたネギ先生もそうですけど、英国人はみんなそうなんですか?」
指摘されたところを消しゴムで消しながら、半ば呆れたような視線を向けてくる愛衣ちゃん。なんだか最近、私に対しての態度が他のみんなと接する時と違う気がします。
いや、ある意味特別感が味わえていいのですけど、このまま行くとぞんざいに扱われてしまいかねません。それはなんとか防ぎたいところです。無理な気がしていますが。
「まあ、『英』って言われる人種ですから。多少は頭の造りが違うんじゃないですかね? ネギ君は特別頭がいいですけど」
あの子は本物の天才ですからね。もちろんあの子もちゃんと勉強してましたけど、飲み込みがすごく早かったですし。アーニャちゃんも何気に頭よかったですね。ネギ君に引っ張られたのでしょうか?
私自身ははどちらかといえば秀才タイプです。ネギ君の劣化ですね。別に劣等感とかは感じてませんけど。
「はぁ、いいなぁ……。私も英国人に生まれたかったですよ」
「私が言ったのは冗談なのですけど」
まさか本気にするほど追い込まれてるわけではないですよね? この学校エスカレーター式ですからあんまり関係ないはずなのですけど。
「愛衣ちゃん、別に成績悪くないですよね? むしろいいぐらいですのに、どうして急にそんなことを言うんです?」
「いや、テストってだけで緊張するんですよ。イヴさんにはわからないかもしれないですけどね」
恨みがましい目を向けてきます。私は一応それなりに勉強した結果、今の頭脳を得たのですけどね。
あ、でも……。
「英語はちょっと手こずるかもですね」
「英国人なのに!?」
「だって日本の英語は丁寧すぎますからね。意味がわかればいい本国だとあそこまできっちり言わないですよ」
別に丁寧な分にはいいのですけど、必要かどうかでいえばそうでもないので省略するんですよね。だからたまにわからない部分が出たりはするかもです。
「まあ、英語に関しての気持ちは愛衣ちゃんにもわかるんじゃないですか? アメリカに留学してたんですから」
愛衣ちゃんは十歳までアメリカで過ごしていたそうです。その割にはあんまりそれっぽいところは見られませんけどね。敬語ですし。まあ、それは私もそうなのですけど。
なんというか、アメリカで育った人は豪快な人が多いイメージですから。
それとも、アメリカで過ごしていた時に親から英語と日本語の両方を教えられていたのですかね。普通に有り得る話です。
「わからないではないですけどね。――よし、終わった!」
ノートを閉じて伸びをする愛衣ちゃん。控えめな胸が服から浮き出ますね。触ってほしいのでしょうか。そんなわけはありませんよね。
「えいっ」
「ふやっ!?」
触りますけど。油断する愛衣ちゃんが悪いのです。
今更胸を抑えて顔を赤くしたって遅いですよーだ、へへーん。
「言っておきますけど、女の子でもセクハラで訴えることはできますからね」
「いいですよ、別に? この写真群をばらまかれたいのであれば」
制服のポケットからいくつかの写真を取り出して机にまきます。
そこには愛衣ちゃんのあんな姿やこんな姿が。何百枚か隠し撮りしてます。可愛い女の子は大好きです。
「きゃああああ!?」
あ、
「ちなみにストックはいくらでもありますし、今燃やしたものもデータは残ってますのでいくらでも復元できます」
「普通に犯罪ですよねこれ!? 脅しです! 脅迫です!」
なんとでも。自分の身を守る方法は犯罪すれすれでも使います。(犯罪です)
「さて、では私は散歩に行ってきますね。誰か適当にからかってきます」
「イヴさんのライフワークも大概おかしいですよね」
自覚してますけどやめる気はありません。文字通り私の人生ですので。
「だーれっかいーないーかみっつかーるかー♪」
即興の歌を歌いながらてこてこ歩きます。なんか適当に買うのもいいですけどねー。
なんて思いながら歩いていると、前方に見知った姿が。
「おーい、ネギく――」
声をかけようとしましたけど、何やら呪文を唱えてました。あれは……魔力を封印するやつですね。詠唱から察するに、封印は三日間ですか。
「さて、こうしちゃいられない。明日の授業のカリキュラム組まなくちゃ!!」
「何してるんです?」
「あ、イヴ」
お、後ろから声をかけたのに驚きませんね。蛇でもぶん投げればよかったですね。もったいない。
「お久しぶりです、ネギ君。先生の仕事はどうですか?」
あれ以降、直接はほとんど会ってませんからね。まあ、見かけた限りでは問題なさそうで問題だらけでしたけど。
「うん。アスナさんに諭されて目が覚めたんだ。テストの日までは魔法を封印して、一教師として生身で生徒にぶつかるんだってね」
「ふーん、そうなんですか。でもネギ君、魔力を封印して大丈夫なんですか? ちょいちょい魔法に頼ってるのを見ましたけど」
「うぐ……そ、それは……」
図星を突いたようです。まあ、天才少年といえどまだ九つの子どもですからね。ある程度は仕方ないと思いますけど、少々頻度が多すぎやしないかと思ってました。
だからと言って封印するまでしなくてもいいと思いますが。
「と、とにかく! 僕は先生になるために魔法を封印したんだ! イヴこそこんなところでどうしたの?」
イマイチ繋がりませんが、まあネギ君がそう言うならそうなのでしょう。深くは関わらないようにします。
「暇なので散歩を。誰かからかい甲斐のある人、クラスにいません?」
「それで答えたら僕は先生失格だと思うんだ」
知ったことじゃありません。ネタがあるなら飛びつかせてもらいます。
「ま、いいです。仕事頑張ってくださいね」
「うん。あ、そう言えばここの学園長から伝言を預かったよ」
「ん? なんですか?」
「『あんまりセクハラを働いとると牢屋に押し込むぞ♡』、だって。イヴ、セクハラしてるの?」
あのジジイ。
「いいえ、セクハラだなんてとんでもない。ただのスキンシップですよ」
「ホントかなぁ……。とにかく伝えたからね。本国に送り返されないよう頑張ってね」
お前が言うなと声を大にして叫んでやりたいです。というか、どこから漏れたんでしょうね、私がセクハラ紛いのことをしてると。ヒゲグラですかね。だとすれば彼も現場を見ていることになるのですが……。
……うまいこと状況を作ってやれば弱みを作れる気がしてきました。『握る』のではなく『作る』のがポイントですね。
まあ、そのへんはおいおいと。お、向こうに茶々丸さんが。ちょっとキティちゃんの近況でも聞いてみますかね。