魔法先生ネギま! 〜小さな灯は未来を照らす〜   作:林公一

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ただの作業です

 空は快晴。日差しもぽかぽかと気持ちよさそうです。こんな日はどこかでふらふらするだけでも気持ちが安らぎます。

 なのに。どうして。

 こんないい天気に、何が悲しくてくだらないテストなど受けなければならないのでしょうか。

 クラスにこだまするのはカッカッという、ペンを用紙に走らせる音。話し声など一切ありません。

 ちなみに私は既に解き終わってます。なぜか私だけ別にテスト用紙を渡されたのですが、これがまた明らかに中学校のテストで出すような内容じゃないわけですね。

 一応、中学校の問題は私にしてみれば子ども騙しの内容ですから、そこに配慮したのでしょうね。不意打ちでしたから焦りましたよクソが。

 まあ、私にかかれば瞬殺でしたが。大卒脳舐めんな。

 そんなこんなで全教科は滞りなく過ぎ去り、ゴミのような時間はほとんど睡眠時間として消化されました。少し腰が痛いです。

 

「ん、ん〜っ」

 

 伸びをすると背中あたりからポキポキと小気味いい音が鳴ります。ちょっと強ばってたようですね。

 

「余裕そうですね」

 

「おや、愛衣ちゃん。そっちはどうでしたか?」

 

「ええ、まあ、それなりに。あとは結果を待つだけです」

 

 どうやら愛衣ちゃんも手応えはあったようです。日頃の成果が出るといいですね。

 私? ただの作業でしたが何か?

 

「ま、こうしてくだらないテストも終わったことですし、パーっといきましょう。スイーツでも食べに行きません?」

 

「あ、いいですね。他にも誰か誘って――」

 

「あ、それはやめてください」

 

 愛衣ちゃんの提案を即座に却下。そんなことをされたら色々と面倒です。

 

「え? どうしてですか?」

 

「私がクラス内でどう呼ばれてるか知ってます? 『ぼっちのイタズラ銀ギツネ』ですよ?」

 

「センスありますね」

 

 愛衣ちゃんも敵だったようです。

 

「そうじゃなくて、現状私には愛衣ちゃんしか友だちがいないわけです。そしてそんな状態で他の子が来たらどうなると思います?」

 

「どうなるんですか?」

 

「ぼっちが加速します」

 

「そんな自信満々に言うことですかね」

 

 自分のことは自分が一番よくわかってます。……まあ、あだ名については私もよく特徴を捉えてるなとは思いましたが。

 銀髪のフォックスだから銀ギツネ。さらにイタズラ大好きな私の性分はキツネのイメージとも合ってますし、考えた人はなかなかにいいセンスしてると思いますよ。見つけたらお礼に化かしてやりましょう。

 

「ま、そんなわけで他の子を誘うのは遠慮してもらいたいわけです。なんでしたら奢りますから」

 

「そんなに嫌なんですか……。それならやめておきますけど、そろそろ私以外友だちも作った方がいいですよ」

 

 なんて言ってくる愛衣ちゃん。

 それは私もわかってますけど、なんかこう、友だちになりたいような子がいないのですよね。面白そうな人材がいないというか、弄り甲斐がないというか。

 

「その基準で選ばれた私はどういう反応をすればいいのでしょうか……」

 

「笑えばいいと思います」

 

 適当に流してカバンを取ります。さて、今日は超包子(チャオバオズ)で杏仁豆腐でも食べましょうか。

 

 

 

 

「いらっしゃいアル、超包子へようこそ――って、イヴお嬢カ。今日はどうスル?」

 

 元気な声で店主をしているのは、店のオーナーの(チャオ)鈴音(リンシェン)さん。

 この歳で店の経営とかもやっている超天才だそうですが、実際はどうなのでしょうね? まあどうでもいいですけど。

 

「どうも、超さん。杏仁豆腐を二つくれます?」

 

「アイアイ、少しオマケしてあげるヨ」

 

「おお、マジですか」

 

 これはラッキーです。顔見知りになっておくものですね。持つべきものは店主の顔見知りです。

 あ、そういえば。

 

「確か超さんは2-Aでしたよね? ネギ君はどんな感じですか?」

 

「ん? ああ、ネギ坊主ならしっかりやってると思うヨ。十歳とは思えないネ。はいコレ」

 

「どうもです。そうですか……どっかしらでボロを出しまくってるようにも見えましたが、うまくやってるならそれでいいです」

 

 杏仁豆腐を受け取り、ネギ君の近況を聞きます。それなりにやっているようで何よりですね。盛大に失敗してるのを何回か見てますが、あのぬらりひょんが揉み消してるのですかね?

 

「まあ、ネギ坊主はまだまだ未熟ヨ。ボロが出るのは仕方ないことネ。そこら辺は多めに見てやるのが歳上の貫禄ってやつだと思うネ」

 

「そんなもんですかね。先生をやめさせられなければいいのですけど」

 

「……それは問題ないと思うがネ」

 

 何やらボソリと超さんが呟きましたが、よく聞こえませんでした。

 ま、今はそれより杏仁豆腐です。美味しいんですよね、ここの料理全般。ちょっとハマりましたよ。

 

「では、ありがとうございます。ネギ君をよろしくお願いします」

 

「いやいや。こちらこそ超包子をご贔屓に!」

 

 手を振って別れを告げます。テーブルで待っている愛衣ちゃんの元へと急いで、私はその場を後にするのでした。

 

 

 

 

 期末テストの結果発表。

 この日はクラスの平均点で順位を決めるのですが、結論から言えば私たち1-Dは三位でした。クラスメイト曰く、大健闘とのこと。だからなんだという話ですが。

 え? トトカルチョ? 食券がチップ? ああ、そういう賭け事が裏であったのですか……知ってたら参加したのに……。

 

「イヴさーん」

 

 後ろから私を呼ぶ声。この声は愛衣ちゃんですね。

 

「おや、愛衣ちゃん。どうでしたか?」

 

「はい。平均93点でした。なかなかいい出来です」

 

「おお、おめでとうございます」

 

 素直に褒めてあげます。

 いや、でも確かにすごいですね。90点超えはあまり見ないですし、愛衣ちゃんは優秀ですね。

 

「ふふ、ありがとうございます。イヴさんはどうでした?」

 

「私ですか? 私はほら」

 

 ぴらりとテストを見せます。

 

「えっと…………えっ!? 数学以外満点!?」

 

「しょうもないミスですよ。計算式書かないとダメなんですね。答えあってたらなんでもいいじゃないですか」

 

「こ、この複雑そうな数式を暗算で……!?」

 

 面倒な式を省略したら答えが合ってても減点って理不尽ですよね。結果出せてるんだからそこは妥協してもいいでしょうに……ってあれ? どうして愛衣ちゃんはうなだれているんでしょうか?

 

「……なんか、天才って理不尽ですよね……」

 

「? 理不尽なのはこの減点の方だと思いますが」

 

 というか、私の点数も計算に入れられているのですかね、これ。テストみんなと違うもの受けてましたけど。

 

「まあこんなもので人間を測れるわけじゃないですし、拘るのもバカらしいですよ。知識はあれば便利ですが必要じゃないです。最低限の教養だけあればどうとでもなりますよ」

 

 持論を語ってテストを燃やします。いりません、こんなもの。

 

「! ちょっ、こんなところで……!」

 

「大丈夫ですよ。ただの手品(・・・・・)です。それより今日はもう終わりですし帰りましょう」

 

 実際には魔法で燃やしましたが、一般人には手品とさして変わりなく見えたでしょう。麻帆良は思ったより『不思議』に寛容なようですから、この程度のことは気にも留めないでしょうし。

 気を張っている愛衣ちゃんを連れて、私たちは寮の自室に戻りました。

 

 

 ああ、そうそう。

 ネギ君の担当する2-Aですが、今まで最下位だったのが一気に一位に上り詰めたそうです。何かイカサマでもしたのでしょうかね?

 ……いえ、これは素直に褒めてあげるべきでしょうね。

 ネギ君、頑張りましたね。

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