4月も後半に突入し、こっちはこっちで生徒会長に襲われるというイベント…………寧ろ事件が起きているが、どうも1組ではほぼ毎日イベントが発生しているらしい。
なお、鈴木さん情報である。
「えっとね、2組に中国の代表候補生が転校してきたんだけど、その子が何と一夏くんのお兄さんの幼なじみだったらしいんだよ」
「えー、じゃあ織斑くんの幼なじみでもあるの?」
「んー……?」
曖昧な記憶を懸命に探してみるが、中国人の幼なじみなどいただろうか?
いや、織斑十春の交友関係の広さなら居たのかもしれないが、少なくとも一夏の記憶には無かった。
「ごめん、心当たり無いや」
「凰鈴音さんって言う人だって」
「あー、そう言えば四年生の頃に中国から来た人が転校してきたような……」
「四年生?」
「それって幼なじみって言う?」
「微妙じゃなーい?」
それを幼なじみと言えるかどうかは、当人の認識に寄るところだろう。
当人達がそれで納得しているのなら、それで良いんじゃ無いだろうか?
「それでね、その幼なじみで中国代表候補の凰さんとイギリス代表候補のオルコットさん、その二人での痴話喧嘩が絶えないんだって。
ついでに、その他の人は基本的に不可侵。
例外が確か……もう一人、幼馴染みの人がいるとか?」
「えー、何それ?専用機持ち以外は関わっちゃいけない的な?」
「一夏くんはそんな事無いけどねー」
「ははは、そうですね」
そのグループで固まっているのは偶然なのか、それとも必然なのか…………
あの織斑十春のことだから意図的な物なのだろうけど。
「それと、来週にはクラス別対抗戦が始まるね!」
「ウチのクラス織斑くんで専用機持ちだし!」
「でも、今年って専用機持ちが多くて、1組と2組だけじゃなくて4組にも日本の代表候補生がいるんだよね」
代表候補生だからと言って専用機が宛てがわれる訳では無いが、更識簪さんにも打鉄の後継機を受領していると聴いた。
流石に機体の性能や特性までは教えて貰えなかったが。
「大丈夫だよ、一夏くんだし!」
「何よ、その根拠は……」
「だけど、一夏くんには期待したいな」
「ええ、期待に沿えるように頑張りたいと思います」
○
5月も半ばに突入し、段々と気温も上がってきた頃。
ついにクラス別対抗戦の当日を迎えた。
初戦の組み合わせカードは【織斑一夏VS凰鈴音】と言うもの。
そう言えば、数週間前にこの中国からの代表候補生の話題があったっけ。
確か、彼女は織斑十春の幼なじみらしい。
と言うことはどこかで会ったことがあるかもしれないが……まあ、いいか。
【こんにちは・マスター】
「うん、こんにちは。それじゃあ行こっか」
【了解】
アリーナのピットに設置されたカタパルトに脚部を置き、足を折り畳み身を屈めた。
カタパルトがISを感知すると、そのまま競技場へと向けて射出される。
会場に放り出された後は、頃合いの良い所まで来てからPICで空中に固定する。
暫く待つと、向こう側のピットからもISが飛び出してきた。
「アンタが、織斑一夏ね」
ISの装着者は小学生のような女の子だった。
身体の小ささもさることながら、ツインテールに纏めた髪の毛が幼さを更に助長している。
「へぇー、本当に十春にソックリね!」
「まあ、双子ですから」
まだお互いに武器は展開していないが、現状で判ることだけでも分析しておく。
装甲は厚め、肩の非固定浮遊部位《アンロック・ユニット》も大型で、恐らくはそこにイメージ・インターフェース装備が仕込まれているのだろう。
色は黒と桃色、名称は甲龍。
形状からは、近接戦を主眼にした設計であると伺える。
「まあ良いわ、ボッコボコに叩きのめしてやるから覚悟しなさいっ!」
そして、カウントが始まる。
カウントが0になれば試合が開始した事を伝え、攻撃が可能になる。
5,4,3,2,1…………0!
『それでは両者、試合を開始してください』
試合開始のブザーが鳴り響き、まず初めに動き出したのは甲龍の方からだった。
「いっくわよっ!!」
甲龍は両手に双天我月と呼ばれる青竜刀を量子変換して出現させると、その双剣を連結させ、それを高速回転させながら接近してきた。
青竜刀と称したが、余りにも刃が巨大で非常にバランスが悪そうだ。
IS故に扱うことの出来る武器と言えるだろう。
【近接ブレード・中距離射撃武器・同時展開】
「よいしょ、っと」
右手に実弾ライフル銃、左手に近接ブレードという自分にとってのスタンダードな戦法を選択する。
取りあえずの様子見では、これが一番やりやすさを感じる。
ライフルで威嚇を兼ねて射撃するが、回避機動を取りながら接近してくる。
多少被弾しながらも接近してくる様子から、やはりあの甲龍というISは近接戦に特化しているのだろう。
「なら、近付かないに越した事はない」
【近接ブレード・中距離射撃武器・収納・AAMポッド・同時展開】
近接ブレードとライフルを量子分解、それと同時進行で両脚部に空対空ミサイルを3機搭載されたミサイルポッドを展開する。
そして此方に接近してくる甲龍にロックオン、そのまま発射した。
「ミサイル……っ!」
流石は代表候補生と言った所か、直ぐに空中で静止すると迎撃体勢に入った。
【大気の圧縮を確認・AAM・撃墜されます】
ハイパーセンサーのサーモグラフィを参照すると、アンロック・ユニットの周辺に高温が集中しているのが見て取れた。
そして、通常視野では見えない透明な攻撃が四方八方から迫り来る6機のミサイルを全て撃墜した。
【大気の収束を検知・衝撃砲と推測】
「成る程、砲門が無くて360度全てに死角無し……ミサイルは無理か」
【データログを参照・・構築開始・・・・・完了・中距離レーザーライフル・展開】
次の瞬間、一夏の右手にはブルー・ティアーズの“スターライトmk3”に酷似したライフルが握られていた。
敢えて差異を挙げるのなら、機体色に合わせて蒼い塗装が行われていた本家に対して、一夏のレーザーライフルは“無銘”と同じく塗装の施されていない無色である事くらいか。
そしてそのレーザーライフルを間髪入れずに撃った。
「くっ……でも、そんな攻撃っ!」
一夏のISから放たれる怒涛の連射攻撃を、回転させた双天我月で去なし反らす。
完璧に防ぐことは流石に出来ていないものの、直撃を防ぐ事は出来ている。
「じゃあ、もう一丁」
【了解・中距離レーザーライフル・展開】
まるで豆腐を注文するかの如く容易く、一夏の左手にレーザーライフルがもう一丁出現した。
そして、連射。
緩急を付けた高威力レーザーの連射は、緊急的な防御手段でしか無い双天我月の回転では処理が追い付かず、甲龍の動きは回避に専念をせざるを得なくなった。
「うっ、くうっ、ああっ!」
防御を強いられ、確実にシールドエネルギーが削られていく。
これで一夏がセシリア=オルコットのように動きが少なければやりようもあったが、寧ろ凰鈴音を翻弄するようにアリーナを縦横無尽に動き回っていた。
例え逃げても、レーザーライフルはこのアリーナ会場の全域まで射程圏内だし、何なら一夏が追い掛けてしまえば逃げられない。
かと言って被弾覚悟で近付いても一層レーザーライフルの集中砲火を浴びて先にシールドエネルギーが尽きてしまうだろう。
「何で、こんな好き勝手やられっ……!!」
「近接戦に拘り過ぎてるからじゃないかな」
もしも一夏が逆の立場なら、戦況を立て直す為にも一度射撃の手を止めようとするだろう。
遮蔽物に隠れるか、若しくは射撃によって意識を反らすのが有効だろうか。
だが凰鈴音はあの圧縮砲を──その特性上、空気抵抗などの問題で射程も稼げないのかもしれないが──補助武器のような使い方しかして来なかったし、何ならあの青竜刀の片方を投げて無理矢理射撃の手を止めるという手段もある。
少なくとも後者は、先日一夏が成功したように虚を突く事が出来るかもしれない。
単騎で戦う場合、手段と選択肢の少なさは命取りになる。
特に多彩な事ができる相手に対して、何かしらの戦法に特化した専用機は相性が外れるとどこまでも脆い。
「くううっ……!ず、ズルでしょこんなのっ!!」
マルチロール機である一夏のISが狡いと言われてしまえばそこまでだが、しかしその万能性が一夏のISの特長なのだからそれで戦うのは当然だ。
結局、凰鈴音は最後までこの状況を覆す事は出来ず…………
『試合終了。凰鈴音さんのシールドエネルギーが0になりました、織斑一夏さんの勝利です』
この試合は一夏が勝利した。
・あれ、一夏さん強すぎない?
→周りがF-86を使ってる中で大人気なくF-22で戦っている様な物なので…………
AIと以心伝心出来るのもかなりアドバンテージですが。
あと、自覚のない仕返しだと思って頂ければ幸いです。