「さて……」
さながらヒーローの滑空しながら行う必殺技の如く飛び蹴りを無人機にお見舞いした一夏だったが、まずはその一撃で敵機の頑丈さを知った。
装甲はかなり厚く、生半可な攻撃ではダメージを与えるのもままならないだろう。
「さっきのヤツ、形状変更できる?」
【・・・可能です・展開しますか?】
「お願い。あと……何か取り回しの良いのも頂戴」
無人機は立ち上がり、無機質なカメラアイで此方を見据えてきた。
その思考回路に怒りや、それに準じたものが備わっているのかは疑問だが、殺気の様なものを感じられる気がする。
照準は一夏に狙いを定め、荷電粒子砲のチャージも始まり、無人機の戦闘準備は万端のようだ。
【再構築・開始・・・完了・障壁貫通用近接戦兵装・中距離補助機関銃・同時展開】
対して一夏は突起の付いた円錐形の武器、いわゆるランスと呼ばれる槍の一種と、サブマシンガンを展開する。
ランスは全長3m程で、一夏の扱う武器らしく装飾もデザイン性も無いような機能性重視の武器だった。
まず先手として、一夏はサブマシンガンから弾薬をばら撒くように撃ちだした。
しかし、重装甲を誇る無人ISに対して小口径の銃弾は無力で、お構い無しに荷電粒子砲をチャージを続ける…………
そして、満を持して大口径の荷電粒子砲を一斉発射された。
殆ど動かずにサブマシンガンを撃ち続けていた一夏を飲み込むように、荷電粒子の塊が襲い掛かる。
「残念ながら、それは悪手だよ」
荷電粒子が着弾する前に、一夏はその場から消えた。
『──!?』
感情が無い筈の無人機が戸惑ったように周りを見渡すが、どこにも一夏の姿は無い。
まさか、と思い後ろに視界を振り向かせると…………
穂先が青白く光るランスを今にも突き刺さすまいと構える織斑一夏の姿が、そこにあった。
「まさか、こんな簡単に引っかかってくれるなんてね?」
ランスが、無人機の胸部を深く抉るように突き刺された。
黒檀の専用武装である雪片・改二と同質の“エネルギーを喰らうエネルギー”が無人機のエネルギーシールドを喰い破り、その奥にある頑強な装甲も打鉄弐式の夢現の“装甲を破壊する為の超振動刃”が切り裂く。
(束さん曰く、無力化させる上で一番手っ取り早いのはソフトとハードの両面から潰せる制御系を壊せば、それでアウト──)
そして、躊躇いなくランスを引き抜く。
無人機には大穴が穿たれていた。
その孔の先にあるのは無人機を動作させる上でのブレインたるCPUやメモリといった重要パーツが収納された場所で…………
その孔に、サブマシンガンの銃口を突き入れ、間髪入れずにトリガーを引いた。
『!?』
その堅い装甲が、転じて災いとなった。
外部からの衝撃には強いと言うことはその逆もまたしかりである。
サブマシンガンの弾丸は堅い装甲に阻まれ、貫通せずに無人機の内部で激しく跳弾したのだ。
さながら、無人機の内部はジュースミキサーの如く弾丸でかき混ぜられ、破壊される。
そして一夏がサブマシンガンを引き抜くと、無人機は各部から煙を吐き出しながら後方へと倒れた。
「もう、動かないかな?」
【スキャン・・・終了・制御系全壊・機関部大破・駆動系破損・再起動の恐れはありません】
「そっか」
それから、無人機には一瞥もくれずに一夏は更識簪の元へ駆けつけた。
○
更識簪とロミー=ベンサムはISを解除しており、外見上での怪我は無かった。
ただし、ロミー=ベンサムに限っては未だに意識は回復していない様子である。
「一夏くんっ!」
「二人とも、大丈夫?」
「私は……でも、ベンサムさんはISの保護機能で眠らされているみたいで…………」
「わかった、じゃあ医務室に急ごう。念の為、更識さんも見てもらった方が良いと思う」
「うん、わかった…………」
ロミー=ベンサムを医務室へ運ぶ為、その身を抱えたところで背後から衝撃音が聞こえた。
まさか、あの無人機が再起動してしまったのではと危惧し、振り返ると────
「十春さんも無茶しますわね…………装甲隔壁ごとバリアを破壊してしまうなんて」
「緊急事態だったからな」
アリーナの観客席側に、先ほど一夏が開けたような大穴が作られ、そこから2機のISが侵入してきた。
蒼と黒のIS──ブルー・ティアーズと黒檀だ。
「あ、れ……?」
「破壊、されてますわね…………」
直ぐに倒れ伏している無人機を見て拍子抜けした様だ。
とうやら、遅ればせながらの救援のつもりだった様子だが、ご覧の通り事態は既に収拾している。
一夏としても用は無いので、無視して医務室へ急ぐことにした。
「…………おい、一夏!」
しかし、呼び止めるような声が聞こえたので一応返答はする。
「何か?」
「え……あ、いや…………」
戸惑うように声をどもらせた十春はそのまま閉口してしまう。
待っていても何も無いだろうと判断した一夏は、そのままアリーナを後にした。
○
「何ですのあの方!随分と無愛想で……っ!」
セシリアは不満たらたらといった表情で憤りを露わにしていた。
どうやら、一夏が十春に素っ気ない態度を取ったのが気に食わないらしい。
「…………良いんだよ」
「でも、十春さんの双子の御兄弟なのでしょう?何か話すのが筋でなくて?」
十春がそれとなく宥めるものの、セシリアは不愉快である事を隠そうともしなかった。
それに対して、十春は溜め息混じりに応える。
「あいつは…………俺のこと、嫌いだろうしな」
「それにしても…………」
それでも尚引き下がらないセシリアの頭を撫でながら、苦笑混じりにぼやく。
「あいつ、昔からああなんだよ。
無表情で無口で何を考えてるのかわかんなくてさ、もしかしたら何も考えてないのかもな」
セシリアは撫でられた事に気を良くしたのか、機嫌を直したように嬉し恥ずかしそうに微笑みながら赤面した。
○
「…………良かったの?」
一夏と十春が双子である事を知ってか、心配するように簪は一夏に尋ねてきた。
「何が?」
「あ…………ううん、何でもない」
「そう」
その素っ気ない反応に何かを感じたのだろうか、簪はそれ以上その話題を掘り返すことはしなかった。
代わりに、国家代表候補らしくと言うべきか、無人機との戦いについて質問をしてくる。
「さっきの、どうして直ぐに接近しなかったの?」
「ん、と…………ランスでの攻撃のこと?」
「うん。最初の射撃はあまり意味が無かったんじゃないのかな、って」
「えっとね、あれは意識を前に向ける為に敢えて無駄撃ちしたんだ」
「どういうこと?」
簪も少し考えてみるが、その言葉の意味する処はわからない。
あのランスの攻撃は確実に装甲を貫いており、わざわざ後方にまで移動する必要性は無かったように感じる。
「確実性を高めたかったんだ」
「確実性?」
「確かに、あのまま真っ正面から突っ込んでも同じ結果になったかもしれない。
でも、それだとチャージのタイミングによっては荷電粒子砲の直撃を喰らうかもしれないじゃない?」
「ああ、うん」
「あの威力だと流石に直撃は厳しい物があるから回避動作が必要になる。
そして更に回避した上で荷電粒子砲の第二射が来られると、攻撃の機会を失うかもしれないでしょ?」
「じゃあ、敢えてサブマシンガンを撃ち続けたのは……そこから動かない様に見せかけた上で視線を前に向かせて、荷電粒子砲を全部前方に撃たせる為?」
「そう言うこと」
前方の敵が自分に向かって狙いを定め射撃を行っていれば、まさかそこから後方に回り込まれるなんて通常は考えられない。
しかも動きを止めながらの射撃ならば、そこから咄嗟に回避機動を取ったとしても、大口径の荷電粒子砲の射程圏からは逃れられない……あの黒いISがそんな風に思考したのなら、確実に仕留める為に火力を総て前方に集中させるだろう。
「移動しながら撃ったら視線で追われるし、ストレートに前へ出たら荷電粒子砲の格好の餌食。
だから、あんな手段を取ったってこと」
「凄い……そんな事、私ならできない…………」
「まあ、その辺は機体特性によっても取れる戦法って変わってくるから、色々考えてみても良いかもね」
会話をしている内に医務室へ辿り着き、更識簪とロミー=ベンサムを校医に引き渡す。
「それじゃあ、僕は先生から事情聴取で呼ばれてるから行ってくるね」
「うん…………あ、あの」
「後でお見舞いに来るから、またね」
「う、うん!」
漸く、更識さんの顔に笑顔が浮かんだ。
○
IS学園の地下には、一部の教師や関係者にのみ入室が許された階層が存在していた。
地下空間には必要に迫られた際にその役目をはじめとする全うすべく様々な機能を与えられており、緊急事態時の指令室やシェルター、そして今回のケースではある程度の研究所としても利用できる。
織斑一夏によって撃墜された無人機は、直ぐにこの地下室にまで運ばれ、解析作業が行われた。
「織斑先生、ISの解析結果が出ました」
「ああ、どうだった?」
「やはり無人機でした」
無人機。
遠隔操作による物か、それとも完全に自律したスタンドアローンか。
どちらにせよ、ISの兵器としての側面に於いて根幹から在り方を変えてしまいかねない代物である事は間違いない。
「それと……」
「まだ何か?」
「はい。制御系が搭載された中枢は織斑一夏くんに破壊されていたんですが、ISコアなどが搭載された頭部は無事でした」
「そのコアの登録は?」
「未登録な上に、既存のコアとは完全に異なる物でした」
「…………具体的には?」
「大型で、内部には人の物と想われる脳髄と、それを制御していたと思われる機械類が…………
念の為にDNAパターンをチェックしたのですが、織斑先生のDNAと99%一致しました」
正解者には拍手を!
Q.感想からネタパクったな!
A.R-TYPEとかマブラヴTEとか大好きなんでな。
元からこの予定だったんじゃよ。
Q.なんで脳が残ってんのに動かないの?
A.生物学的に死んでいる脳はISコアの補助器官に過ぎないからです。