最初は先生達2人が、次は生徒会副会長が狙われる。しかし、九尾の狐には逃げられてしまう。
そんな時、水泳大会の最中に生霊がある女子生徒に取り憑く。
昂弥がこの2つの事件に挑む!
光宏が九尾の狐に襲われてから半月が
「明日は水泳大会だ。生徒会は主催側の一員として、
「あの~、浄水先輩」
会議が終わって自分の教室に戻ろうと廊下に出た俺に、光宏が話し掛けてきた。
「ん?」
「俺を襲った…、九尾の狐…、でしたっけ?あれってどうなったんですか」
「あれな…。実はいまだにとらえられていないんだよ…。光宏が
「そんことありませんよ。あの時、浄水先輩と浄水先輩のおじいさんが来てくれなかったら、俺はどうなってたか…。」
「ありがとな」
翌日。水泳大会当日。
うちの学校の水泳大会は、クラス対抗の競泳や
「会長と中羽先輩も泳いできたらどうですか?俺と光宏が看視していますから」
そう俺はテントの中で会長と中羽先輩に言った。
「おお、そうか!?でも、生徒会長が仕事
「そんなことないと思いますよ。会長だってこの学校の生徒なんですし」
そう光宏が言った。
「それもそうだな」
「飯田先生もどうぞ」
そう俺は飯田先生に言った。飯田先生は生徒会、とりわけ執行役員部の顧問の先生である。思春期の女子をそのまま大人にした様な先生で、生徒会の事に関しては頼りない。
「私はやめとくわ。日焼けしてもいけないし」
その日は、朝からうだる様なカンカン照りだった。今、テントの中にぶら下がっている温度計は、日陰だというのに27℃を指していた。この分だと、プールは30℃、特にプールサイドは日光が当たり続けているおかげで40℃といった
「浄水先輩?」
「あ~、すまん、すまん!」
「良かった~、この暑さで気が変になっちゃったのかと思いましたよ」
「ちょっと考え事してた」
「飲み物、何が良いですか」
クーラーボックスを
「ん~…、お茶で良いよ」
「はい。ちゃんと水分補給しないと、熱中症になっちゃいますからね」
「そうだな」
俺はそう言って、お茶を一口飲んだ。
「あっ、会長だ。内江川先輩もいますよ」
「大丈夫そうだな」
「誰がですか」
「杏理だよ。杏理、カナヅチで、
「ハハハ、そんなに嫌いなんですか」
「杏理の前じゃ、絶対笑っちゃダメだよ。
そう俺は冗談
「杏理が小学生の時に水泳の授業で何回もれ
「へぇ~、そうなんですか。俺の妹もそうですよ。でも、海は好きっていうヘンなヤツなんですけどね」
その時、反対側のプ-ルサイドから女子のキャ~!!という悲鳴が響いた。近くにいた凪奈香や近くのレーンで泳いでいた会長はじめ沢山の女子生徒や男子生徒が、その女子の周りに
「やめて!!お願いだから出ってって!!」
俺はその女子の一言に、何かを感じた。
「光宏!ここ頼んだ!」
俺はそう言って、プールサイドを
「浄水、これはどういうことだ?」
そう唐谷先生が聞いた。
「何か
「うん、分かった」「さぁ、行こうか」
「ごめんなさい、ごめんなさい」
その女子は突然そう言った。しかし、誰に謝ってるのか分からなかった。
「守瀬、あと頼むな」
そう唐谷先生がやじうまの処理を会長に頼んだ。
「はい!」
一方、唐谷先生はじめ俺達は体育科研究室に向かった。
「ここに座りなさい。今、お茶
「
俺は電車のチケットぐらいの大きさの白い紙に、フウッと息を吹き掛けて式神を出現させた。そして俺が用を言うと、式神は小さく
「で、どうしたんだ?」
そう唐谷先生が聞いた。
その時、研究室に3人の女子生徒が血相抱えて入ってきた。
「先生!!千夏ちゃんがそうなったの、私達のせいでもあるんです!!」
「落ち着いて話しなさい」
そう仄四谷先生が言った。
「
そう俺は言った。
「同じクラスの子をいじめてたから、こういう結果になったんだと思います!」
そうさっきとは違う女子が言った。
「何組の何さんですか」
「1年C組で、いじめてた子は
そうさっきの女子が言った。
「私の名前は林マリー、この子は
そう3人目の女子が言った。
「先生方、分かりました。正体は、
「
そう仄四谷先生が聞いた。
「いいえ、取り憑いてるのではなく、他人の精神に入り込んでる状態です。つまり、鞠子さんの
「違いがよく分からんが」
そう唐谷先生が言った。
「まあ、精神を支配するか、しないかの違いですよ、簡単に言えば」
その時、式神が戻ってきた。
「ごくろうさま」
俺はそう言って、またフウッと息を吹き掛けて式神を消した。
「…、
俺は少し思案した後、仄四谷先生の2つ隣の机に置かれていたキャラクターのぬいぐるみを
「一体、何に使うんだ?」
そう唐谷先生が聞いた。
「千居さんから鞠子さんの情念を離れさせて、一時的に何かに憑依させて
「五芒星は?」
そう仄四谷先生が聞いた。
「まだ
「やむえんな」
そう唐谷先生が言った。
「ありがとうございます。では、早速始めましょう」
俺はそう言って、制服のブレザーとネクタイを脱いで麻の装束を身にまとった。そして、唐谷先生にお願いしてぬいぐるみを千夏の顔に近づけて、「
「あれ?体が軽くなった」
「千夏~!」
「まだです!」
俺は、千夏に
「出せ!!私をこんなものに閉じ込めやかって!!」
そうぬいぐるみの中の沚渚の情念が言った。
「
「私を閉じ込めたのはおまえか!!」
そうぬいぐるみの中の声が言ったが、俺は
「あなたは鞠子沚渚さんですね。鞠子さん、あなたはここにいる4人からいじめられてたんですね」
「…。」
「で、あなたは4人のうちの一人の千居さんに憑依した。千居さんだけに憑依したところを見るに千居さんがこの3人のリーダー格かもしれない、違いますか」
「そうよ」
さっきとは確実に声のトーンが
「情念が肉体と離れてしまうほど、何をされたんですか」
「SNSで
今どきの女子高生らしからぬ
「SNS、ソーシャルネットワーキングシステム。ネットの裏掲示板とかですか」
「そうです」
「分かりました。では、この方法を誰に聞きましたか」
俺は沚渚を
「それは…。」
沚渚の情念は
「それは、誰ですか」
「…。」
「さしずめ、『名前を口にすれば、この世から
「…。」
沚渚の情念はそれでも口籠っていた。
「誰に聞いたって言ってるんですよ!あなたは今、自分の肉体に戻りたがってる。私ならあなたの情念をあなたの肉体に
その時、沚渚の情念が苦痛に
「どうしたんだ?」
そう仄四谷先生が言った。
「
そう俺は語気を強めて言って、沚渚の情念を抹消しようとしている誰かに対抗した。俺の呪文の
しばらくして、その抹消しようとしていた誰かに打ち勝った。この時、俺は真犯人の思い当たる
「私はこのままなんですか」
沚渚の情念が泣きながら
「自分の肉体に還りたいですか」
「はい。」
「還れますよ。ただそれには、あなたの肉体のある場所に行かなければなりません」
「私の家です」
「分かりました」「唐谷先生、鞠子沚渚さんの家の場所、調べられますか」
「1年C組の担任は穂呂向先生だから、俺、聞いてくる」
「ありがとうございます。よろしく頼みます。あと1つ頼み、良いですか」
「何だ?」
「俺と同行してきてほしいんです」
「しょ~がね~な」
「ありがとうございます」
「何回ありがとう、言うんだ」
「じゃ、いじめの件も含めて仄四谷先生、4人の事、よろしくお願いします」
「分かった」
「あなた達、真相追及などは先生方の
そう俺は最後に加害者側の4人の女子生徒達に言った。俺は彼女達からの返答というか謝罪の前に、唐谷先生に用件を言った。
「じゃ、唐谷先生、俺はこのぬいぐるみ持って生徒玄関で待ってます」
「分かった」
学校から沚渚の家までは駅2駅分の距離なので、唐谷先生が車を出してくれた。
沚渚の家のチャイムを押すと、俺より
「なんッスか~?」
「鞠子さんのお宅でしょうか」
そう唐谷先生が
「表札見りゃ、分かんでしょ!
「セールスなどではありません。鶴谷丘高校の生徒会の者です。隣は唐谷先生。あなた、沚渚さんのお兄さんですよね?」
俺は怒りを爆発させそうになっている唐谷先生を手で制し、そう言った。俺の肩書きについては陰陽師にしようかと思ったが、信じてもらえる保証はないので“生徒会の者”というアバウトな表現に落ち着いた。この時、俺はどうやったらこの家にく上がり込めるか思案していた。
「学校の方が何ですか?沚渚なら上に。今日は休むって言ってましたけど」
「その沚渚さんがですね、…」
ここぞとばかりに切り返した唐谷先生を尻目に、俺は「
「さ あ、入りますよ」
「浄水!こんなことして良いと思ってるのか。不法侵入だぞ!これ」
「急がないと取り返しのつかないことになりますよ」
「それはどういうことだ?」
「日没までにやらないと、彼女の情念を
俺と唐谷先生は玄関を上がって、2階に行く階段を上がりながらそう言い合った。
「ここか!」
ドアを開けると、そこにはベッドに眠っているかの様な
「唐谷先生、部屋から出て下さい。それと、彼に掛けた呪文がもうすぐ
「
そう俺は呪文を唱え続けた。風が巻き起こってカーテンが大きくはためいた。それとともに
しばらくして、辺りを包んでいた閃光が沚渚の肉体に吸い込まれるかの様に消えた。これは成功を意味していた。と同時に、俺は床に
「沚渚~!!」
兄と
「浄水!!おい!!どうしたんだ!!」
「唐谷先生、この呪文は体力をかなり使います。でも、休めば治りますからどうか心配しないで下さい」
俺は唐谷先生の腕の中でそう言った。
「浄水先輩、ありがとうございました!!」
「まあ、これが俺の仕事だから」
「でも、何で俺に相談してくれなかったんだ?」
そう兄と思しき彼が沚渚に聞いた。
「だってお兄ちゃん、いっつもゲームのことばっかじゃん。それに、お母さんは仕事でいないし」
沚渚はそう言いながら、泣き出してしまった。
「沚渚さん、失礼だけどお父さんは?」
唐谷先生は、答えは分かっているが確認するかの様に聞いた。
「うちは離婚して、シングルマザーなんッスよ」
沚渚の代わりに沚渚の兄がそうあっけらかんと答えた。この“沚渚の兄”という男は、離婚という事実を、また妹がいじめに
「鞠子さん、また何かあったらその時は遠慮せずに生徒会室に来て下さい。生徒会の
「ありがとうございます!」
「じゃ、沚渚さん、また来週な」
「はい!」
沚渚は
俺は唐谷先生に車の後部座席に乗せられるまで、終始抱きかかえられていた。俺は断ったが、結局は唐谷先生のご
「浄水、大丈夫か?あんまり無理すんなよ」
「陰陽師として
「そうか」
唐谷先生は納得した様に言った。
「おのれ、浄水昂弥め!!今度こそおまえの鼻を明かしてやる!!」