カードファイト!!ヴァンガードK   作:ふぁみゆ

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リアルで忙しいため執筆活動が難航しております。
皆さん、お待たせして申し訳ありません


stride 6:エリカの信念

大阪府の弓道場。

多くの弓道部の学生たちが集まっている。

今日は高校弓道の地区大会の日、この地区の生徒たちが全国大会を目指すための第一歩。

 

そんな多くの弓道選手の中に綺麗な黒い髪を後ろで一纏めにした少女がいた。

 

黒崎エリカ、最近兵庫県から引っ越してきたばかりのニューフェイス。黒魔女デッキを使用するヴァンガードファイターとしても有名な彼女だが弓道においても高い実力を持ち、転校早々選手として活躍している。

 

「ようやく会えましたわね。黒崎エリカ!」

 

会場にて点呼を待っているエリカに一人の選手が声をかけてきた。どうやら、他校の生徒のようだ。

 

「あなたは、確か山高の…」

 

言われた少女は金髪の髪をさらっと流して名乗りを上げる。

 

「綾小路エマですわ。」

 

綾小路エマは山高の一年生エースとして名を馳せていた。関西地区最強を自称し周りからも認められ、そしてそれに見合うだけの実力を持っていたため、近くの高校との交流試合に関しても甘く見ていた…

しかし、そんな彼女の前に現れたのがこの黒崎エリカだ。エリカはエマを全く寄せ付けない圧倒的な命中精度を魅せつけ弓道を始めてから今まで負け無しだったエマに初めて敗北の文字を刻んだのだ。

そして、その日、エリカが帰ろうとしたその時、エマは彼女に指をつきたてて宣言した。

 

「次は絶対に!絶対に負けませんわ!!」

 

そして、今にいたる。

 

「あの時、言った言葉覚えていますわね!」

 

再び以前を同じようにビシッとエリカに人差し指を向ける。

 

「あの日からあなたとまた会えるのを楽しみにしていました!今度こそ勝ちはもらいますわ!!」

 

と、気合のこもった言葉とともに大声で宣言した。

 

点呼待ちの間に…

 

「やめなさい、みっともない」

 

周りが少しこちらに注目したのを感じ、鬱陶しそうにエマの指を手で払いのける。

 

エマは周りの空気なんて気にしない性格らしくエリカの反応を嫌がる様子を見せた。

 

「な!勝負から逃げるつもりですか!?」

 

ピクリ…

 

それを聞いたエリカの表情はみるみる厳しくなり、その鋭い眼光を…

 

「お!いたいた、エリカ〜!」

 

「応援に来ました〜。」

 

向けようとしたが、知り合いの声に遮られた。

 

「二人共、来たんだ…別に来なくていいって言ったのに」

 

「まぁ、そう言うなよ。俺達友達なんだしさ」

 

この空気にエマも肩透かしを食らってしまったようだ。大人しく引き下がる。

 

「やれやれ、興が削がれてしまいましたわね。エリカさん、さっきの話、忘れないでくださいね。」

 

そしてエマは学校のところへ戻っていった…

 

「話?なにかあったんですか?エリカさん」

 

エマのことが気になったアユムはふと聞いてみた。

 

「別に、ちょっと勝負を挑まれちゃっただけよ」

 

「勝負…」

 

答えるエリカの表情は変わってはいなかった。至って冷静な立ち振まい…

それを見たアユムは思った。エリカはエマに言われていたことなんて全く気にしていないんだと。

 

「引き下がる気はないんだろ?」

 

しかし、隣にいるシンジはアユムとは逆のことを感じたようだ。まさか、そんな…と思いエリカを見るとエリカはあくまで静かに…

 

「…当然、挑まれた以上は勝つ」

 

と、答えた…

 

 

ーーーーーーー

 

 

「あの…」

 

選手控室に入ったエリカと別れたアユムは隣を歩くシンジに尋ねた

 

「ん?どうした?」

 

「エリカさんってその…実は負けず嫌いだったりするんですか?」

 

それを聞いたシンジは、少し笑いながら答える

 

「実は、っていうかめちゃくちゃ負けず嫌いだぜ、あいつ。一回負けたことは絶対に忘れないし、どんなささいなことでもやられたら倍にしてやり返すタイプだな」

 

「ぜ、全然そんなふうに見えないのに…」

 

アユムは素直に驚いていた。転校当初から感情を全く表に出さず、何事も冷静に淡々と解決している様子から、"かっこいい""クールビューティー"という高評価から"怖い""何を考えているのか分からない"と言った低評価まで様々な印象を周りに抱かせてきた。 しかし、その内面が負けず嫌いだったとは…出会って数週間のアユムでも知ることができなかったのである。

 

「まぁそうなるよな。感情が全然表情に出てこないし態度には出さないからな…。でも、ヴァンガードやってると何か気づいたりしないか?」

 

言われてアユムは思い出した。

 

初めてショップ大会で出会ったあの日、エリカはやたらと"トリガー運のなさ"を指摘し嫌味な発言をする相手とファイトをしていた。その時も表情や態度に全く変化は無かったのだが…その相手を実力で下した最後の最後で…

 

「その手札じゃトリガーが乗ってなくても勝てなかったわね…せめて、ヒールトリガーを引いてたら守りきれたのに…あんた、運のない人ね…」

 

と、ここで強烈な意趣返しをしたのだ。その時は冷静に淡々と対応していたように見えていたが、今思い返すと……

 

「あの時も、相当頭に血が上ってたんだ…」

 

「でも、それはあいつの強さでもあるんだぜ」

 

どういうことなのかと思いアユムは聞き返す。

 

「一度あいつはあるファイターに完膚なきまでに叩きのめされたことがあるんだよ。それはもう、二度とヴァンガードに触りたくなくなるんじゃないかってくらいに…」

 

昔からエリカと友達だったシンジが言うのだから本当のことなんだろう…普段明るいシンジの様子もどこか暗かった。

 

「でも、あいつはヴァンガードをやめようとはしなかった。それどころか、そいつにリベンジするためにヴァンガードにより一層努力するようになったんだ…」

 

アユムが、マジェスティロードブラスターで戦ったあの日もエリカは言っていた。

 

「あなたのターンよ、カードを引きなさい」

 

あの時、自分が諦めかけたその時にも彼女は、エリカは諦めようとしなかった…

 

「どんなことからも絶対に逃げないし諦めない。それかまあいつなんだ……」

 

 

ーーーーーーー

 

 

「いつまでもすました顔をして…今度こそあの顔を驚かせてやる!」

 

エマは精神を落ち着かせるため外を歩いていた。弓道場の周りは公園になっており、多くの木々が周りに植えられている。

すると、その脇道から一人の少年が現れ、エマに声をかけた。

 

「おねえちゃん!」

 

「あら、カミア、応援に来てくれたのね。」

 

少年の名は綾小路カミア、エマの弟だ。相手が弟というだけで先程までエリカに見せていた高圧的な態度はすっかりなくなり優しいお姉ちゃんに変身する。

 

「うん!今日もいつもの勝てるおまじないしてあげる〜!」

 

カミアはかばんからカードデッキを取り出し、一番上のカードをめくる

 

「クリティカルトリガー!お姉ちゃんの矢は絶対に的に当たるよ〜!」

 

傍から見ればなんとも微笑ましいおまじない。それにエマは少し大げさに喜んでみせた。

 

「やりましたわね!今日はなんだか勝てそうな気がしてきましたわ!あら?」

 

と、ちょっとしたことに気づいたエマ…

 

「以前とは少し違うカードですわね…」

 

それを聞いたカミアはパァッと顔を輝かせる

 

「うん!デッキを新しくしたんだよ!」

 

自慢気にヴァンガードのデッキを渡すカミア、しかしエマはうまく反応を返すことができなかった。

 

「どう?どう?」

 

「う〜ん、ごめんなさいね。お姉ちゃん、ヴァンガードよく分かんなくて…」

 

「そっか…」

 

残念そうに俯くカミアの頭をエマはそっと撫でる。

しかし、今まで気高く振舞ってきた自分のこんな姿、他の人には見せられないななどと考えていた。

今は周りに誰もいないから心配はないけど…

 

「ねぇ、どいて欲しいんだけど…」

 

「!?」

 

いた、見ている人いた…それも一番見られたくない相手だ。ついさっき正反対の態度を見せていた相手だ。

 

「え、あ!ど、どどど、どうしてここに!?」

 

「あなたの後ろの自動販売機に用があるの。買わないならどいてくれない?」

 

そう、エマとカミアは自動販売機の前を陣取っていたのだ。二人共、そのことには全く気づいていなかったようだが…

 

「ね〜!お姉ちゃ〜ん」

 

すると人懐っこいカミアは仏頂面をしているエリカにも話しかけた。

 

「ちょっと、カミア…」

 

「新しいデッキ作ったの〜!見てみて〜!」

 

自分と全く同じことを言う弟にため息を漏らす。大体、自分も知らないのに自分よりずっと社交性のなさそうな態度のエリカに分かるはずが…

 

「へぇ〜、ヴァンキッシャーデッキか…でも、それならもう少しバインドが使えるカードがあったほうがいいんじゃない?」

 

「えっと、どんなカードがいいの?」

 

「アタックすればバインドできるボルテージホーンドラゴンとか…」

 

わかってる。というか、アドバイスができるほど詳しい。

 

「エリカさん、あた、ヴァンガード知っていらっしゃるの?」

 

それに対してそっけなく答える

 

「知ってるというかやってる…」

 

開いた口が塞がらないエマ、そして、目を輝かせるカミア

 

「ねぇお姉ちゃん!ファイトしようよ!」

 

「あ〜、時間がないから一回だけね…」

 

こうして、公園での二人のファイトが始まった…

 

 

ーーーーーーー

 

 

「祭儀の魔女リアスでドラゴニックヴァンキッシャーにアタック!」

 

エリカのライドするリアスが放った衝撃波にカミアがライドしたドラゴニックヴァンキッシャーが吹き飛ばされる。

 

カミアのダメージはすでに5…そして、この攻撃によりダメージチェックが行われる…

 

「うぅ、負けちゃった…」

 

ファイターとは言えまだ子供、負けてしまったことで目に涙を浮かべ、泣きそうになってしまう…

 

「なっ!?」

 

それをみて逆上してしまうエマはエリカを睨みつける。

しかし、エリカは、表情を崩さずカミアに声をかけた…

 

「強くなるコツ、教えてあげよっか?」

 

「え?……」

 

それを聞いたカミアは顔を上げた。

それ見たエリカは満足そうにうなずき言葉を続けた…

 

「諦めないことよ…これはヴァンガードだけじゃない。どんなことでも同じ、諦めたらそこで負けだけれど、諦めなければ逆転の可能性が生まれる…勝負っていうのは、最後の最後までどうなるのか分からないものなの……」

 

エリカはカミアのデッキを指差す。

 

「ダメージチェック、してごらん…」

 

促され恐る恐る山札の上のカードに手を伸ばし…めくる…

 

「…」

 

めくってみるとそこにあったのは……

 

"愛の神カーマ"

 

「あぁ!ヒールトリガーだ!!」

 

倒れていたドラゴニックヴァンキッシャーがゆっくりと立ち上がった…

 

「言ったとおりでしょ?勝負っていうのは最後の最後まで分からないものなの」

 

「うん!」

 

明るい声を返した。

 

エマはそんな様子を見ていて気づいた。この人はもしかすると自分に似ているのかもしれない。表情には現れないがこの人もきっと挑まれた勝負からは絶対に逃げない…

 

「エリカさん、あなたは…」

 

と、エマが声をかけようとしたその時…

 

ビューッ!

 

強い風が一吹きし、ベンチに置かれていたカミアのヴァンガード、ドラゴニックヴァンキッシャーのカードが飛ばされてしまった。

 

「あ!ドラゴニックヴァンキッシャーが!」

 

それを追いかけていくカミア…

 

地面に落ちたカードを拾い上げる。

だが、そこが車道だということに気づいていなかった…

 

ピピーッ!!

 

「カミア!!」

 

カミアに迫り来る車、エマの悲鳴が上がる…

するとエリカは…

 

ダッ!!

 

カミアに向かって走った!そして、カミアの体を強引に抱きかかえ…

 

ブゥゥゥン!!

 

間一髪、反対車線に倒れこむ。

 

「カミア!!無事でよかった…」

 

エマもすぐに二人を追いかけた。二人共、無事らしい。

 

「エリカさん、本当にありがと…!あなた!その手!」

 

カミアを庇ったエリカの手は赤く腫れ上がっていた…

とても次に弓道ができる状態じゃない…

 

「別に大したことはないわよ…」

 

右手を抑えながら歩き出すエリカ…

 

「無理をしてはいけません!今すぐ病院に」

 

エリカはその言葉に一瞬だけ立ち止まると後ろを振り返らずに…

 

「やるんでしょ、勝負…」

 

とだけ言って会場へ向かった……

 

 

ーーーーーーー

 

 

バシュッ!!

 

エリカは3本矢を放つも全く的に命中しない…

 

「……」

 

苦い顔をしながらも4本目の矢を番えるも…

 

「っ!」

 

右手に走る痛みで屋を落としてしまう。

 

弓道では落とした矢の引き直し許されない。ユリコは一発も的中しないまま立ち去ることとなってしまった…

 

「ユリコさん…どうしちゃだたんだろう…」

 

その様子を見ていたアユムとシンジも心配そうに見つめる。

 

「分かんねぇけどいつものあいつなら、こんなことには…」

 

何も言わず黙って大気スペースに戻っていくエリカ

 

「エリカさん」

 

そんなエリカにエマが静かに声をかけた

 

「やはり、無茶ですわ…その手、すぐに見てもらったほうが」

 

エリカは首を横に振り、それを否定する

 

「まだ近的もある。勝負はまだ終わってない。」

 

なぜそこまで強情を…としびれを切らしたエマはついに声を荒げた。

 

「そんなこと言って!あなた!私に負けるのが悔しくないんですか!!」

 

もちろんそんなことは方便だ。弟を救ってくれた恩人にこれ以上無茶をして欲しくないからこその言葉だ。

 

しばしの沈黙…そして、エリカの出番が来る。

 

立ち上がるエリカ

 

「確かに、負けるのは嫌よ。でも…」

 

自分の弓を手に取り静かに的へと向かった…

 

「諦めるのはもっと嫌なの…」

 

 

ーーーーーーー

 

 

2本目、真っ直ぐに矢を番える。しかし…

 

「っ!」

 

右手に走る痛みのせいでうまく狙いが定まらず…

 

バシュッ!!

 

的には命中しなかった。

 

今のところ的中はなし。

 

その様子を静かに見守るエマ…

 

この数時間のエリカのことが脳裏に浮かんだ…

弟と遊んでくれた彼女のことが

 

(諦めないことよ…これはヴァンガードだけじゃない。どんなことでも同じ、諦めたらそこで負けだけれど、諦めなければ逆転の可能性が生まれる…勝負っていうのは、最後の最後までどうなるのか分からないものなの……)

 

「そう、あの人は…本当に…」

 

4本目の弓を番える。痛みをこらえ真っ直ぐ的に向かって…

 

(負けるのは嫌よ、でも、諦めるのはもっと嫌なの)

 

まだ諦めてないんだ…

 

そして放たれた4本目の矢は、真っ直ぐに的に向かって飛んでいった……

 

 

ーーーーーーー

 

 

夕方、試合が終わったエリカをアユムとシンジが出迎えた。

その右手には包帯が巻かれている。

 

「エリカさん!その手!!」

 

「お前!そんな状態で続けてたのかよ!?」

 

慌てて駆け寄る二人

 

「まぁ、勝負の約束をしてたからね」

 

その姿に戸惑うアユムと肩をすくめるシンジ

 

「お前、相変わらずだよな…」

 

「まぁ、結果は見ての通り惨敗だったけどね…」

 

その時、不意に後ろから声がした。

 

「まだ、決着はついていませんわ!」

 

その声にエリカが振り帰ると、そこにいたのは綾小路エマだった。

 

 

「でも、」

 

「この勝負はお預けですわ、次の時にはお互い全力で戦いましょう」

 

また同じように指を指す。その様子にエリカの顔から…

 

「ふふっ…」

 

自然と微笑みが漏れた

 

「えぇ、次は。お互い全力で戦いましょう…」

 

握手を交わす二人。

たとえ何があってもエリカはこの勝負の約束を忘れることはないだろう。

そして、何があってもエリカは、この勝負に勝つことを諦めないだろう…

 

それが黒崎エリカなんだから……

 

エリカの信念なのだから……




次回予告

「エリカさん、あんな状態でも勝負にこだわるだなんて…」

「それがあいつの良さでもあり、弱点でもあるからな」

「きっと、勝つためにたくさん練習もしてるんだろうな、僕も頑張らないと…」

万博公園で行われるヴァンガードのイベントの準備中。主催者である水嶋キリヒトが場に指示を出している。その手には栄養ドリンクの瓶が握られていた。

ユリコに連れられ見学に来たアユム、エリカ、シンジは熱を出してばったりと倒れるキリヒトを発見する。

役員用のゼッケンを着て手伝う三人。果たしてイベント開催に間に合うのだろうか?…

そして、キリヒトは明日のイベントに元気な姿を見せられるのか?

stride7:水嶋キリヒト

「でも、頑張りすぎて倒れたりしたらダメなんだぞ」

「わ、分かってるよぉ……」
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