まさか、ここまで苦労することになるとは思わなかった!!
おまたせして本当にすみませんでした!
「よし!資材届いたぞ!c班をこっちに回せ!」
万博公園の国際競技場にて、イベント主催者である水嶋キリヒトは関係各所に支持を出しながら動いていた。設備は完成間近。間もなく準備は整うだろう。
「これで明日のイベントもうまく行きそうだな…」
と言って、手に持ったドリンクを飲み干した。
赤マムシドリンクというヤバそうなものを…
ーーーーーーー
そのしばらく後、アユム、シンジ、エリカの三人がユリコさんに連れられて万博公園にやってきた。
「おぉ!すっげぇ!!」
「ここで、ヴァンガード大運動会が開かれるんですね!」
「月並みな台詞だけど楽しみね」
みんなキラキラした目で会場を見つめていた。
「はーい、みんな!楽しいのは分かるけど遊びが目的じゃないからね。」
車から降りたユリコが声をかけた。
そう、今日は学校の授業、職場見学のために水嶋キリヒトのところへ尋ねてきたのだ。
「はいはい、分かってるって!」
「早くキリヒトさんのところへ行きましょう!」
アユムとシンジはそのまま走りだしていった…
「本当に分かってるのかしら…」
これにはユリコも思わず苦笑い。
「私達も早く行きましょう」
自制してくれているエリカもなんだかんだ楽しんでいるようで…
「……元気だなぁ、高校生…」
ユリコは自分の年齢を感じるのであった…
公園に設置された大きなライブステージ。その裏側に役員の待機用テントはあった。
簡素だがそれなりに大きいものが使われており中には机や椅子が並べられ、休憩所としての機能を十分に果たせるようになっている。
そのテントにシンジとアユムが恐る恐る入ってきた。
「き、キリヒトさん…いらっしゃいますか?」
その中には椅子に座り机に突っ伏している青年。水嶋キリヒトの姿が…
「あれ?キリヒトさん、寝てるのかな?…」
疲れているのか、と思いシンジは近くにかけてあったブランケットを肩にかけようとキリヒトに近付いた…
その時…
バタン!
キリヒトの体が椅子から転げ落ちた。
すぐに音のした方を向くシンジとアユム…
「キリヒトさん!キリヒトさん!?」
シンジが近くまでより肩をたたいてキリヒトの意識を確認する。
キリヒトからの返事はない…
アユムはパニックになりその場から動けなくなってしまった。
「アユム!ユリコさんと係員の人呼んできて!すぐに!」
シンジの声で正気に戻り、アユムは動き出した…
ーーーーーーー
診察室。から出て来るユリコ。
医師の診断は…「過労」
選手として日本全国を回ったあとにイベントの運営主催は流石に体力が持たなかったのだろう。カバンからはちょっと怪しげな栄養ドリンクなんかも見つかったという。
「キリヒトさん、そこまで無理してたのに僕達の職場体験、引き受けてくれたんだ…」
「きーくん、昔から無理するところあったからね…」
心配そうにつぶやくアユムと感傷に浸るユリコ。
しかし、解決しなければならない問題が…
「結局、職場体験はお流れになっちゃったわね。キリヒトさんがいないんじゃ準備もうまく進まないだろうし…」
ユリコの言うとおり、とても職場体験ができる状態じゃない。今日のところは帰るしかないだろう。
「そうね、それじゃあ、今日はみんな帰りましょうか」
と、ユリコが立ち上がったその時。
「俺、残って仕事手伝います。」
シンジがそんなことを口にした。
「どうしたの?シンジくん。」
「いや、なんていうか…」
頭をポリポリとかく
「キリヒトさんが無理してまで頑張ってたイベントなんだから、俺にもできることがあれば、手伝いたいなって思ってさ…」
それを聞いたエリカとアユムは顔を見合わせる。
キリヒトの気持ちを受け止めたシンジの申し出。ならば答えはひとつしかない。
「そうだね、僕もここまで一生懸命頑張ったキリヒトさんにできることがあれば、何かしたいかな…」
「決まりね…」
こうして、三人は明日開催のヴァンガード運動会の準備を手伝うこととなった。
「やれやれ、大丈夫かしら…」
ーーーヴァンガードKーーーー
「シンジくん、計測器こっちに持ってきてくれる?」
「はい!」
全員でスタッフに協力しながら準備を進めていく。
元々ギリギリのスケジュールで進めていた上、指示出しを行っていたキリヒトがいない、あまりいい状態とは言えなかった。
そのため、学生三人も仕事中にレポートの内容など考えている暇などなく、ただただ仕事に集中するしかなかった。
「お疲れ、シンジくん。はい飲み物」
「ありがとうございます。」
ユリコから麦茶を受け取り一気に飲み干す。寒い季節とはいえずっと外で動き回っているとのどがかわく…
「他の二人はどうしてるんですか?」
他の二人もきっと頑張っていることだろうと思いユリコに尋ねてみた。
「あの二人は屋台の設営だって、試しに何個か作るみたいだからできたら持ってきてくれるんじゃないかしら?」
「え?…」
その言葉に少しぎょっとするシンジ、何があったのかと驚くユリコだが、まぁ大丈夫だろう、とシンジはいつもの調子に戻った。
「でも、シンジくんは偉いね。こういう仕事を"手伝います"だなんてそうそう言えるものじゃないと思うよ。」
ユリコは素直にシンジを褒めた。シンジはやっぱり照れくさそうに頭をかく。
「そんなたいしたことじゃないんですよ。ただ…」
シンジは完成しかけの会場を見つめる。
「みんなが笑顔になれるお手伝いができるなら…やりたいなって思ったんです…」
「ふふふ…」
ユリコは静かに笑う
どうしたのかとシンジが尋ねるとユリコはこういった
「いや、似てるなって思ってさ…きーくんに」
ユリコにはみんなを笑顔にするために倒れるまで頑張ったキリヒトの姿がどこかシンジに重なって見えていた。
性格も戦い方もまるで違う二人。でも、二人共、誰かの笑顔のために頑張ることができる。
「君ならなれるかもしれないね。きーくんみたいに、みんなに笑顔をあげることができるように…」
少し嬉しそうに微笑むシンジ
「キリヒトさんの具合はどうなんですか?」
「うん、今日一晩休めば良くなるって…」
すると、そんな二人の前に人影が…
「き、きーくん!?なんで!」
そう、先ほど運ばれたばかりの水嶋キリヒトその人だった。
「みんなが、頑張ってくれてるんだ。僕だけ休んでるわけにはいかないよ…」
その顔には疲れの色が見える。まだ完全に回復したわけではない。
「きーくん…」
「ダメですよキリヒトさん!」
シンジはキリヒトに駆け寄っていく
「明日には一大イベントだって控えてるのに、今日ここで無理してどうするんですか!」
必死に静止するシンジ、しかしキリヒトは止まらない。
「止めないでくれシンジくん。僕が頑張れば…」
そんな強情なキリヒトにシンジは叫んだ。
「あんたがそんな顔してて、一体誰が笑顔になれるっていうんだ!!」
その言葉に一瞬ハッとなるキリヒト…
「俺、思うんです。相手を笑顔にするにはまずは自分が笑顔じゃないとダメだって…」
そう、だからシンジはいつだって笑顔を忘れない。そして、自分の笑顔の先には相手の笑顔がある。
そう信じていつだってシンジは笑っていた…
「だから、笑ってくださいキリヒトさん…」
シンジはいつものように屈託のない笑顔をキリヒトに向けた…その先にはキリヒトの笑顔があると信じて……
「そ、それ持ってきたんですか?」
「残すと勿体無いでしょ?」
「そ、それはそうだけど…」
そこへ綺麗な色をしたたこ焼きを持ったアユムと…
黒くて丸い謎の球体を持ったエリカが歩いてきた…
……
しばしの沈黙
「エリカちゃん、なにそれ?」
恐る恐る尋ねるユリコ
「たこ焼きよ見ればわかるでしょ!」
その場には笑いがあふれたという…
ーーーヴァンガードKーーーー
「すげぇ、アユム!料理得意だったんだな!」
アユムの焼いたたこ焼きはかなり良く出来ており、みんな絶賛していた。
となりに置いてあるたこやきのやうな何かは放置である。
エリカが膨れっ面になっているが誰も気にしていない。
「元々、家事とかは得意だったんです。そのせいで昔から女々しいって馬鹿にされてて…」
その背中を叩くシンジ
「そんなことないって!今のアユムすっげぇかっこいいと思うぜ!」
アユムも恥ずかしそうに顔を伏せる。
その様子を黙って見ていたキリヒトにユリコが話しかけた。
「ちょっとびっくりしたでしょ?」
それを聞いたキリヒトは静かに目を閉じて笑う。
「あぁ、まさか、高校生にあそこまで言われてしまうとはね。でも、実際そのとおりだよ。皆の笑顔を見るためにこの仕事を選んだのに、僕が倒れてしまったら話しにならない」
やや自嘲的な笑み、シンジの思いはちゃんと届いたようだ。
「あの子、似てると思わない?今のきーくんに」
「え?そうかな?」
「そうよ、自然と周りを笑顔にできる、そんなところが…」
初めて彼がトイボックスに来た時もそうだった。
ちょっとしたヘマをやってしまい、顔を真っ赤にしていたアユムに声をかけて、友達になったシンジ…
あの時シンジが声をかけなければ、アユムは今のように店に来て笑顔を見せることはなかったかもしれない…
どんなときも笑顔を忘れず、周りの人に笑顔になってもらいたい。
それが猪戸シンジというヴァンガードファイターなんだから…
「少し、焦りすぎていたのかもしれないな…」
自分が笑顔じゃないと周りを笑顔にすることができない。そんな当たり前のことを忘れていたなんて
最後のたこ焼きを頬張りキリヒトは立ち上がった
「きーくん?」
「今日はゆっくり休むことにするよ。その代わり、明日は全力で頑張らせてもらうよ…」
ーーーーーーー
「さぁ、みんな!いよいよ今日のメインイベントだがー!!」
翌日、大盛況のイベントもいよいよクライマックスを迎える。
ステージ上に吹き上がる火花
そして、現れたのはすっかり元気になった水嶋キリヒトの姿だった。
「みなさん、今日は来てくれてありがとう!今日は来てくれたみんなに最高のファイトを送ることを約束しましょう!!」
とびきりの笑顔でキリヒトは言った。そして、抽選で選ばれた100名と水嶋キリヒトとの大ファイト大会が始まった…
「天羅水晶ランブロスのスキル!リアガード二体をスタンド!パワー+10000!」
「アドミラルメイルストロームのスキル!リアガード三体を退却!!」
3対1の変速ファイトだが、焦らず的確に次々と現れる対戦相手を倒していく。
「すごい、これが…キリヒトさんのヴァンガード……」
そして、次の対戦相手は…
「キリヒトさん!お願いします!」
「あぁ、負けないよ、シンジくん」
猪戸シンジ…
「神聖魔導師プイスのジェネレーションブレイク!ブラスターブレードスピリットをスペリオルコール!ブラスターブレードスピリットのスキル!タイダルアサルトを退却!!黄金竜スピアクロスドラゴンでアタックだ!いっけぇぇ!!」
巨大な黄金の槍をキリヒトのライドするメイルストロームに投げつける
しかし、
「完全ガード」
海域の守り手プラトンによって阻まれてしまう。
「あっちゃぁ、決めきれなかったか…でもタイダルアサルトがいないなら攻撃回数はそう簡単には稼げない!」
うまく攻め込んだつもりのシンジ、しかし…
「それはどうかな?」
キリヒトの余裕は崩れていなかった。
「ブレイクライド!」
メイルストロームが吹き上がる水流に飲み込まれ姿を変える。
「蒼嵐覇竜グローリーメイルストローム!!」
そして、タイダルアサルトがいなくなった列のリアガードサークルに新たなユニットが呼び出される。
「蒼嵐水晶スピロス!そして、ダークエレメントドクヅーク!」
一体は攻撃後に前後列を入れ替えるアクアフォースのユニット、そしてもう一体はLB5と書かれたユニットの効果を4ダメージでも有効にするクレイエレメンタルのユニットだ…
反対側の列にいるのは蒼嵐水晶イアニスと蒼嵐艦隊のアオザメ兵…
「これは!」
「一回目!ドクヅークのブーストしたスピロスでアタック!
スピロスはスキルでスタンド!2回目!スタンドしたスピロスでプイスにアタック!三回目!アオザメ兵のブーストしたイアニスでアタック!ウェーブ3、手札を一枚ドロー!」
スキロスから始まる怒涛の連続攻撃…ボロボロになったシンジのプラチナエイゼルにグローリーメイルストロームが最後の攻撃を加えるためにその砲塔を向けた…
「グローリーメイルストロームのアルティメットブレイク!パワー+5000、そして、グレード1以上のガーディアンのコールを封じる!そして!」
プラチナエイゼルの足元に大きな渦潮が現れる。
「メイルストロームがブレイクライドで与えたスキル!ウェーブ4、相手のグレード0のガーディアンのコールを封じる!」
身動きを封じられ無防備になったプラチナエイゼルにメイルストロームの砲が火を吹いた。
巻き起こる爆炎
そして、シンジのダメージゾーンに置かれる6枚目のカード。
「ありがとう、いいファイトだった…」
「こちらこそありがとうございました!」
しかし、握手を交わすキリヒトもシンジも笑顔のままだった。
互いに全力を尽くした悔いの無いファイト。
お互いの健闘をたたえ合うファイト。
ヴァンガードはを通じて自分も相手も見ている人たちも笑顔になれる。
シンジとキリヒトの理想はしっかりと形になっていた。
その志は周りのファイターにも受け継がれることになる。
「ファイトを通じて、あんなに笑顔になれるんだ」
それを見ていたアユムにも…
次回予告
「シンジくんもキリヒトさんもすごくいい笑顔だった…」
「ファイトで皆を笑顔に…無茶だって思ってたけど、あんなのを見せられたら」
「実現できそうな気がしますね…」
自転車で走るアユムをまさかのヒッチハイクで引きとめる女の子。
そのまま、たこ焼きを食べて感動したりアユムの焼いたお好み焼きに対して怒った挙句、重ね焼きの広島風お好み焼きを作ったりと大忙し。
あまりのマイペースさにヘトヘトになるアユム。
二人の子供の喧嘩を仲裁する女の子、喧嘩してたのにお互いに笑い合う子どもたち。
アユムに見せたカードは"抹消者ツインサンダードラゴン"
不思議な雰囲気の女の子の前に現れたのは大阪を代表するトップファイターの水嶋キリヒトで…
この広島訛り全開の女の子は一体何者?
次回
stride8:村雲イヅナ
「ファイターとしてはまだまだだけど、僕にもあんなファイトができるようになるかな?」
「大丈夫、諦めなければ可能性は無限に広がっていく。どんな強敵にぶつかったとしても、その気持ちを忘れなければ、きっと…」