やっと続きました。悟がまだ出てこない。
「エデンの園計画?」
「そうこの世界は我々の新たな住処として開発されてきた」
元の世界は荒廃しきっていた。アーコロジー化を進められていたけれど、もう限界に達しようとしていた。
そのために新しく住むべき処を求めて、発見されたのがこの世界―――仮の名でイルミンスールと呼んでいる―――である。
まずはこの世界に人類が送り込めるのか転移実験を行ったが送り込んだ後、姿が人として保つことができなかった。ある者は亜人。ある者は獣人、そして異形のものへと姿を変えていった。その内に人間としての姿を保つように出来るようにはなった。だが、大きな問題が発生したんだ。元の世界の記憶がなくなるという問題が。そうすると人々は勝手に文化を築き始めてしまった。
それに歯止めをかけようとして始まったのが、ユグドラシルプランという計画だ。
「!?…まさか」
「そう、そのまさかだよ。DMMO-RPGとうたい、貧困層の人間を集めて異世界に馴染ませるための計画」
「この計画はうまくいったよ。人々は未知なものに憧れを抱くからね。そこから異世界に派遣する適した人間を貧困層から選び出した。そして、君はそれに選ばれたんだよ。鈴木悟君」
神竜の両眼に見据えられて、アインズは思わずすくんだ。まるで虫けらをみるような眼だ。
「まぁ手違いで200年前の彼みたいに富裕層の人間も送り込まれてしまったけどね。戻してあげることも可能だったけど、彼は無駄に正義感に溢れてて戻ろうとはしなかった。おかしいよね、あはは。貧困層を憐れむなんて」
―――ああ、そうだ。この眼は富裕層特有の弱者を蔑むときの眼だ。
「それにお前たちもなかなかだよね。唯一の娯楽とはいえ、たかがゲームにあそこまで金をつぎこむとかさ。ふふ、本当に貧困層の考えることは理解できないな」
「貴様っ!!」
自分のみならず、他のギルドメンバーまで侮辱するような神竜の発言に激昂したアインズは魔法を放つ。
〈魔法最強化(マキシマイズマジック)・現断(リアリティ・スラッシュ)〉
「無駄だよ。次元が違うからね。お前の攻撃は効かない」
神竜に辿り着く前に魔法は無効化され、掻き消えた。それでもアインズは続けて魔法を発動させようとする。
「まあいいさ。お前のスキルは色々と迷惑なこともあるからね」
そう言うと神竜は立ち上がり、アインズに向かって手をかざした。
「少しだけ変えさせてもらうよ。始原の魔法(ワイルド・マジック)―――」
その手から白い光が放たれる。ユグドラシルにはない魔法に危機感を覚える。
―――まずい。
「転移門(ゲート)!」
転移の魔法を発動させて、アインズは洞窟から消えた。
「逃げられた?ふん、実験は終わった訳じゃないし、泳がしておくのも悪くはないかもね…。次は誰が辿り着くのかな?ああ、楽しみだ…」
洞窟の中でその言葉は静かに反響した。神竜は再び椅子に座り、眼を閉じた。
その後は、ただただ静寂だけが残った。
◆ ◆ ◆
光に飲み込まれる前にアインズは転移したが、かなりのダメージを受けたようで、身体がよろめいた。辺りは薄暗く、しとしとと雨が降っている。寒さを感じるはずがないのに、全身が冷えて震える。壁に寄りかかり、なんとか身体を支えようとするが、ずるずると落ちていく。自分がどこに転移出来たのかが分からない。意識が遠のきそうになった時に、目の前に一人の人影が現れた。
「ゴウン殿!?」
前に聞き覚えのある声だ。レアだと思って手に入れようとしたが、断られた。あの気高き王国戦士長。
「ガ…ゼフ・ストロノー…フ……」
そこで意識が途切れた。
ルビが…。
神竜さんの出番はたぶんこの先ない、と思う。