【──今という時間は限られています。私は、ずっと後悔ばかりしています。あの時、あの時間、一歩踏み出して、もっと愛する人を感じることができたのにと。私は、最期の時、「いってらっしゃい」といえるような、そんな関係をみんなに築いて欲しいとおもいます。皆さん、どうかお幸せに。】
とある休日、昼下がりの日向美商店街。イブは自室で、先程下の階から偶然飛び込んできたラジオの言葉を反芻する。
限りある時間かぁ。うん、今のままじゃとてもじゃないけど「いってらっしゃい」なんていえないわ。やっぱそろそろ次の段階に進むべきかな?でも失敗したら嫌だし……。
……よし。
とある身近なリア充を尋ねるため、イブはシャノワールを訪れた。ビンテージな雰囲気を漂わせるドアの取っ手を引くと、カランコロン、という鈴の音が小刻みよく響く。
「いらっしゃいませー。あらイブちゃん、こんにちは。」
「やっほー咲子。」
「ご注文は?」
「あ、待って。今日はちょっと咲子に用があって。」
「私に用……ですか?いったいどのようなご用向きでしょう?」
「うん、あのさ。」
「もっとイチャイチャしたいんだけど。」
「え……」
すると、目の前の咲子が急に顔をゆでゆでだこにする。
「そんな……イブちゃんと私がですか?」
「え?」
「私には智君というとってもとっても大事にお付き合いさせて頂いてる人が……。あ、でも女の子同士なら大丈夫なのでは?」
「ちょ、ちが……」
しかし、興奮でヒートアップしている咲子少女の耳に、イブの声は届いていなかった。
「そうです、たしかテレビで女の子同士のキスはノーカンだといってましたし、お互い彼氏さんもいるし、とってもとっても心配御無用さんですね!」
「あの……咲子?」
「分かりましたイブちゃん!では早速イチャイチャしましょう!まずは何をしますか?間接キス?ポッキーゲーム?あ、直接。分かりましたではこっちへ来るのDEA──TH!!!!」
「ひ、ひいぃぃぃぃぃぃぃぃ~~~~!!!!」
イブは貞操の危機を全神経で感じ取り、死にものぐるいでドアを蹴散らし、勢いよくシャノワールを飛び出した。
「はあ…はあ…さ、咲子マジでヤバイし…」
日向美商店街を一直線に駆け、息を切らした後、手を両膝につき、呼吸を整える。咲子のあの状態ではもう、まともに話を聞いてくれないだろう。私はあごに親指を当て、別の手段を模索する。
うーん、凛は今日まり花とデートだったっけ。邪魔するのも悪いかな。となると残りは…
…まあ、少し歯がゆいけど、仕方ないか。
そう心に決め、イブはスカートのポケットを探り、スマホを手に取った。
まさかの百合展開。
ちなみに柔道家とはリア友です。彼ガチで柔道部です。