にこはアイドル捜査官 ラブライブ✕相棒   作:くーたん局長

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……2

〜数日後・特命係〜

 

にこ(神奈川県警の一介の高卒デカのにこが、警視庁に栄転だなんて妙な話だと思ってたら、やっぱりよ……この特命係は……)

 

杉下「矢澤さん」

 

にこ「はい!」

 

杉下「チェスはおやりになりますか」

 

にこ「いえ……ちょっと……わからないです……」

 

杉下「ルールもご存知ない?」

 

にこ「はい……」

 

杉下「まあ、いいでしょう……今からお教えしましょう……」

 

にこ(最悪の部署よ!)

 

杉下「いえいえ、ナイトはそこには進めませんよ、君」

 

にこ「す、すいません」

 

杉下「いえいえ、最初はみなそういうものです。お気になさらずに」

 

にこ(ここ数日間、ずっと杉下警部は紅茶を飲みながら推理小説ばかり読んでるし、にこが何言っても『そうですねぇ……』だけ! 暇すぎるわ! 事件とかないのかしら!)

 

にこ「あの杉下警部……」

 

杉下「どうしましたか」

 

杉下、紅茶を啜り、クイーンを動かす

 

にこ「あの……特命係って何をする部署なんですか?」

 

杉下「何を……えー、それは難しい質問ですねぇ……まあ、その時どきに応じて……と言ったところでしょうかねぇ……」

 

にこ(……何よ、この人……意味不明よ!)

 

〜原宿のパンケーキ店、日曜日〜

 

芹沢「どう? この店、最高にいい雰囲気でしょ?」

 

にこ「ああ、はい……」

 

にこ(星一つって、とこね……このパンケーキ甘すぎ……砂糖のムダづかいね)

 

芹沢「悩みごととか、ある? 僕が相談に乗るよ!」

 

にこ「ありがとうございます」

 

芹沢「大変だね。特命係なんだって、杉下さんでしょ」

 

にこ「はい。そうなんです」

 

芹沢「あの人、いつもああなんだ。元は捜査二課のエリートだったらしいんだけど、左遷されたらしい。ちょっと変な人だろ」

 

にこ「ああ、はい。それに……」

 

芹沢「それに?」

 

にこ「仕事がなくて退屈なんです……私、働きたくて、もっと世の中のために……」

 

にこ(このまま埋もれたくないの……)

 

芹沢「そうか……頑張り屋なんだね……すごいよ……」

 

にこ「人材の墓場とか、警視庁の陸の孤島とか言われるし……辛いんです」

 

芹沢「まあ、そう言う人もいるよね。僕はそう思わないけど……だけど杉下さんには気をつけろよ。杉下さんの前の部下はみんな辞めてるらしいんだ。警視庁の疫病神だって、伊丹先輩も言ってる」

 

にこ「伊丹先輩って?」

 

芹沢「ああ、俺の先輩。ちょっと怖いひとなんだけど、優秀だし立派な人なんだ」

 

にこ「すごいですね」

 

芹沢「まあさ、お互い頑張ろうよ。実は僕も最近捜査一課に移ってきたばかりでさ。お互い新人どうし頑張ろうよ!」

 

にこ「はい」

 

にこ(頑張ろうにも仕事がなくちゃ……干された芸能人みたいな心境よ……)

 

芹沢の電話が鳴る。芹沢、待受を見て、すぐ切る

 

にこ「出なくていいんですか…?」

 

芹沢「いや、いいんだ。大した電話じゃないし……」

 

にこ「もしかして彼女さんから?」

 

芹沢「えっ……いやいや違うよ。第一彼女なんていないって!」

 

にこ「だけど待受にかわいい女の人が……」

 

芹沢「ああ……はは。鋭いなあ……こ、これは妹とのツーショットだよ。そ、そうだ、にこちゃんには彼氏とかいる?」

 

にこ(にこを下の名前で……いい度胸ね、芹沢……)

 

にこ「いませんけど……」

 

にこ(アイドルに彼氏なんていないわ!)

 

芹沢「ふうん……じゃあ、今フリー?」

 

にこ(芹沢、あんたのためには永久にフリーにならないことだけは確かよ……)

 

にこ「ええ、まあ……」

 

芹沢「へえ、だけど、にこちゃん可愛いから彼氏いないなんて信じらんないな……何ヶ月いないの?」

 

にこ(どうしよう……年齢=彼氏いない歴って正直に言うべきだけど……コイツに変な希望をいだかせたら逆にかわいそうよね……ハイスペックな彼氏、いたことにしようかしら……)

 

にこ「えっと……」

 

にこ(いや……ここは逆に正直に言ったほうが……逆にいいかもね……)

 

にこ「それは……秘密ってことで」

 

芹沢「ええ! 教えてくれよ! にこちゃん! 気になる! 気になるよ!」

 

にこ(腹パンしたい衝動を抑えるのがこんなに難しいなんてね……)

 

芹沢「だけど今いないんだよね! そっか、そっか!」

 

にこ(……もう変な希望を持たせちゃったみたいね……)

 

〜警視庁からの帰り道……〜

 

ガヤガヤ……え~マジデー……

 

にこ(今日も一日中、右京さんとチェスしかしなかったわ……)

 

ピューピュー……ザワザワ……

 

にこ(チェスばかり日々上達していくわね……なんかチェスの都大会に出ることになっちゃったし……このままじゃ……チェスプレイヤーになっちゃいそう……いや、それもいいかも……)

 

♪夢なき夢は夢じゃない……

 

にこ(……いやダメよ……にこにはどうしても捕まえなきゃいけない奴がいるんだもの……)

 

にこ(……あれ……?)

 

歩道橋を見上げるにこ

 

にこ(……あの女の人……間違いない、にこの刑事の勘が言ってる……)

 

にこ、ゴクリと唾を飲む。

 

(自殺しようとしてるわ!)

 

にこ、走り出す

 

にこ「早まってはダメ!」

 

?の女性「えっ……きゃっ!」

 

橋の上で折り重なる二人

 

?の女性「な、何するのよ!」イタタタ

 

にこ「早まっちゃダメよ! 生きててもいいことないかもしれないけど、みんなそれでも生きてるんだから!」

 

?の女性「あなた、何なのよ!」

 

にこ「……自殺しようとするなんてダメよ……詳しくは署で聞くわ……」

 

?の女性「署?……あなた、警官なの? って……、私は自殺なんかしようとしてないわ!」

 

にこ「じゃあ、何で! 歩道橋から下を見てたのよ!」

 

?「べ、別に……あなたには関係ないでしょ……」

 

にこ「ハア……紛らわしいことはやめなさい……」

 

?「……フン」

 

にこ「ひとまず職務質問させてもらうわ……名前、職業を言いなさい」

 

?「……何よ……それじゃ私、不審者みたいじゃない……それにあなた本当に警官? 女子中学生にしか見えないんだけど……」

 

にこ「し、失礼ね! 警視庁の刑事を侮辱するなんていい度胸じゃない! ほら! 手帳よ! みなさい!」

 

?「……矢澤……にこ……にこ!?……にこちゃんなの……!?」

 

にこ「……妙に馴れ馴れしいわね……ってどっかで聞いたことある声ね……」

 

?「暗くてわからなかったけど……にこちゃんじゃない……」

 

にこ「も、もしかして……ま、真姫ちゃん……!?」

 

真姫「あ、相変わらずバカね……にこちゃん」

 

にこ「……なんか、久しぶりね。一年ぐらい会ってなかったわね」

 

真姫「そうね……というかにこちゃん、刑事なの……!?」

 

にこ「そうよ。この前、会ったとき言わなかった?」

 

真姫「聞いてないわよ……てっきりまだアイドル目指してるんだと思ってたから……」

 

にこ「ええ、もちろんよ。だって私は刑事かつアイドルを目指してるの。つまりアイドル捜査官ね」

 

真姫「……ちょっと何言ってるかわからないんだけど……」

 

にこ「何でわかんないのよ!」

 

真姫「わ、わからないわよ!……まあ、もういいわ。とにかくここは寒いからどっか移動しましょうよ」

 

にこ「そうね。じゃあ松屋ね」

 

真姫「ま、松屋!? そ、それはないと思うけど……」

 

にこ「なんで? 刑事はみんな松屋よ」

 

真姫「私、刑事じゃないもの……スタバにしましょう」

 

〜夜中のスタバ〜

 

にこ「ふうん……真姫ちゃんぐらい頭よかったら……医学部くらい簡単だと思ったけど……」

 

真姫「か、簡単じゃないわよ! 慶應は世界レベルなんだから!」クルクル

 

にこ「まあ、わかったわ……つまり勉強が難しくて、それで思い詰めて……だけど自殺はダメにこ」

 

真姫「だーかーら、自殺じゃないって言ってるでしょ! あそこで落ちついてただけよ!」

 

にこ「あんなところで落ちついちゃダメよ……」

 

真姫「そ、そんなことより、なんで刑事なんてやってるの? べ、別に文句があるわけじゃないんだけど、刑事とにこちゃんってあまりにも違いすぎるじゃない……」

 

にこ「まあ、お金の問題もあるんだけど……実はにこの死んじゃったパパ、警官だったの……」

 

真姫「は、初めて聞いたわ……」

 

にこ「うん。だって初めて人に言ったもの」

 

真姫「……なんだか悲しいわね……」

 

にこ「なんで悲しいの?」

 

真姫「……べ、別になんでもないわよ!」

 

にこ「まあ、あれよ。簡単に言えばママに勧められたからよ」

 

真姫「ふうん……」

 

にこ「にこね、刑事の仕事に誇り持ってるの。アイドルも刑事も医者も人のためになる点では同じでしょ?」

 

真姫「まあ大きくくくればそうなるわね……」

 

にこ「それに、にこ、刑事の才能あるしね! 今警視庁にいるぐらいだから!」

 

真姫「そうは思えないけど……」

 

にこ「なんか言った?」

 

真姫「別に、何も……」

 

にこ「まあ、お互い! 頑張りましょ! 今から新橋に飲みに行きましょう!」

 

真姫「私……お酒苦手……」

 

にこ「行きましょう! ほら!」ズルズル

 

真姫「ああ……だからぁっ!」

 

〜終電後、新橋〜

 

にこ「アハハハ! マッキー! もう一軒!」

 

真姫「悪酔いしすぎよ……何杯飲んでるのよ……しかもほとんど私の奢りじゃない……」

 

にこ「ああ! マッキー! 家に送っててよ!」

 

真姫「もう……タクシー代まで私に出させる気……」

 

真姫、タクシーを止め、二人で乗りこむ

 

にこ「ああ……真姫ちゃん……チュウしてよぅ……」

 

真姫「しないわよ。酒臭い。運転手さんもいるのに……」

 

にこ「チューしてくれないと死んじゃうにこ!」

 

真姫「わ、私が恥ずかしくて死にそうよ! バカ!」

 

〜矢澤家〜

 

……ピンポーン

 

にこママ「はあい……あらっ、にこ!」

 

真姫「あの……にこちゃんを……」

 

にこママ「ありがとうございます。わざわざ送ってきてくださって……って、あれ? もしかして西木野さん?」

 

真姫「あっ……はい……」

 

にこママ「綺麗になったわね……いやもともと綺麗よもちろん……だけどさらにってこと」

 

真姫「あ、ありがとうございます……」

 

にこ「マぁマー……吐きそう……」

 

にこママ「ハァ……どれだけ飲んできたの……」

 

にこ「ぜんぜーん、飲んでないよぉ……焼酎9本しか飲んでないもーん」

 

にこママ「……ハァ」

 

ココア「お姉ちゃん、おかえりー……ってクサっ!」

 

こころ「お姉ちゃん……アル中じゃないよね?」

 

ココア「あっ、西木野さん。お久しぶりです」

 

真姫「お久しぶり」

 

こころ「西木野さんが飲ませたんですか!」

 

真姫「違うわよ。とめたんだけど……」

 

にこ「もう! 真姫ちゃん、あんた泊まっていきなさい!」

 

真姫「えっ……いいわよ……べ、別に……それに明日講義あるし……」

 

にこママ「にこ、明日も仕事でしょう」

 

にこ「仕事なんてどうでもいいわよ……真姫ちゃんと遊びたいんだもん」

 

真姫「な、何バカなこと言ってるのよ! あ、わ、私帰ります!」

 

にこママ「本当にごめんなさいね……」

 

真姫「いえ……」

 

にこ「まきー、帰っちゃうの……?」

 

真姫「別にいつでも遊んであげるわよ……大学で暇ができたらだけど」

 

こころ「さよなら! また遊びに来てください!」

 

真姫「じゃあね、にこちゃんに酒癖の悪い子とは友達でいられないかもって言っといてね」

 

こころ「はい!」

 

〜翌朝、特命係〜

 

にこ「……気持ち悪い……」

 

杉下「昨日は随分お飲みになったようですねぇ……」

 

にこ「はい……」

 

杉下「君、お酒はほどほどが一番ですよ」

 

にこ「き、気をつけます……」

 

角田「よっ、暇か?」

 

杉下「ええ。そのようです」

 

角田「おい。矢澤。コーヒー切れてるじゃねえか。ちゃんと用意しておけよっ、もう……」

 

にこ「すいません……」

 

角田「なんか顔色悪いな」

 

杉下「二日酔いのようですねぇ」

 

角田「二日酔いにはシジミの味噌汁がよく利くらしいぞ。うちのかみさんのレシピやろうか?」

 

にこ「……いいです」

 

角田「遠慮すんなよ、もらっとけよ。ああそうだ、杉下」

 

杉下「なんでしょうか」

 

角田「頼みがあんだけどよ……今度、うちの課で忘年会やんだけど、どこかいい店知らないか?」

 

杉下「忘年会ですか……」

 

角田「ああ。探したいのはやまやまなんだけどよ、今うちの課、銀王会の抗争で忙しくてさ……」

 

杉下「探しておきましょう」

 

角田「助かる! じゃあな! 矢澤!」

 

にこ「はい……」(私たちの役目って……)

 

杉下「それでは行きましょう」

 

にこ「行ってらっしゃい……」

 

杉下「何を言いますか? 君も行くんですよ」

 

にこ「ええ……」

 

にこ「杉下さ〜ん、なかなかいい店見つかりませんね」

 

杉下「ええ、この時期はどこも予約済みが多いようですねぇ……」

 

〜高級住宅街、パトカーや救急車がたくさん止まっている。野次馬が集まっている。

 

にこ「杉下さん、ここってもしかして……」

 

杉下「ええ、何か事件があったようですねえ……」

 

にこ「なんだかみんな忙しそうですね……」(……特命係と違って……)

 

杉下「ええ。そうですねぇ」

 

杉下、警察手帳を見せつつくぐり抜ける。

 

杉下「……さて入りましょう」

 

にこ「入っていいんですか?」

 

杉下「さあ?」

 

にこ「えっ?」

 

迷わず、入っていく杉下警部。

 

にこ「ちょっと、杉下さん! 待ってくださいよぉー!」

 

にこ(豪華な家……そういえば真姫ちゃんちってこの近くね……)

 

プールつきの豪邸。庭のプールに刑事たちが集まっている。プールサイドの担架に脇に若い女の死体が載せられている。

 

にこ、プール脇のバケツにこけて倒す。

 

にこ「ああんっ! 冷たーい!」

 

芹沢「こら! そこって……あれ?! 杉下さん、それににこちゃん!」

 

にこ(……げっ……芹沢……)

 

杉下「こんにちは」

 

伊丹「おや……特命係が何のようですかねぇ……警部殿」

 

杉下「いえいえ……たまたまこのあたりを通りかかったので寄ってみただけなのですよ」

 

伊丹「ふうん……こら、お前!」

 

にこ「わ、私ですか!」

 

伊丹「お前以外にいるか! ここは女子中学生が来るところじゃない!」

 

にこ「ハア!? 女子中学生じゃありませんから!?」

 

芹沢「そうですよ! 先輩! にこちゃんは特命係に配属されてきた、刑事ですよ!」

 

伊丹「刑事!? このちんちくりんがか!?」

 

にこ「ちんちくりんじゃありません!」

 

伊丹「フン……まあ特命に配属されるぐらいだから、ろくな奴じゃねえな」

 

芹沢「伊丹先輩……ああ、にこちゃんもそんな殺意の眼で先輩を見ちゃ……」

 

にこ(……伊丹……覚えておきなさい!)

 

伊丹「残念ですが、警部殿の出番はありませんよ。これは事故死です」

 

芹沢「それは間違いないです! この被害者は……」

 

芹沢、死体を指さす。

 

芹沢「プールで溺れて溺死です」

 

杉下「そうでしょうか……」

 

伊丹「ああ……警部殿にもおわかりでしょうが……プールサイドにこんなに水がはねているでしょう? ダイビングをやってたわけですよ。ところが飛び板の上でズッコケて……だから水が少なめで……垂直にプールの底へ真っ逆さま……頭を打って気絶し……そのまま溺れ死んだというわけですよ」

 

芹沢「こんな可愛い子がかわいそうすぎる死に方ですよ……」

 

にこ(……こんな寒い季節にプールだなんて……狂気の沙汰ね……)

 

杉下「なるほど……ところでこの亡くなられた方はどなたでしょう?」

 

芹沢「死亡したのは白瀬小雪さん、23歳。この屋敷の持ち主です。ラーメン屋の配達の子が、プールに浮かんでいる白瀬さんを発見したんです……その子もかわいそうですね、全く」

 

にこ(……こんな屋敷に住む富豪がラーメンなんて食うわけ?)

 

杉下「なるほど……そうですか……発見時間は?」

 

芹沢「午後三時十分ですよ。すぐに引き上げて、人工呼吸したそうですが、もう手遅れで……」

 

杉下、死体をかがんで見る。

 

杉下「頭部に打撲傷が見られますねぇ……」

 

杉下、突然プールサイドの水を舐める。

 

にこ「ちょっと! 警部! 汚いですよ!」

 

杉下「汚いですねぇ……」

 

杉下、プールの水も舐める。

 

にこ(あっ……そういう趣味の人なんだ……)

 

杉下「このプール……お湯ですね?」

 

にこ「お湯……そういえば湯気が……」

 

芹沢「寒いからじゃない? これだけのお湯をこんな広いプール張るなんてね……金持ちの考えることは……」

 

米沢、現る。

 

米沢「あっ……警部殿!……それと」

 

にこ(自己紹介しなくちゃね!)

 

にこ「矢澤にこでーす! にこにーって呼んでくださいにこぉ♡」

 

米沢「……おお、新しい相棒はなかなかの猛者ですなぁ……」

 

にこ「ぐっ……」

 

米沢「ところで警部、死亡時間は、だいたい発見の一時間前ですな」

 

杉下「そうですか……ところで米沢君、そのラジオはなんでしょう?」

 

にこ「仕事中ですよ! ラジオなんか聞いてていいんですか!」(ボロいラジオ……戦前のじゃないの?)

 

米沢「あはは……これは失敬、失敬。最近私、アイドルグループにハマってしまいまして……今ラジオで流れてるもんですから」

 

杉下「そうですか」

 

にこ(スルー!?)

 

杉下「ところで第一発見者はどこに?」

 

米沢「ああ、お連れしましょう」

 

杉下、にこ、米沢、屋敷の中へ。大広間に入る。大広間で電話中の婦警。

 

にこ「あれって、黒電話じゃないですか!?」

 

杉下「そのようですねぇ……」

 

にこ「まだ、あんなの使える人がいるんだ……」

 

杉下「君は使ったことがありませんか?」

 

にこ「はい!」

 

米沢「……警部殿、私、彼女を注意して参ります」

 

杉下「そうですか」

 

米沢、接近。

 

米沢「こら! 人の家の電話を私用で使うんじゃない! 仕事中でしょう!」

 

婦警A「え〜、マジごめん。なんかこっちでうぜぇ、デブんのおっさんが怒鳴ってて……」

 

米沢「……け、警部殿……泣きたいです……うん!?」

 

杉下「どうされましたか」

 

米沢「いえ……急にラジオの調子が……」

 

杉下「ほう……米沢君、そのラジオを貸していただけますか?」

 

米沢「ラジオですか?……ふむ……それはちょっと……」

 

にこ「貸せっつってんでしょ!」

 

にこ、無理やり米沢からラジオを奪い、杉下に渡す。

 

米沢「ああっ……き、鬼畜……鬼畜だよ、君!」

 

杉下「米沢くん、矢澤さん、ありがとうございます……」

 

ラジオを持ちながら、真剣な表情で電話の周りをうろつく杉下

 

婦警A「……な、なに……ごめん、また後でかけ直すね……」

 

婦警A、杉下に怯えて、走り去る。

 

杉下「ふむ……もう結構です……ありがとう、米沢君」

 

米沢「あっ……はぁ……」

 

杉下「この家の方は……」

 

米沢「それがラーメン屋の配達の子と、近所の方がた以外誰も……」

 

にこ「こんなに広い屋敷に一人ですか?」

 

米沢「まあ、そうです……そうだよ」

 

杉下「それでは第一発見者に……」

 

米沢「それならあそこに……」

 

?「にこ……にこちゃんだにゃー!」

 

米沢「見てのとおり少し変わっておりまして……」

 

にこ「り、凛!」

 

凛「にこちゃんだにゃー! なんでここにいるのかにゃ?!」

 

にこ「それはこっちのセリフよ! 何やってんのよ!?」

 

杉下「お知り合いですか?」

 

にこ「は、はい……高校時代の友人で……」

 

米沢「ほう……類は友を呼ぶ……」

 

にこ「なんですか〜米沢さーん?」

 

米沢「……なんでもありません」

 

にこ「凛、私は刑事やってんのよ、今。同窓会のときに言ったでしょ」

 

凛「ほんとうだったんだ……てっきりジョークかと思ってたにゃ」

 

にこ「……信じてなかったのね」

 

杉下「なるほどところで……ご存じのことをお話しいただけますか?」

 

凛「はいにゃー! 白瀬さんのところは昨日の夜はパーティーだったみたいにゃ」

 

にこ「パーティー?……ふうんいい身分ね」

 

凛「そうだにゃー、旦那さんは今出張中で、メイドさんの希ちゃんも、絵里ちゃんが病気だとかでロシアに行ってて、お嬢様は寂しいから、いつもパーティーを開くんだにゃ!」

 

にこ「ちょっと待った! 希って……もしかしてあの希!?」

 

凛「あの希ちゃんも、この希ちゃんも、ないにゃ。希ちゃんは希ちゃんだにゃ」

 

にこ「希って……神田明神で巫女やってたわよね……」

 

凛「ああ、あそこはクビになったんだにゃ」

 

にこ「なんでよ!?」

 

凛「昼寝ばっかりしてたからだって……希ちゃんらしいにゃー!」

 

にこ「そ、そうなの……ってそれより絵里……ロシアにいるの、病気なの……? いきなりたくさん情報が入ってきて……」

 

凛「ああ、絵里ちゃんはロシアで、なんだかせーふ?の……なんか大切な仕事をしてるんだって……病気が大丈夫か……心配にゃー」

 

杉下「希さん、絵里さんというのも高校時代の友人ですか?」

 

にこ「そうです。警部」

 

杉下「なるほど……高校を卒業してからも、このように仲良く交流している……素晴らしいですねぇ……」

 

凛「褒めてもらえて、凛とても嬉しいにゃー!」

 

杉下「ところでお客さまはどのような方が?」

 

凛「うーん、かっこいい男の友達さんだったにゃ」

 

にこ「ふうん……その男友達っていうのはいつも同じ人なの?」

 

凛「うーん……同じときもあるけど、違うときもあるかにゃ」

 

米沢「においますなぁ……その男……」

 

杉下「つかぬことをお聞きしますが、亡くなられた白瀬さんのお仕事はなんでしょう?」

 

凛「えっと……シラセっていう会社の社長さんらしいにゃ」

 

にこ「シラセ!? ああ……どうりで金持ちなんだ……」

 

米沢「ご存知ですか。矢澤さん?」

 

にこ「有名な芸能事務所です!」

 

杉下「なるほど……ところで希さんと連絡をとっていただいても?」

 

凛「それが……繋がらないんだにゃー……」

 

にこ「もう! 使えないわね!」

 

凛「ぷう!……使えないってなんだにゃー!」

 

杉下「つかぬことをお伺いしますが、電話がつながらなくなったのはいつ頃でしょう?」

 

凛「えっと……希ちゃんがロシア行ってからずっとつながらないんだにゃ……事件があったことを連絡しようと思って……さっき何度も電話してダメだったにゃ……ずっと通話中なんだにゃ……」

 

にこ「ねえ……海外にかけるときは番号の打ち方が違うのよ? 知ってる?」

 

凛「ぷう! そんなこと知ってるにゃー!」

 

杉下「ではそのうちつながったらご連絡ください」

 

にこ「私にね!」

 

杉下「君も電話番号をご存知でしょう?」

 

にこ「はい。私からもかけてみます!」

 

伊丹・芹沢現る。

 

伊丹「あ!? 警部殿まだいたんですか?」

 

杉下「ええ」

 

伊丹「ほら! もう帰ってください! これは事故だって説明したでしょう!」

 

杉下「そうでしょうかねぇ……どうも僕にはこの事件、事故だとは思えませんねぇ……」

 

にこ(……えっ!?……ってことはもしかして……殺人!?)

 

伊丹「何言ってるんですか! 事故です! 決まりです!」

 

杉下「まあ、それでは戻りましょう。矢澤さん」

 

にこ「はい!」

 

凛「にこちゃん、また今度にゃー」

 

にこ「ええ、希によろしくね」

 

米沢「警部殿! お頼みの建川談笑のCDを手に入れましたので! 後でお届けにあがります!」

 

杉下「いつもいつも……すみませんねぇ……それと家中の写真と指紋を取っておいてください」

 

米沢「はっ!」

 

伊丹「それはお届けするなよ! 米沢!」

 

にこ(……殺人だと思ってるのね……杉下さんは……どうせ事故だろうけど……暇だし付き合ってあげよっと……)

 

〜シラセ・プロダクションの劇場・ライブ中〜

 

控室のテレビを見る、杉下とにこ。

 

にこ「うわぁ……すごい熱気ですね!」

 

杉下「ステージにいるのは?」

 

にこ「あれはシラセプロが今一番推してるアイドルユニット、Aqoursです! 可愛くないですか!? チョー可愛いですよね!」

 

杉下「そうですねぇ……ところで、君何を食べているのですか?」

 

にこ「これですか? やきいもです!」

 

杉下「やきいもですか……」

 

にこ「はい、なんか劇場のところで売ってたんです。ポップコーンとかありがちですけど、やきいもって珍しいですよね?」

 

杉下「そうですねぇ……」

 

?「あ……あの……ここは控室で……立入禁止なんですけど……」

 

杉下「あなたは?」

 

にこ「知ってます! あなた! Aqoursのプロドューサーの下園咲さんですよね! 雑誌や新聞でいつも拝見してます!? ああ!? もう嬉しい!」

 

下園「ファ……ファンの方ですか……すいませんけど無断での立入りは……」

 

杉下「警視庁の杉下と申します」

 

にこ「あっ……にこ……同じく矢澤にこである……あります!……です!」(……噛んだ!)

 

下園「警察!? 警察の方がどうして……」

 

にこ「……実はシラセプロダクション社長の白瀬小雪さんが先ほどお亡くなりになりまして……ご主人と連絡がとれないんです……」

 

下園「えっ!? こ、小雪がですか!」

 

杉下「ええ、お気の毒です」

 

下園「まさか……小雪が……な、なんで……さっき電話で話したばかりなのに……」

 

にこ「さっきっていつですか?」

 

下園「えっと……二時間ぐらい前です」

 

下園、腕時計を見る。

 

下園「うん。間違いない。ライブが始まる前にここの事務所から電話したんです。その後にまたかけて、今夜飛行機で一緒にロサンゼルスに行く予定だったんです……」

 

杉下「電話していた際にお気づきになったことなどは?」

 

下園「えっと……水の音がしてたから……プールでも入ってたんじゃ……」

 

にこ「死因はプールでの溺死です」

 

下園「小雪が溺死!? そんなバカなこと……小雪はすごく泳ぎが上手だったのに!?」

 

にこ「角度を間違えて飛びこんで頭を打ったみたいです……」

 

下園「そんな……信じたくない……」

 

杉下「お察しします」

 

下園「……ひどい」

 

にこ「あの……あの広い屋敷に白瀬さんの他、誰もいなかったんですけど……旦那さんがどこにいらっしゃるか、ご存知ですか? 全然連絡がつかなくて……」

 

下園「メイドさんもいないの?」

 

杉下「ええ、そのようです。どうやらご存知でないようですねぇ……」

 

下園「えっとそれは……あっ、ここじゃなんですから、事務所のほうへ」

 

〜下園プロデューサーの部屋〜

 

にこ(……この部屋、被害者と下園さんのツーショットで埋め尽くされてるわね……ちょっと怖い……)

 

下園「えっと……どこまでお話ししましたっけ……」

 

杉下「白瀬さんのご主人の連絡先です」

 

下園「ああ、京介……小雪のご主人のことですけど……彼は今ウィーンにいるんです」

 

にこ「ウィーン!? って……ウィーンってどこでしたっけ」

 

杉下「オーストリアですよ、矢澤さん」

 

にこ「ああ、オーストラリア!」

 

杉下「いいえ、違います。僕が言ったのはヨーロッパにあるドイツ民族の国、オーストリアです。君が言ったのはオセアニアの国、オーストラリアです」

 

にこ「し、知ってますよ!」

 

杉下「そうでしたか、それならば失礼しました」

 

下園「あの……」

 

杉下「失礼しました、続けてください」

 

下園「彼はウィーンでクラシック音楽の振興事業に取り組んでいるんです。早速連絡をとります」

 

杉下「お願いします」

 

下園「それにしても……小雪が死んじゃうなんて……私たち中学から今までずっと一緒だったんです……」

 

にこ「そうなんですか……ところで、白瀬さん昨日の夜なにかパーティーみたいなことをしていたようなんですが」

 

下園「パーティー?」

 

杉下「ご存知ありませんかねぇ……ご存知かと思ったのですが……」

 

下園「私は別に昨日そのようなものには招待されてませんし、初耳です」

 

杉下「そうですか」

 

急に置時計が鳴る。変な音がする。

 

杉下「おお……これは珍しい時計ですね。あなたのでしょうかねぇ?」

 

下園「いえ、これは先代の社長、つまり小雪のパパですが……その小雪のパパの遺品です。音も変ですけど、鳴り方も変で2時間50分おきになるんです。どうももとの持ち主だったフランス貴族が変人だったみたいで……」

 

にこ「遺品?」(……変な時計。2時50分おきに鳴ってどんな使い道があるのよ……)

 

下園「小雪のパパも数年前に……」

 

杉下「数年続けて社長が亡くなられるとは……お痛ましいかぎりですねぇ……」

 

下園「はい……」

 

にこ「それじゃ失礼しました!」

 

下園「こちらこそ」

 

杉下、にこ出ようとする。杉下、急に立ち止まる。

 

杉下「あっ!」

 

にこ「どうしたんですか、杉下さん?」

 

杉下「下園さん、最後に一つだけよろしいでしょうか?」

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