にこはアイドル捜査官 ラブライブ✕相棒   作:くーたん局長

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……5

〜刑事部長室〜

 

内村「特命係がまたこそこそと嗅ぎ回って、捜査一課の仕事を妨害しているそうだな!」

 

中園「捜査一課の伊丹君から泣きつかれたんだぞ、杉下それと……だれだっけな」

 

にこ「矢澤にこで〜す!」

 

中園「そう、矢澤!」

 

にこ(……もう、なんで仕事をすると怒られるのよ……)

 

杉下「ご迷惑をお掛けするつもりは全くなかったのですがねぇ」

 

内村「実際迷惑してると言ってるんだ。捜査一課が事故死と言ってるのをお前らが殺人といってまわることで、遺族らが不安になっているんだ!」

 

中園「矢澤。お前も無理に杉下なぞの言うことを聞くことはない。杉下なぞの言うことを聞いても、なんのたよりにもならない。この男の推理より捜査一課を信じろ。お前たちはただ、警視庁の掃き掃除をしていればいいんだ」

 

にこ「は、はい……」(何よ、それ……)

 

杉下「ところでどなたから、クレームが入ったのでしょう?」

 

内村「だから伊丹だと言ったろう?」

 

杉下「いいえ、もしや、白瀬家の顧問弁護士古美門研介氏から、クレームが入ったのではないかと思ったものですから……」

 

中園「迷惑をかけているとわかっているなら、もうこんなことはやめたまえ!」

 

〜廊下〜

 

にこ「ああ……もう怖かったにこ〜」

 

杉下「君初めてですか?」

 

にこ「いや……神奈川にいたときもしょっちゅう怒られましたけど……」

 

杉下「そうですか」

 

にこ「古美門さんがクレーム……ってどういうことですか?」

 

杉下「いえ、深い意味はありませんよ」

 

にこ「確かに古美門はなんだか怪しい気がします……」

 

伊丹「警部殿、それとやーざーわー……」

 

にこ「……ふん」

 

杉下「どうも」

 

芹沢「僕もいますよ!」

 

伊丹「なにやら嗅ぎ回っているようですね、警部殿」

 

杉下「いえいえ……」

 

芹沢「何が不満なんですか? 別に不自然なところなんててないじゃないですか?」

 

杉下「いえいえ……殺人である可能性が高いということですよ」

 

伊丹「はぁ……まだそんなことを……」

 

芹沢「あきらめませんね? 警部は……」

 

〜白瀬邸・深夜〜

 

にこ「す、杉下さん?」

 

杉下「はぁい?」

 

にこ「さ、寒くないんですか?」

 

杉下「寒いのですか? 君は?」

 

にこ「いや……私は……」

 

杉下「寒いなら、僕一人でも結構ですが」

 

にこ「そんなわけにはいきませんよ!」(……拳銃も持ってない丸腰で、それでひ弱そうで……そんな人をひとりでおいておけるわけないじゃない……)

 

杉下「そうですか……」

 

にこ(なんで、深夜の白瀬さんちにいなきゃいけないのかしら……どういうこと?)

 

杉下「あっ……来たようですね……」

 

にこ「えっ……あっ……」

 

にこ(か、懐中電灯……だ、誰?)

 

電灯が急につく。覆面をした誰かが大広間の黒電話の近くで固まっている。

 

杉下「……探しものですか?」

 

電源を入れた杉下が、微笑む。

 

にこ「て、手をあげなさい!」

 

にこ、拳銃を不審者につきつける。覆面をした者、その場にうずくまる。

 

?「ま、待ってください! わ、私は泥棒では、あ、ありません!」

 

にこ(……女?)

 

にこ「う、後ろを向いて、手をあげなさい!」

 

にこ、不審者を身体検査する。

 

にこ「警部! 凶器は持っていません!」

 

杉下「そのようですねぇ……」

 

にこ「顔を見せなさい!」

 

にこ、覆面をはぎ取る。

 

にこ「……海未!?」

 

海未「に、にこ……!?」

 

杉下「帝都新聞社会部記者の園田海未さんですね? 僕は警視庁の杉下と申します。残念ですが電話にしこまれていた盗聴器は僕のほうで回収させていただきました」

 

にこ「と、盗聴器!? け、警部? ど、どういうことですか?」

 

杉下「ラジオですよ。矢澤さん。米沢君が使用していたのは旧式のトランジスタラジオでした。旧式のトランジスタラジオの場合、近くにドライヤーや盗聴器がある場合、雑音が入ることがあります。米沢君がこの黒電話の近くでラジオを聞いたとき、雑音が入ったのはそういうわけなんですよ」

 

にこ「う、海未……どうしてこんなこと……誰に頼まれたの……?」

 

海未「き、記者は情報源をもらせませんので……」

 

にこ「ハァ?! いまさら何を言ってるのよ! あんたは!? 今の状況わかってるの!?」

 

杉下「まあ、調べればすぐにわかることですよ?」

 

海未「わ、私はジャーナリストです! し、真実を知るけ、権利があるんです! いや、義務が!」

 

杉下「そうでしょうねぇ……しかし同時に僕は刑事で、犯罪者を逮捕する義務があります。あなたは不法侵入並びに盗聴……立派な犯罪ですねぇ……。あなたも帝都新聞を解雇されたくはないでしょう?」

 

海未「じょ、情報源の方の許可さえ、と、取れれば話せるのですが……」

 

杉下「そうですか……許可が取れないとなると……もしかして、あなたは殺人犯の共犯者ということにも……なりかねませんよ?」

 

にこ「海未! 言いなさい!」

 

杉下「連れて行きましょう」

 

にこ「海未! 来なさい! 署でたっぷり締め上げてやるわ!」

 

?「こら! あんたら誰やねん!」

 

杉下「どこからか声が……」

 

にこ「希!」

 

希「に、にこっち! それに海未ちゃんやん! ……それと……」

 

杉下「警視庁の杉下と申します」

 

希「警察!? なんでこんな遅くに……」

 

にこ「希! あんた、何も知らないの?」

 

希「うちはさっき、サンクトペテルブルクから戻ってきたばかりや……なんなん? そしてなんで海未ちゃん、手錠かけられてるん?」

 

にこ「白瀬小雪さんが亡くなったのよ」

 

希「な、なんやって!」

 

杉下「サンクトペテルブルクからお帰りだそうですね? なぜでしょう?」

 

希「えっと……うちの友達の絢瀬絵里つう子が、外務省の書記官なんやけど、病気だってメールが来てな!」

 

杉下「ほう……」

 

希「なんやけど……行ってみると、病気でもなんでもなくてピンピンしとって……せっかく来たんだから遊んでけっていうから、ロシア観光で長旅になってしもうたわけや」

 

にこ「それは凛から聞いてるわ! なんで凛からの電話に出なかったのよ! 私のからも! 真姫とか穂乃果とか! みんな頼んでも出なかったのはなんで!」

 

希「実は……携帯、盗まれてな……」

 

杉下「いつのことでしょう? それは?」

 

希「わからんなぁ……飛行機降りたとき、ないって気づいてん……ところで海未ちゃん……」

 

にこ「海未は、この家に仕掛けた盗聴器を回収しにきたところをたったいま拘束したところよ」

 

希「盗聴!? う、海未ちゃんがなんでやん?」

 

にこ「知らないわよ、だから取り調べるところよ」

 

希「海未ちゃん……なんとか言ってくれへん?」

 

海未「……言えません」

 

希「はぁ……なんでやの……」

 

杉下「東條希さんで間違いないですね?」

 

希「うん」

 

杉下「単刀直入にお尋ねしますが、白瀬小雪さんを恨んでいたような方に覚えはございませんか?」

 

希「小雪ちゃんを恨む……? そないな人、おるわけないやん。小雪ちゃんはアル中で引きこもりだったけど、根は優しいいい娘やねん。メイドのうちにもほんとようしてくれた……」

 

杉下「そうですか……」

 

希「なんで死んだん? 小雪ちゃん、急性アル中?」

 

杉下「いいえ、死因は他殺のようですねぇ……」

 

希「た、他殺!? 誰や!」

 

杉下「それは捜査中ですので……ところで白瀬さんはたびたびパーティーを開いていたようですねぇ……」

 

希「パーティーなんか開いてへん。男の人がいつもやってくるだけや。うちはいつも部屋に戻っててって言われるから、よう知らんのやけど……」

 

にこ「警部! わかりました!」

 

杉下「なんでしょう? 矢澤さん」

 

にこ「は、犯人は偽メールで希をこの屋敷から引き離したんじゃないでしょうか!?」

 

杉下「そうですねぇ……」

 

〜取調室の隣の部屋。マジックミラー越しに取り調べ室が見える〜

 

にこ「海未、口を割らないみたいですね」

 

杉下「そのようですねぇ……」

 

にこ「だいたい私たちで捕まえたのに、なんで伊丹のやつが取り調べてるんですか?」

 

杉下「伊丹先輩ですよ? 矢澤さん……」

 

にこ「あっ……はい……あの警部、私の推理聞いてもらっていいですか?」

 

杉下「ええ、どうぞ」

 

にこ「盗聴器仕掛けたの、下園さんじゃないかって……」

 

杉下「ほう……なぜでしょう?」

 

にこ「女の勘ですけど、下園さん、小雪さんのことを違う眼で見てたんじゃないかって……」

 

杉下「違う眼?」

 

にこ「下園さんの事務所の部屋、小雪さんとのツーショットばかりだったし、小雪さんのことを話すとき眼がなんか恋する子の眼だったような……それに死体にキスって普通じゃありませんよ。親友だって……」

 

杉下「死体にキス?」

 

にこ「はい。実は小雪さんのご遺体にキスしてたんです。プライベートなことだから言わないでおこうとも思ったんですけど……」

 

杉下「なるほど……あっ……そろそろいらっしゃったようですねぇ……」

 

角田「おい、杉下。受付でうろうろしているところ、連れてきてやったぞ」

 

杉下「ああ、ありがとうございました」

 

角田「いいってことよ! じゃあな!」

 

ことり「う、海未ちゃん! 海未ちゃんはどこ!」

 

にこ「今取り調べ室よ」

 

ことり「そんな……海未ちゃんがなんで……」

 

杉下「捜査一課は園田さんが白瀬小雪さんの事故死と重大な関係があると思っているようですねぇ……」

 

ことり「そ、そんな……嘘……」

 

にこ「海未の家の日舞教室と、シラセが劇場の使用権で揉めてたらしいのよ。先代の社長までシラセは落語家とか日舞の人のマネジメント中心だったのが、社長交代でアイドル路線になったから……」

 

ことり「そんな! 海未ちゃんが人を殺したっていうの!」

 

杉下「今のように黙秘を続けられますと、そのようにされてしまうかもしれませんねぇ……」

 

ことり「ありえません! 海未ちゃんが人を殺すわけがない! ねえ! にこちゃん! 何とかして! 海未ちゃんが無実だって言ってよ!」

 

にこ「私だって……海未が人殺したりするわけないとは思うわよ……だけど白瀬さんを盗聴してたのは事実だし……動機もあるし、本人は何も言わないじゃない……」

 

ことり「そ、そんな……」

 

杉下「ところで、南さん。あなたは嘘をついていますね?」

 

ことり「えっ……」

 

杉下「あなたはあの部屋で園田さんと二人で暮らしているんじゃありませんか? どうして嘘を?」

 

ことり「だって……海未ちゃんが内緒にしてって……」

 

杉下「なぜでしょう?」

 

ことり「海未ちゃんはお父さんお母さんから日舞の家を継いでって言われてるんだけど、本当はジャーナリストになりたかったみたいで……それで今家出してるの……」

 

にこ「あの海未が家出!?」

 

ことり「うん……」

 

杉下「なるほど。そういうことでしたか。おっと、それでは行きましょう」

 

にこ「えっ……? あっ、警部!」

 

〜取り調べ室〜

 

伊丹「お前が殺したんだろ! そうだろ!」

 

海未「いいえ」

 

伊丹「じゃあ! なんで盗聴器なんて仕掛けた!」

 

海未「言いません」

 

伊丹「この野郎……ってまた警部殿ですか……」

 

杉下「取り調べ中に失礼」

 

にこ「ていうか私たちが捕まえたんだから、私が取り調べて何が悪いんですか?」

 

伊丹「なんだと、お前はどうせ警部殿についてきただけだろうが、この雑用係!」

 

にこ「何ですって! あんたこそ、さっきまで事故死だって言ってたじゃない! この手柄泥棒!」

 

伊丹「なんだと! この野郎! 女だからって手加減しねえぞ!」

 

にこ「やれるもんならやってみなさいよ!」

 

杉下「まあまあ、一つだけよろしいでしょうか? 園田さん」

 

海未「答えられることなら」

 

杉下「ありがとう。あなたの情報源というのは古美門研介氏ではありませんか?」

 

海未「違います」

 

杉下「おやおや違いますか?」

 

伊丹「古美門研介? あの変な弁護士の?」

 

杉下「ええ。帝都新聞の方に伺ったところ、あなたは以前刑事裁判の取材の際に古美門研介氏と知り合われ、ひじょうに意気投合したとか?」

 

海未「古美門先生は友人の一人です。ただそれだけです」

 

杉下「そうでしょうかねぇ……実はあなたが同居しておられる南さんのご自宅の近くの喫茶店の防犯カメラからあなたと古美門さんがたびたび会っておられる、またあなたの回収しようとした盗聴器と同じものを古美門氏が購入なさっているのですが……」

 

海未「知りません」

 

杉下「あなたから押収した鍵はもともと白瀬さん自身のものです。やはり身近で白瀬さんと接触できる古美門氏が……」

 

海未「ですから、知りません」

 

杉下「なるほど、ではこういうことでしょうか。あなたは帝都新聞に入社したものの、思うような功績があげられず、焦っていた。そこに知人の古美門氏からシラセの社長が会社の資金を横領しているかもしれないと持ちかけられ、古美門氏から警官がいるかもしれないあの屋敷から盗聴器を回収してくるようにだけ頼まれた……」

 

にこ「回収?」

 

伊丹「設置したのも、この女でしょう?」

 

杉下「いいえ。それとですが園田さん、白瀬さんが会社の金を横領したなどという事実はありませんよ」

 

海未「えっ!」

 

にこ「あんたは騙されてんのよ。古美門のやつは、あんたを利用して、副社長でプロデューサーの下園を追い落とすようなネタを探ってただけなの……ですよね? 警部」

 

杉下「ええ、下園さんの秘書の小泉花陽さんから帳簿を見せていただきましたが、そのような事実はありませんでした」

 

海未「そ、そんな……」

 

伊丹「話していただけますね?」

 

海未「は、はい……全て話します……」

 

〜特命係〜

 

にこ「ことりのところから試作品のユニホームを海未に持ち出させたのは古美門ということですよね……」

 

杉下「そうですねぇ……自首された古美門氏によると、南さんのアイドル時代の大ファンで試作品がほしかったということですが……」

 

にこ「あやしいですよ!」

 

杉下「こういうことが考えられますね。古美門氏は白瀬小雪氏と対立し、解任される寸前であった。それを防ぐためやきいも屋に変装した状態で白瀬家に近づき、何か鈍器で白瀬さんを殴って気絶させ、溺死させた。……ということも」

 

にこ「なるほど! だけど証拠がありませんね。 盗聴したことはわかっているんですけど」

 

杉下「まあ、あくまで可能性の一つですが。それに妙ですねぇ……」

 

にこ「何がですか?」

 

杉下「いえ、試作品の全てにアップリケがついていたということです。また南さん、園田さん、古美門さん、みなダンボール箱ごと運んだから何着あるかわからないとも。つまり犯行に使用されたものは既に処分されたのかもしれませんが、その断片がなぜ古美門氏の事務所でなく、シラセの衣装室に……」

 

伊丹「聞いちゃいましたよ! 警部殿」

 

杉下「おやおや」

 

にこ(……伊丹……盗み聞きしてたの?)

 

伊丹「警部殿の割には鋭い推理ですが、古美門にはアリバイがありますよ」

 

にこ「アリバイ?」

 

伊丹「ああ、古美門はその時間、シラセの劇場でライブを見ていたと言っている」

 

にこ「途中から抜け出したんですよ!」

 

伊丹「まあ、そういう可能性もあるな」

 

にこ「古美門のアリバイ! 必ず崩します!」

 

芹沢「その調子!」

 

にこ(芹沢もいたの!?)

 

〜シラセプロ・トレーニングルーム〜

 

にこ「振り付けが難しいんですよね……」

 

シラセプロの新人アイドルの練習を見ながら、見よう見まねで踊っているにこ。黙って微笑む杉下。

 

杉下「そのようですねぇ……」

 

下園「練習中なんですが」

 

杉下「ああ、そうでしたか、これまた失敬。ところでAqoursだけではないんですねぇ、プロデュースしていらっしゃるのは?」

 

下園「ええ、彼女たちは今年結成したばかりで、人前に出すレベルじゃないので、早く仕上げないといけないから」

 

にこ「グループ名は何なんですか?」

 

下園「まだありません」

 

にこ「ない?」

 

下園「ええ、舞台に立てるレベルになってからです」

 

にこ「へえ……」

 

下園「元μ'sの矢澤にこさんに決めてもらおうかしら、グループ名」

 

にこ「……私のこと、知ってたんですね?」

 

下園「ええ、小泉さんからよく聞いてますし……私も小雪もμ'sに憧れて、アイドルグループのプロデュースを始めたんです。先代のときは、落語家や日舞、浪曲歌手のマネジメントが主だったので」

 

にこ「へえ! μ'sに憧れてたんですかー! もう、にこ感激です!」

 

下園「ちなみに小雪も私も、にこさんのファンだったんです」

 

にこ「そ、そうなんですか……」(……だった……ね……)

 

下園「あの頃のあなたは輝いてた……今もあなたは輝いてる?」

 

にこ「さあ? 輝いてると思いますけど?」(……なんだか眼が怖い……)

 

下園「そう……そうだ、私は今忙しいの。用件があるなら早くすませてください」

 

杉下「たいしたことではありませんが、先ほどあなたの事務所を捜査させていただきました」

 

下園「な、何ですって! どういうこと!?」

 

にこ「この前、自由に調べていいっておっしゃったはずですけど?」

 

下園「そうは言ったけど……」

 

にこ「まあ、形だけですから」

 

下園「わかったわ。もういいかしら……」

 

杉下「それともう一つ」

 

下園「何?」

 

杉下「盗聴器のことなのですが……」

 

下園「と、盗聴器!?」

 

杉下「ええ、白瀬さんのご自宅の電話に盗聴器が仕掛けられていまして……」

 

にこ「てっきり下園さんがやったんじゃないかって……」

 

下園「わ、私がそんなことするわけないじゃない!」

 

杉下「ええ、その通りです。あなたではありません。つまり、僕が言いたいことは、あなたが白瀬さんの死の直前にかけた電話も盗聴されていたということなんですよ」

 

下園「それで? 誰なの、そんなことをしたのは? その人が小雪を殺したっていう犯人なんじゃない?」

 

杉下「そのかたは、新聞記者のかたと協力して、あなたを調べていた……」

 

にこ「スパイしてたんです!」

 

下園「わ、私をスパイ! そんなことをした男は一体誰なの!」

 

杉下「お会いになりたいでしょうか?」

 

下園「ええ、もちろん!」

 

にこ「忙しいんじゃないんですか?」

 

下園「もちろん、仕事はキャンセルするわ。小泉さんに代わってもらえれば大丈夫だし、わ、私のプライバシーを踏みにじった男よ?! 許せるわけないじゃない!」

 

にこ「そうですよね」

 

下園「誰なの?」

 

杉下「顧問弁護士の古美門研介さんです」

 

下園「あいつが……」

 

にこ「ショックですよね?」

 

下園「もちろんよ……あの人は顧問弁護士という立場を振りかざして、シラセ社全体にどれほどの迷惑をかけてきたか……その上、小雪まで殺すなんて……許せない! お願いします! 杉下さん! 私を古美門と対決させてください!」

 

杉下「ええ、結構ですよ……」

 

〜杉下の車。助手席ににこ。後部座席に下園〜

 

下園「刑事さんにしてはいい車ね? 趣味がいい」

 

杉下「お褒めにあずかり光栄です」

 

下園「古美門はどこにいるの?」

 

にこ「白瀬邸です」

 

下園「ふうん」

 

杉下「降りましょう」

 

〜白瀬邸〜

 

希「いらっしゃいませ」

 

下園「東條さん、あなたどこに行ってたの?」

 

希「ロシアの友達のところに……まさか、こんなところになるなんて……」

 

下園「自分を責めることはないわ。あなたのせいじゃない、しかたがなかったのよ」

 

希「ええ、うちは犯人を許しません。あんな若い命を奪うんなんて……人間じゃあらへん!」

 

下園「そうね。だけど杉下さんがすぐ犯人を暴いてくれるわ……」

 

古美門「ああ、下園さん……」

 

下園「古美門さん! あなた、とんでもないことをしてくれたわね!」

 

古美門「す、すみませんでした〜……このおわびは必ず! 必ずするから!」

 

下園「新聞記者と結託して、他人の話を盗み聞きするなんて、弁護士失格のクズ野郎ね!」

 

にこ「まあまあ……下園さん……」

 

下園「私はこの件を弁護士会に報告するつもりよ! そしたら、あんたもう弁護士として終わりね!」

 

古美門「ね、ねえ杉下さん……ぼ、僕は自発的に申し出たんだ……だから許してくれよ! ね! 金ならいくらでもあげるからさ!」

 

下園「黙りなさい! 私は必ずあなたを訴えますよ! 手下の女と一緒に!」

 

にこ「まあまあ……京介さんもいらっしゃいますし……」

 

下園「京介まで巻き込んでるの!?」

 

京介「あ、ああ……咲……」

 

古美門「盗聴内容を聞いてもらうために、僕が呼んだんだ」

 

下園「盗み聞きした内容を、人前に晒す気! 盗っ人猛々しいとはこのことね!」

 

古美門「何を言うんだ。僕が持ち去るより、みんなに聞いてもらったほうが公正だろ! そんなこともわかんないのか、このバーカ女!」

 

下園「何ですって!」

 

京介「咲も! 古美門先生もいいかげんにしてくれよ! 小雪が悲しむ!」

 

にこ「警察としてはぜひ聞かせてもらいたいです。そこから新事実が見つかるかもしれないし……ですよね? 警部」

 

杉下「そうですねぇ……不愉快でなければですが……」

 

下園「不愉快よ! 警察のエゴだわ!」

 

にこ「捜査のためですから……」

 

下園「それなら警察だけで聞けばいいじゃない!」

 

にこ「そういうわけにはいかないんです。それを聞いたみなさんの反応も捜査したいので」

 

下園「意味不明よ! あなたたちの上司にクレームつけるわよ!」

 

にこ「それに! 気になることがあるんです!」

 

下園「何!」

 

杉下「実はシラセプロを捜査したところ、衣装室から、例のやきいも屋のユニホームの断片らしきものが発見されたんです。つまり縫いつけられたやきいものワッペンの部分ですが」

 

にこ「もしかして犯人が落としたものかもしれないんです……」

 

下園「そ、それがうちの事務所から……誰がそんなこと……古美門……」

 

古美門「僕じゃない! 知りませんよ、刑事さーん!」

 

杉下「そうですねぇ……ではお願いします」

 

にこ「はい! かけます!」

 

〜電話の内容(白瀬……下園)〜

 

下園『小雪、小雪?』

 

白瀬『何なのよ……朝っぱらから、うるさいわね……頭がクラクラして……もう吐きそう……』

 

下園『まだ、寝てたの? ところで京介は?』

 

白瀬『ああ、いないみたいね。気付かなかったけど。たぶんまたウィーンにいるんじゃない?』

 

下園『東條さんはどうしたのよ? いつも最初に出るのに……』

 

白瀬『ああ、なんだかロシアにいる友達が病気だって……泣いてたから、お休みさせてロシア行かせたわ』

 

下園『そうだったの……優しいのね……小雪……』

 

白瀬『フン……当たり前でしょ……ところでさ、昨日の夜なんだけど、咲が紹介してくれた男の子。その子に弟がいるらしくてね……』

 

〜白瀬邸〜

 

古美門「ストーップ!!!」

 

にこ、慌てて止める。

 

古美門「京介君! 今の、聞いた! 下園咲は僕が疑っていたとおりの女だったろ! 小雪さんに男を紹介して、小雪さんを堕落させ、京介、君との仲を裂こうとしていたんだよ! それでシラセ社と君を我が物にしようとしてたんだよ!」

 

下園「ちょっと……」

 

古美門「刑事さんたちも聞いたでしょ! 白瀬家の財産と栄誉を守る顧問弁護士として僕はこういう事態を最も憂慮していたんだあ! 園田さんと協力したのもこのためだあ! 下園! 貴様の悪事を暴くためだ! 参ったかあ!」

 

下園「待って! 小雪のいった男の子っていうのはあなたの考えるようなのじゃない! ただのお友達よ! あの子、友達いないから! 話し相手になってあげてって!」

 

古美門「嘘だ! 嘘だ! 嘘だ! 嘘だ! 子供じゃないかぎり、そういいかがわしい男だということが誰にでも……この会話を聞けばわかるねー! だいたい下園! お前は二人の結婚に一番反対してたでしょー! あれも本当は京介のことが好きだったからだよねー!?」

 

京介「もうやめてくれ! 俺のことも少しは考えてくれ! このテープには小雪の最期の声が録音されてるんだぞ! 小雪、小雪がこんなこと望むか? 悲しむ! ああ! 刑事さん! もう早くしてください!」

 

杉下「ええ、そうですねぇ。矢澤さん」

 

にこ「はい……」

 

〜電話の内容(白瀬……下園)〜

 

下園『弟って……そんなことどうでもいいのよ……ねえいい、小雪? すぐに起きてブラックコーヒーでも飲んで、お風呂にでも入りなさい!』

 

白瀬『うるさいわね。あんたの指図なんか受けないわよ。咲。だいたいあたしが社長よ。あんたのクビなんか私の一存で飛ばせるってこと、くれぐれもお忘れなく……』

 

下園『もうわかってるわよ! 小雪、忘れたの? 今日の夜ロス行くのを?』

 

白瀬『ああ、あれ今日? ハハハ……この前4億すった仕返ししなくちゃ……』

 

下園『ハァ……もう忘れたの……今日がチャンスなの、今日、小雪がロスで契約書にサインさえしてくれれば……アメリカでシラセプロのアイドルが活躍する道が開けるの! 私たちの夢の実現よ!』

 

白瀬『ふうん……そんな夢あったかしら……』

 

下園『バカなこと言わないで! このプロジェクトが成功すれば、年に6億の増収が見込めるのよ!』

 

白瀬『これ以上……お金なんていらないわ……お金が増えれば増えるほど、私寂しくなるんだもの……』

 

下園『小雪? まだ寝ぼけてるの? 早くベッドから出てお風呂に入りなさい! 二日酔いじゃ困るの! シラセをどこよりも立派なアイドル事務所にするっていう私たちの夢……』

 

白瀬『はいはい……わかった、わかったわよ。じゃあお風呂はだるいから、温水プールでひと泳ぎするわ。もう……朝っぱらから最悪の日よ……それになんかそっちうるさいんだけど……』

 

下園『これはライブの生中継よ! Aqoursの!』

 

白瀬『Aqours? 何それ?』

 

下園『ふざけるのもいいかげんにして……Aqoursは私たちが見つけだして育ててきた最初のアイドルでしょ……』

 

白瀬『そうだっけ? 興味ないわ』

 

下園『もういいわよ、また電話するわ……じゃあね』

 

白瀬『バイバーイ』

 

〜白瀬邸〜

 

杉下「これが朝九時ごろにかけられた最初の電話です」

 

にこ「つまり、ライブ開始直後……そうですよね?」

 

下園「そうよ」

 

杉下「では二回目の電話を……」

 

にこ「はい」

 

〜電話の内容(白瀬……下園)〜

 

♪君のこころは輝いてるかい?

 

♪胸に聞いたら"Yes!!"と答えるさ

 

♪この出会いがみんなを変えるかな

 

♪今日も太陽は照らしてる 僕らの夢

 

白瀬「もーしもーし!」

 

下園「小雪よね」

 

白瀬「そうよ。何今流れた、うっさい下手くそな歌……どこの?」

 

下園「Aqoursの曲よ。あなた、一番好きだったじゃないこの曲」

 

白瀬「そうだっけ……もしかしてその、君の心は輝いてるかい?ってとこ、私への当てつけ?」

 

下園「あなたがそう感じるんなら、そうなんじゃない」

 

白瀬「ふうん……まあいいわ、で何?」

 

下園「いえ、もしかして二度寝してるんじゃないかって……」

 

白瀬「しないわよ。いま温水プールで泳いでるとこ。咲も泳ぎにくれば?」

 

下園「今、ライブ中で手が離せないの。とにかく六時半には寄るから用意しときなさい」

 

白瀬「はーい……ところでさ」

 

下園「何?」

 

白瀬「なんで泣いてるの?」

 

下園「なんのこと? 泣いてなんかいないわよ」

 

白瀬「だけど声が震えてるじゃない。中学のときから泣くとき、あんたはずっとそうよ」

 

下園「ふざけたこと言わないで。二日酔いで耳がおかしいのよ。じゃあね、切るわよ」

 

白瀬「ああ、うん……」

 

〜白瀬邸〜

 

杉下「これが全てのようですねぇ……ところで受信記録はいつに?」

 

にこ「えっと……二時九分ですね」

 

杉下「白瀬小雪さんの殺害時刻とほぼ一致しますねぇ……」

 

にこ「ライブで流れていた曲目の順とも合ってますね」

 

京介「……これは咲のアリバイ証明になっているんじゃありませんか?」

 

杉下「というと?」

 

京介「だって刑事さん、咲は事務所から小雪に電話してるんでしょう。事務所からここまで車で急いでも一時間はかかります。咲には不可能でしょう?」

 

杉下「なるほど結果的にはそうとも言えますねぇ……」

 

古美門「詭弁だあ! 第一この電話を事務所から掛けた証拠なんてどこにもない! スマホでかけてたんだから! この家の近くでかけて、そのまま殺しに行ったのかもしれない!」

 

下園「それならあなただって、劇場抜け出して、殺しに行くこともできるわね。それにやきいも屋?……そのユニホーム持ってたのもあなたなんでしょ?」

 

古美門「僕は全部歌える! 歌ってた曲を!」

 

にこ「そんなの後から録画で見直したのかもしれないから、証拠にはなりませんよ!」

 

古美門「このチビは話になんないね! ねえ杉下さん」

 

杉下「この録音には劇場外の雑音がありませんねぇ……」

 

古美門「きっと車の中でかけたんだよ!」

 

にこ「だいたい動機がないですよ。だって下園さんは小雪さんが死なずとも実質的にシラセの経営者なんですから」

 

古美門「お前はさっきからずっとこの女の応援をするな……」

 

にこ「あなたのほうがあやしいです。いや、もしかしたら強盗っていう可能性も……」

 

杉下「それはありません。何も盗まれていませんしね。怨恨だと思いますよ、僕は」

 

下園「もういいでしょうか、私仕事が……」

 

杉下「ええ、どうぞ。みなさんお帰りください」

 

希「みなさーん、デザートやで」

 

京介「ああ、東條さん。今俺たちデザートって気分じゃないんだよ」

 

希「え? でも……」

 

杉下「いえいえ、僕がお願いしまして」

 

にこ(……人のうちの人間勝手に使うんじゃないわよ……)

 

古美門「僕にはくれ。ところで何だ、それ?」

 

希「杉下さんの大好物のスイートポテトや!」

 

にこ(……杉下さんがスイートポテト好きなんて初耳ね……)

 

下園「それじゃいただきます」

 

京介「咲が食べるなら、俺も」

 

杉下「古美門さん、どうなさいましたか? お召し上がりにならない?」

 

古美門「いらないね! ぼ、僕はサツマイモが大嫌いなんだ! 貧乏くさいし、歯にくっつくしね!」

 

杉下「やはりそうですか、それでは失礼します」

 

にこ「えっ! で、デザートは! 食べていかないんですか!……って、待ってくださいよ!」

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