やはり俺の人生はまちがっている。   作:にが次郎

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彼ら彼女らの日常は極々普通である。

 

 

暑い。暑すぎる。

もう10月だというのに、今日も今日とて俺は汗を流して働いている。誰だ、今年はエルニーニョ現象で涼しくなるとか言ったやつ。

 

しかしながら、職業柄多少は仕方ないとわかってはいるのだが、やっぱり暑い。季節は秋だというのに暑い。もう秋はどこ行っちゃったの?

朝は肌寒く、昼間は暑い。そして夜にはまた冷えて寒くなる。具合悪くなるわ。

朝の天気予報では、暑さは今週いっぱいだと言っていたが、先週もそんなこと言ってた気がするな。

あーもう暑い。働きたくない。

 

あまりのやる気のなさに仕事の手が止まってしまう。

 

 

「やわた!明日明後日休みだろ?もうちょっとで終わるんだからがんばれよ」

 

 

は!忘れていた。今日は金曜日。現場の都合で明日明後日は休みになったのだった。俺たちの職業で2連休というのは非常に珍しい。大体週休1日。連休が取れるのなんて正月かお盆くらいだ。労働基準法?そんなの知らん。1ヶ月休み無しとかザラだし。1ヶ月休み無しで働いて、たった1日休んで、また1ヶ月休み無しとかいっぱいあったし。年間休日が30日超えなかったときは自殺を考えたよ。1年、365日あるのに335日働いてたんだよ?どっかのブラック企業もびっくりのブラックぶり。まじ笑えない。

しかし、給料はがっぽりである。まぁがっぽり稼いでも使うとこなくて貯金だけ増えているんだけど。なんのために働いてんだろ。俺。

 

 

「黙りこくってないでなんとか言えって。なんでそんなに元気ないんだよ」

 

「ああ、そーだな」

 

 

逆に聞くけど、なんでそんなに元気なんですかね?今日の朝だって二日酔い全開だったくせに。

 

 

「ほら、今日飲みに行くんだからさっさと終わらせようぜ!」

 

「ああ、そーだっけか」

 

 

今日は三科と飲みに行く約束していたんだった。なるほど。だからお前、この時間になって元気になったのね。しかし、相変わらずの酒好きだ。毎日飲んでるよね?もうそれアル中だよ。

 

三科は自分の仕事を終え、片付け始める。俺の残ってる分は手伝ってくれないんですか。そうですか。

 

 

「やわたー。今日行く店決めた?まだ決めてないなら俺が最近見つけたいい店があるんだけど、、、」

 

「いや、いい。いつものところで」

 

「なんでよー。そこの店員さんに超可愛い子がいるんだってー」

 

「嫌だ。無理だ」

 

 

どうせ俺そっちのけでその女の子を口説きにかかるつもりだろう。そんなの俺にはお見通しだ。

 

 

「えー。もう少しで合コンセッティングできそうだったのに、、、」

 

「それは何処の店だ?」

 

 

いや、別にがっついてるわけじゃないよ?その25歳にもなって彼女が出来たことないとかさ、笑えないじゃん?このままだと一生独り身まである。

 

 

「◯◯通りの〜、、、」

 

「よし、そこに行こう。そうしよう」

 

 

三科は”よし!釣れた!”みたいな顔しているが気にしない。俺も男なのだ。それに昔とは違う。女の子と喋りたい!あと三科に釣られたわけじゃないから。女の子に釣られたんだからね!

 

 

 

×××

 

 

 

んで、来てみたものの。その可愛い店員とやは今日は急用で休みだった。本当に何しに来たんだよ。これならいつもの店のがよかったじゃん。この店、ちょっと高いし。

 

 

「そりゃねぇよ。やわたー」

 

「俺のせいじゃない」

 

 

テーブルに突っ伏す三科。

せっかく飲みに来たのにさっきからお葬式状態。

たかが彼女でもない女のことでこんなに落ち込むとは男はいくつになっても変わらない。

いや、俺は変わったか。高校時代の俺からすれば居酒屋に可愛い店員目当てに来るなど考えられない。

でもさ、俺、もう25歳だし。彼女の1人や2人欲しい。

このままだと平塚先生みたいになりそう。いや、待てよ。失礼な話だが女性は30歳近くなるといろいろ厳しくなってくるが男はどうなのだろう。30歳を超えて大人の余裕が出てきて意外にモテるかも。それで年下の若い奥さんもらって、、。ぐへへへへへ。

 

やっぱり男はいくつになっても変わらない。女にモテることしか考えてない。

 

 

どうでもいいことを考えていると店員がやってくる。

先ほど注文したビールと摘みがテーブルに並べられる。

三科はビールを手に取ると、俺の前に差し出してくる。

 

 

「まぁせっかく来たんだから飲むか!」

 

「ああ、給料も入ったしな」

 

 

俺たちは”乾杯”とジョッキを突き合わせる。

 

 

「ぷはぁー!生き返るぅ!」

 

「てことはお前毎日死んでんじゃねぇか」

 

「仕方ないじゃん。このご時世、毎日酒飲まなきゃやってらねぇよー」

 

 

三科は両手を広げてニヤニヤしている。なんだよ。その顔は。

 

仕事の話、最近の自分の近況。そんなたわいもない話を酒の肴にし、酒を飲む。

1時間ほど経っただろうか。だいぶ酔いも進んできた。

すると三科は思い出したように口を開く。

 

 

「あ、そーだ。1つやわたに聞きたいことがあったんだ」

 

「なんだよ?」

 

「あの2人ってやわたのなに?」

 

 

なんだよ、彼女みたいな聴き方するなよ。気持ち悪い。

あの2人とは雪ノ下と由比ヶ浜のことか。そういえば、三科には何も説明してなかったな。

 

 

「高校時代の部活仲間だよ」

 

「へー。なんの部活?」

 

「ほ、奉仕部」

 

「なにそれ?あーあれか。メイドクラブみたいな?」

 

「ちげーよ!その、なんだ。困っている人を助けたり、相談事を聞いたりする部活みたいな感じ」

 

 

三科は”なにそれ、超うける!”と言って爆笑している。

昔、誰かにも同じような反応されたな。懐かしい。

 

 

「で、具体的にはなにする部活なのさ。お願いしたら叶えてくれるのか?」

 

「少し違うかしら。あくまで奉仕部は手助けをするだけ。願いが叶うかはあなた次第」

 

 

三科は”はあ?”みたいな顔をしている。まぁそうだよね。

 

 

「飢えた人に魚を与えるか、魚の取り方を教えるかの違いよ。ボランティアとは本来そうした方法論を与えるもので結果だけ与えるものではないわ。自立を促す、というのが一番近いかしら」

 

 

どうだ、俺の渾身の雪ノ下のモノマネ付きの説明で理解できたかな?

三科はほけーとした顔を見せた後、キリッとした顔つきになり、背筋を伸ばして咳払いをする。

 

 

「比企谷くん。私にそんな意味のわからない説明をしてどういうつもりかしら?」

 

 

その声を聞いて体がビクっとする。そして周りを見渡す。しかし、雪ノ下の姿はどこにも見えない。居酒屋であいつのとエンカウント率高いからな。気をつけないと。

 

 

「比企谷くん?さっきからなぜ周りを見渡しているのかしら?私なら目の前にいるじゃない」

 

 

え?確かにこの声は雪ノ下のものだ。しかし、この声は三科の口から発せられている。

え?どういうこと?蝶ネクタイ型変声機でも持ってるの?

 

 

「やわたより俺のが雪ノ下ちゃんのモノマネうまいな」

 

 

いやいや、今のモノマネってレベルじゃねぇぞ。男がこんな声出せるなんて早見さんもびっくりだよ!

 

 

「いや、今のなんだよ」

 

 

俺の反応を無視して三科はまた先払いをしてから口を開く。

 

 

「でもなんか楽しそーだね!」

 

 

なっ!?由比ヶ浜の声までも完コピしているだと!?

 

 

「あ、あのもう一回やってみてくれないか?」

 

「えー私の声そんなに聞きたいの?ヒッキーマジきもい!」

 

 

うそだろ、、、。由比ヶ浜のあの高い声までもそっくりだ。東山さんもびっくりどころか、モノマネ声優でデビューできるレベル。

 

そのあと2人であいつらの声真似で盛り上がった。が、店員の訪れでふと我に帰る。

 

 

「俺たちはなにをしていたんだ、、、」

 

 

酒を飲んで男2人で高い声出して、なにやってんだ気持ち悪い。これが噂の賢者タイム。

 

 

閑話休題。

 

 

「んで、2人とはどんな関係なんだよ?」

 

「なんもねぇよ。ただの部活仲間だ」

 

「またまた〜。あの2人。俺にお願いしてきたとき、凄い真剣だったぞ?」

 

 

三科はニヤニヤしながら聞いてくる。うっぜえ。

 

 

「えーどっちかと付き合ってたとかそーゆうのないの?」

 

「いやないから。あの2人が俺と付き合うとかありえないだろ?」

 

 

そんなこと有り得るわけないだろ。あいつらは俺にとって大事な存在なのは確かだ。しかし、付き合うとかそういうことじゃない。

 

 

「じゃあさ、どっちが好きなの?」

 

 

三科の言葉に確信を突かれた気がした。でも本当にそういうことじゃないと思う、、。

 

 

「さーな。わからん」

 

「なんだよ。つれないなー。教えてくれてもいいじゃんか。ちなみに俺は雪ノ下ちゃんのがいいなー」

 

「その心は?」

 

 

俺の問いに三科は手を顎にやり、むーと考える。

 

 

「確かに由比ヶ浜ちゃんの方がスタイルはいいけど、あのツンとしてるところがいいというか、、」

 

「もしかしてお前Mなの?」

 

「ああ!俺はMだよ!”三科”だけにな!」

 

 

誰がうまいこと言えと?別にうまくわないか。しかし、意外だ。三科は由比ヶ浜みたいなタイプの方が好きそうだけどな。

 

 

「由比ヶ浜ちゃんはなんか一途でいい子そうだから、俺には向いてない」

 

「いやいや、それなら雪ノ下もお前には向いてないだろ。あいつ男性経験とかなさそうだし。それからあいつの罵倒は結構キツイぞ?」

 

「あー、雪ノ下ちゃんに踏まれながら罵倒されたい〜」

 

 

なに言ってんだこいつ。一体、どの部位を踏まれたいのか。この変態め!

三科はまだなにか言いたそうだった。今度はなんだよ。

 

 

「あと由比ヶ浜ちゃんだけど、なんか好きな人いそうだからね〜」

 

 

三科はまたニヤニヤしながら意味ありげな目線を送ってくる。やめろ、気持ち悪い。

 

 

俺たちはしばらく飲んでから店を出た。

 

 

 

×××

 

 

 

あー飲み過ぎた。気持ち悪い。

完全に二日酔いだ。三科に付き合うとかいつもこうだ。

こんな状態でいつも仕事してるのか、あいつは。

 

 

現在、時刻は9時過ぎ。

意外と早く起きれたな。よし、二度寝するか。

再び、布団に潜るとインターホンが鳴る。

あれ?俺なんかアマ◯ンで注文したっけ?だるい体を起こして玄関のドアを開ける。

そこには三科が立っていた。

 

 

「やっはろー!やわた、買い物行くぞ!」

 

「へやまちがえてますよー」

 

 

俺は素早く玄関を閉めようとするも三科に足でそれを阻止される。

 

 

「なんだよ、せっかくの休みを満喫しようぜ!」

 

「いや、だから俺は今から満喫しようと、、、」

 

「どうせ寝るだけだろ?いいじゃん、またには付き合えよ」

 

 

三科は無理矢理家の中に入ってくる。付き合えって昨日も付き合っただろうが。

 

 

「なに買いに行くんだよ。欲しいのもでもあるのか?」

 

「いや、昨日話したべ?やわたの服買いに行くって」

 

 

そういえばそんなこと言ってたな。

つーか、服なら前にお前に選んでもらったのがあるし、まだ全然着れる。

 

 

「昨日、やわたが着てたのも結構くたびれてきたべ?それに冬服持ってるのか?もう10月なんだから買いに行かないと!」

 

「いや、いいよ。アマ◯ンでポチるから」

 

「ダメだ。やわたのセンスは絶望的だからな。もしあの2人とデートすることになったらどーするんだ」

 

 

あの2人なら大丈夫だ。俺の絶望的センスを知ってるからな。てか、洋服の面倒まで見るとかお前は小町かよ。そういや小町空気だな。

 

 

「そーいうことだから早く準備しろよー。今日着ていく服は俺が選んでやる」

 

「俺、二日酔いなんだけど」

 

「大丈夫!俺もだ!」

 

 

はぁー。朝からなんなんだよ。

なんで休日に男と2人仲良く出かけなきゃならんのだ。どっかの誰が喜びそうだ。みし×はち、ありません。

 

 

 

 

 

三科に仕立ててもらった洋服に身を包む。俺の持っている洋服の中から選んでここまでにするとはやはりオシャレ上級者だ。

まぁオシャレすぎて俺は完全に服に着られてるけど。

髪も適当にセットして準備万端。

 

 

「そういやどこ行くんだ?」

 

「そりゃ千葉と言ったらら◯ぽでしょ!調べたら結構いい店入ってるみたいだし」

 

 

三科さん。結構ミーハーなのね。

こうして俺の大事な休日は三科によって奪われたのだった。

 

 

×××

 

 

なんだかんだでら◯ぽに着いたのは午前11時。そろそろ飯時だ。

しかし、三科は先に見たいものがあるという。

 

 

「なに見るんだよ?朝からなにも食べてないから腹減ったんだけど」

 

「いいじゃん。すぐ終わるから」

 

 

やってきたのは女性用下着売り場。イチゴのイラストがプリントしてあるパンツでも買うのかとか思っていると、用があるのは下着売り場ではなくその隣の雑貨店だった。

 

 

三科は徐に店の中に入っていくとなにやら可愛らしい置き時計などを物色している。男1人でも店員に警戒されないだな。三科凄い。

 

 

「そんなもん買ってどーすんだよ」

 

「んー?これは◯◯ちゃんの誕生日プレゼント。それでこっちが××ちゃんの誕生日プレゼント。んで、こっちが△△ちゃんの3ヶ月記念のプレゼント」

 

 

え?3人?どういうこと!?

もしかして三股?それに昨日、居酒屋の店員を口説こうとしてたじゃん。三科さん、ホストにでも転職したほうがいいんじゃないかしら。

 

今までに2股は何回か聞いたことはあったがまさか3股とは。それに今から4股しようとしている。女好きなのは知っていたけど、まさかここまでとはさすがに引くな。

こいつ、いつか絶対刺される。

 

 

「はぁー。1人くらい分けてくれよ」

 

「ダメだ。全部俺のものだ!」

 

 

なに言ってんだこいつみたいな目で見ていると、三科は商品も持ってレジへ向かう。どうやら買い物は終わったようだ。

 

 

「よし、飯食いに行くか!」

 

 

ようやく飯にありつける。

雑貨店を出て、下着売り場の前を通り過ぎようとしたとき、中から女性2人組が出てくる。うわ、気まず。

 

 

そちらを見ないように早足で通り過ぎようとしたとき、見ないようにしている方向から声をかけられる。

 

 

「比企谷くん?」

「ヒッキー?」

 

 

そう俺を呼ぶのはあの2人しかいない。しかし、最悪な場所でエンカウントしてしまった。

 

 

「こんにちは、比企谷くん。こんなところでなにをしているのかしら?」

 

「お、おう。いや、買い物をだな」

 

「ここ、女性用の物が売ってるフロアだよ?それにここ下着売り場の前だし」

 

 

まずい。非常にまずい。

三科に助け舟を求める視線を送るとなにやらニヤニヤして一歩引いている。あとで覚えてろよ。

 

 

雪ノ下は手を顎にやり、ブツブツ言いながらなにやら考えている。

 

 

「女性用フロア、、、。下着売り場、、、。は!」

 

 

なにか思いついたのかな?その推理は絶対外れてるからね?

 

 

「比企谷くん?あなた、まさか彼女に下着を送るつもり?こんなところに三科さんまで付き合わせて、一体なにを考えているのかしら?そんなことをしたらフられるどころか、通報されるまであるわよ?」

 

「いやいや、そんなことするわけないだろ。一昔前の漫画じゃあるまいし。つか、彼女なのに通報されちゃうのかよ」

 

「え?ヒッキー、彼女いないって。出来たことないっていってたじゃん」

 

 

由比ヶ浜よ、余計なことを言うな。やめろ、雪ノ下。そんな目で俺を見るな。

そこでようやく三科が誤解を解いてくれる。

 

 

「やっはろー。雪ノ下ちゃんに由比ヶ浜ちゃん。今日は俺がやわたに付き合ってもらってるんだよ」

 

「その呼び方、やめてもらえるかしら」

 

「やっはろー。三科さん!」

 

 

雪ノ下は自分の呼ばれ方に遺憾のご様子。一方、由比ヶ浜は”なに買うのー?”とか聞いている。

三科のことはだいぶ慣れたようだ。

 

 

「彼女の誕生日プレゼントを選ぶのを手伝って貰ってたんだ」

 

 

三科は先程購入した物が入っている袋を鞄から出す。

由比ヶ浜は”わー素敵!”とか言ってる。由比ヶ浜、こいつはそんな素敵なやつじゃない。

てか、三科、こいつらと会ってから若干口調が変わった気がするのは気のせいか。

 

 

「彼で役にたったのかしら?」

 

「んー。正直微妙。今日、やわたは服を買い来たからな」

 

「そう、彼のセンスは絶望的だものね」

 

 

三科はふーんみたいな顔で俺を見る。だから言ったろ。あいつらは俺のセンスを知ってるって。

 

そこで突然、由比ヶ浜がびっくりした声を出す。

 

 

「ヒ、ヒッキーがオシャレしてる、、、」

 

 

今頃気がついたのか、俺だって本気出せばこのくらい、、、。

 

 

「確かに悪くはないわ。悪くはないのだけれど、服に着られている感が否めないわね。どうせ三科さんに仕立ててもらったのでしょう。偽装谷くん?」

 

 

 

バ、バレてる、、。

 

 

 

 

 

×××

 

 

あのあと、三科の提案により一緒に買い物することになった。

それより先に昼食を取ることになり、現在4人でファミレスに来ている。

あのサラリと誘う感じ。物凄く手馴れていた。さすがナンパ師三科。今まで遊んだり、彼女になった女性は殆どナンパで知り合ったという。んで、残りが合コン。本当、凄まじいなこいつ。

 

 

そんなことを考えていると注文した料理が到着する。

 

 

「あ!やわたのハンバーグうまそっ。一口くれ」

 

 

三科は俺の断りもなく、まだ手のつけていない俺のハンバーグを小さく切り取って口に運ぶ。

 

 

「あっ!このやろ。自分のがあるだろ。そっち食えよ」

 

「あひっ、、。うまっ!俺のも食っていいよ」

 

「いらん!」

 

 

そんなやりとりをしていると前に座る2人から視線を感じる。

 

 

「なに?」

 

「本当、仲がいいのね」

 

「なんか仲良すぎてちょっとキモいし」

 

 

べ、別に仲良くねぇよ。三科の方を見るとまたニヤニヤしている。お前のにやけズラは見飽きたよ。

 

 

「なんか日菜が喜びそう」

 

 

由比ヶ浜がボソッと言う。

やめろ。やめてください。どこかから海老名さんの愚腐腐って笑い声が聞こえてきそうだからやめて。みし×はちなんてありえないから!

 

 

「そうね、度が過ぎると周りから異端として扱われるわ。少し自重しなさい。この世にはそういうのが好みの人たちもいるのよ?それにあなたは彼女がいないのだから勘違いされても仕方ないわ、ホモ谷くん?」

 

「いや、思いっきり勘違いしてるよね?俺は何もしてない。男は嫌いだ」

 

「やわた。男嫌いなんだ、、、」

 

 

やめろ三科。悪ノリするな。

お前は真性の女好きだろ?彼女が”3人”もいるくせにと喉元まで出かかったのを飲み込む。

 

 

「まぁそういうの無しにしても本当仲良いよね。本当の相棒って感じ」

 

「お!由比ヶ浜ちゃんのお墨付きを貰えたぞ。相棒?」

 

「やめろっての。なにが相棒だ」

 

「素直に認めたらいいじゃない」

 

 

なんで皆で俺を見るの?俺、悪くない。ハチマンワルクナイ。

たわいもない話をしていると由比ヶ浜がなにか思いついたように話し出す。

 

 

「三科さん。ミッシーって呼んでもいい?」

 

「ミッシー?別にいいけど」

 

 

三科は困ったように笑う。また由比ヶ浜の変なあだ付けが始まった。

 

 

「これは由比ヶ浜さんの悪い癖よ。私には”ゆきのん''比企谷くんは”ヒッキー”といろんな人にあだ名をつけるのが好きなのよ」

 

「ああ、自分には”ゆいゆい”とかな」

 

「あー!もう昔のことはいいから!それよりどうかな?ヒッキーとミッシーでなんか相棒みたいじゃん!」

 

 

なんか某遊園地の◯ッキーと◯ニーみたいだな、おい。

 

 

「うん、いいよ!よろしくヒッキー?」

 

「やめろ、ミッシー。気持ち悪い」

 

 

俺は悪意を込めてそう呼ぶ。

いざ、ミッシーと呼ばれるとなにか複雑そうだ。さすがの三科もこれには引くか。

 

 

「じゃあ改めてよろしくね。ミッシー!」

 

「ああ、、よろしく」

 

「あっ!ゆきのんも使っていいよー」

 

「わ、私は遠慮しておくわ」

 

 

雪ノ下も三科の複雑そうな顔を見て察したのだろう。

由比ヶ浜、お前の得意なその場の空気を読む特技は何処へ行ってしまったのだ。

俺はふと、あることを思い出す。

 

 

”あれから男の人が苦手になっちゃって”

 

 

これは由比ヶ浜なりに一歩踏み出そうとしているのかもしれない。ならば手伝ってやらないこともない。

 

 

「まぁそういうことだから諦めろ。ミッシー?」

 

「そうね。これは決定事項だもの」

 

 

雪ノ下も加勢してくれる。あれ?雪ノ下も察したのかな?

三科の方を見ると普段は見せない顔を見せる。そんなに睨まなくてもいいじゃないですか。

すぐにその顔を引っ込め普段の笑顔に戻る。

 

 

「まぁいっか。じゃあ俺もいい?由比ヶ浜ちゃんじゃちょっと長いからさガハマちゃんでどう?」

 

 

昔、誰かがそう呼んでいたような。誰だっけ?

 

 

「別にいいけど、、」

 

「じゃあよろしくガハマちゃん」

 

「よかったな、ガハマさん。あだ名つけてもらって」

 

「ヒッキーは呼んだらダメ!」

 

 

なんでだよ。三科がよくて俺はダメって新手のいじめ?

 

 

「雪ノ下ちゃんもなんかあだ名つける?あ、でももうゆきのんってあだ名があるのか。俺も、、、」

 

「やめてちょうだい。その呼び方は由比ヶ浜さんだけで十分よ」

 

 

雪ノ下は必死にゆきのんと呼ばれるのを阻止しようとする。実はゆきのんって呼ばれるの嫌だったのか?

俺に呼ばれたときも凄い怒ってたし。

 

 

「あれ?ゆきのんって呼ばれるの嫌だった?」

 

「べ、別に由比ヶ浜さんはいいのよ。気にしないで」

 

「そっかー。えへへー」

 

 

相変わらず百合ってますねー。

人のことホモ扱いしといて自分はいいんですか。そうですか。

 

 

まぁいい。冷めないうちにさっさと食べてしまおう。

 

 

 

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