やはり俺の人生はまちがっている。   作:にが次郎

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どうも、にが次郎でございます。

更新が遅れてしまって申し訳ないです。
今回のお話は今までの1、2話の短編ではなく、5話構成になっております。制作するにあったっていろいろ時間がかかってしまいまして。

多少、おかしなところがあるかもしれませんが大目に見てやってください。


では、どうぞ。



やはり俺の潜入任務は間違っている。

 

 

 

 

 

 

 

今、俺は走っている。全力で。

 

 

現在、”逃走中”のある男を追っている。別に某テレビ番組のパクリじゃないよ?確かに今、俺はスーツを着用している。画的にはそのまんまだ。俺がサングラスをかければハンターの出来上がり。

 

 

「比企谷くん。右に曲がったわ!」

 

 

そう無線で俺に指示を飛ばすのは雪ノ下。

 

 

なんで無線なんか使ってるのか。それには訳?がある。

 

 

それは数日前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

一色に言われて由比ヶ浜を誘うかどうしようかとウジウジ迷っていたところに一件の依頼が入った。

それにしても一色のやつは一体なんだったんだろうか。大の大人が転けたくらいで泣く訳がない。あいつの泣いている姿は葉山にフられた時に見た以来だ。まさか、また誰かにフられたのか?でも一緒にいたの俺だけだし。はっ!?まさか俺にフられたの?いや、そもそも俺は告白されてない。てか、一色が俺の事好きな訳がない。な、ないよね?混乱。このことを考えていると訳も分からず自分を攻撃してしまいそうなのでやめておこう。

 

 

まぁこの話は置いていて、本題に入ろう。

 

 

今回の依頼主は稲毛さんだ。前回までの依頼とは違い、今回は割りかしまともだ。内容はある男を確保してほしいとのこと。そんなの警察でやればいいじゃないかと思ったのだが、特に事件というわけではなく、稲毛さんの個人的な捜査ということらしい。何調べてんだよ。

 

 

その男の素性だが、男はある会社の重役だったらしい。2か月前のある日、突然、姿を消し、ホームレスとなって今も千葉のある場所に潜伏しているらしい。

その場所とやらが厄介なところで、そこは1か月半ほど前から何百ものホームレスが集まり始め、ひしめき合っている。奴らは砦を形成して、それを中心に5キロほどを不法占拠しているらしい。なんかあったよね、そんな漫画。千葉アンダーグラウンドだ。違うか。

 

 

しかし、そんなことをすれば警察も黙っていない。だが、なんらかの力が働いているのか、警察は動こうとしない。またかよ、警察。マジ使えねえ。

 

 

そして一番厄介なことが1つ。その砦のリーダー的な存在がその男なのだ。その男は他のホームレスから厚い信頼を集めており、皆がその男を守るようにしているらしい。

 

 

んで、今回の依頼はそこに潜入してその男を捕獲すること。俺はス〇ークじゃねえ。

 

 

以上のことから推論を立てると、その男は会社で何かをやらかして立場を追われることとなった。しかし、重役というだけあっていろいろな権力を持っていたのだろう。それらを使ってホームレスを集め、身を守る砦を形成した。しかし、疑問がいくつか残る。なぜ千葉に留まっているのだろう。なぜ身を守るようなことをする必要があるか。

 

 

これらを考察する。

身を守るということは、誰かに狙われているということ。それからまだ千葉にいるということは千葉にまだ用があるから。

その男は嵌められたのかもしれない。それで余計なことを暴露される前に始末されようとしている。だから身を隠して、力を溜め、嵌めた奴らに復讐しようとしているのかもしれない。

 

 

なんとも壮大な話だが、あくまでこれは俺が立てた仮説。でもこれが本当だとしたらめっちゃ関わりたくない。

 

 

稲毛さんがその男に何の用があるのかは知らないがなんだってこんな依頼を頼んできたんだ。もうこれ探偵の仕事じゃねえよ。とか思っていたのだが、なぜか杏里さんが依頼をすんなり受けてしまった。なにやってんの、杏ちゃん?

 

 

 

というか今回の依頼は絶対危ない目に合うよね。まじでアルファイトは苦手なんだよ。そこでリアルファイトが得意な元ホームレスに協力を要請した。

 

 

三科は暇だったようで二つ返事で引き受けてくれた。

 

 

そして今回は杏里さんも無線?でサポートするとのこと。あとスペシャルゲストもいるとかいないとか。

杏里さんはこの作戦のために入念に準備をしていた。

 

 

それから作戦決行までの間に三科からCQCを伝授された。特訓はマジでキツかった。三科、全然手加減してくれないし。

 

 

そして決行の日を迎えた。

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

「こちら比企谷。潜入開始地点に到着した」

 

「予定通りだ。さすが私の助手だな」

 

 

耳にはめ込んだ小型の無線機で杏里さんと通信を行う。これは杏里さんが用意したものだ。

 

 

「本作戦だが、連絡は全てこの無線で行う。依頼の内容だが、それは渡したカセットテープで確認してくれ」

 

「いや、もらってないんすけど」

 

 

今の時代カセットテープなんて使ってる人いないだろ。M〇S5のやり過ぎなんだよ。

 

 

「今回の作戦ではコードネームを使用する。盗聴されている可能性があるからな。君は今からヒッキーと名乗ってくれ」

 

「は、はあ」

 

 

いやいや、もっとまともなコードネームあるよね?それだと俺だって丸わかりだから。

 

 

「じゃあ杏里さんはなんて呼べばいいですか?」

 

「うーん、そうだな。私のことは大佐と呼んでくれ」

 

 

はぁ、杏里さん。M〇Sファンだったのか。M〇S好き過ぎるだろ。杏里さんは独身だ。1人家でM〇Sやり込んでる姿を想像すると昔の平塚先生を思い出してなんか悲しくなる。遠い目。

 

 

「三科くんには別の地点から潜入してもらう。彼からの報告は随時、君に報告する。逆もしかりだ。それから今回の作戦では有能な人間に協力を要請した」

 

 

三科の他にも協力を要請したのか。はて、誰だろう。知らない人だとなんかやりずらいな。

 

 

「大丈夫だ。君もよく知る人物だよ」

 

「こんにちは、比企谷くん」

 

「やっはろー、ヒッキー!」

 

 

やっぱりか。なんとなくわかってたけどね。

 

 

「本作戦では、無線でのサポートは私が主になって行うわ。周波数は0.103よ」

 

「おう、で、由比ヶ浜は?」

 

「私はね、メディック兼セーブを担当するよ!怪我したりとかセーブしたくなったら呼んでね。しゅうはすう?は0.618だよ!」

 

「由比ヶ浜。メディックってなんだかわかってるのか?」

 

「わかってるよ!お医者さんでしょ?」

 

「お前できるの?」

 

「で、できるよ!」

 

 

いや、絶対無理だよね。君、医療の知識ゼロだよね?さっきも”しゅうはすう?”って言ってたし。それから気になることがもう1つ。

 

 

「あと由比ヶ浜。セーブって?」

 

「え?記録だけど」

 

「記録する必要あるか?」

 

「うん。疲れて休憩したいときとかゲームをやめたいときとかにするんだよ!」

 

「ああ、そう」

 

 

これってゲームだったの?休憩したいときってもうずっと休憩してたいんだけど。なんならもう電源を入れないまである。

 

 

そんな会話をしていると杏里さんから提案が出される。

 

 

「先ほど彼にヒッキーというコードネームを使ってもらうことにしたのだが、君たちにも使ってもらいたい。何かいいものはあるかね?」

 

 

この提案に由比ヶ浜が反応する。

 

 

「あ、はい!ゆきのんはゆきのんで決まり!私は、、、」

 

「ガハマでいいんじゃねえの?」

 

「そうね。それでいいかしらガハマさん」

 

「ゆきのんにそう呼ばれるとなんか複雑」

 

「それからヒッ、、。比企谷くん。私のことは呼ばなくていいわ。わかった?」

 

「え?ああ、わかった」

 

 

別に呼ばないし、無理に俺のコードネームも呼ばなくていいからね?それにしてもそんなに嫌がらなくてもいいと八幡思うな。

 

 

「それからあなたのことはこちらで常にモニターしているから。本家のようにおかしなことをしたらすぐにわかるので自重するように」

 

 

雪ノ下は簡潔にそう言った。あのー、1ついいですかね?

 

 

「雪ノ下、どうやってモニターしてるんだ?」

 

「え?それは」

 

 

常にモニターしている。それはどこから俺をカメラで撮っていなければならない。敵地に俺だけを移すカメラがあるというとはいろいろとおかしい。そんなカメラを設置できるならそもそも潜入する必要がない。矛盾している。

 

 

「助手くん。やめるんだ!それはタイムパラドックスだ!」

 

 

な、何を言っているんだ。今の会話で時間の流れは関係ないだろ。

 

 

「ヒッキーくん?落ち着いて聞いて。それはご都合主義というやつよ」

 

 

いや、お前が落ち着けって。俺のことヒッキーって呼んじゃってるから。

 

 

「ヒッキー!細かいこと気にしたらダメだよ!」

 

 

最終的に由比ヶ浜に宥められてる。別にそんなに気にしてるわけじゃないけどね。

 

 

「ああ、そうですか。んじゃ、早いとこ行きますか」

 

 

 

俺は一旦通信を切り、潜入を開始する。しかし、すぐに雪ノ下から通信が入る。

 

 

「比企谷くん。ちょっと待って」

 

「どうした?」

 

「伝え忘れたことがあって」

 

 

雪ノ下は俺が杏里さんに渡された機器についたの説明を始める。

 

 

「大佐があなたに渡した機器について説明するわ。まずはあなたのスマートフォンにダウンロードしたアプリ。それは今のあなたの現在地、マップを確認できるわ。マーキングなども可能よ」

 

 

しっかり杏里さんのことは大佐と呼ぶのね。まぁいいけど。

 

 

「了解」

 

「それからもう1つ、双眼鏡よ」

 

「まぁ潜入と言ったら双眼鏡だよな」

 

「その双眼鏡は3段階までズームが可能よ。それからマーキングも出来るわ。そのマーキングはアプリと連動しているから覚えておいて」

 

「わかった。ちょっとやってみるわ」

 

 

雪ノ下に言われた通り、腰に巻いているバックパックから双眼鏡を取り出してここから見える少し離れた場所にある小屋の中を覗く。その中には1人のホームレスの姿があった。少し見ているとそのホームレス頭の上に赤いマークが出る。

 

 

「雪ノ下、これがマーキングか?」

 

「ええ、そうよ。人を3秒以上見続けると自動的にマーキングされるわ。一度マーキングすればその対象の位置をアプリですぐに確認できるわ。人以外でも双眼鏡の右側のボタンを押せばマーキング可能よ」

 

「そいつは便利だな。こいつを駆使すれば見つからずに行けそうだ」

 

「ちなみに一度マーキングすれば、ゲームオーバーになってリトライしても消えることはないわ」

 

 

さらりとすごいこと言ったよ、この人。俺、普通の人間だから、一度ゲームオーバーになったら、、、。おっとこれ以上は禁則事項だ。

 

しかし、こんなものを用意できるなんて杏里さんは一体、何者だよ。監督と仲良いのかな。

俺はもう1つ大事なことを思い出す。

 

 

「雪ノ下、武器は?」

 

「は?」

 

「だから武器は?」

 

「何を言っているのかしら。そんなものを携帯していたら逮捕されるわよ?」

 

 

いきなり現実的なことを言わないでほしい。

 

 

「それに今回のミッションは完全なスニーキングミッションよ。あなたの痕跡を残してはいけない。だから装備は最低限な物だけよ」

 

 

なんかミッションとか言いだしちゃったよ。実は雪ノ下もM〇Sファンなのかしら。

 

 

「どうしても必要というのなら、そうね。現地で調達して頂戴」

 

 

武器は現地調達。まぁ基本だよね。

まぁいつまでも話していてもしょうがない。そろそろ行こう。

 

 

 

 

 

「では、これより潜入を開始する」

 

 

 

 

俺は敵地へと踏み込む。

 

 

 

×××

 

 

 

 

今回の作戦時間はホームレスの動きが鈍くなる夜間帯を選考した。俺たちが潜入任務に慣れていないこと。夜間帯の方が身を隠しやすく、かつ行動しやすいということも考慮されている。

 

 

現在、俺はここまで数人のホームレスを隠れてやり過ごし、最初のチェックポイントまでやってきた。今回のミッションは地図上にマーキングされている5つのチェックポイント、それら通過し、潜入ルートにして最終目的地の砦を目指す。

 

 

「こちらヒッキー。最初のチェックポイントに到着」

 

「遅いわ!何をやっていたの?」

 

「いや、俺のこと見てるんだろ?」

 

 

さっきモニターしてるって言ってたじゃねえかよ。しかし、俺の疑問には答えてもらえない。

 

 

「まぁいいわ。三科さんは既に2つ目のチェックポイントを通過したわ。このままじゃ置いていかれるわよ?」

 

 

三科がターゲットを確保してくれるならそれでいいんだけど。てか、三科だけでよかったんじゃないの?

しかし、これを言ってしまっては元も子もないので心の中だけにしておく。

 

 

「わかったよ。置いてかれないように努力する」

 

通信を切ってから、物陰に隠れて向こう側の様子を覗く。向こう側には掘っ建て小屋が何軒かあり、その中心で、ホームレスが3、4人集まって焚き火をしている。その焚き火の明かり以外に明かりはない。あとは月明かりぐらいだ。もちろん、この区域には電気は通っていない。中心にある砦にはいくつか光が見えるが発電機などを使っているのだろう。

 

 

焚き火に集まるホームレスたちはその場を動く様子はない。よし、ちょっと迂回して掘っ建て小屋の外側を通っていけば見つからずに行けそうだ。

 

 

俺が行動を開始しようとすると、雪ノ下から通信が入る。

 

 

「比企谷くん。ちょっといいかしら」

 

「どーした?」

 

 

今度はなんだよ。いつまでも同じ場所に留まっているのは危険なんだが。

 

 

「あなたの装備している双眼鏡には集音機能が付いているわ。覗いた先の音や話している内容を盗み聞くことが可能よ。あなたの近くに居るホームレスたちの会話を盗聴してみてはどうかしら?何かターゲットの情報を得ることが出来るかもしれないわ」

 

「わかった。やってみる」

 

 

俺は双眼鏡を取り出して、ホームレスたちに向ける。

 

 

「あの人も災難だよなー」

 

「ああ、あんなことのケツ拭きを背負わされるなんて可哀想だぜ」

 

「そういや、その奴はどうなったんだ?」

 

「出所したらしいけど、後はわからん」

 

 

あの人とはターゲットのことだろうか。やはりターゲットは誰かに嵌められた。もしくは責任を押し付けられて会社を追われたようだ。後半の会話はあまり関係なさそうだ。

 

 

そんな会話を聞いていると、奥の小屋から人影が出てくる。しかし、そこまで焚き火の明かりは届いていない。双眼鏡で見てもなかなかマーキングされない。その人影は焚き火の方へとは近づいてこない。マーキング出来なければマップに位置情報も反映されないし。よって俺の行動が制限されてしまう。下手に行動すれば、最悪、発見されてしまう。見つかってしまえばそこで終了だ。俺の場合、三科やス〇ークのように(一緒にしてはいけない気がする)発見されても他の敵に情報が伝わる前に発見者を無力化する能力はない。ここは慎重に行動しなければいけない。さて、どうするか。

 

 

「比企谷くん。マーキングが上手くいかないようね。そういう時は双眼鏡の暗視モードを使うといいわ。双眼鏡の左側のボタンを押してみて」

 

 

そういう機能があるなら早めに言っていただきたいんですけど。

 

 

「仕方ないでしょう。進行上の問題よ」

 

 

内容的にってことか。なら仕方ない。俺は悪くない。作者のせいだ。

 

 

雪ノ下に言われた通りに双眼鏡の左側のボタンを押す。すると、ピュイーンという音とともに双眼鏡越しの視界が暗視モードに切り替わる。暗視モードとは体温を感知するあれだ。サーモグラフィーみたいなやつ。

 

 

視界が暗視モードに切り替わったことでよく捉えられなかった人影をマーキングすることに成功する。

気になることが1つあるのでそれを雪ノ下に尋ねる。

 

 

「1ついいか?」

 

「なにかしら?」

 

「双眼鏡だけじゃなくて、ゴーグルみたいなもので用意できなかったのか?」

 

「ああ、暗視ゴーグルのことね。あるにはあるのだけれど、今回は予算の関係上、導入は見送ったわ。次回から使用したければGMPを貯めてから研究開発班に端末から開発を指示してくれるかしら」

 

 

あー、もう完全にM〇Sの登場人物になりきってるんですね。わかります。

俺にはマザーベースもないし、ボスでもない。というか、次回もあるの?八幡聞いてないよ?

 

 

「ああ、よくわからんがわかった」

 

「では、ミッションを続行してちょうだい」

 

「了解」

 

 

マーキングも完了し、考え得る不安要素を取り除いた俺は行動を開始する。

 

 

先ほど考えたルートに沿って俺は進んでいく。焚き火を囲んでいるホームレスとは別のホームレスもこちらに近づいてくることはなさそうだ。さっさと抜けてしまおう。

 

 

もう少しで向こう側に抜けられると思った時、突然、何処かから男の声が上がる。

 

 

「ふあー、よく寝た」

 

 

声を聞いた瞬間、俺の心臓の鼓動が跳ね上がる。マジかよ!もう1人いたのかよ!

現在、俺は先ほど焚き火から一番遠い掘っ建て小屋の陰に隠れている。寝ていたと思われる男は、俺が今から進もうとしている道の端にいる。おい、なんてところで寝てんだよ!

 

 

その男は起き上がったものの、その場から動こうとしない。どうするか。

落ち着け俺。冷静になるんだ。早まる心臓の鼓動を抑えつつ、策を練る。

 

 

あいつを退かすにはどうしたらいい。まぁ常套手段は別のところで物音を立てるとかか。しかし、俺の所持している装備の中にそういったものはない。

何かを投げて気を引くか。俺のコントロールで大丈夫だろうか。下手すりゃ焚き火を囲んでいる連中まで誘き寄せかねない。だが、迷っている場合ではない。

 

 

俺のいる周りに何か適当な物はないか探す。周りを見渡すとすぐに空き缶を見つける。よし、これで行こう。俺はそれを拾い上げて、狙いを定める。

 

 

しかし、投げようとした瞬間、後ろに下げた右足で何かを蹴ってしまう。蹴ったものはペンキとかよく入っている一斗缶。それは何個も置いてあり、俺が蹴った一斗缶が倒れた勢いで周りのいくつかも同時に倒れる。当然、音も出てしまう。その音はそれほど大きくはなく、焚き火の方の連中には聞こえなかったようだが、寝ていたホームレスには届いてしまう。

 

 

くそ、しくった!なにやってんだ俺は!自分で敵に位置を知らせてしまうとは。

 

 

寝ていたホームレスは物音を聞いて立ち上がり、こちらの様子を伺っている。すると、腰の辺りからトランシーバーのようなものを取り出し、どこかへ通信を行う。

 

 

「HQ、HQ」

 

「こちらHQ」

 

「こちらパトロール。不審な物音を聞いた。これより確認に入る」

 

「こちらHQ、異常を発見次第、報告せよ」

 

 

ええぇ!!?マジかよ!なにいきなりキリッとした顔つきになってんだよ。なんか動きもプロっぽいし。これマジなやつなの?やばい、やばい、、、。

 

 

何もできずにその場に固まっているどうも俺です。はぁ、終わった。もう無理だ。

寝ていたホームレスもジリジリと俺との距離を詰めてくる。

ここから逃げようにも俺の周りには一斗缶が散らばっている。視界も悪い今、焦って動けば事態を悪化させる。くそ!どうすればいい!

 

 

必死にこの状況を打開する策を練っていると、寝ていたホームレスの元にまた無線が入る。

 

 

「こちらHQ!敵襲!直ちに現場に急行せよ!」

 

「こちらパトロール!了解!」

 

 

その無線を終えると、寝ていたホームレスはこちらとは別の方向に向かって走り出す。はぁ、助かったぁ!

しかし、敵襲ということは三科が見つかったのか?それはそれでまずいな。

後で雪ノ下に無線で確認を取ろう。それより今はここから逃げることが先決だ。どこに敵襲が現れたのかわからないが近くであることは間違いない。

 

 

俺は慎重に先に進む。

 

 

しばらく進んだところの木の陰に隠れて、雪ノ下に通信をする。

 

 

「こちらヒッキー。雪ノ下、さっき敵襲がいたというのを聞いたんだが」

 

「わかっているわ。でも三科さんが発見されたわけではないわ」

 

「どういうことだ?」

 

「わからない。でも私たち以外にその砦に潜入している輩がいるということね」

 

 

一体どうなってるんだ。この砦に潜入するということは俺たちの探しているターゲットに用があるということか?まさか、ターゲットを始末しようとしている輩か?だとしたら先を越されるのはまずいな。

 

 

「こちらで調べてみるわ。何かわかったら報告する」

 

「ああ、頼む。しかしなんだって今日なんだよ」

 

「梅雨に入った影響でここ連日雨だったものね。久々に晴れた今日を選ぶのも不思議ではないわ」

 

 

確かに一色と買い物に出かけた日以来、ずっと晴れていない。俺たちが作戦決行日を今日にしたのも同様の理由だ。

 

 

「比企谷くん。先ほどの敵襲騒ぎで敵も警戒態勢に入ったわ。慎重に行動して」

 

「ああ、わかってる」

 

 

雪ノ下との通信を終えて、俺は潜入を再開する。

 

 

 

×××

 

 

 

特に問題も起きず、しばらく進む。2つ目のチェックポイントを抜けた辺りで俺は尿意を催した。俺は男だ。最悪そこらへんの野原で済ませてしまっても構わないのだが、現在は雪ノ下たちが俺の姿をモニターしている。そんな姿を晒せばきっととんでもないことになる。

 

 

どうしようかと悩みながら進んでいると、簡易式の公衆トイレを見つける。工事現場とかによくあるやつだ。なぜかそこだけ明かりが灯されおり、見た目的にも比較的新しく設置されたもののように見える。

 

 

その周りを双眼鏡を使って覗いてみる。どうやら人影はなさそうだ。誰か来る前にさっと済ませてしまおう。

 

 

俺は抜き足差し足忍び足で近づき、公衆トイレの中に入る。思った通り、中も綺麗だ。なんでこんなところに設置されているのかはわからないが、それよりも早く用を足してしまおう。

 

 

何気なく、ちょうど目の高にあるトイレットペーパーなどが置いてある棚に目をやる。そこには一冊の雑誌が置いてあった。何気なく手に取ると、表紙には下着姿の女性が写っている。トイレにこんなものを持ち込んで一体なにに使ったのやら。俺は用を済ませた後、何気なくその雑誌をパラパラとめくってみる。どうやら俺とは趣味が合わないようだ。俺は雑誌をそっと棚に戻して、公衆トイレを後にする。

 

 

俺は公衆トイレ出て、身を隠せそうな場所まで足早に移動を開始する。近くにあった雑木林の中に身をひそめる。俺は2つ目のチェックポイントを通過した。ここら辺で一度セーブしておいた方がいいだろう。どうして?いや、ほら、このままセーブせずに行くと由比ヶ浜の出番がなくなりそうだから。

 

 

誰にしているのかわからない説明はさて置いて、由比ヶ浜に通信を行う。

 

 

「由比ヶ浜。セーブしたいんだが」

 

「うん」

 

 

ん?心なしか素っ気ない気がする。

 

 

「セーブしたいんだが」

 

「うん」

 

 

どうしたんだこいつ。声からは明らかに不機嫌なのが聞いて取れる。俺、なんかやったっけ?

 

 

「あの、由比ヶ浜さん?」

 

 

そう尋ねると、由比ヶ浜は言い辛そうに問いかけてくる。

 

 

「ヒッキーさ。さっき公衆トイレの中でなにやってたの?」

 

「は?」

 

「だから公衆トイレの中で何をやってたのか聞いてるの?」

 

「何やってたって、用を足してたんだが」

 

「嘘!あんな雑誌を手に取って!ヒッキーまじきもい!」

 

「はぁあ!?俺は何もしてない!てか、見てたのかよ!」

 

 

おいおい。トイレの中までモニターされてんのかよ。それ盗撮だよ?

 

 

「み、見てたわけじゃ、、、!って今はそっちじゃない!」

 

 

そこに雪ノ下が割って通信に入る。

 

 

「比企谷くん。あなたが最低の男なのは知っていたけれど、まさかそこまでとはね」

 

「ち、違う!誤解だ!」

 

 

必死に訂正するも取り合ってもらえない。というか必死になればなるほど墓穴を掘っている気がする。

 

 

ここで杏里さんも通信に加わる。

 

 

「はぁ、助手くん。今は仮にも任務中だぞ。君の有り余る性欲にも呆れるが、そういうのは家に帰ってから、、、。いや、この事務所で行われても困るな」

 

「いや、だから、、、」

 

「比企谷くん。いい?そういうのは誰にも見つからないところでやってちょうだい。痕跡も残してはダメよ?わかった?」

 

 

本来ならトイレの中は誰にも見つからないんですけどね?いや、今、重要なのはそこじゃない。

 

 

「痕跡なんか残すわけねぇだろ!ちゃんと見られないように処理してるわ!」

 

「そんなことは誰も聞いていないのだけれど、、、」

 

「ヒッキー、マジで気持ち悪い」

 

 

しまった!動揺して余計なことまで暴露してしまった、、、。

 

 

「わかった!わかったから俺が悪かったから!」

 

「では、認めるのね?」

 

「マジでありえない!」

 

「ち、違う!そういうことじゃない!」

 

 

2人からはもう何の返答も帰ってこない。はぁ、マジで最悪だ。

 

 

「全く、度し難いな、、、」

 

 

杏里さんは呟くように言う。

くそ!それが言いたかっただけだろ!

もういい。俺は通信を行った当初の目的を思い出す。

 

 

「はぁ、、、。由比ヶ浜。それよりセーブがしたいんだが」

 

「、、、」

 

「おい、由比ヶ浜?」

 

 

 

→セーブしない。

 

セーブさせない。

 

 

 

なんだよ!この表示は!ネタなの?ねぇ、ネタなの?

 

 

「その由比ヶ浜?これは?」

 

「ん?見ての通りだよ?」

 

「いや、これじゃ、、、」

 

「見ての通りだよ?」

 

 

2回言わなくてもわかってるわ!まいった。これじゃセーブ出来ない。

 

 

「なぁ、由比ヶ浜。頼むよ」

 

「ふん!」

 

 

そっぽを向くようなことを言う由比ヶ浜。この会話は通信越しに行っている。したがって俺はどうすることもできない。

 

 

「比企谷くん。もう素直に認めて謝りなさい」

 

「謝るって言ったって」

 

「この後に及んで、罪を否定するの?なんなら私が弁護してあげてもいいけれど」

 

「おお、マジか!」

 

 

さすが弁護士!こんなところで雪ノ下の弁護士設定が活かされるとは。

 

 

「では、被告人。あなたは公衆トイレの中で卑猥な雑誌見て行為に及んだ。これで間違いないかしら?」

 

「あ、ああ」

 

 

なんか。なんか違うような気がするんだが。

 

 

「では、被告人。あなたを有罪に処します」

 

「えぇ!?」

 

 

なんかよくわかんないうちに有罪にされちゃったよ?てか、お前、裁判官だったのかよ。弁護士じゃないのかよ。

 

 

「まぁ冗談はこれくらいにしておきましょう。では、卑猥谷くん。由比ヶ浜さんに謝りなさい」

 

「え?ああ?」

 

「謝りなさい」

 

 

雪ノ下の強く促す声に反論できず、しぶしぶ応じる。

 

 

「その、由比ヶ浜。悪かったな、?」

 

「はっきり罪状を言いなさい」

 

「なんで?」

 

「なんでもよ」

 

 

ああ!もうめんどくさい!言えばいいんだろ!わかったよ!

 

 

「あー、その、トイレの中で変な雑誌見て悪かったな、、、」

 

「やっぱりやってたんだ、、、」

 

 

由比ヶ浜はドン引きする声を上げる。

 

 

「比企谷くん。そういう性癖は感心しないわ」

 

「お、お前が言わせたんだろ!」

 

 

やっぱりそういう方向に持って行きたいのね。てか、俺は何もしてない。

 

 

「全く、度し難いな。君は」

 

 

はいはい。杏里大佐はそれが言いたいだけでしょ。

 

 

 

もういい。只でさえ三科に遅れを取っているのにこれ以上こいつらに付き合っている暇はない。俺は通信を切って先に進む。

 

 

 

 

 

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