本当はあるかも知れないけど………
珍しい事もあるんだなと、俺は思いながら歩いていた。
神機保管庫に向かいながら、三歩程先にいる第一部隊の面々から距離を置いて歩いている。
「刹那、そこまで恐縮しなくても良いでしょ」
口ではそう言いながらも、やはり距離を取っている我が第四部隊の隊長。
実力は、今前にいる雨宮リンドウ、彼に及ぶのでは無いかと噂されているが、本人はありえないと言っている。
使用武器は、ショート、バックラー。詳しく言えば、金色に輝く刀身に、真っ暗なハート型の盾。ハート型とは言っても、愛なんかより心臓を連想させる何処か気持ち悪い物だが。
それに対して俺は、ヴァリアントサイズ、シールド。詳しく言えば、刃が上下二つに別れてる、暗い青の鎌に、天使の羽が左右くっついた様な見た目をしている真っ白の盾。
第一部隊の皆様のは………言わなくても解るだろう。
「おーい、お前達、そんな距離取らなくても良いんだぞ」
「もっと気楽に行きましょ」
「………勝手に戯れてろ」
皆様、ご勝手な事言いますね………
俺も隊長も、第一部隊とは初めてである。元々、ロング、スナイパー、バスターで編成されている第一部隊に、ショート、サイズとまた近接型の奴が入るのはバランスが悪い為である。
まあ、バランスも何も今回の相手はコンゴウ三体だし、全く問題無いのだが。
「アリス、此処はどうするべきだと思う?」
普段は隊長と呼ぶが、隊長だとリンドウさんもいるので紛らわしい。なので、アリスと呼ぶ。さん、を付ける義理は無い。
「…………サクヤさん、リンドウさん、ソーマさん。改めてよろしくお願いします。まあ、私達は実力も貴方達ほど無いので距離を置かせてもらいます」
隊長が、俺に向けて何か言えと目線で伝えてくる。何を言えと。まあ、此処は空気読むか。
「えーと……第四部隊の、刹那・ソル・ブライトウェルです。迷惑かけるかも知れませんが、よろしくお願いします。後先に言います。すみません」
俺は、アナグラでこう呼ばれている。カノンと気が合うと。そして、彼女と一緒に行った時、凄く気が合った。
うん。ここまで言えばどういう事か分かるだろう。
「そんなに気軽に接することができないのか………まあ良いだろう。行くぞ」
リンドウさんがそう言ってから、誰も一言も喋らず歩きで狩場に行った。
まあ、近いんだよ。いや、外部居住区じゃないよ?だとしたらヤバすぎる。まあ、結構近いんだけどね。だからコンゴウ程度に第一部隊が呼ばれてるんだけどね。
とりあえず、狩場がかなり近づいてきた所で、チーム分けをする事になった。まあ、コンゴウは混戦のプロだからな。
「………俺が決めても良いか?」
リンドウさんの、ある意味滅茶苦茶な発言に誰も反論しなかった。流石第一部隊隊長、という所か。
「まず、俺とアリス。そして、サクヤ、ソーマ、刹那、そっちは三人で行動してもらう。あ、そうだ。第四部隊の二人に伝えるぞ。命令は三つ。死ぬな。死にそうになったら逃げろ。そんで隠れろ。運がよければ不意を突いてぶっ殺せ。あ、これじゃ四つか」
………流石は第一部隊隊長という所か。三と四を間違えるお馬鹿さに誰もツッコまない。いや、まさかわざとか……?だとしたら、リンドウさんってムードメーカー?才能が無い……けど。
そんな感じで適当に別れてコンゴウ探し。しかし、暇だな………
大きな音を出せばコンゴウは自ら来るかもしれないが、それだと三匹来るかもしれないので駄目。だから歩いて探す。
「あ……えーと………うーんと………」
本当に暇なので何か話そうとしたが、何も思い浮かばない………
「サクヤさん、ソーマさんって何時もあんなですか?」
なので、気になっている事を訊いてみた。
「そうよ。ソーマは………多分だけど死神と呼ばれている事を気にしているんじゃないのかしら」
「テメエら。少し黙ってろ」
ソーマさんに怒られました。
すること無いし、改めて地形でも見てるか。
崩れかけの高い建物が並び、それこそ人が隠れられなさそうな場所しかない、誰も近寄らないだろう場所だ。
だが、崩れかけとは言っても崩れてるわけでは無い為、視界はかなり悪い。だけど、中型のアラガミなら余裕で音で分かる場所とも言える。
また、少し歩けばかなり広い建物がある。競技場、だったか。そんなの使う人、今はいないが。
「二匹いるぞ」
先頭を歩いていたソーマが、建物の影に隠れながら俺達に唐突に報告。
「………サクヤ、援護。ソーマ、一匹片付けろ」
相手が第一部隊の人だということはすっかり忘れて、仲良くしてるコンゴウの元に駆けた。
「掛かってこいよ、この猿共がぁ!」
咬刃展開形態に変えながら、猿の内一匹に振り下ろす。
ギリギリ届かずに尻尾を掠めただけだ。そして、見事に二匹共俺を見る。
あの二人、何やってんだよ………
そう思った時、発砲音。俺の狙ってないもう一匹を捉える。そして、ソーマもそっちに向かう。
まあ、良いか。猿程度一人で捌ける。
咬刃展開形態から通常形態に戻しつつ、右に走る。
猿は、背中のパイプから風の玉を放ってきたから、全力で薙いで吹き飛ばす。更にそのまま近づき、顔面に一撃。
そのまま離脱。
後ろを見ると、猿は回りながら俺に接近していた。あれで目が回らないんだから凄い。
俺はその猿を飛び越えながら捕食し着地。そのまま
猿は、胸を叩いていた。活性化したか……
「ラッシャァアア!!」
だから、咬刃展開をもう一発して今度は体にヒット。グサリと体を貫き、血のような液体が噴き出す。やはり顔面切った時は浅かった様だ。
そのまま振り回し適当な建物にブチ当てる。
面倒臭いから咬刃解いて一気に猿に近づく。そこから幾度も斬り刻む。
血の様な液体も、オラクル細胞でできたものであり、何かかかりたくないので避けながら、ではあるが。
まあ、気がついたら死んでた。いや、死ぬという表現は合っているのか分からないが。
最後は忘れずコアを摘出する為捕食。傷だらけのオラクル細胞を容易に貫きコアを喰らう。
………うん。普通だな。普通のコアだ。
………………さて、やはり第一部隊の皆には迷惑かけたな、と。
アラガミを前にすると興奮して我を忘れてしまう。いや、自覚はあるけど抑えられない。だから………俺は俺が嫌いだ。
まだコンゴウが霧散してないから、コンゴウの上に乗って見てみると、やはり狩り終わっていたのかソーマとサクヤが此方に歩いて来ていた。遠くで見ていたのだろうか。
「はぁ………危ないから次はやめてよね」
「サクヤ……さん。悪いけど、無理です」
ソーマが、何か言いたげな目で俺を見ていた。
いや、そうか。こんな危なっかしいことしたら皆何か言いたいだろうな。
………だったら、言ってやる。
「おい、死神ッ!」
神機をソーマに向けて、俺は叫んだ。
死神のソーマ。アナグラじゃ皆知ってる話だろう。ソーマに関わった奴は皆早死するだかなんだったか………
だからこそ、俺は言う。
「俺は宣言するぜ。あんたと何百回、何千回と任務に言っても俺は生き残ってやる。絶対死なねぇッ!覚悟しな」
「……………フン。死なねぇと言ったな。死んだら地獄で待ってろ。死んだ後も痛い目にあうつもりでいな」
ソーマは、俺にそう言った。
ソーマという男と、俺がまともに話したのはこれが初めてだ。だけど、俺は死神に喧嘩を売った。死神は、それを買った。
こんな会話をコイツとするのは、多分俺が初めてだろう………
「いや〜刹那。いい加減冷静になったら?」
「…………ぅえ?」
その言葉で、熱は完全に消えた。
「刹那、中々言うな。言ったんだったら、守れよ、その約束」
「…………ぁひ」
その言葉で、全身が冷えてきた。
今の………アリスとリンドウさんに聞かれてた?
「ぅわ………ぁぁぁああああ!!!」
もう、何か死にたいです。
「なーなー、聞いてくれよー」
「あぁ、何?例の新人の件?そうだね、可愛い子だったら良いねぇ」
刹那とアリスが任務に行って、見事に残された俺達はアリスの部屋で暇潰ししていた。
「ちぇー。知ってたのかよ」
「ふっ………アリスも良いけど、萌えが無いのよね…………凛々しい姿も良いんだけど」
「………はあ。しっかし、新人が三人………しかも新型が二人ッ!変だろコレ。まあ、
トランプしながら、適当に話している。
第四部隊は、通称遊撃隊。第一第二第三、何処か分からないが人数調整や戦力の増加等の理由で突然出る事になる。逆に、第四部隊だけでの任務は珍しい。だから、遊撃隊なのだ。
こうやってくつろいでる所で突然任務の報せが来るので、心臓に悪い。
「え?そんなにいるの?…………最近変だよね、アナグラ」
「やっぱそう思う?てかさ、あのリンドウだかと死神クン、妙な動きしてるよな」
「うーん………それは知らないなぁ。あ、そーだ。支部長の事とか探ってみる?」
「やめとこうぜ。減給されたくない………」
「うん。ファイト」
俺………減給されると家族食わせていけないよ。
その時、シューとドアが開いた。お二人が帰ってきた様だ。
「ただいま………」
「ホントこのお馬鹿、やっちゃったよ……」
…………因みに、俺は刹那に首を刈られそうになった事がある。マジで咬刃展開形態で振り回すのやめて欲しい。
「お………お姉ちゃぁあゴフッ」
毎度の事だが、アリスに飛び付こうとしたセリアがバシッと横に突き飛ばされる。
「………飽きないな」
「刹那もな」
これが、第四部隊の何時もである。
これから、アナグラが大きく揺れ動くとは誰も知らずに。