映季様出したい……
では、どうぞ!
「ふぅぅー……」
筆を置き、大きく溜め息を吐く羅闍の額には玉のように吹き出した大粒の汗。目の下には隈が出来ている。
その汗を服の袖で拭い、側に置いてある湯呑みを手に取り、既に冷めてしまった緑茶を一気に喉に流し込む。
飲み終えた羅闍は一度大きく息を吸い、大きく吐き出す。
「たった少しだけ見ただけなのに……簡単なのにこっちの方がキツイってどうなんだろう……」
自身の持つ力に悪態を付きながら、急須に入った温めの緑茶をコポポと湯呑みに注ぐ。
そして、もう一度筆を取り持ち上げようとするが上手く掴めずカランッと手から筆が滑り落ちた。
少し時間が経った今、一気に体が疲労を理解したのだろう。と、羅闍は解釈した。
「はぁ……」
羅闍は顔に手をやり、上を見上げる。少しだけ空いた指と指の隙間に淡い青色の光が射し込み、目の下の隈がより一層濃く見え、不気味なほどにやつれて見えた。
羅闍は隈が酷い目でチラッと異様な存在感を放つ扉に目をやった。
西洋の家具がある和室と言うだけでもそれなりに可笑しいのだが、羅闍にはその部屋も含め見慣れた光景だった。
「マリー……」
その扉の奥に居る一人の少女に思いを馳せる。
彼女は今寂しいのだろう、と。なにもない世界で苦しいのだろう、と。何も出来ない僕は出来るのは……このくらいだから……と。
不意に羅闍は皮肉めいた笑みを浮かばせた。
「マリーの希望を奪ったのは僕なのに……なんて烏滸がましいんだろうな」
否。マリーだけではない。今まで僕は沢山の人の希望を奪い、そして、裁かられる権利すら奪ってきたのだ。
むしろこんな償い何かで僕が許されるはずがないのだ。
と、自身を責める。
「さて……休憩は終わりだ……せめてもう少しだけ、能力を使わないように……明日もやることが多いしね」
自分の逃げ道を無意識に作り、筆を持ち上げた。
その手からは既に震えが消え、確りと筆を握っていた。
・
ある館。吸血鬼が住むと言われる館。
その館には隠された地下への扉があった。
存在しないはずの壁を通り抜け、重い扉を抜けた先……そこには数多くの拷問器具と一緒に一人の少女が繋がれていた。少女の目には光が宿っておらず、手足は壁に繋がれた鉄の鎖に繋がれている。
時折、何かを思い出したかの様にガチャンガチャン!!と引きちぎる様に暴れだす。そして、少し経つと大人しくなるのだが……その日だけは違った。
まるで何かを求めているかの様に、鎖に繋がれた手を遠く、遠くへ、伸ばせもしないのに何かを掴むように……
そして、ルビーの海のなかで自分の母親を殺した少女も、何かに気付いたのか、ある一点を見つめた。
その視線の先には赤く染まった壁。否。もっと遠く……遠く離れた場所を見詰めていた。
似ているようで似ていない二つの存在。
そんな二人が引き寄せられるのは必然的であった。
お読みいただき有難うございます!!
羅闍の能力、そして役目とは……
彼は何故償うのか……
誤字脱字報告、感想、アドバイスがあれば、よろしくお願いします。
展開早い気がするけど大丈夫かな?
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では、また次回~