Fate/kaleid stage   作:にくろん。

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バサクレス戦、書きたいシーンが多すぎてどうしよう。
一話にまとめると同じような展開が同じ話で出てきそう、というか出てくる。

悩みは尽きないものです。


…文才があればなあ

あ、英霊肖像はマシュにしました。あとメフィストでマテリアルコンプできるのに…いない…

お気に入り1000件突破&UA60,000超えありがとうございます。



12話 決戦前夜

 

 

「逃げやがった…」

 

ルヴィアと遠坂の心の声が聞こえる。

でも、仕方ないだろう。戦う心構えが出来ていない小学生の少女が、得体のしれないチカラに振り回された結果、身近な人を傷付けそうになったんだ。そのショックは計り知れない。

 

 

 

 

 

 

「ごめん、衛宮くん」

 

カードを回収し、現実世界へと帰還すると遠坂が声をかけてきた。

 

「どうした?」

「イリヤのこと。巻き込んでしまった責任はこちらにあるわ。それにさっきのこと…あの子、もう戦わないって言いだすかもしれない」

 

確かにあり得るだろう。

 

「その時は私たちだけでも戦います」

 

と、そこに美遊が混ざる。

 

「正体不明の制御できていない力を持っている人となんて共闘できません」

「ちょ…!?」

「そうだね。私も同意見」

 

遠坂が口を挟む前に白野が続く。

 

 

「ルヴィアさん、カードは7枚、なんですよね?」

「え、ええ。そうですわ」

「なら話は単純です。明日の夜、私たちがそれを回収すればもうこんなことをする必要はなくなる」

「その通りよ」

 

遠坂が、白野の言い分に何か得心がいった、というように頷いた。

 

 

「わかっているならいいわ。ルヴィア、帰るわよ。あなたたちもしっかり休んで明日に備えなさい」

「なっ、遠坂凛!あなたという人は————」

「はいはい、後で聞くから。あと衛宮くん。貴方もどうするのか、決めたなら連絡をちょうだい」

 

そう言って遠坂は文句を垂れるルヴィアを引きずっていった。

 

 

 

 

さて、と。

 

「ありがとうな、二人とも」

 

残った妹の友人二人に言う。

 

「明日で全部終わらせて、イリヤの負担をなくそうと考えてくれたんだろ?」

「あ、やっぱり士郎兄にはばれた?」

「多分遠坂も気づいていると思うぞ」

「士郎…さんは」

 

振り絞るような声色。

 

「士郎さんは、どうするんですか?」

 

その瞳に映る不安の色。

でもそれは友人の兄を心配する色合いとはまた違う、どちらかというと身内を慮るような色合いで—————。

 

 

いや、俺は何を考えているんだ。

 

頭に浮かび上がった疑念を晴らすかのようにかぶりを振り、答える。

 

「俺はもちろん、明日も戦うよ。白野たちと同じで、さ。俺も(イリヤ)にはこんな危険な世界からは離れていてほしかったんだ。でも、関わってしまった。じゃあ、兄である俺が出来るのは精一杯のフォローと後始末だけさ」

 

 

俺は戦う。

残ったクラスに対応する英霊が何なのかわからないけど、早く済ますことで妹の不安を拭う事が出来るのなら。

 

 

そう考えていたからか、俺は美遊の羨望のまなざしに気付かなかった———————。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝。

それはすがすがしいもの。

小鳥たちは囀り、草木は光を浴びて青々と輝く。

この時期だと、もう少しするとセミの合唱も聞こえるようになるだろう。そう思うと、この間までのカエルたちの輪唱も懐かしい。

 

 

「———ぃ、————って?」

 

 

確実に夏の足音が聞こえる。

ああ、もうすぐそこまでやって来ているんだろう。身も心も開放的になる夏が。

夏といえば海に山に花火にお祭り。

水着や浴衣も新調しないと。

あ、キャンプも行きたいなぁ。

 

 

「———い、白野も—————」

 

 

そうだ、久々に魃さんに麻婆を監修してもらうのもいいかもしれない。

あの辛さがたまらない泰山の麻婆。その根源は私を以ってしてもまだ一部しか再現できていない。この機会に免許皆伝を目指すのもいいだろう。

 

 

「————って、いい加減反応しろ白野!」

 

 

ぐりん、と肩に乗せられた手に引っ張られ強引に体を向けさせられる。

むう。現実逃避していたのに。

 

 

「どうにかしてくれって白野!なんかわからないけどあの二人の雰囲気はやばい!」

「何があったか知らない?白野ちゃん?」

 

美々と雀花が迫ってくる。

それもそうだ。

 

いつもはそこにいるだけで花が咲いたような笑顔を振りまくイリヤが、登校してきてからそんなオーラが微塵も出していないのだ。

それだけでもクラスの男子は慌てているのに、美々が「何かあったの?」と疑問に思って聞いても「何にもないよ?大丈夫ー」なのだ。

 

 

大丈夫といって大丈夫だったやつが今までいるのか。

 

 

そんなこんなで混乱しているクラスに今度は美遊が入ってきた。

そうするとイリヤはあからさまに美遊を避け、美遊もそんなイリヤを避ける。そんな何とも空気の悪い雰囲気が出来上がっていた。

 

 

「く、くう…こうなると余程空気の読めない馬鹿か、どうしようのないアホがいないと状況の打破は厳しいな…」

「っはよー、エブリデイ!今日のスカイはサンデイだぜ!」

「「「余程空気の読めない馬鹿でどうしようのないアホがきた!?!?」」」

 

どうしよう。突っ込みが追い付かない。セリフから突っ込めばいいのか、この狙ったようなタイミングを突っ込めばいいのか、いやまて、そもそもなんであのバカ(龍子)は英語でもないカタカナを?

 

 

混乱している間に龍子は騒乱の中心(イリヤ)にも挨拶をする。

 

「ぅオーっス、イリヤ!今日のご機嫌ハウドウユーゥ!」

「……龍子は元気だねー……」

 

ピシリ、と龍子が硬直する中、私たちの心は一つになった。

 

 

 

 

——————アイツ、やりやがった。

 

 

 

龍子からしたらイリヤは、那奈亀や雀花のようにキックやチョップで突っ込まない、とても話しやすい(私たちから見たらボケやすい)相手なのだ。

 

なのにこの薄い反応。

 

「オーゥ、ソーバッド」

 

でも龍子はくじけない。

薄い反応がどうした。そんな相手からも突っ込みが返されてこそ、真のボケではないのかといわんばかりにくじけない。

 

「なんだよ元気ねーな!朝からそんなんじゃミッドナイトまで持たねーぞ?朝飯食ったか?昼飯は?間食と晩飯は大丈夫か?」

 

しかしイリヤは反応を返さない。

 

「おいおい、本当に大丈夫か?なぁ、美遊!お前からも言ってやれよ!」

 

ならば周りから巻き込むまで————と龍子は盛大に地雷を踏みぬいた。

 

 

 

 

—————アイツ、やりやがった(二回目)

 

 

 

居た堪れない空気がクラスを覆う。

そして、世間の風は龍子に冷たかった。

 

 

 

「うるさい。静かにして」

 

美遊の放った一言に龍子は再び固まり、えぐえぐと泣きながらゆっくりと私たちのところまで帰ってきた。

大丈夫龍子。貴女の犠牲は忘れない。

 

「ちくしょう。誰か俺にやさしくしてくれ…!」

「はっはっは。このうじ虫め」

 

いっそ晴れやかに笑顔を浮かべ那奈亀が龍子の頭をなでる。

 

「さっすが龍子。空気が読めていないな」

 

と、雀花。

全く容赦がない。

 

 

 

 

 

「それはそうと、白野。あんたもだろ?イリヤと何かあったのか?」

 

雀花の言葉にドキッとする。

 

 

「え、何のこと…?」

「違うなら違うでいいんだけどさ、あれだけ仲がいい白野とイリヤが今日一言もしゃべってないんだぞ?何かあったのかって普通思うって」

 

……そんなところに気付いていたのか。

すごいなぁ、と思いながらも返す。

 

「うん、ちょっと…ね。大丈夫、何とかするから」

「ったく、大丈夫が大丈夫じゃないのは白野もだぞ?」

 

うりうりーとほっぺたをいじられる。

…大丈夫だ。今夜、全部終わらせるんだから。

 

 

 

 

 

 

「いい加減引っ張るのやめて!」

 

…つねられすぎて赤くなってる……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日一日、イリヤに避けられていた。

夕食も口数少なく、食べ終わるとすぐに自室に引きこもってしまった。

 

 

 

「全く…生活はきちんとしてほしいものです」

「そう言うなって」

「そうそう。聖杯として封印されていた分の魔力が使われていたんでしょ?得体のしれない力におびえている」

「そうは言っても…士郎さん。ちゃんと、今日で終わらせてきてくださいね?」

「もちろんだ。これ以上イリヤの負担を増やしてたまるかってんだ」

 

 

今日の待ち合わせは早い。

10時に新都の駅前だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

既に待ち合わせ場所には全員揃っていた。

 

「一応イリヤから辞表は貰っていたんだけど…やっぱり来ないか」

「ああ」

 

そのまま五人で移動し、ビルの屋上までやって来た。

 

——————ああ、ここは。

アーチャー(アイツ)の生前の記憶に残っていたビルだ。

屋上に上がるまで気づかなかった。でもここは、初めて相棒(セイバー)の宝具を見た場所なんだから。

 

あの日。

天駆ける天馬と星に鍛えられた剣の激突。

 

己の非力さを呪う場所。

自分の存在が彼女の枷となってしまった戦い。

 

 

————ここはエミヤシロウの原点であり、分岐点の一つだ。

 

 

 

 

「ミーティングを始めるわ」

 

遠坂の号令に引き戻される

そうだ。今はこっちに集中しないと。

 

「カードが確認されている座標はこのビルよ。今まで回収したカードの分鏡面界は縮小されていると思うから立ち回りには気を付けて」

「最後のカード、ということは最も長く地脈から魔力を吸い上げているカードということ。全員決して油断しないように」

「質問。今回の戦術は?」

「最大火力での正面突破。昨日みたいな搦め手を使うのは一騎だけだとヤマを張るわ。じゃないと対策も何もないもの」

「ということは、全員の援護を受けて私が刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルグ)を使って一撃必殺を狙う、ということですか?」

「その通りよ」

刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルグ)を避けられたらどうするんだ?」

「因果律を捻じ曲げる必中の槍でしてよ?そんなことはないと思いますが…」

「…可能性の話だ。相手は劣化しているとはいえ英霊。どんな手段や宝具を持っているかわからないし、避けなくても盾で防がれるかもしれない」

 

事実、セイバーは回避しアーチャーは盾で受け止めた。

 

「…そうね。その可能性は正直考えていなかったわ。となると…セイバーの約束された勝利の剣(エクスカリバー)くらいしかなさそうね。何にせよ、ゲイボルグが効果を発揮しなかったときはすぐに撤退よ。その反省も踏まえてもう一度作戦を立てるわ」

 

方針は決まった。

さあ、最終戦だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

接界(ジャンプ)して最初に目に入ったのは空に浮かぶ格子模様の狭さだった。

どう見てもビルの周囲にしか展開されていない。

 

こんな狭いところで…。

 

この間の黒騎士を思い出す。

もしあんな奴が現れたら————。そんな嫌な予感を拭いきれずに緊張感を高める。

 

「どこにいるかわからない、全員気を抜くな」

 

士郎兄が陰陽一対の中華剣を構え、警戒を促す。

ピリピリとした空気が一番高まった頃!

 

 

 

ズズン…と空気が軋んだ。

 

 

 

 

「■■■■、■■—————」

 

 

 

屋上の端に現れたソレは黒く染まった巌の巨人。

 

「な————ッ!」

 

士郎兄の顔が引きつり、

 

 

 

「■■■■、■■■—————ッッ!!!」

 

 

巨人が突進してきた。

 




ようやく終わりが見えてきた無印編。
最後まで楽しんでいただけたら幸いです。


バサクレス戦のビルはセイバールートでライダーと戦ったビルです。
プリヤ読みながらstay nightで戦闘のあったところにクラスカードがあるなーと思ったのでこのビルはそうだろうな、ということから。

…この理論だとバゼットさんはランサーは教会だと思いますが、アーチャーは…どこだ?どこで手に入れたんだ?
柳洞寺はドライに繋がる爆心地、飛び散ったカードが元の所在にあるわけないと仮定すると省かれるし…港のコンテナ置き場かな?


誤字脱字などの指摘、感想、評価などがあればよろしくお願いします。
…最近誤字ひどいんだよなぁ

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