Fate/kaleid stage   作:にくろん。

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刀式来たあああああ!!!

吼えた。叫んだ。ガッツポーズした。
全体即死させるとかサクサク周回できるううう



16話 そして。

 

「お、終わった…」

 

深く深く息を吐き、ようやく一心地着いた。

この数日間でどれだけの死線を潜り抜けたんだろう?月よりも多いかも…いや、そうでもないような…。

 

「ハクノーっ!」

 

イリヤが飛びついてくる。見ると、美遊もなんとなくうずうずしているようにも見える。

 

無言でスッ…と腕を開けると、気付いた美遊が顔を赤くしながら遠慮がちに飛び込んできた。

…うむ、かわいい。

 

「えへへー。二人ともごめんね?それとありがとう」

 

腕の中でイリヤが言う。美遊と顔を見合わせ、同時に返す。

 

「「友達だもん!」」

 

 

 

 

 

地面に転がり、格子状の空を見上げる。

離れた場所では、イリヤたちがわいわいとしているのが聞こえる。戦闘中はあまり注視出来なかったが、きちんと仲直りできているようで安心する。

 

「お疲れさまです」

 

そんな俺にルヴィアが声をかけてきた。遠坂も後ろにいる。

 

「そっちもな。けがはないか?」

「全然大丈夫よ。衛宮くんこそ大丈夫?」

「ああ。直撃は避けていたし、体は大丈夫だ。その分魔力はスッカラカンだけどな」

 

先ほど一瞬だけ装いが変貌したことを思い出す。あの時、潤沢と呼べるほどに自身の体に満ちていた魔力は、今や見る影もない。

 

「聞きたいことは山ほどあるけど、今日は置いといてあげるわ」

「ええ。感謝しなさいミスタ」

 

2人がそんなことをおっしゃる。

嫌な予感しかしない。

 

「…遠坂にしては優しいんだな」

「私にしてはって何よ!」

 

がーっと吼えるあかいあくま。

被っていた猫が吹き飛んでいるのはいいんだろうか。

 

「今日は衛宮くんの活躍が無かったら本当にやばかったんだから。感謝くらいしてるっての」

 

抱き合うイリヤたちの元へ向かう遠坂の小さな呟きが風に乗って聞こえてくる。

…これは聞こえていないふりをした方がいいんだろうな。

 

 

「仲良くするのもいいけどそこの三人!そろそろ戻るわよ!」

 

こうして俺たちは、最後の鏡面界を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

みんなで元の世界のビルの屋上に降り立つ。

当たり前のことだけど、鏡面界(向こう)と違ってビルに穴は空いていないし、崩れているところもない。同じビルなのにさっきまでの戦闘を感じられないから、まるで夢でも見ていたんじゃないかって思ってしまう。

 

他のみんなも、こっちの世界に戻って来てからどことなく気が抜けているようにも見える。

 

「私が持つアーチャー、ライダー、アサシンに」

「私の持つランサー、キャスター、セイバー。そして今入手したバーサーカー…」

「これで、ようやくすべてのカードの回収完了。コンプリートよ」

 

凛姉とルヴィアさんはカードの確認をし、士郎兄は一歩離れたところから私たちみんなを見守るように壁にもたれかかっている。

 

「イリヤ、白野、そして美遊」

 

凛姉がそう切り出すと、ルビーとじゃれていたイリヤがおとなしくなった。

 

「…勝手に巻き込んでおいてなんだけど、あなたたちがいてくれてよかった。私たちだけじゃたぶん、勝てなかったと思う。最後まで戦ってくれて…ありがとう」

 

凛姉が私たちに頭を下げる。

 

胸の奥から、じんわりとした温かいものが溢れてくる。魔法少女三人で顔を見合せ、みんなで微笑む。

 

「それじゃ、このカードは私が倫敦(ロンドン)に…」

 

そこまで言った時、スリ師もびっくりな鮮やかな手つきで、凛姉の手からルヴィアさんがカードを抜き取った。

 

「ホ—————ッホッホッホ!!最後の最後に油断しましたわね遠坂凛!御安心なさい!カードはすべてこの私が大師父の元へ届けて差し上げますわ!貴女は管理人(セカンドオーナー)らしくそこの問題魔術師の報告書(後始末)をなさい!!」

「んなああああッ!?」

 

そのままホバリングするヘリコプターから延びてきた縄はしごをするすると登るルヴィアさん。

 

「ちょ、ちょっと!あんた手柄独り占めする気かこの!」

「ホーッホッホ!」

「それどころか衛宮くんの事情(厄介ごと)まで全部押し付ける気か!」

「それに関しては管理人(セカンドオーナー)の正式な仕事でなくて?」

「ちょっとは手伝いなさい!!!」

 

そのままルヴィアさんは逃走。

凛姉は身体能力を強化し、追跡していった。

 

 

 

何とも言えぬ空気のままその場は解散となり、私たちは家へと帰った。

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

いつも通りイリヤと合流し、学校へ向かう。

 

「昨日までのことが嘘みたいだよね」

「あ、ハクノも?私も起きたとき、そう思ったよ」

『普通の人なら体験しないことですし、かなりの数の死線を潜り抜けましたからねー』

「ほんと、よく生きていたよね…」

「甘いわよイリヤ。まだまだ死ねるから」

「何その予言!?」

 

他愛もない話をしているうちに学校に着く。

 

 

 

 

 

「なんていうか」

 

昼休み。

唐突に雀花が切り出してきた。

 

「もう、あんたたちの仲がどうなっているか私にはよくわからんのだけれども…昨日までケンカしてなかったっけ?」

 

視線の先には、椅子に座る私。

の上にちょこんと腰掛け、イリヤの腕にぴっとりとくっ付く美遊。

 

「やー…気のせいじゃない?きっとすべてが」

 

イリヤが苦笑いしながら返す。

いや、その言い訳は苦しすぎるだろ。

 

むふーと美遊の頭を撫でながら私も苦笑いする。

美遊はされるがままだ。あ、口元がぴくぴくしている。気持ちいのかーそうかーかわいいじゃないかこのやろう。

 

気分が良くなり、そのまま撫で続ける。セイバーで培ったテクニックがこんなところで役に立つとは。

 

「ハク子のやろー!俺たちの知らないところで美遊ルート攻略してやがったのか!」

「一夜にして何というデレっぷり…というか美遊そんなキャラだっけ!?」

「小学五年生にして謎の包容力があるという白野…やはりその噂は本当だったのか!」

「何その噂初耳なんだけど」

「本人の知らないところで流れるのが噂ってやつだな」

 

包容力、というところでうんうんと頷くイリヤと美遊。あんたたちもか。

 

「実際、ハクノの包容力はすごいよ。何度ハクノに助けられたことか。お姉ちゃんみたいだもん」

「白野の謎の安心感と信頼感」

 

…まあ、二度目の人生だから、ということにしておこう。

 

 

「まーいいや!ミユキチも丸くなったということで、今後とも仲良くしていこーぜっ!」

「は?どうしてあなたと仲良くしなくちゃいけないの?」

 

ハイタッチしようとする龍子の手をガードし、美遊が答える。

私たちを見てにやにやしていた連中も、仲良いなーとか言いながら微笑んでいた人たちも含めて、クラスメート全員の空気が凍った。

 

「私の友達はイリヤと白野だけ。あなた達には関係ないでしょう?もう二人に近付かないで」

 

あまりにも唐突で突っ込めなかった。

 

「う…」

 

じわりと龍子の目に涙がたまり、

 

「うおおおアアァァーッ!」

「な、泣かせたぞーっ!」

「ちょっとミユーっ!?」

 

「とうっ!」

 

どすっ、と鈍い音と共にチョップが美遊の頭に突き刺さる。

シュウウウウウとなんか煙が出ているけど気にしない。

 

わなわなと震えている美遊に言う。

 

 

「言い過ぎ。もっと周りのことを考えて」

 

涙目の美遊は少し間をあけて、

 

「うん」

 

と返した。

 

再び驚愕がクラスを包み込む。

 

「あのエーデルフェルトさんを手なずけた…だと!?」「やばい美遊さん超かわいいんだけど」「いやはくのんだろ、なんだあの包容力」「私、何かに目覚めそう」

 

待って最後言ったの美々だよね!?

 

 

こうして、私たちの日常は相も変わらずに続いていくのだった。まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの戦闘から一日たち、登校した俺を一成と慎二が迎える。

 

「おい、聞いたか衛宮!今日転校生がくるってさ!」

「む、間桐。その話題は俺から話すとさっき決めたはずだが」

「細かいなあ生徒会長さんは。いいじゃないか。でさ、その転校生女子らしいんだよ。かわいいかな?かわいいかな!?」

「落ち着け間桐。その件なんだが、最新情報によると留学生らしい」

 

む。

猛烈に嫌な予感がしてきた。なんだろう。

 

「————なんだが、衛宮。そこのところどう思う?…ってどうした、顔色が悪いが」

「あー、悪い。ちょっとぼーっとしていた。大丈夫だ。で、なんだって?」

「大丈夫ならいいんだが…その留学生はイギリスから来るらしい。英国からやってくる才女とあれば、美しく気品が溢れた女性に違いないと思うのだが衛宮はどう思う?と聞いたんだ」

「だからさ、生徒会長は夢を持ちすぎなんだって!学校で優等生だからって性格がいいとは限らないぜ?ほら、うちの学校にもいたじゃんか猫被った優等生!」

「————あの女狐のことは忘れよう」

「————そうだな、悪かったよ柳洞」

 

慎二の言葉に二人してどんより沈む。

そりゃそうだ。慎二は桜の一件で某優等生の世話になったし、一成はもともと天敵だ。

 

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

と、そのタイミングでチャイムが鳴る。

担任の先生が教室に入って来たので俺たちは各自席に戻った。

 

「えー、今日は皆さんに転校生を二人、紹介します」

 

2人、のところで教室が大きくざわめく。

一成は、なぜ俺のところに情報が来ていない…と歯噛みしているし、慎二はもう一人の性別が気になるのかそわそわしている。

 

「さあ、喜べ野郎ども!先生の独断と偏見で言わせてもらうと二人とも美少女だッ!」

「「「うおおおおおおおおおッッッ!!!」」」

 

割れんばかりに轟く野太い歓声。

物理的に教室が震えているんじゃないか?これ…。

 

「さあ自己紹介を!といっても、みんな一人は知っているんだけどな」

 

ガラッ、と扉が開き、二人の少女が入ってくる。

穂村原の制服に身を包み、一人は黒髪をツーサイドテイルに纏め、もう一人は金髪を縦にロールさせている。

 

そこまで認識した途端、俺は頭を押さえ突っ伏した。

視界の端で慎二と一成がこの世の終わりのような顔をしている。

 

 

「みなさん、お久しぶりです。以前この学校からイギリスに留学した遠坂凛です。向こうの学校の制度を使い、期限付きですが再び日本で学ぶことになりました。改めてよろしくお願いします」

「初めまして。ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトと申します。遠坂凛とは学び舎を共にする学友で、以前からこちらの学校のことを伺っておりました。一度は訪れてみたいと思っていた日本の学び舎に通う機会ができて大変うれしく思います。これからよろしくお願いいたしますね」

 

 

 

 

俺の日常は、波乱に満ちたものになるらしい。

 

 

 

 

 




これにて無印完結です。
半年間お付き合いいただき、ありがとうございました。

美遊のデレっぷりは、作者の予想もしていないところ。書いているうちに気が付けばなんだこの可愛い生物。
白野の包容力云々は前にそれっぽいことを書いたので強化した感じです。

ツヴァイ編は少し間を挟んで更新していく予定です。
つきましては、以前行ったアンケートの締切を3月9日いっぱいとさせていただきます。ご了承ください。

改めまして、行き当たりばったりなこんな作品を読んでくださってありがとうございます。


誤字脱字などの指摘、感想、評価などがありましたらお願いします。

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