バイトが忙しくて執筆時間ガガガ。
エクステラに続き、EXTRAアニメ、HF続報が発表されましたね!
楽しみすぎる…。
プリヤの最新刊も発売されましたし、ドライアニメも楽しみ過ぎます!
…サファイアはどうなるんだろうか。
クロ編、ほとんど書くことがないことに気付き愕然としました。
バゼットからは考えていたのにな…。
■
凛姉たちに続き、円蔵山の中腹を進む。
地脈の正常化という任務に当たり、私たちの持つステッキたちの力を必要としているらしい。
魔法少女に転身するのもあの戦い以来だ。
道中、底なし沼などの致死性のトラップもあったけど、無事に円蔵山の大空洞にたどり着く。
「まさか山の中にこんなところがあるなんて…」
「それよりも道中で死にかけるとは思わなかったわよ…」
「あはは…」
ぶつくさ言いながら凛姉たちはてきぱきと準備を進める。
カバンから取り出した大きな針?を突き立て、それを中心に魔法陣を敷いていく。
「地礼針設置完了っと」
針の先端は木のように大きく広がり、明らかに不安定そうなのにびくともせずに突き立ったままになった。
「ここからはあなたたちの出番よ。魔力を思いっきりこの礼装に込めていきなさい。そうすればあとは地脈へと自動的に流れて、拡張化術式を起動するはずよ」
「大丈夫。ステッキのおかげであなたたちに負担はほとんどないはずよ。遠慮なくやってしまいなさい」
「カウントダウン3…2…1…魔力注入開始!最大出力よ!」
凛姉たちの言葉を受け、全力でラルドから魔力を放つ。
「いけるわ…出力そのまま維持!充填率順調に上昇中よ!」
その声に呼応するかのように地礼針の広がりは大きくなり、木々の枝を思わせる先端から余剰魔力が輝きだす。
「90…100…115…!」
枝葉の輝きは増し、大樹そのものが煌々と輝きだす。
「120!!
そして合図とともに蓄えられていた魔力が解放され、地脈へと一気に流れていった。
「………これで終わり?なんだかあっけないね」
「一応はね。効果のほどはまた改めて観測しなくちゃいけないけど…」
「作業は終了。早く帰りますわよ。こんな地の底、長居するところでは…」
「———ちょっと待った。これは———!」
ゴゴゴゴゴゴオオオッ!!
違和感を感じて叫ぶと同時に地礼針を中心に大きく地面がひび割れた。
「ノックバック!?」
「そんな!出力は十分だったはず―——ってまずいですわ!逆流が来ます!」
大空洞の天井へと大きく魔力の奔流が叩き付けられる。
崩壊した岩盤から岩が降り注ぐ中、ソレは起こった。
イリヤが凛姉のポケットへと右手を伸ばし―——
「クラスカード”アーチャー”。
そして同時に私たちに向かって降り注ぐ岩に手を伸ばし、
「
光の盾を展開した。
覚えがあるどころじゃない光の盾。
彼の弓兵が誇る防御宝具。
しかしそれは私が識る者とは違い、少し岩を押しとどめるだけにとまった。
『大丈夫?はくのん』
「げほっ…なんとか…みんなは?」
「私は大丈夫でしてよ…美遊!?」
「はい、大丈夫…ルヴィアさんが出血多量です!」
「イリヤ!どこ!?」
「うーここだよー。なんかあたまいった―…打ったかも…」
「よかったイリ」
イリヤの方を見た全員が絶句する。
なんせイリヤが
「「え……」」
二人いたから。
◆
放課後になりマウント深山の商店街を歩く。
今日の買い出し担当は俺だから、献立を考えつつ八百屋を冷やかしていると、急に地面が揺れた。
「おお!?」
「地震だ!」
「みんな無事か?」
幸いそこまで規模は大きくなく、商店街の人たちの安否確認も念のためといった感じだ。
「士郎くんも大丈夫かい?」
「ええ、大丈夫です。念のために家の方も見てくるので、今日はここでいいですか?」
「もちろんだよ!イリヤちゃんとセラさんによろしくね」
だけど、今の地震に違和感を覚えていた俺は帰路を急ぐことにした。
マウント深山を抜け、新都へと足を進める。
と、不自然なまでに人の気配が途切れていることに気付いた。
「え…」
物音ひとつしない世界。
意識を変える。
なぜ今まで気づかなかったんだ。
それほどまでに精巧に人払いの結界は機能していた。
「さすがね。おにーちゃん」
不意に頭上から聞こえてきた声に反応し、地面を転がる。
ガガガッ!、とさっきまでいた場所に
そしてふわりと目の前に降り立った少女は———
「イリ、ヤ?」
「正解よ」
問答無用で赤い外套を纏ったイリヤは干将莫耶を振るってくる!
咄嗟に学生鞄を強化し盾にしたが、次の攻撃には耐えられないだろう。
「ふうん。強化の魔術、ね。やっぱりお兄ちゃんは最初からそっち側だったって訳」
イリヤは追撃をかけてくることなく干将をくるくると回し呟く。
「…どういうことだ?」
「それは服装のこと?それともこの剣を持っていること?それとも…私自身?」
「全部だ!」
イリヤを傷付けないように刃を潰した干将莫耶を投影し構える。
幸い、ここら一帯にはイリヤが張ったと思われる認識疎外と人払いの結界が張られている。神秘の漏えいや一般人の巻き添えは考えなくていいはずだ。
「優しいのね。でも、それじゃあ私には勝てない」
イリヤはそう言い、空中に手をかざす。
「お兄ちゃんがこっち側なら容赦はしないわ。パパとママの前にお兄ちゃんから片付けてあげる。———
見慣れた、魔力による紫電が煌き、空中で形作る。
現れた刀剣類の数は10。
「死んで」
慈悲のかけらもなく放たれた10の殺意を前に俺は、
「———そうじゃない」
新たな投影をすることなく、両手に握った干将莫耶だけで切り抜けた。
「な————」
今のイリヤの言動で俺はあることを思い出していた。
それはヘラクレスのマスターであった前世のイリヤ。今のイリヤは彼女によく似ていた。
姿が、じゃない。
持っている力と考え方のアンバランスさが。歪なままの純粋さが。
それを思い至ったと同時に、気付いてしまった。
このイリヤは、
おかしくはない。
アイリさんたちがアインツベルンを捨て、一般人として生きていくうえでイリヤとアイリさんという聖杯の器の問題は避けては通れなかったはずの問題だ。切嗣は大丈夫、って言っていたけど、おそらく封印していたんだろう。
そう考えると、カード回収任務の時のイリヤの変貌にも納得がいく。
「くっ!」
イリヤはそのまま接近戦を仕掛けてくる。
しかしそれは干将莫耶を用いた接近戦でしかなく、身体能力にものを言わせた連撃。確かに効果的だろうが、英霊たちと戦ってきたことのある俺からすれば経験が圧倒的に足りない。
速い、鋭い、重い。
耳元で唸る刃は確かに危険だ。
でも、鍛錬を重ねた先の巧さが感じられない。
「ウソ…」
なかなか当たらない攻撃に距離を取ったイリヤは焦ったように唇を噛みしめる。
「イリヤ。お前がどういう思いで今まで過ごしてきたのか、俺にはわからない。だけどな、アイリさんたちも考え抜いた結果だと思うんだ。だからまず―——殺すなんて言う前に、しっかり話し合ってみないか?」
「———ッ!わかったような口を、利くな!!!」
途端、逆上したイリヤはさらに投影を増やす。
聖杯としての機能を持ったイリヤ。封印されてきた彼女の怒りが、憤りが牙を剥く。
中には名だたる宝具も紛れているが、俺から見たら
「贋作どころか劣化品じゃないか…これはな、心を現すんだよ」
そもそも、いくらあの夜と同じように英霊の力を身に宿していても、
心を現す世界から、その一端を紡ぎ上げる。それ故に自身の想いが現れる。
手本を見せるかのように干将莫耶を幻想に破棄し、名もない一本のロングブレードを投影する。
「そんな無銘の剣でこの剣群を防げると思うの?」
「防げなきゃここで出す必要なんてないさ」
その言葉を皮切りに、飛来する剣群を叩き落していく。
切り上げ、払い、振り抜き、叩き落す。
その動作が30を超えるころ、剣群は尽きていた。
「なんで…」
刃毀れすらないロングソード。
「途中から、剣に重みを感じなくなったぞ。
「ッ!」
愕然としたイリヤはその場を動かない。
「家に帰ろうイリヤ」
「————」
無言のままイリヤは一歩踏み出し、
「ホントに、お人よしね」
俺の足元に残っていた一本の剣を爆破した。
「—————————ぁ」
白煙の中、間一髪切り抜ける。
全身に鈍い痛みが広がり、制服のズボンは裾のところからズタズタになり、そこから覗く肌には火傷の跡が見える。
そして気付いた。
人払いが解除されている。
「くそ———」
逃げやがったな、と悪態を飲み込み家路を急ぐ。
とにかく家に帰らないと。こんな姿誰かに見られるわけにはいかない。
セラとリズに相談するべきか悩みながら動ける全速力で深山町を駆け抜けた。
いやほんと、クロ編原作通りなんだよな…。
改変する箇所もあんまりないし、バゼット以降しかプロット考えていなかった自分にも驚きです。原作と同じこと文章にするこのめんどくささ…(笑)
誤字脱字などの指摘、感想、評価などがありましたらよろしくお願いします。
カルナもエドモンも来なかった。
朝、あとがきを書きながら思ったこと。
———深夜テンション怖い