ネタバレしないようにしないと、ぽろっと言っちゃいそう。でもああいう展開大好きだったり...(笑)
エイプリルフールのリヨさん酷使度合いが半端ねえ型月。
確かにほかの方の負担は減ったどころか無くなったけど…ww
あ、呼符でナイチンゲール来ました。10連でレオくん、ショタ慎二、カレスコ2枚目だったんで今回は勝利かな
...深刻なランサー不足。
■
今日、登校するなりイリヤはボロボロだった。
原因を聞く間もなく、美遊と一緒に保健室へと運ぶ。
「ハクノ…ミユ…私もうだめかもしれない」
「しっかりしてイリヤ!何があったの!?」
「暴走トラック、頭上から植木鉢、ドーベルマンの集団、水道管の破裂、電線の断裂、ガス管破裂…朝からこんなに不幸が続くなんて…」
「何その
どこぞの青タイツもびっくりだ。
「大したけがはないわ。かすり傷程度よ」
「あ、折手死亜先生」
「つまらないわね。次来るときは内臓破裂みたいな半死半生のけがをしてきなさい」
「カレン姉…」
「あら。誰かと思ったら愚妹じゃない。貴女もけがしたの?」
「人の不幸をそこまで喜べるのはさすがお父さんの血を継いでいるだけのことはあるよね」
「私程度と一緒にしたらあの人の方が可哀そうよ」
「…白野の知り合い?」
「あ、ミユは知らなかったんだね。私も最近知ったんだけど、ハクノのお姉ちゃんらしいよ」
「折手死亜華憐といいます初めまして。愚妹がいつもお世話になっています」
「人格破綻な保健室養護教諭よ。付き合い方には注意すること」
「あはは…」
「まあいいわ。ベッドは貸してあげるから、良くなったら勝手に戻りなさい。私は出かけるから」
「ん。教会まで?」
「ええ」
そう言って出ていくカレン姉。
ほんと、見た目は良いのにあの性格じゃあね…って、それはもう無理か。
「腕は確かだから怪我は大丈夫だと思うけど、体調とかほんとに大丈夫?」
「うん。昨日のこともあるし…」
「あー、そのことね」
思い返すのは二人のイリヤ。
短い邂逅だったけど、ほんとに生き写しのように似ていた。
「心当たりとかは?」
「ないない。あるわけないよー」
体調に問題はないと言い張るイリヤを信用して、少し神妙な空気が流れる。
『まーなんにせよ早く何とかするべきですね。正体がどうであれ、イリヤさんと全く同じ顔をしたコスプレ少女が世間に解き放たれたわけですから』
「ほんとだよ!誰かに見られたら絶対に誤解される!」
じたばたとベッドの上で暴れるイリヤ。
そしてガバッと起き上がり、
「いっそのこと捜索願とか―——」
突然窓を破って飛んできたサッカーボールが顔面に突き刺さった。
「……」
「イ…イリヤ…」
ヘンな汗をかきながら美遊が恐る恐る聞く。
「
早退を決め込むイリヤだった。
イリヤとそれに付き添う美遊を見送る。
『はくのんは早退しないの?』
「私くらい残らないと、あの二人のノートを誰がとるのよ」
当然、保健室に行ったイリヤはともかく、勝手に帰った美遊に怒り気味の先生。
「まったくもー。イリヤちゃんだけじゃなくて美遊ちゃんも?小学生の内からサボりとは先生感心しないなー。みんなはあんな不良になっちゃだめよー」
…ちょっと語弊がある言い方な気もする。
その夜。
「白野。明日、あの黒イリヤを捕縛するわよ」
私の土曜日…。
◆
「まったく。一体どうやったらこんな怪我をしてくるんですか!」
聖杯としてのイリヤと戦った後、家に帰ると普段通りのイリヤがいた。
内心の動揺が悟られる前に自室に戻り、手当てをしていたら、案の定気付いていたセラに看護される。
「…セラ。そういえば詳しく聞いたことがなかったけど、第四次聖杯戦争の顛末ってどうなったんだ?」
「…シロウさん。貴方が気になるのはもっともです。ですが、私から話す権利はありません。奥様か旦那様に直接聞くか、お二人が健在なことから察してくださいまし」
「いや、そういうことなんだろうとは思っているけど、やっぱり…な。イリヤの現状も詳しく知らないんだ。改めて気になると、さ」
「…そう、ですね。私から話す事が出来ないのは変わりませんが、奥様に一報入れておきます。あまり期待しないでいてください」
「充分。助かるよ」
火傷を簡易な治癒魔術で治療し、ほつれた制服を修繕する。
脳裏に過ぎるのは前世でのイリヤ。
「姉さん…」
正直、事前に知っていないと思い当たりもしなかっただろう。
己を犠牲に大聖杯を閉じた
そんな彼女と同じ機能を持ったイリヤ。
同じだけど違う人物。
昨日のイリヤはパパとママ―——つまり、切嗣とアイリさんの前に俺を殺すと言った。両親に対する殺す発言。———想像しかできないけど、封印されたことに対する反抗だろうか。とすると、俺への殺意は———…。
「魔術師の家庭ってことを知っていたことかなぁ」
娘を無かったことにした、という事実を容認していた、とでも思われているんだろうか。正直、細かい事情は知らないけど、イリヤからそう思われていたとしてもおかしくはない。
「話し合いが必要かな」
まずは誤解を解かないと。
そして、そのためには聞くことを先延ばしにしていた第四次のことが重要になってくるはず。
アイリさんたちはいつ帰ってくるんだろうか。
■
無性にプレミアロールケーキが食べたい。
そんな衝動に襲われ、新都付近のケーキ屋さんで購入。ついでに切れかけていた茶葉も買い帰宅する。
―—————…。
『はくのん』
ラルドの呼びかけを無視し、
「ケーキと紅茶でいい?」
そして中にいた
「…なんで動揺しないのよ」
お湯を沸かし、紅茶を淹れる。
凛姉に鍛えられたが、かすかに残る記憶の彼からは及第点を未だ貰えない腕前だろう。
「ありがと。———美味しい」
「どういたしまして」
もっしゃあ…とプレミアロールケーキを頬張る。
これだ。
どんどん回復している気がする。
「で、どんな用?」
紅茶で口を湿らし問う。
「一晩匿ってくれない?」
「家出少女か」
『ちょ!いいのはくのん!?正体不明の相手を!』
「正体不明とは失礼ね。私はイリヤよ」
『そうじゃなくて!』
「ラルド。マイルームへの不法侵入程度で慌てちゃいけないわ。私が帰って来た時に奇襲をしなかった時点で敵じゃないわ」
「そうそう。今はハクノに敵対するつもりはないわ」
納得できなさげなラルドには悪いけど、この程度じゃ私は驚かない。私を驚かせたけりゃ、AUOでも連れて来い。
———余計なことを言った気がする。
沈黙が居間に降りる。
そそくさと、二つ目のプレミアロールケーキを咀嚼していると、不意にイリヤが聞いてきた。
「何にも聞かないのね」
「聞いていいの?」
間髪を容れず返す。
「聞かれたくないことなんて誰にでもあるでしょ。言いたくないなら言う必要ないわ」
ごっくん、とロールケーキを食べ終わる。
もう一本買えばよかったか…いや、この時間に三本はまずい。主にカロリー的な意味で。
「ごはん、食べる?」
「…いただくわ」
「おっけー。残り物だけど許してね」
洗い物も済ませ、日付が変わるころ。
なんとなく談笑していたイリヤがふと思い出したかのように聞いてきた。
「そういえばさ、ハクノっていつからこっち側なの?」
「こっちって?」
「魔術的な意味」
なるほど。
「どうして?」
「私が見たのは少ないけど、ハクノが素人らしくないなって。
それはカード回収任務の事だろう。
まいったなあ、ルヴィアさんに言われたことを蒸し返されるとは思わなかった。
今でこそルヴィアさんは私を受け入れてくれているけど、戦闘で実績を出し、凛姉が説得して、ようやく認めてくれたんだから。
「うーん。それに関しては理由があるんだけど…あんまり言えるようなことじゃないからねー。魔術に関わったのはこの前のカード回収が初めてだよ」
前世を除いて。
まあ、前世では魔術とは別の電脳技術が発展していたようだけど、発展しすぎた科学は魔法と変わらないって誰かが言ってたし大した問題じゃないだろう。
あれ?そうすると魔術に関わったのって本格的にカード回収任務が初めてになるのかな。
「…嘘は言っていないようね」
どうやって判断したのこの子。
若干戦慄を覚えながらジト目で睨みつけていると、イリヤは慌てたように
「ちょ、直感よ直感!」
って弁解しだした。怪しい。
「うー、ほんとなのに」
「大体、自分のことは話さないくせに私のことを聞き出そうとするのが悪い」
「う…」
気まずそうに眼を逸らす。
自覚していたのか。
「いいけどね。あ、鍵はドアポストに入れといてねー」
ポイっ、と家の鍵を投げ渡す。
「へ?」
「どうせ朝にはどこかに行くんでしょ?戸締りだけはよろしく。あ、布団はそこの押し入れに入っているのてきとーに使っていいからね」
伝えるだけ伝えて、じゃあねーと部屋に戻る。
明日を待たず、ここで捕縛してもいいかもしれない。
でも、私の直感が警鐘を鳴らしていた。
彼女の問題を解決するのは、イリヤだと。
「…———ありが、と」
ドアを閉める前、大事そうに鍵を握りしめながら言った小さな呟きは、確かに私へと届いていた。
次回、クロ捕縛作戦。
美遊と士郎はもう会っているし、クロと士郎も会っているから衛宮家での全員集合はありませんw
クロ編、メインはアイリの語る第四次になりそうな予感。
誤字脱字などの指摘、感想、評価などがありましたらよろしくお願いします。