Fate/kaleid stage   作:にくろん。

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おおお、ジャンヌウウウ(来ない
イベントの周回効率が悪い。キッツイ。

今回は駆け足気味です。白野視点。
何回も言っているように、クロ編は手を加えれる箇所が少なくてな…全編オールカットも視野に入れたレベルでの書きづらさ。


執筆中に九州で大きな地震がありました。
みなさん大丈夫ですか?作者の友人も何人か九州にいるので、安否確認を急ぎました…無事でよかった…
地震も最近増えてきています。対策と準備をしておきましょう。ほんと、気を付けてください。


20話 捕縛作戦

 

翌日、朝起きると黒イリヤはもういなくなっていた。

 

『ありがと。白野』

 

そう書かれたメモを机に置いて。

 

「ラルド。どうせ起きてたんでしょ?」

『うん』

「あの子、大丈夫だった?」

『はくのんには何も手出ししようとしてなかったよ。僕の質問には何一つ答えてくれなかったけどね』

 

若干怒り気味のラルド。

仕方ないなーと思いながらルヴィアさんの家に行く準備をする。

 

昨日の今日で悪いけど、捕まえさせてもらうよ。

 

 

 

 

 

 

 

昼前にルヴィアさん邸に集まる。

メンバーは凛姉、ルヴィアさん、イリヤ、美遊、そして私。

 

士郎兄にも協力を求めようとしたらしいけど、イリヤが断ったらしい。

曰く、

 

「あんな私を見て誤解してほしくない」

 

らしい。

誤解して欲しくないなら、伝えるべきだと思うんだけどな…。

 

 

「作戦はこうよ」

 

いつも通り凛姉が話を始める。

…メイド服なのは触れないでおこう。

 

「まず————…」

 

 

 

 

所変わって円蔵山中腹。

ぷらーん、とイリヤが簀巻きにされて木に吊るされていた。

 

「ねえ!これって意味あるのーっ!?」

 

そんなイリヤの前には、ルヴィアさんがお金の限りを尽くした豪勢な食事———ではなく、士郎兄お手製のお弁当が置いてある。

 

当初は豪華な食事を配置するはずだったけど、イリヤを釣るにはこっちの方が効果が高いという私の進言による変更だ。

 

「シェロのお弁当…」

「衛宮くんの…」

「おに————士郎さんの…」

 

若干三名ほど様子がおかしいけど放っておく。だって私は頼めば食べれるもんね!

 

「はー…リンさんを信じた私がばかだったのかな…」

 

イリヤの呟きが風に乗って聞こえてくる。

まあ、こんなあからさまな罠なんだから仕方な———

 

「んー」

 

((((ほんとに来たっっ!?))))

 

三白眼で宙づりになったイリヤを眺める黒イリヤ。

 

「なんかあからさまに罠過ぎてリアクションに困————これは!お兄ちゃんのお弁当!?」

「あー!食べないで!それは私が食べるんだから!」

「知らないわ!私をおびき寄せるために用意したんでしょ?なら私が食べていいはず!てなわけでいただきます!」

 

「「誰があなたに!!!」」

 

叫びながら草むらから飛び出した凛姉とルヴィアさん。やっぱり食べたかったんだ。

 

捕縛対象切替(フィ————ッシュ)!!」

 

凛姉がイリヤを釣るしていた布を引き、魔術を行使する。解けた拘束の中からルビーが現れ、イリヤが転身すると同時に自動で布が黒イリヤを再拘束した。

 

「ふん…」

 

しかしその拘束は虚空から取り出した双剣により断ち切られる。

でも、わずかに生じたその隙を、

 

Zeicben(サイン)————

 

 

   —————見えざる(フォアストデア)鉛鎖の楔(シュヴェーアクラフト)!」

 

ルヴィアさんの拘束魔術で押さえつける!!

 

「くっ!!」

 

流石の黒イリヤも堪えているように見える。なら、ここで追撃をかける!

 

「魔力収束…」

 

前方に構えたステッキに魔力を収束させる。

 

「重力系の捕縛陣ね。でも、バーサーカーの時と比べるとランクが落ちるわ!」

 

地面を破壊して捕縛陣から逃れようとする。

でもそれは予想済み!!

 

速射(クイック)!!」

 

双剣を地面に叩き付けた瞬間ならば、防御態勢はとれない!

 

狙いすました最大速度の一撃は、

 

「やっぱりね!!」

 

突如出現した剣斧に遮られた。

 

「————偽・射殺す百頭(フェイクナインライブス)。準備しておいてよかったわ」

 

バーサーカーの持っていた剣斧に遮られ、そのあとも連弾した魔力砲は届かない。

 

「く————っ」

 

魔力砲の密度をさらに上げる。

爆風によって舞い上がった土煙が辺りを覆い始め、凛姉たちが見えなくなる。

 

「あら、あらららら?これは…」

 

訝しむ気配を感じるけど、絶え間なく弾幕を張り続ける。爆音と煙にさらされ、周囲の様子を探れなくなったところで、

 

「————フッ!!」

 

歪な短剣を構えた美遊が突撃する!

 

「このタイミングだとそう来るわよね」

 

スっ、と現れた左手に美遊の短剣が絡めとられる。

 

「はぁい、サファイア。破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)なんて、いきなりウィークポイントを突いてくるじゃない」

「くっ!」

 

慌てて距離を取る美遊。でも、そのままサファイアはかすめ取られ、右手の剣で野球のように打ち飛ばされてしまった。

 

「魔法少女の弱点。ステッキはちゃんと持っていないとね」

 

そしてそのまま自分を拘束しようとしていた魔術布を掴み、発動しようとしていた魔術に干渉する。

 

「リンもルヴィアもちょっとおとなしくしておいてよね」

「ウソ!?拘束布を逆利用された!?」

「ああっ…なんか既視感が…」

「わー!早速やられているし!」

 

悠々とイリヤに歩み寄る黒イリヤ。

その間に私は降り立った。

 

「最後の障害はあなたって訳、ハクノ」

「たとえ私がやられたとしても、第二第三の私が————」

「いや、それはそれでキモイ」

「あんたが言う?」

「それもそうね」

 

創成(アーツ)(ブレード)

 

ステッキの先に魔力で編んだ刃を作り出す。凛姉がやっていた手法だ。

 

「…ふざけているの?」

「なにが?」

「その刃。魔力の厚みが全然違う。そんな刃を潰した剣で私を倒せると思っているの?」

「殺すことが目的じゃないからね」

「そう…。ならそのまま————やられちゃえ」

 

見覚えのある黒白の双剣を振るってくるイリヤ。そのまま魔力刃で受けきる。

続く斬撃も、身体強化をフルに使って何とか対応する。

 

「それにっ!ね!」

 

刃を振るいながら言葉を紡ぐ。

 

「魔力を編んだこれにはこんな使い方もあるんだ、よッッ!」

 

弾かれた勢いを利用し、ステッキを大きく振りかぶる。

 

「そんな見え見えの一撃———」

 

でも、そんな大ぶりの一撃は余裕をもって回避されそうになる。そこに走り込んで来るのはイリヤ。黒イリヤは頭上の私に気を取られ、まだ気づいていない。

 

「特大の———砲射(フォイア)!」

「な———ッ!?」

 

至近距離で放たれた魔力砲。

いくらイリヤの戦力が下がっていたとしても、この戦闘中ずっと溜めていた分の魔力を使った攻撃だ。無視できるものじゃない。

 

急なその砲弾を咄嗟に、だけど確実に避けたことは称賛に値する。でもね。

 

「隙ありぃぃぃいい!!」

 

ステッキを振り下ろしながら魔力刃を解放する(・・・・・・・・)

叩き付ける速度も加算されたゼロ距離の魔力砲。

ソレは確実に黒イリヤに当たり、着地地点にある底なし沼(誘導してきた目的地)に叩き落した。

 

「がぁ———ッ…く、でもこの程度!投影(トレース)———…!?」

「残念ね」

 

底なし沼に落ちた黒イリヤを見下ろすのは拘束されていたはずの凛姉とルヴィアさん。

 

「隙をつくためとはいえ、わざわざ自前の礼装に捕縛されるなんてね…」

「あら?若干ほんとに捕まりかけたのは?」

「それを言うならあんたもでしょ」

「なんで…魔術が使えない…!?」

「そうそう。その底なし沼は私たち謹製のトラップよ」

「五大元素全ての性質を不活性状態で練り込んだ完全秩序(コスモス)の沼!”何物にも成らない”終末の泥の中ではあらゆる魔術は起動しない!」

「貴女の剣を出現させる魔術もここでは無意味よ」

 

ふふふ、ははは、と歯の隙間から笑いがにじみ出す二人。

 

「オ——ッホッホ!!間抜け!間抜けですわ!!」

「今時底なし沼にハマるなんてこっちこそリアクションに困るわ!」

「ほらほらどうしますの?こうしている間にもどんどん沈んでいきますわよ?」

「うう、ぅううぅうううう…!」

「あら、この子ったら泣いちゃって…かわいそうに…」

 

(((こ、この人たちは…)))

 

「とてもじゃないけど、この間同じトラップに引っかかった人たちとは思えないよ…」

『全くです。そんなんだから私たちに愛想をつかされるんですよ』

「はいそこシャラップ!!」

 

「………ッ!!」

 

 

うあーーーーーん

 

 

そして、イリヤに手出ししない、と自分から約束させたことで沼から救出したのでした。まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー!黒イリヤだとかイリヤだとかめんどくさい!あんた、クロね!」

「わたしは猫か…」

 

…とんでもない名付けを見た気がする。

 

現在、クロを確保した私たちはルヴィアさん邸の地下室にいた。

 

「————これで良し、と」

 

イリヤから抜いた血と宝石を使って、クロのお腹になんか模様を描く凛姉。

 

「痛覚共有の呪いよ。ただし、一方的な、ね」

「そういうこと…これじゃあ、相打ち狙いでしか殺せないわね」

「話が早くて結構」

 

イリヤを殺そうとするクロ。

その行動を制限するための呪術らしい。

 

その後も凛姉が尋問———というか、質問を繰り返すけど、クロははぐらかすばかりで答えようとしない。

 

「ったく…。白野といい衛宮くんといいクロといい、なんでこう面倒な案件が揃うかなあ」

「あ、お兄ちゃんは私のこと知ってるから」

「「「はあああああ!?!?」」」

 

はぐらかすどころか、盛大に引っ掻き回される。

 

「どどどど、どういうこと!?」

「昨日襲い掛かったら返り討ちにあったの。さすがお兄ちゃん」

「返り討ち!?衛宮くんはあなたの正体を知っているの?」

「うーん…どうだろ?」

「埒があきませんわ、シェロを呼びましょう」

「待った。もう少しこっちで情報を整理してからの方がいいわ」

「…それもそうですわね」

 

クロを拘束したまま、地下室を封印する。

 

「さてと。これで少しは時間を稼げるといいんだけど…」

 

でもそんな淡い期待は、いつも使ってる会議室のドアを開けると同時に断たれた。

 

「遅いじゃない」

「…なんでいるのよ…」

「あの程度、()を閉じ込めておくには役不足よ」

 

そう言ってクロは当然のように席に着く。

 

「…すっごくきもい」

「キモイとは何だ!おんなじ顔のくせに!」

「同じだからこそ余計にだよ!」

 

不毛な言い争いが続く中、ふとずっと静かな美遊に疑問を持ち話しかける。

 

「美遊?さっきからどうしたの?」

「…白野。あなたはどう思う?」

「どうって…ああ、クロの事か。正直、戸惑っているところはある、かな。でも、あの子自体の敵意は実はそんなに大きくないと思うんだ」

「どうして?私にはそうは思えない。士郎さんを襲っているし、何よりイリヤのことをを本気で殺す気だった」

「うーん…なんて言うか…本気だったけど、本気じゃないように思ったんだ」

「?」

「自分でもなんでそう思ったのかよくわからないんだけど、美遊もあのクロの姿に見覚えがあるでしょ?」

「それは、あの時のイリヤの…」

「うん。でも、あの時はセイバーを打ち負かすほどの力を持っていたんだよ?弱体化したのかもしれないけど、いくら何でもイリヤ一人を殺すのに手間取りすぎていると思う」

 

私が違和感を感じた理由はここなんだ。

仮にとはいえ、アーサー王と撃ち合い勝利したイリヤと同じ姿をしたクロ。もし彼女がイリヤから分裂した存在で、そのおかげで弱体化していたんだとしても、朝の登校中のトラック事故や花瓶の落下、猛犬に襲わせるなんて回りくどすぎる。実際魔法少女としてのイリヤ自身が弱体化しているんだし、それこそ一人になったところを狙えば簡単に殺せたはずだ。

 

「だから、なんだろう———」

 

適切な言葉が思いつかない。

 

思い込んだまま突き進んでいるんじゃない。

確かに殺したいって想いは本物なんだろう。でも、それだけじゃなくて———。

 

「あ———」

 

同じように何かに気付いたように美遊が顔を上げる。

その視線は未だ言い争いをするイリヤとクロに向いていて。

 

「構って欲しい…?」

「それだ!」

 

構って欲しい。自分を見てほしい。私はここにいる。

そんな想いが見え隠れしているんだ。

 

だからこそだろう。

さっきまで命を狙われていたイリヤが多少のわだかまりを感じつつも気楽そうに言い争っているのは。

 

「———差し詰め、末っ子かなぁ」

「ふふっ、言えている」

 

すっきりして顔を見合わせる私たち。

 

「あーー!二人とも何とかして!」

「はいはい」

 

じゃあ、何とかこの姉妹を仲直りさせる方法を考えなくちゃね。

 

 

 

 




白野の包容力、謎の母性という伏線回収。
原作を読んでいて思ったことを書くためこうなりました。士郎を狙ったのも、自分を認識してほしかったから、という想いからの暴走です。

恐らく、クロ本人は封印されたことへの恨みと混ざって自覚していないかと思いますが。


誤字脱字などの指摘、感想、評価などがありましたらよろしくお願いします。

前書きにも書きましたが、みなさん地震などの災害にはほんと気を付けて…

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