Fate/kaleid stage   作:にくろん。

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邪ンヌ…フランちゃんが代わりに来たよ!
ニコ生も最高でした。ノッブww

AUOと青セイバーのモーションかっこいい。
コミックウォーカーでのプリヤ最新話かっこいい。


今回は原作との大きな乖離があります。今更ですが。
前回白野と美遊が気付いたことによるバタフライエフェクトというかなんというか。


21話 シンジツ

 

かぽーーーん

 

ふいー、極楽極楽。

私たちは今、ルヴィアさん邸の大浴場にいる。

 

「なんで私まで…」

「まあまあ。クロもお風呂くらいいいじゃない。どうせ痛覚共有でイリヤを狙えないんだし」

「相打ち覚悟で狙うかもよ?」

「そのつもりならとっくにしてるでしょ」

 

お風呂場だからか、声が若干反響する。

 

「とりあえず、今後どう動くのかとか整理したいしね」

「この国に古くから伝わる裸の付き合い、というやつですわ」

 

ここにいるメンバーは私、イリヤ、クロ、美遊、凛姉にルヴィアさん、ステッキたちだ。

 

「さて、棚上げしてきたことだけど確認しておこうかしら」

 

いつものように凛姉が切り出す。

 

「正直言って私たちにとってクロは焦点ではないわ」

「え?そうなの?」

『イリヤさん鈍いですねー』

「イリヤの命を狙っていること…も確かに重要だけど、この子の行動を死痛の隷属(痛覚共有)で制限できる今、問題なのはクラスカード”アーチャー”が消えたことよ」

「そうです!クロのことに気を取られて聞きそびれていましたが、イリヤスフィール。貴女、大空洞でカードを使って変身していましたよね?」

「あー…。そういえば」

「あんなカードの使い方、私たちどころか協会ですら把握していなかった。一体どうやって…」

「う―――ん…どうやってって言われても…。この際だから話すけど、実はセイバー戦の時も同じように変身したの」

「「なっ!?」」

「うまく説明できないけど、どうしようもなくなった時にどうにかしたいと思ったら、どうすればいいのか何となく浮かんできて、気が付けばどうにかなっている…みたいな…?」

「疑問形で返されても返事になっていませんわーーっ!!」

「だ、だって自分でもよく分かっていないんだもん!!」

 

凛姉が無言になった。

これは何か考えているんだろうけど…。パズルのピースが揃いきっていない。

全体像は見えてこないけど、たぶんこの中心にいるのは———。

 

クロとイリヤを交互に見遣る。

 

無くなったアーチャーのカード。

変身したイリヤ。

現れたクロ。

 

「一種の召喚器……クラスカード…クロの出現…イリヤの弱体化…」

 

ブツブツと呟く凛姉。

そして、

 

「イリヤ。貴女はどうしたい?」

「へっ?私?」

 

イリヤ(核心)へと切り込んだ。

 

「私たちの目的は全クラスカードの回収。正直に答えると、それさえ果たせるのなら他のことはどうでもいいわ。だからこそ、収拾の形は中心であるイリヤの意思に従う」

「———…。」

「聞かせて。貴女の答えを」

 

重い沈黙が、大浴場を包む。

 

僅かな身動きから起こる波紋に否応なく意識が向く。

水滴の音がやけに大きく響く。

 

誰も何も言わない。

全員が、イリヤを見ていた。

 

 

 

 

数分後。

 

「正直、私の答えなんてぼんやりしすぎてわからないよ。でも、そうだね…。ハクノがいて、ミユがいて、リンさんもルヴィアさんもいる。たまたまなっちゃった魔法少女だけど、だからこそ初めて見る親友(ハクノ)の側面を知れたし、新しい友達も増えた。———クロが私の命を狙う理由なんてわからないし、怖いけど、それ以上に楽しいことがこの一か月は多かったんだ。だから———」

 

少女は、並行世界(原作)ではたどり着かなかった答えに初めから到達する。

 

「———私の望みは、みんなで居たい、かな」

 

 

————さっきまでとは違う沈黙が降りる。

 

美遊は何かをこらえるように膝を抱え、凛姉とルヴィアさんは驚きを隠しきれていない。私も、こんな世界(魔術世界)にどっぷりと浸かっているわけではないけど、前世で聖杯戦争を勝ち残って来たからか、魔術と関わりを切らない選択をしたイリヤに驚愕を隠せない。

 

中でも最も驚いているのは———

 

「———なんでよ」

 

この子なんだろう。

 

「私はあなたを殺そうとした。明確な殺意を持っていたのよ?そんな私をなんで受け入れる事が出来るのよ!?」

「確かに殺されるのは怖いよ!さっきだって、あんな間近で剣なんて見るの初めてだったし…でも!クロも私じゃない(・・・・・・・・)!」

 

「え…?」

 

聞き逃してはならないことを言われた気がした。

 

「ね、ねえイリヤ。今のってどういうこと?」

「何というか、うまく言えないけどわ———「はい、そこまで。」——え?」

 

いつの間にかその女性(ひと)はそこにいた。

手に持たれているのはバスタオル———いや、あれは!

 

「全く。家の前の豪邸にイリヤちゃんが二人も入っていくんだからママ心配しちゃった。思わずシロウにこんなの(身隠しの布)まで用意させた甲斐があったわ。——あ、安心して。ここのセキュリティはばっちりよ?私だって特級の礼装を何個か使ってシロウと誤認させないと入ってこれなかったんだから」

 

「な…な…!」

 

驚きでわなわなと震えるルヴィアさん。油断なく八極拳の構えを取る凛姉。

 

そして顔面蒼白なイリヤ。

 

「なんでママがここにいるのーーーっ!?」

 

「とりあえずみんな、のぼせる前にお風呂からあがろっか?」

 

豊満な肢体を惜しげもなく晒している彼女、アイリスフィール・フォン・アインツベルンはそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はー。いい湯でした」

 

満足げな顔でアイリさんが牛乳片手に言う。その牛乳の栄養はどこに行くのか。

 

「…お粗末様でした。それでミセス、貴女は———?」

「そうね。改めて、私はアイリスフィール・フォン・アインツベルン。そこのイリヤの母よ」

「お母様!?え、姉じゃなくて!?」

「嬉しいことを言ってくれるわねーリンちゃん。正真正銘母ですよ?ああ、もちろんシロウの母でもあるからよろしくね」

「お義母様!!」

「ちょ!ルヴィア!!」

 

混沌とする場にあははーと見つめるアイリさん。

絶対この人楽しんでる…!

 

「アイリさん。このタイミングで、ってことはイリヤたちの——?」

「そうよハクノちゃん。とりあえず全員揃ってから———って来たわね」

 

会議室のドアを開けて入って来たのは士郎兄。

なんかちょっとやつれてる。

 

「あら?シロウ疲れてる?」

「そりゃあ、いきなりあんな投影(礼装)を準備させられたらな…。しかも結局自前の礼装でランク上げているし…」

「仕方ないじゃない。剣じゃなかった以上貴方には限界があるんだし、伊達にアインツベルンの集大成じゃないわよ」

 

家族の登場にイリヤは固まったまま。

クロは隙を見てアイリさんを狙っているそぶりを見せるけど、凛姉たちに警戒されて動き出せないでいる。

 

「さて、全員揃ったことだし」

 

何故か眼鏡をかけてホワイトボードに書き出すアイリさん。

 

「”おしえて!アイリママ”のコーナー!子供たちからの質問に気分次第でなんでも答えるわよー」

 

なんか始まった。

 

「えっと…」

 

まず質問するのはイリヤ。

 

「なんでママがここにいるの?」

「まずそこからかー。このエーデルフェルト邸の侵入者結界はね、登録されている人には反応しないようになっているの。だから私は気配を遮断できる礼装を身に着けて”アイリスフィール”としての存在を限りなく薄めた後、シロウって誤認するように幻術作用のある魔術を限定的に使って結界を騙して入って来たのよ。さっきも言ったようにイリヤちゃんが二人いたしね」

「な———!まさかそんな穴が!」

「そこまで悲観しなくてもいいと思うわ。気配遮断だけじゃおそらく侵入できなかったし、私もシロウが登録されていることを知っていたから誤魔化せたんであって、純粋な侵入者にはばっちりの効果よ」

「魔術って…」

「察しの通りよイリヤ。貴女がこっちの世界に関わったことはシロウに聞いているわ。———そこの、クロと呼ばれていたイリヤちゃんのこともね」

「っ!お兄ちゃん!?」

「あー。そこのクロ?とはおととい辺り戦ったんだよ。結果、心当たりがあったからアイリさんに聞いてみたんだ。———そろそろ、俺も知りたいと思っていたし」

「えっとミセス…。シェロが魔術を学んだことについて、私たち二人は大まかな話を聞いています。そのうえで、母は一般人だと。魔術師殺し(メイガスマーダー)がその活動方針を改めるきっかけとなった人物と聞き及んでいました。しかし———…。アインツベルンという魔術の名門なんて、時計塔所属の我々は知らなかった。一体貴女方は———?」

 

「そう、ね。まずはそこから話すべきかしら。時にイリヤちゃん。貴女の一番知りたいことは何?」

 

「…前みたいに誤魔化さないで、ちゃんと教えて。知りたいの。私は…なに?クロのこともそう。あんな普通じゃないチカラ、私がなんで持っているの?」

 

「…さて、大まかな疑問はこの二つね。これらに応えるには私たちのバックグラウンドを知った方がいいでしょう。の、前に。これに署名をお願いね」

 

アイリさんがカバンから取り出したのは人数分の書類。

 

「な!自己強制証文(セルフギアス・スクロール)!?」

「ええ。念には念を入れてね。簡単なモノよ。」

 

目を通す。

単純に、アインツベルンの魔術儀式や実態に存在、衛宮の所在地などを他言しないという誓約。

でも、必要に応じてアインツベルンと衛宮の両当主が同意すれば話すことを許可する、ともある。

これの一体何が問題なんだろう?

 

自己強制証文(セルフギアス・スクロール)はね、その当人だけに課される誓約じゃないのよ。たとえ命を差し出しても、次代に継承される魔術刻印がある限り死後の魂すら束縛される強制の呪い。どんな手段を用いようとその魂に刻み付けるこの誓約は解呪不能なのよ」

「ええ。だからこそ、魔術師にとっての最大限の譲歩でもあり、めったに見られない誓約です」

「そこまでわかっているなら話は早いわ。これは私たちから出せる最大限の譲歩。———私たちも血統じゃない、次代への糸を守るための誓約よ」

 

各々が署名するかどうか悩む中、私と美遊だけはすぐに名前を書けた。

 

「白野!?そんな簡単に…」

「もともと、私は後ろ盾が凛姉たちくらいだから。こうして魔術に関わる以上、不透明とはいっても名門っぽいアインツベルンの加護はありがたいんだ。なによりイリヤもいるし」

「私も。もともと関わりが薄い私たちにとっては、こんな誓約なんてほとんど意味がないようなものだから」

 

『まあ、僕たちもですねー』

 

ラルドの声に反応すると、ステッキたちがどういう仕組みか署名していた。

 

『私たちカレイドステッキはもともと特級の魔術礼装です。自己強制証文(セルフギアス・スクロール)によって多少の制限はかけられようとも、宝石翁の礼装である私たちに手出しできる存在なんてほとんどいません』

『加えて、署名することで強制とはいえ信頼を得られるんだから安いもんだよ。いざとなったら万華鏡ジジイに解呪してもらえば…』

『赤姉さん。その場合確実に廃棄されると思うよ?なんというか…性格的に。新しいマジカルルビーmkⅡとかになりそう』

『なんとッ!?』

 

そしてさらに数分後。

 

「———よしっ!」

 

と凛姉、ルヴィアさんが署名した。

 

「もともとステッキの所有者が変わっている時点で報告なんてできないしね」

「それに、今まで多くの疑問が残っていたイリヤスフィールについてわかるのなら。ええ、十分な賭けでしょうとも」

 

「さ、みんなが署名してくれたところで始めましょうか」

 

全員分の自己強制証文(セルフギアス・スクロール)を回収したアイリさんが言う。

 

「アインツベルンの行った儀式。それと、10年前のことをね」

「10年前…」

「ええ。そこを境にアインツベルンの表立った行動は無くなったわ。当時、この冬木で行った大魔術儀式。聖杯戦争について話しましょうか」

 

「聖、杯…」

「戦争?」

 

 

聞き覚えがありすぎる儀式名。

確か———月の聖杯戦争はもともと地球のものをベースにしていたんだっけ?

 

そんな衝撃もあったけど。

能面のように無表情なクロよりも。

対極のような表情のイリヤと美遊の方が気になった。

 

 

「あ、時計塔で思い出したけど、ウェ———エルメロイⅡ世もこのことは知っているから」

「「はあああああ!?!?」」

 

 

 




美遊との決闘、アイリ乱入はカット。
戦う理由であるイリヤの考え方の変化による影響です。

次回はおそらく全編アイリ視点、遂に来たぜ第四次聖杯戦争編。

空白の部分は皆様の想像力で保管をお願いします。


誤字脱字などの指摘、感想、評価などがありましたらよろしくお願いします。
また、最近感想のお返事が遅れております。リアルでの生活がなかなかに忙しいのもありますが、きっちり全部目を通しております。お返事を送れなかったとしても、執筆のモチベーションになっていますので、よろしくお願いします。

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