たまには優雅な作品があってもいいんじゃない…?ww
SAOとワールドトリガーのクロスの構想とか思いついちゃって執筆欲がそっちに流れ無いよう自制しつつ仕上げました。
クロのところは久々に納得いく出来。そのあとの日常が描写苦手だ…。
…ガチャ?
久々にイベント期間に一枚も金鯖が来なかった…ピックアップ仕事していない金すら…。
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何度目かわからない、重い沈黙が流れる。
アインツベルンだけでなく、凛姉の遠坂、桜さんの間桐まで関係している大きな話が終わった。そんな中、当事者でない私たちはどんな反応を返せばいいのかわからない。
「…その通りよ」
クロが沈黙を破った。
「私の正体はイリヤに封印されていた”聖杯”としての機能。それが封印されているうちにイリヤの中で疑似人格として成長し、カードを核にすることで存在する事が出来るようになった奇跡のような存在よ。でも!だから何!?もともとイリヤは私じゃない!生まれる前から調整され続け、生後数か月で言語を理解しあらゆる知識を埋えつけられたわ。なのに、貴女はそれを封印した。機能を封じ、知識を封じ、記憶を封じた。普通の女の子として生きる?なら…なんで私のままじゃダメだったの?すべてをリセットするなんて都合が良すぎるわ。その結果、
クロの叫びが響く。
「…いいわ。普通の生を生きるイリヤがいることも。それでいい。ならせめて!私には魔術師としてのイリヤを、生をちょうだい!私をアインツベルンに帰して!!!」
慟哭。
それはあまりにも残酷で。
ただ自分を見てほしかった少女の心からの叫び。
「———アインツベルンはもうないわ」
そんなクロの想いも断ち切られる。
「前回の聖杯戦争のあと、私たちはアインツベルンの総本山を解体したの。名実ともに、私たちが最後のアインツベルンよ」
「なに…それ…。それじゃあ、私の居場所は!どこにあるのよ!!!」
クロから魔力が放出される。
「な…!?」
「危険ですわ!退避を———!」
「全部奪われた!全部失った!何も…何もない!」
「クロ!やめて!」
『イリヤさん危険です!転身を———イリヤさん!?』
「クロ!何もないなんて…そんなこと言わないでよ!」
「イリ、ヤ…?」
「私は言ったじゃない!みんなで一緒に居たいって!そのみんなには、クロもいるんだよ?このまま———このままけんか別れみたいなことなんてしたくない!」
「…貴女分かっているの?私は貴女の命を「そんなこと関係ない!」ねらっ…て…」
「だって…だって!私たちは双子みたいなものなんだよ?そんな、家族を一人になんてしたくない!」
イリヤの叫びが響くや否や、クロの体がブレ始める。
「…そっか。ありがと。でも…もう限界よ。私の体を構成している魔力に限界が———ぷ!?!?」
「「「「は?」」」」
なにを言っているかわからないと思うけど、私も何が何だかわからない。幻とか妄想とか、そんなちゃっちいもんじゃねえ…もっと百合百合しいものの片鱗を…じゃなくて!
「イリヤ!?何を!?」
「——っぷはぁ!」
「魔力供給…どうして…」
「だからって…勝手に出てきて勝手に消えないでよ!」
呆然とするクロ。
「正直言うとね、ママの話を聞いても私あんまりショックを受けていないんだ。おかしいよね…。自分が魔術の道具として生まれてきたなんて、世界観が変わっちゃうくらい大きなことのはずなのに。でもね、私が平静でいられるのはきっと…
「イリヤ…」
「私が背負うはずだったものを、貴女が代わりに背負っていてくれたんだ。…ごめんね。今だけじゃなくて、昔から、私の中にいる時からずっとそうだったんだね」
イリヤの独白と共に、サァァァ…とクロの体が再び薄れていき、輪郭がぼやけ始める。
「っ!クロ!?」
「どうして!?魔力は供給したはずなのに…!?」
『供給だけではだめなんだ…!崩壊が止まらない!』
「もういいわ。消える前に、私のことを望んでくれて、私のために泣いてくれる人がいるだけで、きっと私がいた意味はあったわ」
「……っ!こんな時まで強がらないでよ!」
クロの体の崩壊は止まらない。
「くそ、何か手は…!」
「ラルド!ステッキ三本使っての魔力供給は?」
『それだと問題の先延ばしにしかならないよ!クロ自身の核が揺らいでいる…もう長くはもたない!」
「お兄ちゃん…白野…」
「意味とか、無意味とか、そんな理由で決めないで!私だけじゃない!お兄ちゃんも、ハクノも、ミユも。もちろんリンさんとルヴィアさんだって今の話を聞いて何も思わないわけないじゃない…!欲しいものがあるんでしょう!!??」
「そうよ、クロちゃん。貴女はもう
「ママ…」
「願ってよ…!なんでも願いをかなえる聖杯なんでしょう?だったら、自分の望みをかなえてよ!!」
「私…は…」
「家族が、欲しい」
士郎兄とアイリさんが優しく微笑む。
「友達が、欲しい」
私と美遊が、クロを見つめる。
「何の変哲もない、普通の暮らしがしたい…」
凛姉とルヴィアさんが顔を見合わせ、うっすら微笑む。
「…それより、何より」
イリヤが、クロを抱きしめる。
「消えたく、ない…!ただ…生きていたい…!」
恐る恐る腕をイリヤの背に回し、決意するかのようにクロはしっかりと、何かを確かめるようにイリヤをきつく抱きしめる。
もう何も取りこぼすことのないように。
自分の存在を、受け入れてくれる人を、ここにいてもいいという証明を。
すべてを確認するかのように、しっかりと抱きしめ合う。
その嗚咽交じりの心からの願いは一筋の光となって冬木の空へと消えていった。
◆
「と、いうわけで。イリヤちゃんのいとこのクロエちゃんです!ちゃーんと家族の一員として扱うこと!」
我が家のリビングにて、絶句したまま固まるセラ。
「おーそっくり。私はリズ。よろしくー」
フレンドリーに挨拶するリズ。
「さ、自己紹介しなさい?大丈夫。何も怖がることはないわ」
「...うん。私は、クロエ・フォン・アインツベルンです。えっとイリヤの従妹...になるのかな?今日からよろしく...お願いします!!」
クロはこうして衛宮家の一員として、正式に家族として迎え入れられた。
数日後、ぎこちないままでも、生来の天真爛漫さが功を奏したのかクロは我が家に馴染みつつある。一番の功績はイリヤが何の隔たりもなく接しているからだろう。
クロはイリヤと共に小学校にも通うようになった。
聞いた話だと転校初日に一悶着あったそうだけど、とうに解決して問題ないらしい。
そして問題はこの日の夕食時に起こった。
「そういえば、イリヤとクロってどっちがお姉さんなの?」
リズの放った何気ないこの一言によって。
「姉...!なんて素晴らしい響き!私は知らずのうちに姉デビューを果たしていたのね!」
「なんでイリヤが姉なのよ!私に決まっているでしょ!」
「わーたーしーでーすー!だいたいクロが姉って...ふっ」
「なんで鼻で笑った!?」
「だって...姉より優れた妹なんていないって聞いたもん」
「なによその信憑性のかけらもない情報!それなら私の方が姉に決まってるじゃない!イリヤが私に勝てる要素ってあったかしら?」
「そ、そんなのあるに決まってるじゃない!」
「えー、ほんとでござるかぁー?大体、生まれた順なら私の方が「はーい、クロちゃんネタバレ厳禁よ」…ぁーい」
「ふっふーんだ、クロだって一回私のことお姉ちゃんって呼んでいたし、私が姉ってことでけってーい!」
「あれは皮肉ってもんでしょ!大体そんな言い方する子供っぽいところが姉らしくないのよ!」
「童心を忘れていないって言ってよね!露出が高ければ姉って訳じゃないんだから!」
「「ぬぬぬぬぬぬ」」
…
■
「「おおおおりゃああああ!!!」」
ズザザザザザーーーと教室にスライディングしてきたクロとイリヤ。
よく見るとイリヤの髪飾りはルビーの羽になってる…ってことは転身してる?
「ぜぇ…はぁ…私の方が少し早かった!」
「はぁ…ふぅ…転身までしといてそのざま?何なら私の方が速かったし!」
そして始まる不毛な争い。
「おはよう、イリヤ、クロ」
「おはよー。なにしてるの?」
「あ、ミユにハクノ!おはよ!ねえ、私の方が教室に入ってくるの早かったよね!」
「おはよう!私の方が速かったわよね!?」
「ほぼ同着だと思うんだけど…何してるの?」
「なるほど、勝った方が姉、ねえ…」
大体の事の成り行きを聞く限り、この二人は仲がいい。よかった、あんなことがあったから心配していたわ。
「姉…とか関係あるの?」
「大アリよ!いい、ミユ。姉とはその称号だけで様々な分野で妹に勝ち越せる奇跡の身分なのよ?それを勝ち取れるんならなんだってやるわ!」
あー、でも、この姉争奪戦はめんどくさいな。
気持ちはわからんでもないけど、私の姉って言うと
「そういうことなら、今日の体育のドッジボールと家庭科の調理実習で勝負たらどう?」
「「それだ!!!」」
かくして、イリヤとクロの闘いのゴングは鳴り響いた。
あれ、火に油を注いだかな、私…。
クロ編、完結!next、バゼット編…の前に日常パート。
バゼット以降はほぼシリアスというか、日常ないからなあ…ドライとか特に。
出来るだけ早くこの作品を更新できるように頑張ります。
誤字脱字などの指摘、感想、評価などがありましたらよろしくお願いします。
感想のお返事はできていませんがすべて読ませていただいています。執筆のモチベーションや、展開を広げるにあたっての意欲向上に大きな原動力になっています。ありがとうございます。