ああ、吐き気がする(式感
今話は食戟のソーマ、テニプリなどを参考にしました。
なにが言いたいかというと…察してくれ(笑)
…どうしてこうなった(やっちまった
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「さて始まりましたイリヤVSクロ、姉争奪戦!第一ラウンドは4時限目の家庭科の調理実習です!」
「お題はパウンドケーキ!小学生でも手軽に作れるお菓子です!」
「さて、気になるチーム分けは…公正なじゃんけんの結果こうなったー!」
「…いや、なにやってるのよ三人とも」
「ハクノまで…」
いやだって、盛り上げないと。
ちなみにチーム分けは、
Aチーム、クロ、美遊、美々、那奈亀。
Bチーム、イリヤ、私、龍子、雀花。
「おかしくない!?」
「厳正なジャンケンの結果でしょ?」
「まあ確かに戦力差はねえ…」
単純に、美遊と美々で十分だ。那奈亀が食べること専門でも、この二人が居ればよっぽどなことにはならないだろう。
それに比べて…。
「こっちは
「ははははは!!」
「お前のことだからな」
雀花のツッコミにもキレが…。
「ちなみにみんなは料理に自信はあるの?」
「図工以外オール2だが何か!」
「メガネなのに!?」
「麻婆なら任せて!」
「一人暮らしだよね!?お兄ちゃんたちに教わっていたよね!?」
「早くハンバーグ作ろうぜ!」
「もうやだこの班ーっ!」
「案の定何を作るのかすらわかってないな…」
そして、闘いのゴングが鳴った。
「まあ、そう心配するなって。お菓子作りは分量が命だけど、逆に言えばレシピ通り作れば失敗しないんだから」
「そ…そうだよね。落ち着いてやれば大丈夫なはず!」
雀花の言葉通り、レシピに忠実に三人で作り上げていく。あと一人?戦力外は知らない。
「よし!ここまでは順調だね!」
「そうだな!次は…と」
「えっと…バターをクリーム状になるまで混ぜて、そこに砂糖を投入…!?」
イリヤが砂糖の分量を量りボウルに入れようとした時、それは起こった。
「ふんふふんふふーん」
まるで音符でもついてそうな鮮やかな手つきで、一瞬目を離した私たちの隙をついて奴は現れた。
そのまま奴は懐から取り出したボトルを、イリヤが砂糖を投入するタイミングで同じようにその中身を投下する。
「タツコが何か入れた———ッ!?!?」
「「お前何してんだコラァーーーっ!?」」
思わずぶん殴った私と雀花のは悪くない。
「なに入れた!?何を入れたんだ!?」
「な…ナツメグ…ハンバーグには入れるだろ…」
「しまったこいつまだハンバーグを作る気で!?」
「余計な知識ばっかり持ってるなあ!」
これ以上動けないように簀巻きにして放置する。
「…どうするよこれ…」
目の前にあるのは
どう頑張っても、お菓子になることはない生地だ。
「あはははっ!無様ねイリヤ!」
「!!こっ…この声は!」
ばっと振り返るイリヤ。
そこには窓際で椅子の上に佇み、不敵な笑みを浮かべる敵がっ!
「クロ!」
「いや声とか以前にわかるだろ」
「お約束ってやつよ雀花」
「パウンドケーキにナツメグ?貴方らしい滑稽な味に仕上がりそうじゃない」
「ううううううっ…!そっちこそどうなのよ!」
「どうって…こう?」
クロの指さす方向にはウエディングケーキ。
…は?
「材料が余っていたからつい…」
「あれはみんなの予備の分!!!」
大河が吠えた。
「まずいよ、イリヤ。敵は美々に完璧なパウンドケーキを作らせたうえで、私たちにやり直しがきかないように策を練っていたわ…!」
「というかクロ、あなたなにもしていないじゃない!」
「人を使うのも能力だわ。それに、姉ポイント的に
「…確かに」
「雀花!?実体験がこもったような深い同意はやめて!」
「いやー、うちのお姉のことを考えるとあながち間違いじゃないから…」
「そういえば採点を決めていなかったわね…。私たちは全員両陣営に分かれていることだし、ここは公平にお兄ちゃんに決めてもらうのはどう?」
「士郎兄に?でも持って帰るまでに腐らないかな?」
「ケーキだし大丈夫じゃない?それに、持って帰ることを伝えたら冷蔵庫で保管してもらえるみたいだし」
「お兄ちゃんに…採点…」
あ、イリヤの目に炎が。
「こうしちゃいられないわ。ハクノ、手伝って!まだ何か方法があるはず…!」
「そうは言われても…」
「まあ待て白野。イリヤの目は死んでいない」
確かに炎は未だ灯ったままだけど…。
「ここからどうするっていうのよ!」
ダンッッ!!
私の叫びと共に、イリヤは調理台にその食材を叩き付けた。
ラベルの張られたそのビンは…
「
「なんでこんなものが調理室…に…!」
「そうよ、気付いたようねスズカ…!私たちの班には、これを持ち込んだ
「…いいの?イリヤ。これを使うということは、後戻りはできないわよ?」
「…うん。どうせ、このままじゃお菓子として食べることなんてできない。そうなったらいっその事、
「———貴女の覚悟は受け取ったわ」
シュル…と三角巾を結びなおす。
「さて、反撃開始よ!」
フライパンにごま油、すりおろしにんにくを炒める。香りが立ったら、挽肉を少々に
「待ってどこから挽肉なんて…」
そんなの調理実習の日には持ってきているに決まってる。理由?
普段なら鶏がらスープを加えるところだけど、ないものねだりはいけない。それに作るのは麻婆豆腐じゃないんだから。少し水を加え、紹興酒と醤油で味を調える。
———違った。味のベースを整える。
既に教室には暴力的なまでの香りが広がる。昼食前の空腹を、さらに刺激していく。
塩、胡椒で元が出来たら、パウンドケーキの生地を投下。しっかりと生地に練り込む。こうすることで本来の麻婆よりも口当たりが柔らかくなるはず。
そうなると鶏がらスープが無かったのが痛いな…。味が薄くなってしまう…?これは!
「中華調味料の〇覇…!」
「いろいろアウトッ!!!」
粉末状の味〇を生地に少量練り込む。
これだけでも味に奥行きが出来るはずだ。
そして、ムラが無くなる様にしっかりと練り上げ、成型する。
そこにワンポイント、あらかじめとっておいた元の生地で薄く麻婆生地を包み込む。イメージは中華まん。二種類の味の違う生地を生かしてみる。挽肉をちょっとでも入れたおかげで、ナツメグの残念さは緩和されているはずだ。
あとはこれを焼き上げる。焼いている間に、生地と同じように混ぜる前にとっておいた麻婆に水溶き片栗粉を加えとろみをつけ、ねぎの小口切、ラー油を垂らした麻婆ソース作る。焼きあがったパンの表面に麻婆ソースを薄く塗れば…!
「…これが、私の全力よ…!!」
即興料理、麻婆パンの完成だ。
「すっげぇ…」
「パウンドケーキとは…」
「しっとりとした食感のパウンドケーキの中にシャキッとしたねぎの口当たり、挽肉の香ばしさ、それらを包み込みさらに食欲を加速させるような麻婆の味わい…!」
「辛いのに、辛いのに!止まらない!!!」
ちなみに辛さ控えめです。
本気を出すには
「やってくれたわねイリヤ…!」
「ハクノ…何とかなるかと思ったけどまさかここまで…!」
料理対決は、私の勝利に終わった。
…あれ?趣旨変わってない?
昼休み、5時間目と時間は過ぎ現在は6時間目。体育の時間だ。
「料理対決はおじゃんになったけど、ここで真の姉を決めるわ!」
「ええ、望むところよ!」
チーム分けはさっきのまま。
戦闘力では五分五分だ。
————と思った時期が私にもありました。
「なんでイリヤとクロが同じチームなの!?」
「私たちは気付いたのよ…」
「いやそういうのはいらないから」
「まあそう言わずに。私たちが姉争いをしている中で、ようやく誰が一番の姉ポイントを稼いでいるのか気づいちゃたんだ」
「さっきの調理実習ではっきりしたわ。
「あーイイ感じにぶっ飛んでんなあ」
「雀花、そう思うなら止めてよ」
「無理無理。締め切り前のお姉と同じ雰囲気出してるもんアレ。末期だよ末期」
というわけで。
「イリクロチーム対白野チームのドッジボール対決、スタート!」
掛け声とともに、私のチームの龍子の顔面にボールがヒットする。
「あ、顔面セーフか」
…イリヤ、それはさっきの仕返し?超怖いんだけど…。
ともあれ私のチームのボールだ。
「雀花、任せた」
「いいのか?」
「うん」
そこそこの速さのボールは寸分違わずそれはクロへと飛来し、
「ふんッ!」
あっけなくキャッチされる。
えー…。
「おかえし、よ!」
返す一球は雀花をアウトにした。
これで私のチームの内野は龍子と美々…あ、美々もアウトになった。
「どう?ここまで追い詰めたわよ!」
「仕方ない。大人げないとは思ったけど…そっちがその気なら!」
ラルド、と小声で声をかける。
同時にその意図を察したラルドにより、衣装チェンジなしで転身する。
「な…!なら私だって!」
あー、これはイリヤも転身したわね。
豪速球の応酬が始まった。
お互い、自分たちが脱落した時点で負けるのは目に見えている。だからこそ互いをターゲットにし、渾身の一撃を放ち続ける。
「はあああっ!」
不意を打つように強く回転をかけボールを横に投げる。
「どこに投げて…!」
与えられた回転により大きくその軌道はねじ曲がり、バウンドすることなくコートの外からカーブを描いてクロに迫る。
慌ててキャッチしたクロの手中で大きく音を鳴らしながら回転は徐々に収まっていく。
「初見で私のブーメランス〇イクを対処するとはね…」
「危なかったわ。さすがね。ならこれは、どうっ!?」
クロは上に軽くボールを投げ、引き絞った右手で殴り飛ばした———!?
「ぐううううっ!」
幸い、正面だったから受け止められたけど、なにこの威力…!
「イグナ〇トパス…いえ私の波〇球を止めたわね…!」
「108まであるの!?」
その後の応酬は言わずもがな。
そんな攻防が続いた。
「「「はぁ…はぁ…はぁ…」」」
授業もあと5分ほどで終わるかという頃。
満身創痍の三人は未だコートに立っていた。
残るプレイヤーは三人を除き、美遊のみ。転身した美遊は周りへの被害を抑えるべく苦心していた。
「これが、最後の攻防ね」
そう宣言し、クロがボールを構える。
その構えはさっきまでとは違う。
片膝を立てて、両手でボールを固定している。
その後ろに立つのはイリヤ。
「———まさか」
イリヤの右手に魔力が集中していくのがわかる。
固く握りしめた拳を腰溜めに、全身の筋肉を引き絞る。
大地を踏みしめ、足、腰、肩、腕と力を伝達し、
「ジャジ〇ンケン、グー!!!」
ボールを撃ち抜いた。
目の前に迫る豪速球の威力は今までとは段違い。
恐らくキャッチするのは無理だろう。
ならば。
「ああああああああああ!!!!」
前に構えた腕でレシーブする!
上に弾き上げようとする力と、私を弾き飛ばそうとする力が拮抗する。
そして遂に。
私が組んでいた腕が弾かれ、その反動でボールはまっすぐにイリヤに向かって返っていった。
「へ———ぶぉぅ…!?」
ワンバウンドはしたもののその威力は計り知れず、イリヤの腹部にクリーンヒットする。
と同時に、
「忘れてた…痛覚…共有…」
クロもダウンした。
でもそんな私も限界で。
そのまま私の意識は暗転した———。
□
「ん…」
保健室で砂糖たっぷりの緑茶を啜っていると、義妹が起きだす気配がした。
この職に就いてしばらく。
私の体質を利用した仕事をしばらくしていないおかげで視力などの身体能力の低下が抑えられているのか、義妹の表情がはっきりと見える。
「あれ…カレン姉…?」
「おはよう。全く、起きたのなら早く帰りなさい。もう放課後よ」
「えーっと…」
「体育の途中で怪我したらしいわ。といっても、打撲くらい。どうせならもっと危篤寸前みたいな状態で来なさいな」
「妹に向かって殺生な…。みんなは?」
「貴女が起きる前に帰っていったわ。白野のこと気にしていたみたいだけど、私たちが姉妹だって知っていたからとりあえずは安心して帰ったみたい」
「あはは…ご迷惑をおかけします」
ほんとに。
奇跡か偶然か必然か。
数奇な運命の彼女たちの友人に私の妹がなるなんてね。
無駄に面倒な子たちが揃っているわ。
これに意味はあるのか意味はないのか。
何か起こるのか、何にも起きないのか。
「まあ、どうでもいいでしょう」
「?どうしたの?」
「こっちの話。そういえばあの神父もそろそろ帰ってくるみたいなことを言っていたわよ」
「げぇ…尊敬はしているんだけどなー性格がねー」
「それに関しては全面的に同意するわ。とりあえず、一回教会の方も掃除しないとね」
「わかった。準備しとくね」
そう言って白野は保健室を出ていく。
未だに使い慣れないパソコンを立ち上げ、教員としての定時連絡を立ち上げる。
「暇ね…半死半生の患者でも運び込まれないかしら」
本日も異常なし、と。
曖昧なバランスを保っている日常を示すかのように画面に打ち込んだ。
深夜テンションでの執筆ってこうなるのかー(前も経験した気が)
バゼット、海、祭り(未定)、美々の堕天、ギル戦…書きたいことはいっぱい。
誤字脱字などの指摘、感想、評価などがありましたらよろしくお願いします。
感想のお返事は返せていませんが、全部読ませてもらっています。モチベーションアップにつながっています。
いつもありがとうございます。