Fate/kaleid stage   作:にくろん。

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前話の感想、BLネタにみなさん反応しすぎ(笑)

…イリヤが出ない。
100連でアンジェリカ限凸、ずんがずんが2枚限凸、美遊二枚、メディアリリィ4枚、ナーサリー(二枚目)、マリー(水着に着替えて来い)、エレナママ二枚、茨木童子(3枚目)でした。


金術演出で期待を裏切られ続けること7回…

イベも後半戦、財布がずんがずんがするぜ


29話  8枚目のカード

 

俺たちは今、再び海に来ている。

時間帯は夜で、場所もルヴィアが建造した地下施設だけど。

 

「全員揃いましたわね」

「バゼットは?」

「休戦協定は結んでも、仲間になった覚えはありませんわ」

 

「作戦は頭に入っているわね。手筈は昨日確認した通り。小細工なしの一本勝負。最も合理的かつ効率的な戦術、すなわち———初撃必殺」

「おそらく過去最大の難敵でしょうが、先に倒してしまえば問題ない、ということです。それだけに持てる最大の火力を展開する必要があります」

「その下準備を整えるのがルヴィアと俺の役割———で合ってるよな」

「ええ。そのうえで衛宮くんには攻撃にも参加してもらいたい———。無茶を言っている自覚はあるわ。でも、私たちの中で一番戦闘に優れているのは衛宮くんなの。———頼めるかしら」

「ああ。もちろんできる範囲で、になるけど」

「充分よ」

 

白野たち四人は適度な緊張感を持ったまま話しているのが見える。

 

「よかった。もっと緊張しているかと思ったけど」

「ふふ。本番こそリラックスして挑むべきですわ」

「そういう意味では安心ね」

 

 

 

 

「———暗くて殺風景。EXTRAステージにしては華のない舞台ね」

セイバーの宝具(招き蕩う黄金劇場)でも使ったらいい?」

「ちょっと二人とも。もう少し緊張感をもって…」

 

長い階段を下り、辺りを見渡してそんなことを話す。

3人とも何気なく話しているように見えて、美遊の様子を窺うのを忘れない———と言っても、肝心の美遊は気付いていないみたいだけど。

 

「はーくのっ」

「どうしたのクロ」

「気付いているんでしょ」

 

やっぱりこの子も。

 

「美遊?」

「そう。8枚目のカードがわかってから明らかに様子がおかしいものね。イリヤは踏み込まないみたいだけど…ハクノはどうするつもり?」

 

聞くと、海で私がいない間にそんなことをしていたみたい。

…私は。

 

「今は聞かない、かな」

「どうして?」

「理由は二つ。戦闘前にあんまり動揺させたくないってことと、話せることならもう相談してるでしょ」

 

私自身の事情(並行世界出身)もあることだし、言いたくないことと言えないことの境界は本人が見極めるべきだ。

 

「だから。この戦いが終わったら聞き出すんだ———」

「ちょ、やめてよね!そんなフラグ建てるの!」

「あぁ、安心した———」

「だからやめなさいっての!!」

 

そんなことを話している間にもう時間が迫っていた。

 

 

「どうする?遅刻者は放っておいて先にやっちゃう?」

「それもやむなしかしら…」

「時間まであと5秒…」

 

 

 

3…

 

 

 

2…

 

 

 

1…

 

 

と時間が過ぎ、

 

「ゼロ」

 

その声と共に空からバゼットさんが降って来た。

その眼光は鋭く、私たちと戦った時に壊れた斬り抉る戦神の剣(フラガラック)のケースも修復されている。

 

「———始めましょうか」

「配置について!ジャンプと同時に攻撃を開始するわ!」

「確認です。私は貴女たちのあとに戦闘を開始する、ということでいいのですね」

「ええ。お互い邪魔はしないでよね」

「もちろんだ」

「敵からの反撃はイリヤの物理保護と衛宮くんの防御にかかっているわ。それを抜いたとしてもイリヤはダメージを受けないように!」

「え?なんで?」

「忘れたの?イリヤ、クロ、バゼットさんは痛覚共有があるでしょ」

 

あ!と私からの指摘に完全に忘れていた顔になるイリヤ。

 

「———そんな呪い(もの)、とうに解呪済みですが」

「え!?」

「腕はいいが性格の悪いシスターに祓ってもらいました。それほど難解な呪いではなかったようですし」

 

———まさかと思うけどそのシスターって…。

 

いや、今は置いておく。

帰ったら聞くことが増えただけだ。

 

「ま、ここまで来たら呪いがあろうがなかろうが関係ないわ。この戦いは、どちらがカードを手にするか、それだけの勝負よ!」

 

魔法陣の輝きが一層強まる。

 

「———いきます!」

 

境界面へのジャンプ。

それは世界がずれるような奇妙な感覚。

 

この時のそれは、今までのよりもひどく長い感じがして。

ようやくズレきった時、そこには。

 

 

黒に染まった悪意が満ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「黒い魔力の霧!?」

「セイバーの時と同じ…いや、あの時以上!」

 

彼我の魔力の差に怯みそうになる。

 

「狼狽えるな!敵が強大であることはわかっていたはずだ!」

 

士郎兄が黒弓を取り出しながら告げる。

 

「まずは私ですわね———準備を進めなさい!」

 

そう叫んだルヴィアさんは魔力の霧に阻まれて見えない英霊へと突き進む。

 

超高密度の魔力の霧は、それ自身が盾にも矛にもなりうる。

それをルヴィアさんは舞うように躱しながら、現実界で仕込んでいた魔法陣のキーとなる箇所へ宝石を埋め込んでいく。

 

境界面は現実の影響を受ける。

今回、地下をわざわざ掘ったのは戦闘する空間を確保する他に、そこ自体に仕込みをするためだった。起動するための宝石自体は境界面で使わないと効果が得られないけど、それでも下準備のあるなしで魔術の強度は段違いに変わってくる。

 

「これで———最後ッッ!!」

 

そして、最後のくぼみに宝石が嵌められる。

5つの宝石が魔法陣に従い魔力を循環させ、魔術を発動させようとする。

 

Zeiben(サイン)———!!!」

 

西洋に伝わる4元素を東洋における5行説と関連させ、発動する場所である日本に合わせてカスタマイズした術。五行説における相乗を利用することで本来よりも術式に満ちる魔力量が跳ね上がる。

 

世界蛇の口(ヨルムンガンド)!!!」

 

5つの宝石から放たれた魔力の鎖は中心へと突き進み、黒い霧をも貫いて雁字搦めに拘束した。

 

勿論私たちもただ見ていたわけじゃない。

 

「イリヤ、美遊!チャージ20秒!」

 

「…なるほど。吸引圧縮型の捕縛魔法陣で敵を拘束しつつ、魔力のチャージの時間を稼ぐ。そして…」

 

Vom Ersten Zum dreizehnte(1番から13番)

 

Eine Folgeschaltung Drehkompression(直列起動、回転圧縮)————」

 

凛姉が宝石を13個宙に放る。

 

「白野!」

「ラルド!」『合点!』

 

その宝石は回転を始め、私が流し込む魔力を糧に強度を上げていく。

宝石と凛姉と私の魔力を圧縮し、回転の中心、その増幅路へと導かれる。

 

「美遊!イリヤ!」

「オッケー!」

 

準備はできたとばかりに二人に声をかけると、そのチャージした魔力砲を砲台へと接続する。

 

「…砲台か!」

「そうよバゼット。魔力の高速回転増幅路。私だけだと単純な威力の底上げに留まるけど、白野が協力してくれることでこの砲台は更に凶悪化するわ———!」

 

抑えきれない極大の魔力が、砲身から燐光となって溢れだす。

この砲台では、増幅させ続ける魔力を抑えきれない。

 

ならばどうするのか。

 

「回転させることで圧縮と増幅を図っていたけど、やっぱりこうなるか…ッ!」

「みんな、気合を入れなおしてね…!行くよッ!」

 

凛姉以外の三人で、無理やり砲台を維持する。その間に、凛姉が砲台の方向性を少し変える!

 

「———満たせ、13の宝石()

 

撃つのではなく、穿つ。

 

「砲身、展開———術式、起動!」

 

詠唱に合わせて回転数がさらに上がり、荒れ狂う魔力が暴風となる。

 

 

「3人とも今よ!

 

    

    ———最果てをも轟かす槍(ロンゴミニアド)!!!!」

 

 

そしてその砲台を———いや、暴風を纏った槍を投擲する。

それは例えるなら砲台自身を砲弾とする暴挙。

特大の魔力が込められた爆弾として扱う術式。

 

黒い霧はなす術もなくかき消され、極大の魔力で構成された槍が直撃し、内包していた魔力を拘束術式もろとも爆発させる。それはまるで壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)

 

破格の一撃は、敵を中心に広がった爆発で地下空間自体を拡張した。

 

「…ぐ、なんて魔力だ…!」

「カレイドの魔法少女3人掛かりの大規模爆破術式よ!崩壊を想定して壁自体を現実(向こう)で補強、強化しておいてよかった!仕上げよ!クロ、衛宮くん!」

 

 

 

相手からの攻撃に備えて高めていた魔力を、すべて投影へと注ぎ込む。

 

「クロ。お前が聖杯としての力を持つなら———」

「わかっているわ。一番の、あの聖剣しかない」

 

詠唱をせず、クロが集中状態へと突入する。

なら俺も。

 

 

体は剣で出来ている(I am the bone of my sword)———」

 

 

やることは変わらない。

 

 

創造の理念を鑑定し、

基本となる骨子を想定し、

構成された材質を複製し、

製作に及ぶ技術を模倣し、

成長に至る経験に共感し、

蓄積された年月を再現する。

 

 

2人で黒弓へと()を番える。

 

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー)———!!」

偽・螺旋剣Ⅱ(カラドボルグ)———!!!」

 

 

それぞれ真名を解放し、その宝具そのものを爆弾として扱う!

 

 

「「壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)」」

 

 

 

 

 

————だからこそ。

俺たち二人だけが気付いた。

 

 

俺たちの攻撃が届く直前、堅牢な盾に阻まれたことに。

 

咄嗟に盾を解析する。

あの攻撃を防ぎきる盾なら宝具に違いない。もし真名がわかれば対策を立てられるかもしれない。

 

そんな期待は淡く崩れ去る。

 

「名前が…ない?」

 

性能も、込められた神秘も超一流。

宝具でありながら宝具としての名を与えられていなかった。

 

「イージス…」

 

ぼそっとクロが呟く。

確かに一瞬頭をよぎったが、それにしては違和感が拭えない。

 

「まさか————」

 

その答えはすぐにわかった。

単身飛び出したバゼットの体に突き立つ剣群を見て、わかってしまった。

 

 

「ギ…ギィアアアアアアアア!!!!!」

 

足元から広がる黒い霧から無数の武具を宙に浮かべて、英霊は吠える。

 

「なに…あれ…。なんなの…一体何が!」

 

イリヤが叫ぶ。

 

「遠坂!退避だ!!」

「ッ!白野!」

 

「うん!バゼッ———」

 

呼ぶ声は、バゼットの心臓へと突き立つ剣によって妨げられた。

 

「あれはもう…!」

 

一目でわかる致命傷。

それを受けてなお、

 

「条件、完了…!」

 

彼女は進む。

自信の死をも相手を欺く隙を作るのに利用して。

 

「蘇生のルーン!?」

「宝具クラスの魔術(奇跡)を…!?」

「正真正銘、バーサーカー女ってことね」

 

その間に、イリヤの元に全員集まる。

 

「ジャンプの準備をして!」

「でもバゼットさんは———」

 

目前には英霊を殴り続ける執行者。

体を穿っても、魔力の霧によって修復される。加えて、無造作に現れる無数の武具。

少しでも距離が開けば防戦一方になっていた。

 

「あれは助けられない」

 

すがるようなイリヤに、無慈悲にクロは告げた。

 

「なんの冗談って感じ。アレ、何だかわかる?」

「まさか…」

 

美遊が息をのみ、遠坂達は苦々しげに顔を歪める。

 

「そう。あれ全部…宝具よ」

 

 

 

 

 

 

 

全員が絶望感に包まれる中、私は気付いていた。

いや、気付いてしまった。

 

あれは、私の従者(サーヴァント)だ。

 

視るも眩い黄金の輝きは黒に染まり、理性の欠片も感じさせないような状態だけどわかってしまう。

あれほどの武器を所有し、無造作に扱う英霊なんて、一人だろう。

 

呆然としている私の手をイリヤが掴む。

 

「ハクノ!とりあえずジャンプの準備を———」

 

そのセリフを最後まで続けれなかった。

 

彼が急に動きを止め、バゼットを弾き飛ばしたからだ。

そしてそのままぐるん、と首をこちらに向け———

 

「■■、ノ———」

 

一斉に剣群が飛来する!

 

「物理保護———!」

「そんなの効くわけないでしょ!宝具相手には宝具しかない!」

 

熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)!!」

 

開かれた花弁は4枚。1枚1枚が城壁に匹敵する盾も、徐々に壊れていく。

 

「ハクノ!早く脱出を!もう盾が持たない!」

「で、でも!」

「何故か貴女が狙われているの———ミユ!」

「わかった!」

 

有無を言わさぬ強さで引っ張られる。

 

「行きます、離界(ジャンプ)!!」

 

そしてそのまま凛姉たちと一緒に離脱した。

 

 

 

 

 

 

「まったく、世話が焼ける」

 

そう言って、弓を射る。

 

「お兄ちゃん!?」

 

剣は、今まさにクロを貫こうとした槍を弾いた。

 

「なんでここに!?」

「俺のセリフだ。妹二人を置いて逃げられるか。…というわけで、バゼット。頼むぞ」

「ええ。倒す以外安全に帰れる保証はありませんし」

 

金属球を3つ、拳の周りで浮遊させながらバゼットは言う。

 

「クロ、イリヤはサポートを頼む」

 

そして返事を聞かずに突っ込む!

 

すぐ横をバゼットが並走し、ともに剣群を打ち払う。

 

「おおおおおおおお!!!」

「はあああああああ!!!」

 

だが、対処が徐々に追いつかなくなる。

当然だ。数々の宝具の原典。現代を生きる俺たちには過ぎた兵器だ。

 

だから。

 

「バゼット———!」

 

彼女一人をさらに進ませる。

2人に分散していた攻撃が集中するが、

 

「全投影連続層射!」

 

すぐさま同じ武具を以って撃ち落とす。

二人掛かりで近付いたぶん、バゼットの到達が早い。

撃ち漏らした剣をフラガラックで切り払い、押し寄せる死をも踏破する。

 

そしてついに剣群を抜け。

 

「殺った———」

 

目の前に鏃が浮かんでいた。

 

——回避、不能。

 

投影を飛ばすにもバゼットの体で陰になり、そもそも今から投影するには間に合わない。

 

———一手、届かな…

 

その鏃はバゼットの額を

 

「世話が焼けるわ」

 

貫く寸前、弾かれた。

 

視線の先にはクロ。

黒弓を携え、用意していた剣を放ち窮地を救った。

 

「バゼットさん!お願い!」

 

イリヤが障壁を使って敵を拘束する。

一瞬しか効果がないが、英霊に匹敵する身体能力を持つバゼットには十分だった。

 

 

 

「硬化、強化、加速、相乗———!!!」

 

音速を超えた拳は心臓を貫きカードをえぐり出す!

 

「よし!」

「決まった!」

「素手で心臓貫通って…!!」

 

遠目にも、バゼットがカードを握っているのが見える。

 

「グ…」

 

 

 

 

「■■■■————!!!!!」

 

 

 

「そんな!」

 

バゼットが弾かれ、何とか体勢を整えつつすぐそばに着地する。

心臓を貫いた拳には何も握られておらず、痺れた様に痙攣しているのを押えている。

 

「馬鹿な…!カードをえぐり出されてなお動けるのか!!!」

 

そして。

そいつの真名に確信を持つ。

 

 

泥から浮かび上がったのは、柄が黄金に輝き、3つの黒い筒が重なったような剣だった。その異形の剣の筒がそれぞれ回転を始める。

 

 

「セイ、ハイ……ハク、ノオオ”オ”オ”!!!」

 

 

世界が裂かれる寸前、ギリギリ俺たちは離脱に成功した。

直前に聞いた声の意味を考える暇もなく。

 




英雄王扱いが難しい。ギル君書きたい。
プリヤアニメも佳境、カレイドステージもよろしくお願いします。

誤字脱字などの指摘、感想、評価などがありましたらよろしくお願いします。


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