Fate/kaleid stage   作:にくろん。

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ありがとうFGO。

コアトルと分かり合ったうえで熱いシナリオに燃えた七章。
素材柱の討伐、それぞれの柱のシナリオ、最終決戦…
美しく、切なく、ただただ満たされたラストでした。

ほんとありがとう。第二部楽しみにしています。


あ、エルキドゥ2枚当たりました。




33話 剣の世界、夢の続き

 

魔術回路に火を灯す。

 

言の葉に魔力(想い)を乗せて、世界へと出力する。

 

 

「——————体は剣で出来ている(I am the bone of my sword)

 

 

 

血潮は鉄で心は硝子(Steel is my body,and fire is my blood)

 

 

 

幾たびの戦場を越えて不敗(I have created over a thousand blades)

 

 

 

幾度もの運命を超え(At the end of the world no one knows)

 

 

 

幾度もの終焉を知る(Nor fate arrives here)

 

 

 

彼らの両の手から零れた雫は(Scoop the drop which fell up and scrape)

 

 

 

この器を以って受け止めよう(I'll stop by this my life)

 

 

 

なぜならきっと(Because surely)

 

 

 

この体は無限の剣で出来ているのだから(My fate is "unlimited blade works")———!!」

 

 

 

詠唱と同時に炎の波が唸りを上げる。

それはまるで海原を駆ける大波の様で、燃えるがままに現実を浸食する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

———空は高く、風は謳う。

 

それは、衛宮士郎(俺たち)が見た夢の景色。

 

 

 

透き通るような青空と、地平の彼方に佇む錆び付いた物言わぬ歯車。

 

薄く緑が覆う大地には、無数の剣が墓標のようにその存在感を示している。

 

一陣の風が世界を薙ぎ、揺れる緑は湖面を彷彿とさせる。

 

 

 

英霊エミヤの腕(様々なエミヤの経験)正義の味方を諦めた(前世の)俺、そして再び手に入れたかけがえのない家族や友人の存在は、確実に俺の心を変革していた。

 

 

 

「改めて問おう、英雄王。この大地に突き刺さる無数の剣。これらは全て偽物、おまえの言う取るに足らない存在だ。だがな、偽物が本物にかなわないなんて道理はない!———往くぞ英雄王、武器の貯蔵は充分か!?」

「ほざいたな雑種!!」

 

俺の意思1つで飛来したロングソードを掴み大地を駆ける。

いつの間にか、エメラルドの姿はない。代わりに、黒のボディアーマーと赤の外套の姿になっていた。

 

この固有結界を展開した時、全員の場所を操作した。相対する黄金の幼王と俺。泥の巨人はそのパスこそ切れなかったけど、距離を離すことに成功していた。

 

「衛宮くん!?」

 

固有結界の有効範囲内へとたどり着いていた遠坂とルヴィアはイリヤたちと合流させている。これできっと、有効な作戦を立てて戦うはずだ。

 

 

英雄王が飛ばしてくる宝具の原典と全く同じ(贋作)を剣の丘から引き抜き、相殺する。

 

爆炎が広がるも、さらに後ろから飛来した宝具にかき消される。今度は相殺せずに、回避に徹する。

 

「はああああ!!」

 

ロングソードで斬りかかる。

しかし、英雄王も余裕をもって取り出した剣を振るい迎撃してくる。

宝具と名もない刀剣。その接触は当たり前のようにロングソードが断ち切られて終わる。

そのまま返す刃で狙ってくる剣を、咄嗟に投影した干将莫邪で迎撃する。

 

「やっぱり干将莫邪(これ)が一番対応できる、か!」

 

少し距離を取り、独り言ちる。

お互い弓兵のクラスだ。この距離は決して安心できる距離ではない。どれでも、英霊相手の接近戦よりかはマシに思えた。

 

「…結界内に保持している剣なら、タイムラグなしで呼び寄せられるのか。宝物庫から取り出す手間がかかる僕より手順が少ない分、先手を取り続ける…厄介だね」

 

英雄王がその眼でこちらの戦力を分析してくる。

 

———厄介だ。

 

慢心していた方がよっぽどやりやすい。

試すかのように再度撃ち出される剣群を相殺しながら考える。

乖離剣を取り出される前に接近を試みるが、泥の巨人からも降り注ぐ武具の対処に追われる。

 

「お兄ちゃん!こっちは任せて!」

 

何度か繰り返すうちに作戦を立てたのか、イリヤとクロが巨人の相手をし始めた。

 

激しい戦闘が続く。

 

「確かに、世界そのものが敵だとさすがにすべてを相手にするのは、ね。なればこそ。一息に焼き尽くそう!!!」

 

一際大きく門が開く。

 

乖離剣を出すのかと思ったら違う。

あれは———さっきの神造兵器と対を成す剣。古代メソポタミアで崇められ、神格を得た一振り!!

 

万海灼き祓う暁の水平(シュルシャガナ)!!」

 

歪な形の、灼炎を宿した大剣が現れる。

 

「大サービスだ。千山斬り拓く翠の地平(イガリマ)!!」

 

そして、さっき打ち払った大剣も姿を現した。

 

「う、おおおおおお!!!」

 

神造兵器と相対するにふさわしい刀剣はこの世界にはない。

なら、この世界すべて(衛宮士郎のすべて)を以って代えさせてもらう!

 

世界中の剣が集結する。

名剣、宝剣、業物、神剣、魔剣、妖刀、鋭刃、鈍、斧剣、名刀。

 

全ての剣が束ねられ、一斉に殺到する。

そしてそのまま、二つの神造兵器と打ち合う!!!!

 

剣が灼かれ、地が抉れる。

だが、この打ち合いは拮抗している!!!

 

「今よ!!」

 

そして、このタイミングを狙ったかのように遠坂達が動き出した。

 

「——————、」

 

一息で懐に潜り込んだバゼット。その身に着けているスーツやグローブにはルヴィアと遠坂二人掛かりでの強化が施されていて、もともとバケモノ染みていた身体能力をさらに強化していた。恐らく、強化された身体能力と感覚の齟齬をなくすために思考加速の魔術も使っているんだろう。

 

一瞬のうちに放たれた神速の拳。

 

正確に見切れてはいないが、少なくとも5発は放たれたそれは英雄王の体を撃ち据えた。

 

「ぐ、ぁっ」

 

初めて見て取れたダメージ。

だけど無理せずバゼットは下がる。途端、今いた場所を宝具の雨が降り注ぐ。

 

「ダメージは与えました。ですが、これ以上は警戒されているでしょう」

「上出来!そのまま私たちの護衛お願い!行くわよルヴィア!」

「ええ!Zeichen———!」

 

遠坂達が宝石を投げ魔力を装填する。

対魔力を持っている英雄王を狙うのではない。

放たれた魔力は、幼王の後ろでイリヤとクロが抑えていた泥の巨人と英雄王を繋ぐ()へと突き刺さった!

 

「■■■、■———!!」

回路(パス)が———!?」

 

撃ち込まれた魔力により、少なからず魔力回路に乱れが生まれる。

 

全員で生み出したこの隙を見逃すわけにはいかない!!!

 

 

破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)!!!」

 

 

魔術殺しの短剣。

契約を破壊する、裏切りの魔女の宝具は確かに英雄王と泥の繋がりを切断した。

 

 

 

英雄王が手綱を握っていたそれが解放され、溢れだした泥から際限なく宝具が撃ち出される。

そして———

 

「まさか、こんな結末になるとはね」

 

パスが切れたおかげで万海灼き祓う暁の水平(シュルシャガナ)千山斬り拓く翠の地平(イガリマ)が出力負けして、その猛威を潜り抜けた1本の剣が幼王に突き立っていた。

 

「選定の剣に貫かれるとは。僕も焼きが回って来たかなあ」

 

そう言って英雄王は自らの半身が放った宝具の雨に呑まれて消えていった。

 

 

 

 

「■■■■———!!」

 

声にならない咆哮をあげ、残ったバケモノが武具の雨を降らす。

 

同じ剣群で相殺しようにも、神造兵器の迎撃にこの世界の刀剣はほぼすべて使い切ってしまっていた。再び固有結界を展開するか、投影しない限り剣は取り出せない。

 

投影ではすべての対処はできないとわかりつつも、わずかでも生存の可能性を上げるために剣を創り出す。

 

「「投影(トレース)開始(オン)!」」

 

その声は重なり、俺とクロの投影で迫り来る剣群を相殺しきれた。

 

「クロ!」

「お兄ちゃん、大丈夫!?」

「なんとか———!?」

 

突然魔力が切れ世界が崩壊する。

そして元の世界に戻ると同時に俺の姿もいつもの格好に戻り、

 

『ごめん!時間切れだ!』

 

赤の外套がエメラルドに変わった。

 

「時間切れ?」

『うん。完全なリンクが出来ていなかった状態での固有結界の維持はここが限界だ』

「そうか…いや、それでも助かった。ギルガメッシュを撃退できたんだから」

「そうは言っても、まだあのデカブツが残っているわよ?どうするの?」

 

 

「——————大丈夫だ」

 

見上げたその先。

満月を背景に、ルビーで転身した状態でサファイアを手にするイリヤの姿が見えた。

 

 

 

 

爆発的な魔力が空中に拡散し、まるで翼のように広がる。

赤と青のその姿。

 

カレイドライナーの真骨頂。

ツヴァイフォームと呼ばれる、ステッキたちの真の力。

 

「はああああああ!!!」

 

ステッキの先に創り出された魔力刃が、宝具の盾を切り裂く。

放たれた魔力弾は迫り来る剣群を爆散させる。

 

 

「う…」

 

「クロ?大丈夫か…?」

 

周りにバゼットたちが集まってくるがクロの様子がおかしい。

 

「うん。…あの子、無茶しちゃって…!」

 

「まさか!」

 

ルヴィアが思い至ったように声を荒げる。

 

「あの魔力の奔流は明らかに人一人で使える魔力量を超えてます!いくらステッキから無限の魔力を供給できても、何らかの代償を払わないとあの魔力行使は不可能———!」

「その通りよ。たぶん、この感じだと筋系、神経系、リンパ系、血管系辺りを魔術回路として誤認させて大出力を支えているわ。———たぶん長くはもたない」

「なっ!?イリヤ…!」

「でもそれは相手も同じだ。あれだけ派手に魔力を使えば、枯渇するのも時間の問題だろう」

 

 

 

「■きの■だ———!!!」

 

唐突に、幼王の声が響き渡る。

ハッとして見ると、泥の巨人のその腹部。上半身だけ残った英雄王がそこに在った。霊基が損傷しているからか、泥の浸食を防ぎきれておらず、その眼には狂気が見え隠れしている。

 

「世■■裂くは■■乖■■———!!」

 

そして泥の巨人が手にしていたのは原初の鍵。

世界を拓き、原初の理を成した権能。

 

3つに連なる円筒はそれぞれ逆回転をして、渦巻く空気の断層が世界を軋ませる。

 

 

「ルビー!サファイア!全部使って!!」

 

イリヤも負けじと声を荒げる。

 

「これが私のすべて———!!!」

 

魔力が高まり、極大の一撃が撃ち出される!!!

 

 

 

天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)!!!!」

多元重奏飽和砲撃(クウィンテットフォイア)!!!!」

 

 

溢れんばかりの魔力の奔流と世界を裂く空気の断層が衝突する。

 

視界が白く染まる。

 

 

 

 

 

 

———!

 

 

 

——————!!

 

 

 

—————————!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

眼を、開く。

 

 

爆心地となったそこは大きなクレーターが広がり、ギルガメッシュの様子は確認できない。

 

 

 

———ああ、安心した。

 

それでも確認できたものがある。

 

溢れんばかりの魔力が粒子となり、天へと昇る。

月夜のその幻想的な雰囲気の中、三人の少女がそこにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ツヴァイ、あと一話。

年内ラスト更新です。今年もお世話になりました。
気付けばこの作品も1年。ここまで続いたのも皆様のおかげです。
亀更新な拙作ですが、今後ともよろしくお願いします。

オリジナル詠唱、英語の部分はフィーリングです。細かい文法とか気にしないで…(切実

誤字脱字などの指摘、感想、評価などがありましたらよろしくお願いします。


ちょっと補足というか詠唱の補填?
英語部分は意訳して日本語部分と合わせてこんなつもりです。
(幾度の戦場を超え不敗、の次から)
様々な世界の終わりを知り、幾度もの運命を超え
運命はここに至り、幾度もの終焉を知る

彼らの両の手からこぼす雫を、掬い上げてかき集めて
この体で受け入れて、この器を以って受け止めよう

なぜならきっと、私の運命と
この体は無限の剣で出来ているのだから

こんなつもりです。
賛否両論あるかと思いますが、拙作の士郎はこの詠唱です。ご理解ください。また、作中で全ての剣を使い切った、とありますが、固有結界展開時に内蔵していた剣が無くなったということです。結界内でも新たに投影するには魔力が必要ですし、内包していた剣は神造兵器と衝突した際に壊れています。贋作を用いて神造兵器と撃ち合ったので。

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