一夏の一夏による世界の為のやり直し   作:気宇

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そんな訳でぼちぼち進めて行く事になりました。これからよろしくお願いします。




入学

さて、拙という人格が覚醒してから一ヶ月と三日が経過した。まあ当初の予定通り、拙は()()()そこに存在した打鉄に()()()で触れて見事IS学園送りとなった。ここまでは前回と全く同じ、歪みの無い台本通りだ。過程も覚えている範囲はほぼ同じだ。◯日に何を食べたとか、そう言う小さ過ぎる違いはあるだろうけど。

当時の口調も大体は思い出したし、特に問題は起きないはずだ。うん、自分で言うのもアレだけど上手くいけてると思う。一人称を変える気は無いがな。

 

 

 

 

 

ISとは女性にしか動かせない欠陥の塊だ。つまりそれのパイロットを養成するIS学園も必然的に女子校状態になっているが……何分二回目の拙には全く苦痛では無い。寧ろ懐かしさと感動すら覚える。まだ愚昧だったが楽し過ぎたあの頃をもう一度味わえるからな。似合わん感情だがこれから起き得るイベントに心が躍るんだ。

ん?そう言えば最初は自己紹介だったな。確かあの時は……情け無い自己紹介をして姉さんに殴られたな出席簿で。アレは中々に痛い。姉さんの手にかかれば紙束すら凶器とかしてしてしまう。これは本当に嫁の貰い手が無いんじゃ無いか……?

と不粋な思考はやめようか。またエスパー姉さんが攻めて来る。

 

 

さて、拙には選択肢がある。一つは一回目の再現か。もう一つはきちんと自己紹介をして見るか。前者を取れば拙は姉さんに殴られ、後者をとればナノ単位のタイムパラドックスが発生する。そのパラドックスがどれ程の影響を及ぼすのか。本日一日の出来事か多少なり変化するかも知れない。例えば今後起きるであろう篠ノ之箒との再会や、セシリア・オルコットのあの喧嘩腰が弱まるのか。まあ殴られるのは嫌だしね。ここは変化を加えてみよう。

 

 

「織斑君、自己紹介をお願いします」

「うす」

 

 

相変わらず日本人離れした髪色に中々良い発育の……。と危ない、あのウサギが完全武装をして拙を殺しに来る。女性の胸についてどうこう考えるのはやめにしよう。弁明すると仕方無いだろう、男だもん。

改めて山田先生の顔を見るとクる物があるな。何だ、「拙には帰る場所がある」的な意味の分からない幸福感と安心感が湧いてくる。捨てた場所なのに、いざ強制送還させられると大事にしたくなるか。つくづく拙は自分勝手な生き物だ。

 

立ち上がり、身体を180度回転させる。当然視界に入るのは女子生徒女子生徒と、性別が違う方しかいない。おい篠ノ之、分かっていたとは言え目を逸らすな。

まあ良い。さて、始めますか。

 

 

「織斑一夏です。趣味は鍛錬と機械弄り、特技は料理かな。まだまだ未熟ですが、よろしくお願いします」

 

 

うん、自画自賛にはなるけど中々良く出来ていると思う。情報を必要最低限にまで押さえ込みかつ、拙と言う人物像を掴めるワード。頻繁に使用する営業スマイルに深いお辞儀。

お、姉さんの到来だ。今考えてみれば都合の良過ぎるタイミングだな。まさかスタンバッてたのか?姉さんの事だからありそうだ。

 

 

「お前にしてはまずまずの出来だな、織斑」

 

 

さて、ここで冷静では違和感を感じられるかも知れない。この時代の俺はそこまで聡くも鋭くも無かった。つまり拙に求められる発言はと言うとだな。

 

 

「げぇ⁉︎関羽⁉︎」

 

 

だ。すると姉さんは移動しながら出席簿をスタンバイさせ、拙の脳天を破壊せんと床を踏みしめ接近して来る。うん、威圧感は変わらないな。怖い。

だけどねーーー!

 

 

「ふっ!」

「受け止めただと……?」

 

 

人の頭を叩いてはいけませんと習わなかったのかこのゴリ姉さんは。もしくは人の嫌がる事をしてはいけませんと……あ、これブーメランだ。

 

 

「一夏、いつ反応速度を鍛えた」

「これぐらい、男の子には出来て当然ですよ先生。それと公私混同にはお気を付けて」

 

 

姉さん、出し抜いてやったり。この微妙に悔しそうな顔がたまらない。カメラ持って来れば良かったかも知れないと、拙は後悔した。

 

 

 

ーーーー

 

ーー

 

「ちょっと良いか」

 

 

待ったましたぜ箒嬢。IS学園での最初のイベント、「篠ノ之箒との再会」。とりあえずこれは前回通りだな。それだけでも有益な情報となる。

しかしどうも心が痛むな。あの未来では拙は箒嬢を含む全員を裏切った様な物だ。何回か墜としたし。そりゃあ、死なない様には計算してたけどね。

まあそれはこの時代の箒嬢にはまだ関係の無い話だ。さて、彼女の知る織斑一夏とは少し中身が違うが、勘弁してくれよ。

 

 

「久しぶりだな箒嬢。随分と別嬪さんになったじゃ無いか。幼馴染みとしては鼻が高い」

「べ、別嬪⁉︎な、ななな何を言い出すのだ!」

「褒めただけなのだが……。まあ廊下行こう」

 

 

この辺りは記憶が曖昧だ。果たして何を話したのかは覚えておらん。廊下だったのには覚えがあるが。

しかし箒嬢は今も昔も未来と変わらんな。褒めてやったらすぐに語尾を荒くして照れ隠しをする。また木刀は勘弁して欲しいが。痛いのよねアレ。

 

 

「改めて。久しぶりだな箒嬢」

「う、うむ。お前は……色々変わったな」

「人間、ふとした出来事で変わってしまう物だ。そう言う箒嬢はあまり変わっていないな。いや、良い事なのだが」

 

 

さて、突然「未来の出来事を覚えている」とか言ったら、箒嬢は拙を信じてくれるだろうか。まあその話をする日は来ないだろう。その前に拙一人で全てを片付けてやる。まあでも、もし信じてくれるのならば……それはとても嬉しい。

おおっと、チャイムが鳴る時刻が近づいてき来た。さて箒嬢の手を引いて教室に戻るか。積もる話はまた時間のある時に。それは赦されるはずだ。

 

 

 

ーー

 

むにゃーーー。

 

 

『一夏、私は日本の代表だ。代表の名にかけて、野良の貴様を放置する訳にはいかない』

『おうおう、怖いこった。拙だって好きでやってる訳では無いのだがね』

『もう一度だけ聞くぞ一夏。投降する気は無いのか?』

『無いね』

『どの政府も腐り切っているのは私も分かっている。それでもお前はーーーこの大戦を最悪にも最高にも導くジョーカーだ。それに私だって、お前と敵対したくは無い。きっと都合の良い駒だ。それでも私は日本に住む一般の人々が奴隷に堕とされ無い様に、この国を勝利に導く義務があるのだ』

 

 

懐かしいな。久方振りに戦場で箒嬢と再会した時の会話だ。彼女に会って触発されたのか、鮮明に再生される。

 

 

『拙と言う存在は平等に振る舞う義務があるのだ。全ての国と敵対し、全てを破壊する。悪いが箒と手を組む事は出来無い。もちろん他の誰ともだ』

 

そう言った拙は箒嬢に敬意を込めて、雪片弐型を抜いたんだったな。

 

『さて箒。そのジョーカーの力、とくと味わうが良い』

 

 

 

宣戦布告の合図を述べた所で、記憶の映像の再生は終わってしまった。あまり良い気分じゃ無い。この後俺は箒嬢を倒したのだから。

 

 

視界に光が差す。ぼやけたそれが定まると……そこには目が笑っていない姉さん。そして教室の端で苦笑いを零している山田先生。後は立ち上がっているセシリア・オルコット。あ、拙寝てたのね。

仕方無いだろう、拙だって生き物だ。疲れるのだ。特にこれと言って疲労が蓄積する事はして無いけど。

 

 

「おはようございます先生。拙は中々良い目覚めですよ」

「それは何よりだ織斑。さてーーー死ね」

 

 

痛いッ!

流石に寝起きじゃ避けられないか……。おかげで目が覚めたけどな。

人物配置と状態から察するに、どうやら拙が一番待っていたオルコット嬢の自爆ショーが敢行されたのだろう。やれ「島国」だとかは、当時の間抜けな拙ですら分かる程ブーメランだった。まあそれがあんな淑女に変貌するのだから……恋の力って凄いね。

 

 

「んで先生、これは察するにクラス代表決めですか」

「そうだ。お前が他薦されている。それとそこの女が不服だとな」

 

 

思うが拙は見世物パンダでは無いんだぞ。こんな不確定要素を推薦するなど愚かな判断ーーーだと手厳しく評価しておこう。負ける確率の方が濃厚なのにな。

さて、どうやら拙のセリフ「イギリスがメシマズ」が抜けていても世界は進む様だ。しかしこのままでは似た様な事の永久ループ。拙の方から煽りをかけてみるか。

 

 

「お嬢さん、何が不服なんだ?」

「決まっていますわ!野蛮な男に代表を任せるなど言語道断!」

「まあ拙も他薦されたからには拒否権は無いし。どうだお嬢さん、決闘と言う事で」

 

 

これで上手く誘導されるはずだ。拙とオルコット嬢の決闘。前回は拙の凡ミスで敗北を喫したけど。二回目は負けないと言っとくぜ、オルコット嬢。

するとオルコット嬢はやはりと言うか、当然自分が勝つだろう的な澄まし顔でそれを了承した。ああそうだ、この頃のオルコット嬢はかなりその……ウザめのキャラだったな。張っていた虚勢が染み付いてしまっていた悲運の子だ。

 

 

さて、拙の記憶が正しければここで姉上から専用機支給の通達が出されるはずだ。おそらく……99%の確率で支給されるのは彼女が作った専用機"白式"。喪失した"白騎士"の001コアを積んだ拙の一番のパートナーだ。実際問題使用不可能状態の"白錬"も、白式を形態移行と改修を重ねた末に完成した代物。

そう、それが拙の狙いだ。現在は白式の建造が進められている頃だろう。つまりこの世界には001コアが二つ存在する()()()()の状態が発生している。その重複存在の問題を逆手に取れば……白錬をある程度は修復出来るだろう。コアを移植すれば内部機能も復旧するはずだ。

 

 

「決まりだな。そうだ織斑、お前に専用機が支給される」

 

 

来たーーー!

思わず拙は口元を僅かに歪めた。誰も視認出来ない程僅かだが。

しかしここで落ち着いていても普通では無いだろう。演技にはなるが驚いた、を装う。キョトンとした顔を作り、大き目に「え?」と声を漏らして。うん、オーケー。

 

 

まあその後たっぷりお勉強しましたけどね、知ってる事を。

 

 

ーーーーーー

 

 

さて、今日一日の出来事を纏めてみようか。前回と同じく入学から箒嬢との再会、オルコット嬢の喧嘩腰、個室でのちょっとした事故などだな。うむ。こうして見ると全く変わりが無い。やはりここは巻き戻った世界なのか……?あ、箒嬢のバスタオル一枚姿は役得でした。敢えて回避しないと言う手もあるのだよ。

 

 

現在時刻は午後の12時。もちろんIS学園の寮に就寝時間など無いのだが、9割方は既に眠りに就いている。偉いな。そんな訳で夜は拙の時間だ。非常事態に備えて白錬を可能な限り復旧させなければならない。

しかし整備室にはあの水色の子がいるはずだ。拙の所為で専用機開発が途絶えて良い迷惑を被った彼女がな。今すぐにでも協力してやりたいが……生憎現状の拙のキャラは「IS初心者」。おまけに公では専用機もまだ手元に来ていない事になっている。その中で安直に協力すれば……一気に拙は胡散臭い奴になるのだ。すまぬな、拙だって自己保存はしたい。

 

 

 

満点の星空を眺めながらIS整備ってのも中々乙なものですよ?春の夜だから多少温いし。いやあ、やっぱり人間は自然に帰るべきです。心が洗われーーー話が逸れかけた。集中せねば。

 

 

「あれから一ヶ月。PICとインターフェース関連の手動とプログラムの自動化により復旧は五割程度まで進んだが……、相変わらずリアクターが最悪だ。武装もマトモに動かせるのがメイスと雪片弎型しか無い。豆鉄砲は……残弾補給すればどうにかなるか。かと言って白式の方も雪片弐型のみだからなあ。零落白夜何て使い勝手がこの上無い程悪いし」

 

 

 

ようやく"動かせるレベル"にまでは復活した。この状態ならそうだな、姉さん以外なら確実に倒せるはずだ。

胸を撫で下ろす。心の底から安心したのは随分と久しぶりだろう。何せ結果が分かりきっている事をするのが多かったからな。

拙は久々に本来の形の一部を取り戻した愛機を撫でながら、星座の神々に願いを託す。

 

ー神よ、烏合の衆に知をー




白錬
なんだかんだで三次移行した白式。「拙が使っていい理由が無い」と言う事で零落白夜を強制的に削除している。心配性なアラサーいっくんの為に全身装甲になった。

ちなみにアラサーいっくんは色々吹っ切れてる為今回の箒の件の様に役得イベントは敢えて避けないと言う手段を取ります。
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