蒼き鋼のアルペジオ 〜Change the chronicle〜   作:Cadenza

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Cadenzaを見た。マジパネェ。もう一度見に行く。やっぱパネェ。
結果、モチベーションが「バァァァニング・ラァァブ!」して「火激にファイヤァァァ!」となり、書いた。
いや本当に面白かったです。初めて同じ映画を何回も見に行く人の気持ちがわかった。
諸注意。蒼き鋼のアルペジオとインフィニット・ストラトスのクロスオーバーです。前に似たような要素で書いてましたが挫折。でもアルペとISが諦めきれなかったので、今回に至ります。





Chronicle.1

「嫌い……嫌いキライきらいきらい‼︎ ヤマトなんか…キイなんか…沈んじゃえッ‼︎」

 

 そんな、悲痛とも言える叫びがこだまする。

 

「何もかも――無くなってしまえぇぇぇッッ‼︎」

 

 同時に、超重力砲が吹き荒れた。

 発したのは一人の少女。ミラーリング・システムを発動し、展開形態へと移行した戦艦の艦橋に立つ、涙を浮かべた少女――ムサシ。

 そのムサシと対峙しているのは二隻の戦艦。

 自らを受け入れ、ヤマトと融合したイ401。

 もう一隻は、ヤマト級たるムサシ以上の巨大な船体を持つ漆黒の戦艦。超戦艦キイ。

 

「ムサシ……」

 

 そう呟いたのは、超戦艦キイの艦橋に立つ一人の女性だった。

 ヤマトとムサシの妹である超戦艦キイ、そのメンタルモデルだ。

 彼女は、暴走するムサシを悲しげな表情で見つめていた。

 事の始まりは、ムサシが父と慕っていた千早翔像を同じ潜水艦乗組員であった副長以下クルーが殺害したこと。結果、ムサシが絶望し、暴走してしまった。

 暴走するムサシがヤマトを沈めたあの時、結局キイもムサシに攻撃が出来なかった。

 

 見ている事しか出来なかったのだ、みすみす(ヤマト)が沈む光景を。霧の艦隊最強と言われながら、何という体たらくだろうか。

 

 姉一人も止められず、何が最強か。

 

 そこから千早翔像の息子と401と出会うまで、ただただ海を彷徨い続けた。ムサシとは別の意味で絶望してしまったのだろう。何も出来なかった自分に対して。

 それが今の状況を生み出してしまった。

 唯一ムサシを止められる存在でありながら、それをしなかった。為すべきことを為さなかった。

 ヤマトがムサシの傍にいるべきだったと言うならば、キイもそうであった筈だ。同じ姉妹なのだから。

 そうすれば変わっていたかもしれない。

 こんな、姉妹同士が戦うなんてことには。

 ならなかったかもしれない。

 だが、そんな”もしも”など、今更意味はないだろう。

 ”もしも”ではなく”今”。

 今、何をするべきか。決まっている。

 

 為すべきことを為す。

 ムサシを、今度こそ止めるのだ。たとえ船体を沈めてでも。

 

「もう私は迷わない」

 

 決意を、己の意思を胸に、ムサシを見据える。

 妹を救うのが姉の役目ならば、その逆もまた然り。

 姉を救うのも妹の役目なのだ。

 だから行こう――

 

「ムサシ!」

 

 二度と、後悔などしないように。

 

 

 

 結果的に言うならば、和解は叶った。

 ヤマト、ムサシ、キイ。

 概念伝達空間内とはいえ、元の姉妹に、千早翔像と会ったばかりの頃のように戻れたのだ。

 すれ違いはあったとはいえ、三人共お互いを大切に想っていた。ただの仲の良い姉妹だった筈だ。

 元よりムサシが全世界へ降伏勧告を宣告したのも、全ては、それを止めにくるであろうヤマトとキイに会いたかったが為。

 和解が叶えば、全てが終わるのは当然だった。

 しかしキイの表情は晴れない。人間離れした端麗な顔を未だ歪めている。

 悲しげなものではなく、とても辛そうな表情だった。

 理由はただ一つ。

 ヤマトが「ごめんね」と、ムサシが「気にしないで」と、キイに言ったからだ。

 その意味を理解できるが故の、できてしまったが故の悲壮。

 

 ヤマトとムサシ。二人はもう長くない。

 ヤマトは大海戦前にコア本体諸共北極海に沈んでおり、401とデュアルコア化することで此処に居る状態だ。役目を終えた今、彼女は己の意思で消えるだろう。

 ムサシは既に満身創痍。船体はヤマトと融合した401の零距離超重力砲と特攻突撃により粉砕され、メンタルモデルは北極海へと投げ出された。ここまでの戦闘で演算能力も限界に近い筈だ。

 

 ”貴女を置いて逝ってしまう”ことに対する謝罪。”キイの所為ではない、だから背負わないで”という心遣い。

 

 つまりはそういうこと。

 そんなことを二人は、笑顔で言った。

 別れくらい、笑顔で迎えようと。

 

(良いのか? こんな終わりで)

 

 キイは、己自身に問いかけた。

 これが望んだことなのか、と。

 二度と後悔しないと誓った、ならばこの結果に後悔はないのか、と。

 答えは直ぐに出た。

 

(ふざけるな……)

 

 答えは否。

 こんな結末であってたまるか。こんな結末など認められる訳があるか。

 家族を失う気持ちは嫌というほど知った。それはとても絶望的なものだ。

 ムサシも父と慕った翔像の死に絶望し、暴走したのだから。ヤマトだって辛かっただろう。

 あんな気持ちは二度と味わいたくない。

 

(私は……)

 

 ヤマトもムサシもまだ生きている。ここで二人が消えるのをただ見ていては、十七年前と同じではないか。

 何より、このまま見過ごせば、キイは今度こそ壊れてしまうだろう。

 また見ているだけ、また姉妹を救えなかった、と。

 為すべきことを為す。ならば今こそが、最も為すべき時ではないだろうか。

 

(私はもう……)

 

 姉妹を助ける。それこそが、最も為すべきことではないだろうか。

 

(私はもう……後悔しない!)

 

 気付けば、身体が動き出していた。

 自身の艦橋から沈みゆくムサシ目掛けて、跳んだ。

 概念伝達空間内でえ? と、ヤマトとムサシが驚愕に目を見開いた。

 それを認識しながら、突然の行動に動揺していた401に向けて、殆ど叫ぶような声で言う。

 

「401! お前はお前が為すべきことを為せ! これまでのこと感謝する! また会おう(・・・・・)!」

 

 言い終わるや否や、クライン・フィールドを空中に足場として展開し、踏み込み加速する。

 そのままムサシが投げ出された海面へ飛び込んだ。

 残った演算でクライン・フィールドの形状を操作しながら、海中でも断続的に加速していく。

 

 暫く進めば、希薄になりながら沈むムサシが見えてきた。

 ムサシの視界に海中を突き進むキイの姿が入り、その紅い瞳を持つ目を薄く開ける。

 そして、軽く首を横に振った。

 同時に「来ないで」という意思を伝えてくる。このまま来ればキイも共に沈んでしまうと。

 キイの演算能力も最早限界だった。超戦艦同士という前代未聞の戦闘によって極限に達していたのだ。

 実際、構成していたナノマテリアルの演算を放棄したことによって、船体は崩壊が始まっている。

 ムサシを助ける為には、船体維持に割いていた演算が必要と判断したからだ。

 

(来ないでキイ。このままじゃ貴女まで……)

(やかましい! 私だけが残るくらいなら沈んだ方がマシだ! そんな気はないけどな!)

 

 ムサシの言葉に構わず、手を伸ばす。

 そして二人は、海底の闇へ消えていった。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 雲によって遮られていた朝陽が海原に差し込む。

 反射によってキラリと光る海面と共に、浮かぶ漆黒の戦艦の艦橋を照らし出した。

 その艦橋には複数の人影が。うちの一人が差し込んだ朝陽による眩しさからか、小さく身動きすると薄く目蓋を開く。

 覗く双眸は超常的な金色をしていた。

 

「……ん」

 

 身体を動かそうとすれば、自分の膝に感じる温もりと重さを思い出す。

 視界にかかっていた純金のようなブロンドヘアーを整えると、視線を下に向ける。

 そうすれば視界へ入ってきたのは、鮮やかなプラチナブロンド。

 黒い服を着た銀髪の美少女だった。

 未だ眠りの中にいるであろう少女を起こさないよう、独りごちる。

 

「なるほど、これが懐かしいというものか。随分と懐かしい夢を見た。何かの前触れか?」

 

 彼女は抑えたつもりだったが、少女の眠りは既に浅かったらしい。

 僅かに身動ぎし、目を開かないまま、自分より身長の高い彼女を見ようと顔を左上へ向ける。

 

「おはよう、キイ」

「おはようムサシ。悪いな、起こしてしまったか」

「大丈夫よ。時間的には朝だしね」

 

 そう言うと、彼女――キイの膝からピョン、と少女――ムサシは降り立つ。

 続けてキイも背を預けていた艦橋から立ち上がる。

 同時に自分の状態をスキャンする。金色のバイナルが身体に浮かび、”チ、チ、チ”という音が数回したかと思うとスキャンは完了していた。

 

「船体及びデルタコア、メンタルモデルに異常無し」

 

 自身の状態を確認したキイ。

 それが終わると、今度は艦隊に所属する全ての艦艇に量子通信をつなげた。

 

「全艦隊に伝達、各自状態を報告せよ」

 

 五秒と経たず、次々と異常無しの意が返ってくる。十秒後には全てが終わっていた。

 

「今日もいつも通り、かしらね?」

 

 横から声をかけられる。

 声の方向へ目を向ければ、純白のドレスを着た黒髪の女性が居た。

 その姿を確認するや否や、ムサシが喜びに顔を輝かせ、ギュッと女性に抱きついた。

 

「ヤマトーっ」

「あらあら。甘えん坊さんねムサシ」

 

 女性――ヤマトも抵抗なく抱き締める。

 ムサシを抱き締めたまま、ヤマトはキイへ問いかけた。

 

「夢を見ていたのね。戦術ネットワークから伝わってきたわ」

「……接続したままだったか。ああ、そうだ。メンタルモデルも夢を見るものなのか」

「夢とは記憶の整理によって見るものらしいわ。それよりも、あの時のことを懐かしいと感じるほどなのね」

「人間は、時が過ぎるのは早いと言うが、本当にそうらしい」

「もう四年も経つのね」

 

 もう、それ程の時間が経過した。

 あの全世界への降伏勧告より四年。

 伸ばした手は届いたのだ。

 コアだけの状態となったムサシを救出し、キイは自身とムサシのコアに強固なプロテクトを何重にも構築して世界から姿を消した。

 誰にも邪魔されることなくヤマトを探す為だ。

 ヤマトのコアは生きている。北極海へ沈んだあの時、不思議とそんな確信があった。

 もちろん根拠はあったが、それを抜きにしても何故かそう思えたのだ。

 そして数日間、北極海の海底を探し回り、遂に見つけた。

 401と共に北極海へ着いた時から不思議に思ってはいた。ヤマト本体が撃沈されながらも形を保ち、ナノマテリアルが活性化したままだったことに。

 根拠はあったが、見つけたときにどれだけホッとしたことか。

 おそらくヤマトが持つ一部の演算能力と意思を当時の401に移すことでデュアルコア化し、ヤマトのコア自体はスタンドアロンとして船体を沈みながらも維持していたのだろう。

 いつか401が北極海へ赴き、ムサシを止める力を得る為に。十七年もの間、ずっと。

 超戦艦級たるデルタコアだからこそできたことだ。

 

「しかし、ヤマトを見つけた時はホッと反面、恐れてもいた。もし消えていたら、とな」

「あの時はムサシと一緒に消える覚悟だったけれど、キイが北極海へ飛び込んだのを見てね。本当はイヤだったのよ。貴女を残していってしまうのは。だから限界まで待っていた」

「本当によかったよ。こうして姉妹に戻れたからな。なぁムサシ?」

「ええ、本当に」

 

 ヤマトを発見したキイが最初にしたこと。それは船体に再構成だった。

 自身、ヤマト、ムサシの沈んだ船体から未だ活性化しているナノマテリアルを集め、最も演算能力が回復していたキイの船体を中心にして再構成したのだ。

 まぁやはりと言うべきか、ナノマテリアルが足りず不完全な復活だったが。

 再構成後はヤマトとムサシ傘下だった駆逐艦戦隊などを新たに統合し新艦隊としたり、ヤマトと共に見つけた401のコアを後にヒュウガから回収した402のコアと融合させ新たなデュアルコアとして復活(ついでに船体も)させたり、復活した401を横須賀に送り届けたりと色々やってたりもした。

 

「最初は色々と騒がしかったな」

「何度か襲撃を受けたものね」

「キイは甘いのよ。人間達に襲撃されても無力化するだけで、そのまま逃がすなんて。二度とそんな気が起きないよう、全てを消してしまえばいいのに」

「ムサシ、あまり過激なことを言うな。霧はもう自由だ。海洋封鎖も、もう必要ない。わざわざ敵対して事を荒立てることはないだろう」

 

 あの最終決戦後、世界は荒れた。ある意味では『大海戦』直後以上の騒乱だった。いや、争乱と言うべきか。

 

 霧は、最後の総旗艦命令”自由意思の元に行動せよ”と、アドミラリティ・コードから解放された。

 それは霧にとって、残酷なことなのかもしれない。

 困惑する者、戸惑う者、混乱する者。霧も世界と同様、混乱を極めた。

 自分のことは自分で決めろと唐突に放り出されたのだから、それは必然だろう。

 そしてまた、人間の中に今こそ霧を殲滅する機会と企てる者達が現れるのも必然だった。

 ヤマト、ムサシ、キイ率いる艦隊も数回に渡る襲撃を受けた。

 正直なところ。襲撃する余裕があるならとっとと国を立て直せやら、たった一つの攻撃手段を得ただけで勝てると思うとか何も学んでいないのかだとか、色々と思ったことはあったが。

 

 振動弾頭が通じることは事実な為、強制波動装甲を持たない駆逐艦を下がらせ、旗艦が直接ことに当たった。

 その頃にはナノマテリアルの補給によって完全復活を果たしていた上、超戦艦三隻(ヤマトとムサシとキイ)の融合というとんでもない状態だった為、どう足掻いても人類に勝ち目はなかった。

 なら、そんなマヂ最強状態でありながら、人類側に大破した艦は一隻もいなかったのは何故であろうか。

 

 キイが撃滅(それ)を良しとしなかったからだ。

 

 キイは敢えて見逃した。人類側の戦力、たとえば艦ならば全兵装を破壊し、修復するより新たに作った方が低予算で済むような状態に。

 戦闘機は、パイロットの脱出が間に合う高度で電磁パルスの指向性放射によって墜とす。

 ミサイルに限らず、機銃や砲撃に至るまで、人類側の攻撃は全てその場から殆ど動かずに迎撃する。

 それを見た人間達はどんな感情を抱いたのだろうか。漸く霧に通じる攻撃手段を得たと思い出撃してみれば、実際には通じる以前に当たりもしてくれない。

 

 どんな気持ちだろうか。殺されるのなら、沈められるのなら、それが後に続く者達の気概となるかもしれない。しかし死ぬことはなく、ただ費用と装備だけを浪費していく。

 どんな気持ちだろうか。明らかに手加減されているとわかっていて、尚、戦うのは。

 キイは、兵士達の心を折ろうとしたのだ。

 たとえ戦力があろうと、人間の心がそう望まない限り、戦うことなどできないが為に。

 それでも人間達は折れなかった。それは等しく希望が、振動弾頭があったからだ。希望がある限り、人間は折れない。

 だがそれにとどめを刺したのは、二度目の襲撃の時だった。

 同じようにミサイルは迎撃された。振動弾頭搭載型を除いて。

 そのままキイへ直撃したのだ。

 兵士達は喜びではなく、唖然としていただろう。しかしその表情は驚愕へ変わった。

 振動弾頭十数発の直撃を食らったにもかかわらず、何時まで経ってもその効果を発揮しない。

 やがて数分が経過し、効果を発揮しなかった振動弾頭は、周辺の機銃によって破壊された。

 同時に、兵士達の心を完膚無きまでに粉砕した瞬間だった。

 

「私が言うのもなんだけど、人間の言葉でえげつないと言うのね。アレは」

「ムサシの言う通りね。キイだからこそだろうけど」

「私は戦闘担当だからな。無闇に沈めるよりはいい。あの振動弾頭は、目標の固有振動数を割り出し、それを出力・共鳴させることで破壊する兵器。ならば船体の構成を常時改変し、固有振動数を変化させ続ければいい。原理さえわかってしまえば対処は容易だ」

 

 そんなことがあって、キイ達の艦隊へちょっかいをかける国はいなくなった。

 時折偵察機や人工衛星による監視はあるが、放って置いても問題はない。何か仕掛けられる訳でもないのだ。

 

 思い出話(?)もひと段落つき、キイが目の前に白い洋風テーブルと椅子を三脚ナノマテリアルで創り出し、三人がそれぞれ座る。

 更にティーセット一式と数種類の紅茶の茶葉を出し、それをヤマトが淹れ始めた。

 キイが椅子に背を預け、空を見上げながら何気なく言う。

 

「これが平和、なのか? 兵器であった我々とは、絶対に相容れない概念だった筈なんだけどな」

 

 その言葉にムサシが続く。

 

「私は皆と一緒に居れば、それでいい」

「ムサシはヤマトが好きだものな。あの一件も言い方を変えれば姉妹喧嘩だ」

「あら、もちろんキイも好きよ」

「私もね」

「……不意打ちだ」

 

 頬を赤らめてそっぽ向くキイ。

 それにしても、姉妹喧嘩で世界が滅びかけたのだからとんだスケールの話だ。

 だが、平和とは長く続かないもの。それは何時の時代でも同じ。

 そして、この時も。

 

「……ん、キイ」

「わかってる。今捉えた」

 

 ヤマトが何かに気付いたように反応し、キイはそれに応える。

 三人の目の前に空間投影のモニタが表示された。

 

「これは……ミサイル反応? でもこの数は……」

「総数二五七三発。全部日本に向かっているわね」

「空母、潜水艦、軍基地、巡洋艦。ミサイルが搭載されているありったけの拠点・艦船から発射されたようだな。霧でも大戦艦級か重巡が数隻いなければ墜としきれない数だ」

 

 超戦艦、特にキイのあるシステムによって広大な範囲を誇る索敵に、二〇〇〇発を超えるミサイルの反応を確認した。

 その全ての目標は日本。

 霧を狙うならまだ分かるが、今の世界に日本だけを攻撃する理由はない。

 それ故に三人は訝しげな表情をする。

 

「アメノミハシラと同期、ツクヨミ起動。詳細な弾道予測を開始……完了。ミサイルの正確な目標は日本の……横須賀だな。……横須賀?」

 

 キイが、これはマズいと思うが既に遅し。

 明らかに雰囲気が変わった右隣、ムサシを視線だけ動かして見る。

 

「ふーん、なるほど。何処の誰かは知らないけど、やはり人類は愚かね。まさかお父様の眠る地を狙うなんて。必ず見つけ出して……」

「ストーップムサシ。お前の感情に連動してエンジンの出力が上がっている。だから落ち着け。まずは落ち着け」

 

 案の定、キレていた。

 横須賀にムサシとヤマトが父と慕う千早翔像の遺体が本当に眠っている訳ではない。

 千早翔像は、ヤマトとキイが収集できた知識の限りを尽くして遺体を整え、火葬してその灰はとある海へと還した。

 それでも横須賀の地には千早翔像の名が刻まれている。ムサシの沸点を超えるにはそれで充分だった。

 ムサシを抑えつつ、ヤマトが疑問を口にする。

 

「でも妙ね。日本は首都機能を三つの都市に分散させた分散首都の国家。それは八年間経った今でも変わらない筈。なら横須賀だけじゃなくて、本当に日本を攻撃するつもりなら他の二つの首都も狙わないと意味はない」

「加えて言うならば、ミサイルをバラけさせず一箇所を狙っては撃ち落とされる可能性が上がる。これでは迎撃して欲しいと言っているようなものだ。それは数でカバーしているのか、それとも迎撃させるのが目的なのか」

「目的が何にしろ、放っては置けない。人間はどうでもいいけど、お父様が眠る土地を荒らされるのは許し難いわ」

「まずは横須賀の様子を見てみるか。最も近いのはスサノオだな」

 

 それぞれの意見を聞き、取り敢えずはとキイがサークル状のデータ環を展開する。

 ”チ、チ、チ”という音が数回鳴り、最初に展開していたモニタから僅かにずれて重なるように、新たなモニタが現れた。

 モニタには遠く離れている筈の横須賀の姿が映し出されていた。

 そして直ぐにとある違和感に気付く。横須賀の上空に人型の何かが浮遊していることに。

 

「なんだこれは? 人間達の新兵器か何かか? それにしても随分と堂々と姿を晒しているな。数分後にはミサイルの雨が降り注ぐというのに」

「たった一機で迎撃するつもりなのかしら?」

「さすがに無理があるわ。霧でもこれは手間取る数よ」

「既に第一陣が到着した。どうやら上手く迎撃しているようだが、長くは続きそうにないな」

 

 モニタを見れば、白い人型がブレードを駆使してミサイルを斬っていた。

今は上手く迎撃しているが、そう長くは持たないだろう。

 

「この人型には近接兵装しかないのか? 良くそれでミサイルを相手にしようなどと思ったな」

「ねぇキイ、このままじゃいずれ……」

「わかっている。不確定要素の多いものに任せることはできない。だからそんな顔をするなムサシ」

 

 ムサシを撫でつつ、キイが軽く腕を振る。

 それに呼応して漆黒の艦体に金色のバイナルが浮かび、補助の重力子機関(グラビトン・エンジン)と主機が戦闘出力へ移行した。

 

「残骸が降り注いでも面倒だ。超重力砲の一斉照射で消し去るぞ」

「了解。ツクヨミ、スサノオ、アマテラスと同期。座標の演算を開始」

「第一から第五主砲及び第一、第二副砲起動。全砲塔へのエネルギー回路形成。重力子エネルギー伝達開始」

「船体を展開形態へ移行。全重力子ユニット起動」

 

 三色のバイナルが瞬くように漆黒の装甲上に交互に浮かぶ。

 そして艦体が上下に分かれた。分かれた艦体から大量の重力子ユニットが姿を見せる。

 右舷側の重力子ユニットだけが分離して左舷側に移動、左舷側の重力子ユニットは分離せずそのままチャージを開始した。

 続けて全主砲及び副砲もその砲門を左舷へ向ける。

 

「発射準備完了」

「座標諸元入力完了」

「重力子縮退完了」

 

 全ての準備が完了する。キイがそのトリガーを引く。

 

「超重力砲、発射」

 

 黒い幾条もの閃光が空を斬り裂いた。




キイ
・オリキャラ。形状は超大和型戦艦紀伊を模している。大和型の延長線上である為、ヤマト姉妹の末っ子である。超戦艦としての役目は、霧の艦隊に於ける抑止力というべきもの。その為、霧の艦隊最強の戦闘能力を保有している。ヤマトとムサシ同様、姉妹大好きのシスコン。ムサシはよくキイの膝で寝ている。
容姿はヤマトに負けず劣らずのプロポーションに金髪金瞳。服装は黒いドレスにロングコートとかなりミスマッチ。智の紋章(イデア・クレスト)は十字架風。艦体カラーは漆黒、バイナルは金色。

詳しくはまたの機会に。
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