[0]
「なぁ、神様……今すぐこの夜空を明るくしてくれないか?」
僕の隣で寝そべっている女性に声をけた。
「嫌よめんどくさい。それに私は星が綺麗に輝くこの夜空が好きなの」
「…………」
僕は黙った。
「あなたも寝転んでこの夜空を楽しみなさい。今すぐ昼にする必要なんてないと思えるわよ」
無言で彼女の横に並び、仰向けになり空を眺める。
確かに、大空というキャンバスに散りばめられた無数の光は感動的に映る。
「ねぇ、綺麗でしょ?それに、わざわざ力を使わずとも、時間がたてばちゃんと朝は来るのがこの世界よ」
「そう言うことか……。魔法使いが嫌いて理由は不必要な能力を所持してるからかい?」
「そうよ、だから魔法なんて必要ない力を回収してるの」
そう言った彼女はカメリアと名乗っていた。そんな神様と僕は旅をすることに決めたのだ。
[1]
「カメリア、これから何処に行くか決まっているのか?」
小さな食堂のテーブルで食事しながら、そんな問いかけをしてみた。
「何も決まってないわ。そもそも魔法使いの居場所知ってたら、この村に何日も滞在してないよ」
そう返してきた神様は、手で千切ったパンを野菜のスープに浸し、それをスプーンですくいあげて口へ運んだ。
そんな彼女は、赤色のワンピースを着ていて更に白い靴下は膝下ギリギリまで上げてある。太ももが少し見えている位だ。
瞳は淡い翡翠色で、髪の毛は薄めのピンク色をしている。この世界では変に目立つと言うわけでもなく、かといって地味とも言えない。
見た目や仕草だけでは誰も神様なんて思えない、そんな雰囲気の彼女がカメリアだ。
「手がかりなしかい?」
「そうよ。仕方ないじゃないの、神様だって何でも知ってるわけじゃないわよ」
そう言いながら彼女は、目の前にある野菜スープとパンを完食した。
「それじゃあ、ひたすら色んな街を巡る旅をするのか?」
「うん。それよりパン一つ頂戴、私はまだお腹いっぱいになってないの」
目の前にあるパンを一つ手に取り、口に放り込んだ。頬っぺたを膨らませて、僕の顔を笑いながら眺めている。
「何でそんなに嬉しそうな顔をしてるんだ?」
「えっ、だって悔しそうな顔するんじゃないかな?と思ったからよ」
「僕は大食いとかじゃないから、ちっとも悔しくない。それより神様が人のを盗るなんて、恥ずかしくないの?」
「う~~ん、そんなの気にしてたら私やっていけないのよね」
食事が終わり会計を済ませると、近くのベンチに二人して腰かけた。
「で、結局この後はどこに目指すの?」
さっきのパン騒動で話が流れたので、会話の軌道修正を実施する。
「じゃあね、今回は歩いて次の村まで行く事に決定」
確かにこの世界では、歩きか馬車ぐらいしか移動手段はないのだけど……。
「その村に何かあてはあるのか?例えば不思議な事件が起きたみたいな噂とかさ?」
「そんなの知らないよ。ただ歌声が凄い綺麗な女の子がいるんだって」
先ほど、偶然居合わせた男から聞いた情報を、とても嬉しそうに語る。
「歌って最高よね。神に捧げられる供物で、一番嬉しいのは心地よい歌だもの。絶対にその村にいかないとだわ」
「え……、神様が個人的に聴きたいから、僕に一緒に付き合えと言いたいの?」
今までカメリアといくつかの村に訪れたが、これといった成果が無いのを思いだし、愚痴めいた何かを吐き出す。しかし、そんな事を気にするわけでもないの知っている。
「そうよ。言っとくけど、あなたの目的も私と同じみたいなものじゃない。じゃあ着いてくるわよね?」
結局予想通りの返答だった。
「全然違う。でも、神様の加護だけが頼りだから着いていくけどさ……」
そう僕が返すと、勝ち誇ったかの様な誇らしげな顔をしていた。とても記憶に残りそうな表情に対して、僕は作り笑いをカメリアに見せる。
「何笑ってるのよ。私が論破して勝ったんだから、もっと悔しがりなさい」
神様はどうやら僕をあれで論破しているつもりだったらしい。
これから先も僕がしっかりしないと、お互いに目的を達成出来なくなると再び気合いを入れ直した。
[2]
目的の村まで、結局徒歩にて移動する事となり、多少憂鬱な気分だった。
しかしながら、カメリアは全く気にしてないみたいだ。三時間程歩く必要があるのに、鼻歌混じりにスキップしてるとは呆れる。
僕は体を動かすのは、余り好きではない。
全く動きたくないって訳でもないが、極力なら馬車を使いたい所なのだけど、僕達にはお金が殆どなかった。
神様との旅だから、馬車で常に移動出来るとの目算も、大きく外れた訳なのだ。
食事をするのがやっとな貧乏旅行になる。
お布施といった類いは、何一つ貰えた事がない。そもそも本物の神様が、地上に現れて魔法使いを探してるなんて言っても、誰も信じてくれないだろう。
「魔法使いは、ほんとにこの世界にいるのか?」
少し先を歩いているカメリアに質問を、多きな声で投げ掛けた。
「別にいなければいないで、それで問題ないよ。私は魔法使いを探すのが目的なだけ、その後の事は他の神様が決めるから……」