とりあえずベーコンの下準備が終わった私たちは、なんやかんやで腹が減っていた。
埋めなおした阿呆も、舌への刺激で死にかけていた阿呆もしばらく時間が経ったのか回復した。沈めなおそうか悩む。
「なぁ、腹減ったな。昼飯にしようぜ。」
地の底より復活した阿呆がまともな事を言う。馬鹿はどうかわからないが、阿呆は死ねば治ることがわかった。
「そうだな、速さが足りない。」
塩水で地獄を見たはずの阿呆は阿呆のままだった。阿呆も死ねば治るというのも、やはり個人差がありそうだ。
そんな阿呆を眺めていると、今度こそこの広大な宇宙の塵芥と成り果てたはずの変態の姿が見えた気がした。
「おーい、俺が帰ってきたぞぉー」
間延びした声と共にやはり見覚えのある変態がこちらに向かってきていた。
「「嘘だろ・・・あの速さで迫る椰子の実を食らって無事なわけ・・・」」
阿呆の双璧はご丁寧にせりふまで一緒だった。
「・・・・・不死?」
長考の割りにろくな事を言わなかった真面目を一発しばいて、私はにくき変態に向き合う。
「何故生きてる?」
「さぁ?馬鹿だからじゃねえの?で、俺の飯ない?いい加減腹減ったんだけど。」
「うるせぇな、朝飯は終わって昼飯は今からだが、てめぇが食える保障はねぇぞ?」
「わーったよ、もう何も言わねぇからもうボコんなよ・・・」
大して反省の色が感じられないこの変態を星屑の海へ沈めてやろうかと考えたが、真面目が口を挟んできた。
「今は労働力が欲しい。」と。
仕方が無いので私は今回のことはすべて水に流し、昼飯の支度をすることにした。
「それじゃあ、お昼ご飯何がいいかな?」
真面目の言った言葉に返ってきたのは
「すし!」
「焼肉!」
「カツ丼」
「おいマジか」
最後のは私だ。何でこの米が無い状況下で丼物やすしというアイデアが出てくるのか皆目見当がつかない。真面目が疲れたような顔をして腹を押さえているが、なんだ、その、まぁ、同情した。
「ねぇ・・・お米が無いってこと、知ってる?」
真面目は心底疲れたような顔で阿呆二人と変態に向けて言い放った。焼肉、と言った埋まる阿呆はまだましなのかもしれない。阿呆から料亭のせがれにランクアップだ。
「焼肉でいいだろ。」
私は唯一のまともな意見に賛成する。
「じゃあまず肉の確保からだな。」塩水を飲んだ阿呆が言った。
「何言ってんだ、肉ならまだ余ってるぞ。」
私の言葉に怪訝な顔をする阿呆と変態。そして、こいつら私が猪持って来たの見てないのか、と気づき、事の顛末を伝えると、
「つまり重火器レベルのデコピンで、猪は肉になってしまったと。」
変態はどうやら理解したらしい。
「どうでもいいけど、たれはあんのか?」
阿呆の意外に鋭い一言に全員が驚愕し黙り込んだ。
ここまで誰もたれについて言及していなかったのだ。これは言外に私たちがこいつ以上の阿呆であることを証明してしっまたのではないだろうか。
それに対抗すべく、真面目は声を上げる。
「塩と胡椒があるんだ、それで食べればいい」
「さっき塩だけで鍋やってまずかっただろうが。猪のクセは塩じゃ厳しい。」
料亭のせがれの鋭い指摘は先程飯を食べた三人に深く刺さる。
「誰か味噌持ってる人ー」
もう考えるのが面倒くさくなったのか、真面目が阿呆の道に落ち始めた。よく考えろ。ここは無人島なんだ。
「うだうだ言ってても何も始まんねぇだろ、諦めて塩コショウで焼肉だ。」
そうと決まったら早かった。美食をどこまでも追及する料亭のせがれと朝飯を食べて、そこまで腹の減っていない真面目はしぶしぶだが準備を始めた。
「ねぇカナ、さっき笹の葉でくるんでた肉はどこのやったの?」
真面目が聞いてくるので、
「あぁ、ベーコンにしようとしてないやつは洞窟の手前に置いといてある。」
「へぇ、了解。じゃあ持ってくる。」
短い会話を交わし、焼肉の準備に移る。
「んで、どーするよ、カナ。肉を焼こうにも鉄板も無ければ金網も無いが。」
料亭のせがれが阿呆なことを言っている。
「無ぇなら作りゃあいいだけだろうが。」
「原料が無いのに?」
「ドラム缶だって金属だ。」
私はそう答え、フライパンのような鍋のようなサイズに切り出した、ドラム缶の残り上部分を持ってきて、そこから一部を切り取り、細く裂いて、ねじってもう少し細くして、それを編んだ。金網の完成だ。
「ほれ」
「なにがほれだ。」
料亭のせがれがなんかあきれている。私のこの金網、実は、小学校三年のとき、図工の時間で作ったことがあり、二回目の作成なので、正直自信があった。
「肉もって来たよ。」
どうやら肉がきたようだ。先程から阿呆と変態が一向に動く気配を見せないが、どうやら空腹が限界値に達したようだ。動く気力を失っているだけのようだ。
あいつらに働きの期待は今はしないでおこう。
さて、肉だが、適当な厚さにスライスしておく。後は、簡易かまどを作り、火をたいて金網が温まるのを待つ。
「ちっと待った。」
料亭のせがれのその一言で、肉は金網には乗らなかった。