さて、今回の話はコラボ回の重要となってくる部分です。一部飛男さんの話であった会話の拓海視点があり、面白く仕上がっていると思ってくださると嬉しいです。
結構重要な話の割に、初めてとなる拓海以外の視点などネタも多く挟んでみましたので頼んで読めると思います。それではどうぞ!
「まあその…。俺も憶測なんだろうが、なんで大和がこっちの世界に来たと思ってる?まあ、お前に会いたくて来たってのも理由だろうが、そうした行動原理はおそらく大和がお前にホの字なんじゃないのか?」
「えっ…」
俺は絶句する。大和がこの世界に来た理由…。たしか似たような事を前に話したような…。その時に俺は大和が来た理由を“思いが強かったから”と考察した。もしそれが正しとしてその原動力となるのは…。考えれば考えるほどよくわからなくなっていた。
俺がこうなったのは数時間前に遡る。
*
俺ら一行は京都観光を終え、旅館へと帰った。七星さんらと過ごす時間はとても有意義なものだったと思う。詳しく話すと長いからやめておくが、祇園や清水辺りで観光したり遊んだりで、さすがの俺も久しぶりに声を上げて楽しむことができた。それは大和も一緒で、俺と会ってから一番笑顔を見せていたんじゃないのかな。多分…。そういえば、こんな時間も勤務時間の内であり、深く考えるとなんかほかの人達への罪悪感・帰ったらその分働かなければならないという使命感が頭を過りながら通常業務に戻る。フロントで予約の整理などをしていると食後の彼らが通りかかる。
「おいィ!みんたくよォ!なかなかうめぇメシだったぜェ!」
「ありがとうございます。厨房の方にもそうお伝えしておきますね」
「特にお酒だけどなァ!」
「お酒かい!」
べたべたなツッコミを入れると、それを見てヘルブラも笑う。どうやら満足してもらえているようで、俺は一安心した。彼らはそのまま通りすぎると次はサムソンと夕張が来る。俺はさりげなく訊ねた。
「食事はいかがでした?」
「とてもうまかったぞ。な、夕張」
「はい!とても満足です」
サムソンらにも満足していただけたようだ。また一安心。
「そう言ってもらえればこちらも嬉しいです。ありがとうございます」
俺は軽くお辞儀をする。
「んじゃあ、俺ら部屋戻るわ。みんたくも仕事がんばれやー」
「はい!」
サムソンと夕張も自室の方へ向かっていった。二人仲良く話しながら…。その光景はまるでカップルのようだった。
俺もああ慣れたらなぁ…
まぁそれは俺の夢だ。相手もいなければ、あんな風に接することができる自信もない。だから二人の姿を見ながら憧れを感じた。…はずだった。
「え?」
俺は憧れの二人の反対側から来る4人の姿に戸惑いを隠せない。4人とは残りの四人、蒼龍、飛龍、七星さん、そしてキヨさんの事なのだがなんかすごいことになっている。
「だ、大丈夫なんですか!?」
フロントから彼らの下へ飛び出す。すると七星さんが説明を始める。
「ちょっと飛龍が酔っちまってな…。連れていくとこ」
飛龍は七星さんとキヨさんに肩を貸された状態で歩いている…のか?意識があるのはわかるのだがだいぶ酔っているのが見て取れる。
「とりあえずどっちか交代しますよ」
「いやいや、いいよいいよ。俺らで何とかするからさ。まあ、とりあえずエレベーターは使わせてもらうけど」
「わかりました」
四人はエレベーターの方へ進んで行った。本当に大丈夫なのか不安でしょうがない。飯の間に宇治原さんらが敷いておいた布団ですぐに安静になってもらいたい。本当に無事なことを祈ります。
サムソン夕張ペアの後に今の様子を見たから言える事かもしれないけど、女性ってわからないや。
**
私は仕事を終えて帰宅の用意をしている。ここの厨房でアルバイトを始めて一年と数カ月。もう仕事には慣れたもの。私、御池 優はもう立派な板前なの!と言いたいのは山々なんだけど、やっぱり上手くいかない。私も拓磨さんのように上手くなれたらなぁ…。そんなことを考えつつ更衣室を出て、いつも通りフロントに向かう。すると、やはりあの人がいた。
「お、すぐるん。お疲れ!」
「だからすぐるん言うな!」
フロントには新入りの北大路 拓海とかいうやつが座っていた。てか入ってまだ一カ月くらいしか経ってないのにあだ名をつけられてしまっている。私の方が一年以上も先輩なのに…なんか屈辱。
若干怒りながらもフロントの椅子に座る。そしてカバンから数学の問題集、ノート、筆記具を取り出す。実は私、行きは一人で来てるけど、帰りは送ってもらっているの。その送ってくれる彼を待つ間、フロントで勉強させて貰っています。
「お、今日は数学か。俺昔から得意やし、教えてあげるよ。で、どの辺やってるの?」
余裕そうな表情の拓海が覗いてくるが、私は気にせずに宿題の範囲であるページを開く。
「げっ」
拓海はすぐに目をそらす。彼は難しい顔をしている。
あれ?得意じゃなさそうだな。よーし、私はここで少し拓海をからかってみることにしよう。
「どうしたんですか?教えてくださいよ。階差数列」
「いや、その…。あっ、ちょっと用事が」
「でも教えてくださいよ。得意なんで―」
バタンッ!と、風のように拓海はフロントの後ろにあるドアから脱出した。ほんとズルい。まぁなんか勝った感じがして少し嬉しいかも。私は勝利の余韻にひたりつつ、数学の問題を解き始めた。
やってて思う。正直教えられても理解できるのかわからないなぁ。解説呼んでも難しし、とても面倒だなぁ…。15分でやっと一問が終わったけど、この調子であと4問かぁ…。気が遠くなるなぁ…。
そんな調子で問題を解いていると声が聞こえてくる。それでも私はお構いなし。勉強を黙々と続ける。その声はだんだん近づいてきた。なんか二人で話しあっているようだけど…。
「しっかしよォ…なかなか旅番組ってのも乙なもんだったなァ…?」
「ほんとだぜ兄貴!ついつい地酒買いに行くの、忘れかけてた次第。して、まだ売店空いおるかねぇ?」
「あァ?心配いらねェだろォ?どうせ、みんたくおるで大丈夫だらァ」
「お、そうだな」
どうやら売店に行くみたい。ちなみに売店はこのフロントの隣。会計などはこのフロントでするんだけど、私にはできない。てか、やり方自体知らないんだけど!でもまぁ、そのころには拓海も帰ってくるよね。私は楽観視しながら、気を取り直して勉強を続ける。
「んんん?この酒なかなかいい品でございますなぁ!」
「まて健次ィ…そらぁこっちじゃァねぇの?口当たりがよさそうじゃァねぇか?」
「いやいやいやいや。やはり辛口でございまするよ!」
よし、悩んでるみたい。そうそう、もっと悩んでおいてほしい。その間に拓海の帰還を…。
「うしッ!もう考えるのも面倒だ!二つとも買っちまうか!なァ?」
「それもそうでございますなぁ…!ぐへへへ」
ふぇ!?そう来たのか!?一体買いに来たのはどんな人達なの!通りすがった時、顔を合わせていなかったのでどんな人物なのか見ていないし…。段々怖くなってきた。その時。
「さて、買うもんきまったしよォ…早く買ってグイっといっちまうかァ?」
「それは名案。会計は、フロントだそうで」
「うぅし。んじゃァさっさと会計済ますぞ、さてェ…従業員は…」
やばい。来てしまう。私、レジ出来ないんだけど…どうしよう。私はとりあえず隠れようとしゃがむ。慌てて机の下に入ろうとする私の下にとうとう来てしまった。
彼らをよく見ると、それはもう巨人と言うしか他ならない。それに顔は笑っていても怒っているようにしか見えないし、顔が真っ赤。もう閻魔様かなにかかと思うくらい恐ろしい。そんな二人を見れば、誰しもが震えて口をぱくぱくさせちゃうはず…!
現にそんな状態の私を見ると、巨人達は顔を合わせて少しの沈黙の後、大きく笑いだした。
「ギッハハハ!うおォ!なんだなんだ!!オメェさんが会計をしてくれるのかェ?」
「てか兄貴。この子まだ初心子じゃァないですかえ?こんな子も働いてるのかよ。すげぇなこの旅館。そろそろ帰らねぇと補導されかねんですぞ?」
巨人達が何か話しているが私にはよく聞こえなかった。もう私の足は生まれたての小鹿のように震えている。拓海のバカ!早く…、てかもう誰でもいい…。
誰か助けて!!!
「おい、何してる?」
別の男の声だ。巨人ではないまた別の人の声。
「あ?って従業員か」
巨人が訊ねると彼はこう答えた。
「ああ、ここの板前だ。文句あるか?」
た、拓磨さんだぁ!!私は嬉しくなり飛び起きた。しかしその時とんでもない状況であることに気づく。巨人二人に拓磨さんが勇敢にも張り合っていたのだ。そういえば、拓磨さんって元ヤンだった。その時の名残でもあるイカツイ眼光を彼らに向ける。
「フーン…。いい目をしてらァ。まァ見たところ年上だが…勘違いしなさんなあんちゃん」
「そうですぞ。それがしら、ブツの支払いを行う次第。ここは店員泣かせのクレカをだしましょうかな。しくじったら面倒ですぜぇ?」
なんか普通のこと言ってるはずなのに、三人の周りにはどす黒いオーラというか…とてつもない空気が廻り始める。や、やばい。なんか大惨事になるような気がする…。
その火蓋が切って落とされようとしたその時!
「すぐるん!階差数列もう大丈夫だ。教えられ―」
拓海が帰ってくる。遅いのよ、バカ!すると、また静かな時が流れ、拓海は状況を察した。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。一回落ち着こう。会計?俺がやるから。拓磨さん!この人強盗とかじゃないですよ!!」
とりあえず拓海が来てすべてが丸く収まった。全く…この世の中怖いものだらけだ。
**
ほんと勘弁してもらいたいものだ。誤解がとんでもないことになってしまっていたからなぁ…。なんかいつもの業務が普段よりとても疲れた一日だった。
俺はそんなことを思いつつ、一人で愚痴をこぼしながら飯を食べている。おばさんと大和はすでに食べ終わっており、今は家のシャワー入ってんのか寝ているのかわからんが、リビングにはいなかった。俺は食い終わると一旦旅館に戻り、風呂に入ることにした。旅館の風呂は、時間外なら館の風呂に従業員が入っても大丈夫というルールもあり、時間が経つまでフロントで時間を潰すことにした。着替えを用意して旅館へ戻ろうと家を出た。
「今日はほんとに疲れた」
俺は家の前で一つ伸びをしてから長い階段を降り始める。降りている際、誰か旅館の入り口に一人立っていた。近づくにつれ段々明らかになっていく。タバコを咥えており、スマホを見ているようだ。もっと近づくと誰なのか、ようやく判明した。
「あんれ?七星さんじゃないすか」
ふと声をかける。でも、こちらを不思議そうに見てくる。とりあえず今の状況を伝えておくことにする。
「あ、いま休憩中です。サボってなんかないですよ!?で、そういう七星さんは?」
答えると納得してくれた様子。どういうことなのかよくわからん。
「あー。キヨが下に用があったみたいで、ついでについてきてここで待ってる感じ。どうせ暇だしねー」
「あー」
なるほど、キヨさん待ちのよう。七星さんもちょうど暇のようで、二人っきりで話す機会もほとんどないし、話題を振ってみる。
「今夜は、月が綺麗ですね」
月を見上げ、俺はそうつぶやく。
「おまえ、それ意味わかって使ってる?」
「フェ?」
なんかよくわからんことを言われる。話題を振ったのに…。その後、七星さんが話し出す。
「あーこういう時はこうだろう。“月は出ているか!?”だ」
にやにやしながらこっちを見てくる。今回はわかった。
「ああ。えーっと…“は?”」
「お―“月は出ているかと聞いている!”ってな」
二人にかっと笑いをこぼす。ガンダムネタで久しぶりに笑った気がする。
「まあそれはいいとして、今日、楽しかったですか?」
俺は唐突に話題を変える。聞きたかったことを今思い出したからだ。七星さんもそれには少し動揺していたが、答えてくれた。
「そら、まあな。楽しくないなら俺はその場で口にすると思う」
「あーそういえばそういった方ですよねぇ。七星さんって」
「そりゃどういう意味だよ」
つい、言ってしまったので、突っ込まれる。また二人笑顔になる。すると、七星さんが俺に訊ねてくる。
「そういうお前は?大和と一緒に出掛けれて楽しかったんじゃないのか?まあ、いつもの事かもしれんが」
そういえば、今日初めて大和と出かけた。まぁ七星さんらのおかげということや、久しぶりの地元巡りともあってかとても楽しい日になった。
「えーっと…うん、今日が初めてでしたね。まあ仕事の関係で行く機会がなかったですし、京都人って別に毎日清水とか行きませんしねー」
俺の言葉を聞いた七星さんは驚いた表情を見せる。また変な事言ったか?俺。
「じゃあさ、俺たち抜きで…お前と大和の二人で行こうとは思わんの?」
返ってきたのは想像と違う疑問だった。大和と二人で外にか…。仕事があるから基本的にはできないものだと考えてるけど、行ったとして…どうすればいいんだ?聞いてみる。
「えぇ?まあそら行きたいですけど…そもそもどう接すればいいのかなぁと」
「どうって、普通に接すればいいじゃないか。艦これやってた時みたいにさ」
艦これやってた時みたいに…?いたって普通にやってたし、声に出していても、それは何も考えずについつい口に出た感じなんで覚えてない。
「いや、普通に接する方法が、よくわからないんですよ。そもそも女子とかかわりもあまり持ったことないですし」
「ハァ?そんなくだらない事気にしてるのか。考えるだけ無駄だ、むだ。とりあえず、友達みたいに接して、徐々に親睦を深め、恋人らしいことをしていけばいいじゃないか」
「そんな、恋人だなんて…」
とても照れる。そんな俺と大和が…。彼女も俺の事が好きなのかもよくわからないのに、こっちから一方的に恋人扱いするのもなぁ…と思っていると、七星さんはこう言った。
「まあその…。俺も憶測なんだろうが、なんで大和がこっちの世界に来たと思ってる?まあ、お前に会いたくて来たってのも理由だろうが、そうした行動原理はおそらく大和がお前にホの字なんじゃないのか?」
「えっ…」
*
「…まあ時が解決してくれるだろうさ。後は、お前次第だろう」
「じゃ、じゃあ…自分は…」
俺はずっと大和の事をわからないでいた。だからこれからどうすればいいのか!?俺はそれが知りたい。しつこいようで悪いが七星さんに訊ねようとしたその時。
「望ー!ここにいたのね!さがしたよぉ…」
蒼龍だ。彼女は声を出して、七星さんの近くまで走り寄ってくる。そして、息を整えて続きを話し出す。
「で、どうしたー?飛龍は寝ちまったか?」
「はあはあ…。ふう。えーっとね、その…飛龍が望に話があるって…」
何の事だろう?そういえば彼女、酔いつぶれてたな。まさか体調が悪いのか?俺はそんな心配をしているのに七星さんは何かを不思議そうな表情をしている。
「あーわかった。すぐに行く」
七星さんはタバコを捨て、小走りで上に行こうとする。その時だ。
「七星さん」
「んー?どうしたみんたく?」
振り返って足を止める。
「少しの間、蒼龍さん借りていいですか?」
「え?」
蒼龍は不思議そうな顔をしている。そりゃあなぜ残らなければいけないのかが謎だからな。しかし、七星さんは悟ったようだ。俺らは目でコンタクトを取り、七星さんは少し笑いながら言う。
「フッ、あまり長々とはやめてくれよ。いいよな、蒼龍?」
「あ…はい…」
蒼龍はそういって部屋の鍵を渡す。
「ありがとう」
受け取った七星さんは飛龍が待つ部屋へと走りだした。
残った俺らは、立ち話も難なので外にあるベンチに座ることにした。まだ若干たばこの匂いが残る中、俺は口を開く。
「悪いな。止めて…」
「いえいえ、気にしないでください、でも、なぜ止めたんですか?」
「一つだけ聞きたいことが…」
「聞きたいこと?」
蒼龍は首をかしげる。そんな彼女の顔を見ながら心の内を整理すると、少し時間をおいて話し出す。
「蒼龍ってどうしてこの世界に来たの?」
これはとても素朴な疑問だったが、ある意味とても難しい問題でもあると思う。でも蒼龍は笑顔で口を開いた。
「それは“提督に会いたくて”ですよ」
「会いたくて?」
今度は俺が首をかしげた。
「そう、会いたくて。望さんはあの星のように遠くにあって届かない存在でした」
蒼龍は空の星を指さして話を続ける。
「でもコエール君ができて、ようやく届くようになったんです!」
「コエール君って、ここに来れるようにできたシステムのことだったっけ?」
「はい、そうです。おかげで今ここにいることが出来ているんです」
コエール君…。旅館を出発する前に聞いた話しか知らないが、偶然できたこのシステムであり、これが知り合いのPCにまで拡散されているらしい。ネトゲーの友達であった俺のところもその一つだ。でも確かこのシステムにはデメリットが…。
「もし…、もし自分より思いの強い艦娘がいて、この世界に来れなかったら?」
俺が知っているコエール君の知識では、思いの強い艦娘でなければこの世界に来れないというデメリットがある。だが、蒼龍は言葉を返す。
「そんなの考えてませんよ。だって、負ける気がしなかったですし!」
「それは他のみんなもなのか?」
「たぶん。夕張ちゃんも…飛龍も…もちろん、大和さんも」
やっぱり大和も俺に会いたくて来たのか。そして、大和は俺の事が好き…。七星さんの話と合わせるとなんかわかってきた。そこで質問を変える。
「じゃあ、一つだけ、一つだけ頼む。聞いてくれ!」
「今のじゃなかったんですか!?」
一つだけと言っておきながら二つ聞く。よくあるパターンだ。けど、そんなことは気にしていない。俺が聞きたいのはこの本題なのだ。
「俺は大和に一体どうすればいいんだ?俺は、彼女の思いに応えたい!」
蒼龍は呆気に取られた様子だが、少し考える仕草をとった。俺はその姿をじっと見つめ、ただ答えを待つことしかできない。しばらくすると、蒼龍は思い出すようにつぶやいた。
「私は…グイグイいけばいいと思うけどなぁ…」
「グイグイ?」
「私は実際そうだったから…」
グイグイ…やっぱり自分からいくことが大切なのか。なるほど、でもよくわからん。
「もっと具体的に!」
「具体的にって…」
蒼龍は苦笑いして困った表情を見せる。
「あっ、ごめん」
少し言い過ぎたような。感情が高ぶりすぎて、答えを急かしてしてしまった。反省していると、また蒼龍が微笑んだ。
「でも、大和さんへの思いがあるっていうのが一番だと思いますよ」
「え?」
「あなたがそこまで真剣に相談しているのは想いがとても強いからでしょ?その想いを彼女に向けるだけで大丈夫。もうすでに大和さんの制空権…気持ちはあなたが確保してるわ」
言った後本人は「でもちょっと臭かったかな?」と言って照れていたが…、大和の制空権を確保かぁ…。なんかすごい例えが飛んできた。言いたいことはわかる。つまり…そういうことか!?蒼龍は立ち上がり俺に訊ねる。
「大和さんの笑顔見たいかぁー?」
「み、見たい!」
続けて言う。
「大和さんを幸せにしたいかー?」
「し、幸せにしたい!」
「大和の事が好きか!?」
「だ、大好きだ!」
あれ?なんか蒼龍と違う声の気が…。
「大和とあんなことやこんなこと―」
明らかこれは蒼龍が言っていない。俺らは声がする方を見てみる。
「「キヨさん!!」」
キヨさんは旅館の入り口から顔だけ出していた。
「どこから聞いてたんですか?」
「グイグイの辺りだな」
「やめてくださいよぉ…」
キヨさんはニヤニヤして外に出てきて話す。
「いやぁ、望を回収しようと思ったら、外から別の声がするもんでなぁ…」
ひどい偶然だ。まぁ、正直ヘルブラじゃなくてよかったの一言。彼らに今の一連の事がばれたら一生恥ずかしめを受けるに違いない。
「まぁ…でもさぁみんたっくん。君は今好きって言えたじゃないか。それくらいの気合があれば大和の良きパートナーになれるよ」
キヨさんはそう言って肩を叩く。
「キヨさん…」
キヨさんは俺にグッドサインを送りつつ旅館の中に入る。そして、独り言を始める。
「さーて、みんたくが大和の事大好きだ宣言したことを―」
「あああああ、待って待って!!!」
キヨさんなんて人だ。俺がキヨさんを止めるところを見て蒼龍はクスッと笑う。
「大和さんとみんたくさん。いいペアになりそうです」
ボソッと蒼龍の方から聞こえた気がした。
結局、蒼龍にはお礼として、キヨさんには口止め料としてジュースを奢りました。