時間が経ってしまい自分でも話が分からなくなっていたり、書けなくなっていました。でも、とあることをきっかけに急に力が入った感じです。まぁこのことがなかったらもう書かなかったかもしれませんね。でもまた書かせてもらいますので、今回からご覧の方も含め、今後ともよろしくお願いします。では本編どうぞ。
七星さんらが来て次の日。俺はいつもと同じ時間に起きる。何気ない日だが、いつもより清々しい朝に感じられた。これは昨日の事があったからだろうか…。まぁ俺にはよくわからない。とりあえず外を覗いてみることにする。すると覗く前からか小鳥の囀りが聞こえてくるし、外…というより空を見てみると雲一つない青空がそこにはあった。絶好の観光日和である。さすが七星さん、天気の運も味方につけているようだ。俺は一つ伸びをしてから仕事着に着替えてリビングに向かう。
ドアを開けたら吹き抜けの廊下に出る。すると、一階から美味しそうな香りとテレビの音がする。どうやら誰かがテレビを見ているようだ。早速俺も向かう。
「拓海さん、おはようございます!」
「お、おはよう、大和」
リビングにつくとテレビを見ながら食事をとっている大和がいた。ちなみに見ているテレビはどうやら報道番組らしい。
「なんか面白い物でもあった?」
さりげなく聞いてみる。すると、大和は顔色を悲しそうに答える。
「全然ありませんよ…」
「そうか、面白いニュースでもあったらいいのに―」
「番組…」
「え?」
俺はふと首をかしげる。すると、大和が俺に訴えかけるように話しかけてくる。
「面白い番組やってないんですよ!どういうことですか。私、もっとアニメとか、ドラマとか見たいです!でもどこもニュースばっかりですよ!!」
大和は俺に子供が抱きそうな怒りをぶつけてくる。なんか餓鬼のころなら同情できることなのだが、今の俺は苦笑い。大和がこの世界に慣れるにはもう少し時間がかかりそうです。
そういやぁ、俺は今絶賛作戦を実行中。その作戦は昨日の事…と言えばわかるだろう。そういうことだ。蒼龍に相談したことでもある、ガンガン行く戦法で頑張っている。本当なら唐突に「遊園地行こうぜ!」と言えるくらいの勢いが必要なのだが、チキンな俺がいきなりとも言える訳もないし、明らか不自然な流れだと思う。だから、少しずつ親睦を深められるようにする作戦。例えば、 “さりげない会話を増やす”っていう感じで自分なりに工夫してみたってこと。さっきから大和に対し、 “親睦を深める”とか言っているようだからいけないのかもしれないが、とりあえずこの作戦で頑張ることにしてみる。さらには今京子おばさんもいないので、話やすかったりするから…そういえばおばさんは?こんな時間にいないとは珍しいな。
「あれ?おばさんはどこいったの?まだ寝てるの?」
「いいえ、おばさんなら先に旅館の方へ行かれましたよ。何か用事があるそうで…」
たまにあるんだよね、おばさんが急にいなくなること。まぁ気にはしない。あの人の事だしきっと何か思いついたのだろう。俺はそう確信づけて朝食であるパンを食べる。
口に入れたとたん、丁度家のドアが開く。おばさんが帰ってきたのだろう。足音はこちらへ近づいてくる。ていうか、なんか走っているような…。すると、大きな音をたてリビングの扉が開く。
「何事!?」
パンを口に入れながらも俺は驚いて声を出す。大和も相当びっくりしていた。すると、おばさんが急に膝待つく。そして、この世の終わりのような顔をして小声で話し始める。
「ち…ち…厨房が燃えてる!」
「え!?」
「ファ!?」
二人は驚きを隠せなかった。衝撃すぎる。俺は考えている暇もなくすぐに行動に移す。とりあえず口の中にあるパンを飲み込み、大和に指示をした。
「大和、おばさんを頼んだ。俺は旅館を見てくる!」
「わかりました」
俺はもう一枚のパンを咥えたまま、旅館を飛び出した。七星さんたちの非難、火の鎮火…いろんなことを頭に回らせながら俺は階段を下る。今は一刻も早く旅館を見に行かなければ…。降り終えると旅館に急いで入り厨房の様子を伺う。俺は自分の袖を口に当てながら恐る恐る厨房の中へと入っていく。その時にとあることに気づく。火事の時ってそこまで煙って出ないんだなぁ…視界も良好で火事とは思えない。ていうか、火事なら火災報知器がバンバンなっているはずなのにその音が一切聞こえてこない。俺はいろんなことを考えていると袖を抑えていることが馬鹿らしくなり、顔から離す。その瞬間、鼻に強烈な香りが入ってくる。なんだ、これは…。そして、それと同時に厨房の様子が見える。そこには驚くべき光景があった。俺はそれに唖然とした。
*
「燃えてたでしょ」
「燃えてましたね」
俺はおばさんとフロントで厨房の事を話している。こうやって呑気に話していることから察することが出来ると思うが、実際に“厨房”は燃えてはいなかった。物理的にはね…。
「まさかあんなことになっていたとは…」
「優ちゃん曰く、昨日の事が影響しているらしいわよ」
「昨日のこと?」
それは俺にも初耳だった。
「あれ?拓海も知らないの?」
「はい、多分…」
俺は昨日を思い返してみる。関連性がありそうなこと、ありそうなこと…あ!
「昨日の夜の事…かも」
「昨日の夜?何があったの?」
おばさんは興味津々に聞く。俺は咳払いして昨日のことを話し出す。
「それはですねぇ…」
話始めようとしたその時。
「拓海さん、京子さん!!」
急に二人を呼ぶ声がする。その声は厨房の方から聞こえる。誰が呼んでいるのか、考える間もなく呼んでいる本人が姿を現した。
「お二人とも!」
「大和、どうした?」
「そろそろ…例の時間です」
とうとうこの時が来てしまったか…。これは波乱の予感。
「よし、行きましょう!」
京子おばさんが真っ先に走っていく。俺らもそれに続く感じで追いかけて行った。
*
食事処に着くと大和は業務に戻った。あくまで大和は業務中。七星さんらに不審に思われたり、厨房の迷惑をかける訳にもいかないので、俺とおばさんはそっと外から部屋内を見守ることにした。今二人がいるこの場所からは席がもろに見えており、厨房には暖簾があるがなんとなくの様子は覗える。両方を見ることができる絶好のポイントだった。そこから見ている限り、両方に違和感はない。七星さんらは朝食中、厨房では優さんが皿や、鍋を洗っている様子が伺える。こんなにも平和に見えている中、来るべき時を待つ。すると5分もたたない内に厨房の方が動いた。声が聞こえてくる。
「私が持っていきますよ」
「いや、いい。俺が持っていく」
「じゃあ大和…あっ、和が…」
「和さんも気を使わなくていい。今日ぐらいはやらせてくれ」
そう言って暖簾の奥から姿を現したのは大きなお皿を持った拓磨さんだった。珍しいこともあるもんだ。お客さんがいる時間帯に厨房から出た所なんて初めて見る。そんなに拓磨さんを駆り立てるもの…。まてよ?今日ぐらいはやらせてくれ?やらせてくれ…殺る…待て待て待て、そんな訳はない。たしか拓磨さんは元ヤンだったからってそれは考えすぎか。でも、昨日の件…あっ。
俺は止めに掛かろうと客席の方に飛び出した。はずだったが、俺は左手をおばさんに捕まれて一歩踏み出した状態で立ち止まる。
「おばさん、止めないで。あれはマズいでしょ!」
慌てている俺に “落ち着きなさい”と一言言って俺を隠れた位置へと戻るように指示した。その後一間を開けておばさんは冷静な顔で言葉を返す。
「拓海、大丈夫よ。私を信じて。ていうより、拓磨さんを信じてあげて」
いや、信じられないから飛び出そうとしたのですが…。
「拓磨さんの事だし心配いらないわ。私が認めた料理人ですもの」
いや、それでも信用できないです。てか答えになってないし…。
そんなやり取りをしていると、ついに彼らがご対面してしまった。七星さんらは食事も終わり、少し雑談をしていたのであろうが、拓磨さんを見て場が一変して静まり返る。嵐の前の静けさとはこの事だったのか。そんな時もつかの間、先に動き出したのは拓磨さんだった。拓磨さんは両手で持っていた皿を彼らのテーブルのど真ん中に置く。そして、一言彼らに向けて宣戦布告をしたのであった。
「当旅館からのサービス品、抹茶ケーキでございます。お召し上がりください」
拓磨さんは華麗にお辞儀をする。なんとも言えない拓磨さんの対応に彼らは勿論、俺らも混乱した。すると、彼らはお皿の上にあるケーキを恐る恐る見る。
「うわぁ!すごい!」
「抹茶ケーキとか私初めて!:
「とても美味しそう!」
艦娘らが喜ぶ。しかし、そんな彼女らとは反対に七星さんは動揺した様子だった。そんな七星さんが拓磨さんに尋ねる。
「こんなケーキまでもらっちゃっていいんですか?」
「はい、日ごろお世話になっている和さんや、拓海君のご友人と聞きまして僭越ながら作らせていただきました」
「いえいえ、そんなことは…」
なんか困っている様子に見えた。きっと何か申し訳なく思っているのだろうが、そんなこととは見ず知らずの飛龍が早速手元の小皿に取り、一口口に入れる。
「ん!美味しい!!みんな、早く食べたほうがいいよ!」
「もう、飛龍ったら!」
「蒼龍もほら、あーん」
飛龍がケーキ付のフォークを蒼龍の口に入れる。
「うわ、本当においしい!」
蒼龍も笑みをこぼす。
「え?私もいただきます」
「待って、俺ももらうわ!」
と言って夕張とキヨさんも小皿に取る。それに続き、ヘルブラやサムソンもケーキを取る。残りは七星さん一人になってしまった。
「ほら、望も食べないの?」
蒼龍が聞く。
「お、おう…」
七星さんは目の前の皿に唯一残ったケーキを見て考えた後、改めて拓磨さんの方を向く。
「こんなサービスまでしていただいて本当にありがとうございます」
そして一つお辞儀をした。そしてみんなケーキに手を付け始める。その様子を確認したのを見て俺はフロントへと戻っていこうとした。
「止めに行かなくていいの?」
「おばさんの言う通り、何も問題なかったです。なんで、仕事に戻りますね」
俺はこう言い残し、フロントに戻っていった。でもとりあえず拓磨さんには後で何かお礼をしないとな。
*
フロントでパソコン相手にカチカチやっていると時間を忘れてしまう。不意に時計を見ると予定の時間だった。予定の時間とは彼らが帰る予定の時間。ついに別れの時だった。互いに艦娘がこの世界に来ていたことを互いに誤魔化そうとした所から始まり、祇園や四条の観光などとても短く感じた2日だった。満足してもらえていたし、俺としても良しか。
「拓海さーん」
「ん?」
大和が厨房の方から出てきた。
「そろそろですよね」
「やね」
大和も彼らを見送るために一足早くフロントに来たようだ。折角だし、聞いてみることにする。
「大和はこの2日間楽しかった?」
「はい!とても!」
満面の笑みで答える。まぁ正直一番楽しんでいただろうからなぁ…。
「でも…、もう少しゆっくり見たかった…かな?」
確かにゆっくり見ることが出来なかった。まぁ時間もカツカツだったからしょうがない。大和の性格上ゆっくり見たいのはよくわかるのだが、今回はしょうがなかった。てことは…そういうことなのか?もう一度行けと?二人で…え?
「じゃあ、そうだなぁ…」
「ん?」
「今度の休み、二人で」
“チーン”
エレベーターの到着音だ。こんな時に来やがって!運悪すぎるだろ。
「来ましたね」
「うん…」
なんかとても悲しかった。ガラスメンタルなら終わってた。エレベーターから七星さんらが降りてくる。そして階段からはエレベーターに乗れなかったメンバーが降りてくる。すると、裏からおばさんや和成さん、厨房から拓磨さんなど、急に今いる従業員も集まってきた。別に声をかけたわけでもなく、偶然である。なんか小学校の宿泊学習の終わりの会みたいになっていたが、まぁいいか。
「あーっと…一晩ありがとうございました。おかげでいい思い出ができましたよ」
七星さんが頭を下げる。それにおばさんが答える。
「いえいえ。これも私どもの誠意でございます。どうかまた、ごひいきに…」
言葉を返すとともにほかのメンツも頭を下げる。すると突然おばさんが話を切り出す。
「…ところで話は変わりますが、本日はどちらに向かわれるのですか?」
「えーっと、今日は伏見稲荷に参拝しに行こうかと思っとります。ICが近いので、ついでのような物なんですが…」
笑みをこぼしている辺りから推測するにとても楽しみなのだろう。昨日もちらっと伏見稲荷の話をしていた覚えがある。折角の機会だし行くことになったのだろう。
まぁ京都駅より南の事は俺の管轄外であり、またついていくなんて厚かましいし、そんな事あるはずが…
「ちょっと、拓海。来なさい。それに、和さんも」
おばさんが手招きする。え?なにか嫌な予感…。
「では、本日もこの二人をお貸しします。よき思い出を、お作りになってくださいまし」
待っておばさん!俺ダメ!案内は無理っす。
「え、ですが…旅館運営に支障はないのでしょうか?」
言おうとしたが勝手に話は進む。話を切り出せなくなった今、もう流れに乗るしかない…。
「問題はありません。むしろ、お客様にこの京を楽しんでもらうのが、私どもの総意でございます。ですので、どうかお気になさらず」
笑顔で返事をする。マジかよ。何これ?そういういじめ?そんなに昨日から仕事してないこと怒ってるの?
「えーっと、じゃあまあ今日もよろしく拓海。あと、やま…あーいや。和さんも」
「へえ…まあ、そういうことなんで。よろしく頼みますわ」
あぁ…、もうどうにでもなれ。今日はお供させていただきます。あー、帰って来た時が楽しみだぁ…。
「よし、じゃあ行こうか。っと…そうだ。車どうすんの?お前と和さんを、載せるスペースないんだけど」
「あーそれは大丈夫です。自分も車あるんで」
そう、家からパクってきた同然の赤いパッソがある。このパッソを含め3台で伏見稲荷を目指すことになった。
*
俺ら一行は三台の車に分かれ、川端通りを下っている。川端通りとは鴨川に沿って南北に通っている道の事で、ここからは大文字を始め、多くの観光名所があるためこの道を通ることにした。唯一交通量が多いのがネックだが、逆にはぐれなく進めるということで気にしないことにする。
「拓海さん!ここ、昨日歩いたところですよね!?」
早速助手席に座っている大和が窓に吸い付くように外を見ている。結局この道を通って一番喜んでいるのは大和なのかもしれない。他のみんなもこんな様子だったらいいのだが…。すると、大和がこっちに顔を向け、質問してくる。
「そういえば、伏見稲荷ってどういう場所なんですか?」
「あっ、大和はまだ知らなかったな。説明しておこう」
伏見稲荷とは伏見稲荷大社を指す。全国に三万ほどある稲荷神社の総本山で、ここの御祭神である稲荷大神様がこの稲荷山に御鎮座されているらしい。全国的にも世界的にもたくさんの鳥居があるということで有名。なんか神秘的らしいが、個人的には金閣寺とか清水寺の方が好きです。
「へぇ…。拓海さん、そういうのも詳しいんですね」
「ちげぇよ、大和が用意している間にwikiで調べた」
大和は目を点にする。そうです。俺がこんなこと知っているはずありません。てか初めて知りました。なんか変な空気に…。そこで俺が話を変える。
「あっ、そういえばさぁ、そのかばん何?」
「かばん?あっ、これですか?これにはですねぇ…」
大和が笑顔で中身を見せる。俺は赤信号で止まった時を見計らい、中身を見てみる。
「これは?」
「ちょっとしたサプライズです。ちょっとした」
大和のアイデアはすごいな。俺の上を行く。
「それでなんですけど…、ちょっと協力をしてもらえませんか?」
「協力?」
「はい。それはですねぇ…」
*
境内の駐車場に車を止め、少し離れた自販機前に集合する。一番乗りした俺はつくと同時に一つ大きく伸びをした。隣で大和も同じように伸びをする。なんか揃ってやっていたのが面白くて笑った。その後、辺りを見渡しながら彼らを待つ。ここは俺らからしても珍しい世界。不思議な気分だった。
「みんな集まったようだな」
いつの間にか全員そろっていた。よし、行こうか。
「よーし。全員でここらを見て回る―ってもうそれはいいな。よし、ここから自由行動でいいだろ?」
「俺、一緒に来た意味なくないすか?っても、あまりいなりさんを紹介する自信はなかったんですけどね」
なんか案内せずに救われたのか、サボったということだけが残り苦しいだけなのかよくわからん。罪悪感だけが溜まっていく…。
「私は望についていこ。うん、それしかないよね!」
「うーん。私はヘルブラチームと行こうかなぁ」
「あれ?ダメでした?」
「ふむ、ダメとは言わんですぞ。だが、食べ歩きになると思うがよろしいか?」
「あ、私は大丈夫です。望君。お金カンパしてー」
「わぁったよ。はい。2000円でいいだろ」
「わーい。あ、ちゃんと返しますよ?いつか!」
金の受け渡しが済んだ彼らは自由行動を始めていた。なるほど、ヘルブラチームは食べ歩きと…。彼ららしいな。それで七星さんたちはどうするのだろう?尋ねようとすると、逆に尋ねられた。
「あー、あいつらは行っちまったけど、拓海たちはどうすんの?」
さてそれが問題だ。無難に彼らについていこうかなぁ…。でもなんか迷惑な気もするしなぁ…。俺は大和の様子を伺う。目が合い、その時俺は何かを思い出した。
「自分と大和も、行きたいとこあるんでここでいったんはぐれますわ」
俺はなぜか挙手をしてから言う。なんか自分でやって挙動不審に思えた。まぁ、それは置いておき。
「…蒼龍。俺頑張ってみるよ」
と、小声でつぶやく。本人らには聞こえているかわからないが、決意として一言言っておいた。俺は大和の手を引いて「行こうぜ」とはぐれていく。何気に手を引いたのは初めてかもしれない。なんか恥ずかしいな…。そんなことを考えつつ、その場から離れていった。
*
とりあえず俺たちが向かったのは本殿。とりあえず拝んでおかないとね。朱色のとても美しい建物。思わず拝む前に見とれてしまった。俺らは列に並び順番を待つ。順番が来るとお賽銭を入れて一揖、ニ拝、ニ拝 、ニ拍手。そして一拝 、一揖と完璧にこなす。大和は俺のやり方をマネして如何にかできていたようだ。拝み終わった後、大和に訊いてみた。
「そういえば、大和は何お願いしたの?」
「え!?そ、それは…」
大和の顔が赤くなる。そんな姿を見て俺はクスッと笑う。
「まぁいいや。ほら、行くぞ」
「え?ちょっと、待ってください」
俺の後ろをつけてくる。
「そんな拓海さんは何お願いしましたか?」
「俺か?俺は…」
ちょっと考えて、俺は口を開く。
「上手くいきますように…ってね」
そう、何が上手くいきますようにというのは大体わかるでしょう。そうです、帰った時の事です。怒られずに穏便に済んでくれるといいかなぁと思い拝みました。後から考えるとこれ、何にも応用効くよね?接客が上手くいきますように…とか、大和の計画が上手くいきますように…とか、大和との関係が上手くいきますように…。これ以上考えるのはよそう。なんか辛くなってきた。
「拓海さん、あそこ」
「あっ、あそこでいいか」
俺らは神札授与所と書かれた所へ向かう。そこにはお札や絵馬、お守りが並んでいた。
「うわぁ、たくさんありますねぇ」
「確か、七星さんと蒼龍の分だっけ?」
「はい、その二人分だけです」
ここで、大和の計画について説明しよう。実は大和のかばんの中には一人一人に向けたプレゼントを用意してあるのだった。今さっき言った2人以外は昨日のうちに買っておいたらしいのだが、どうしても二人の分が決まらなかったのでここで買おうということ。ちなみにお守りにしようというのは俺の提案。他のやつと比べてちょっと浮いてしまうかもしれないが、これはこれでありだと思う。
「どう?いいのあった?」
「はい、これと…これです」
「うん、いいんじゃない」
「すみません、この二つください」
一つ五百円だからちょうど千円。大和がかばんから財布を取り出そうとしている時、俺が先に千円を出して、二つのお守りを受け取った。
「ありがとうございます」
俺はそのお守りを大和に渡す。
「ほらよ」
「え?」
「俺は気持ちだけだけど。まぁ千円で許してくれや」
「いや、そんな…。私が払ったのに」
「気にしなくてええ。ほら、鳥居見に行くぞ」
俺は先に歩き出す。大和はかばんにスッとお守りを入れ、前と同じように俺の後ろを追いかけていた。
*
鳥居がたくさん並んでいると本当に神秘的だ。多すぎて若干恐怖心も覚えるがな。俺らは途中の道で堪能してしまい山の頂上までは行かずに、途中で折り返して駅付近のお店でブラブラするという感じにした。まぁ大したことはなかったのだが、大和と二人っきりでの行動に浸ることができた。俺すら満足できたこの旅も終わり。歩いている途中、丁度彼らが茶屋でくつろいでいるのが見えたので俺らも加わる。
「もう帰ります?」
「そうだな、そろそろ帰らないと日が暮れちまうし、運転にも支障が出るかもしれない。あんがとな、昨日今日と」
「いえいえ、そんな。これも仕事ですから。まあ…仕事としては少し申し訳ない気もするんやけど…。もう少し勉強する必要があるかもしれねえっす」
この二日間なにかできたかというレベルに何もできなかった気がする。今日に限ってはここへの道案内しかしていないが、ためになったのであればもういいか。
「でも、こっちもこっちで感謝してますわ。その、色々と気付かされましたしね」
そう言うと大和ににこっと笑顔を見せた。また、大和もそれに応じ、美しく微笑んだ。大和もまた同じ考えのようだ。その時、俺は話を切り出す。
「そや、セブンスターさんと蒼龍に渡したいものがあるんですよ。感謝の意ってヤツですね」
「うわ、気持ち悪。お前らしからぬ発言だな」
「こっちは純粋な気持ちなんですよ?それをそう反応されると泣けますわぁ」
なんかショック。まぁ主催は大和ですし。俺が考えてやったわけじゃないから…。
「うん。わかった。ありがとよ。で、何をくれるんだ?」
「あーもうあげる気なくなりそうですわぁ。もっと感謝の意を述べてほしいですわぁ」
ここまで来て煽っていくスタイル。まぁこれがいつものスカイプをしている時の俺に近いような気がする。ここに来てその感じを醸し出していく。
「わかったわかった。アーすごいありがたいわぁ。ありがたすぎて殴りたいわぁ」
「冗談つうじないなぁ」
向こうもノリに乗ってくれたようだ。久しぶりのやり取りでちょっと楽しかった。
「じゃあこれ、ありがたく受け取ってくださいな」
俺は大和から袋をもらい、それをそのまま七星さんに渡す。
「お守りか?まあ伏見稲荷のお守りは買わずじまいだったし、マジありがたいわ」
「へへん。俺だってそういう時はまじめに選びますよ。好きでしょ?セブンスターさん」
喜んでくれているようだ。お守りを選んだ俺としてもとても嬉しい。
「あ、まだ中身は見ないでくださいね。ちゃんと家に帰ったから、見てください」
そう、楽しみは取っておくもの。見るのは後でにしてもらおう。
「じゃあ僕、蒼龍にも渡してきますわ」
と言って、大和から受け取ったもう一つの方を片手にささっと蒼龍の元へと走って行く。
「はい、これ。二人からのプレゼントです」
「ありがとう。…で、うまくいってる?」
「何とか…」
照れながらいう俺を見て蒼龍はクスッと笑う。
「私、遠くからだけど応援していますからね」
「ありがと」
そういって後ろを振り返ると盛大に大和がコケていた。
「おい!大丈夫なのかよ!」
俺が急いで近づく。その様子を見ていた蒼龍から小声で何か聞こえた。
「大和さんとあなたならきっと上手くいくわ。きっと…」
*
彼らとも分かれて行きに通っていた川端通りを逆に北上する。
「蒼龍ちゃんたち、行っちゃいましたね」
「そうだな。大和のお土産もみんな喜んでくれていたみたいだし、本当によかったね。でも、キヨさんへのお土産がなぁ…」
「ダメでしたか…、I LOVE KYOTOのTシャツ」
「いや、そんなことないよ。むしろとても似合ってたかもな」
なんか大和にセンスを感じたわ。本人の反応も面白かったし。まぁ、そんな楽しい時間も終わり、今はしんみりとしている。俺は一つ深呼吸して大和に話しかけた。
「来年…また来てくれるといいな」
「はい、そうですね」
この二日でいろいろなことがあった。大和がここに来ることができた実態も若干だが把握することもできたし、その大和への想いをどうするかの相談もできた。俺としてもとても充実した二日だった。それは大和も同じ。一番の笑顔を見せてくれたと思う。彼らよりも俺たちの方が楽しかったのかもな。
「なぁ、大和…あのさぁ」
赤信号で止まった時に俺が声をかける。そして隣の助手席を見ると、大和はぐっすり眠っていた。とても可愛らしい寝顔だった。俺は笑顔になり一人でに声をかける。
「大和、帰ろうか。旅館へ」
ちょうど青信号になり、俺はゆっくりアクセルを踏み出した。
これでコラボ回は終了です。また、自分で書いてある構想の第一章も終わりです。
次回からは新たな展開をしていく予定です。また期間が開かないように今回は書置きを作る勢いで頑張ります…。