今回は主人公拓海と大和が自宅についたところから始まります。シーンが変わる際がわかりにくくなっていると思われますので、気を付けて読んでもらえるとうれしいです。
「お前は、なんでここにいるんだ!?」
今、大和と食事中である。本来俺が食べる予定だったカレー一人分と、冷蔵庫に残っていたものの寄せ集めを2人で食べている。幸い、祖父母が友人とのお食事会のため在宅しておらず、俺と大和の二人だけだった。
すると、大和は言った。
「提督に会いたくて来たんですよ」
カレーを食べながら言ったせいか少し聴き取り辛いところがあったが、なんとかわかった。しかし、そういうことはどうでもいい。
「それはわかったよ。何回も聞いた。そうじゃなくて、どうやってここに来たんだ!?」
すると、大和はスプーンを止めた。そして、深呼吸した。落ち着いた状況で彼女は答えた。
「それは秘密です」
大和は笑顔で答えた。さらに、ポーズまでしてやがる。楽し気な感じだった。それに対しとても腹が立った。いや、今年に入って一番に近いほど腹が立った。その苛立ちを抑えつつ、言った。
「よくお前一人で、ここまでこれたなぁ」
少し、皮肉まで込めて言ってやった。でも、これに関しては本当に謎だ。こんな性格の大和が一人で来られるとは思ってはいない。来られるほど頭がいいとは思わない。方向音痴っぽいし、機械音痴でもありそうだ。そんな大和がここに来ることを、きっと誰かが手伝ったのだ。そう間違いない。しかし、それを裏付ける決定的な証拠が出てこない。さらに、一人でしか来ていないことを考えるとなにか事情があるのではないだろうか?俺はいろいろ考えた。しかし、これといった事が思い浮かばなかった。ここで、俺はお茶を飲んだ。飲んでいる最中、大和が話した。
「ほかの人も来る予定だったんですけどねぇ…」
「ほうほう」
一人ではないようだ。やはり俺が考えていた通り、なにか事情があるようだ。
「なんで、大和一人なんだ?いっしょに行けばいいじゃないか?」
俺は聞いた。すると、大和は少し照れくさそうに言った。
「いやぁ…、迷子になっちゃったんですよね…」
俺は咽た。超咽た。
「だっ、大丈夫ですか?」
と言って背中をさする。大和よ、その音痴は治らないのか…。少しして、だいぶ落ち着いた。
「一体、誰と来ようとしたんだ?妹の武蔵か?」
俺は大和に聞いた。これは前から気になっていたことだ。でも、大体予想はついていた。それが武蔵だ。武蔵は大和の妹であり、しっかり者なので、ここまで来られないはない。しかも結構妹思いの大和はやはり武蔵と来たかったのだろうか?とも考えた。最近、自分の鎮守府にも着任したし、ぴったりのような気がした。しかし、大和は首を振る。
「いや、武蔵じゃないです」
意外な答えだった。武蔵じゃないとすると…さっぱりわからん。
「じゃあ誰なんだ?」
俺はストレートに尋ねた。すると、また楽しげな顔をしてこう言った。
「第一艦隊のみなさんです」
第一艦隊…。大和が言う第一艦隊は、多分一番よく編成している6人だろう。そう考えると、確か旗艦が大和で、ビック7の二人、長門と陸奥か…そして、高速戦艦の3人、比叡・榛名、そして金剛。このメンバーがここにきたとすると…一体どうなってしまうのだろうか。考えて見ることにした。
*
とある日の朝。デジタル時計が鳴り響く。俺はタイマーを止めて二度寝に入った。すると、一階から俺のいる二階へと誰かが上って来る音がした。そして、俺の部屋の扉を開けて、入ってきた。
「提督、朝ですよ!起きてください!!」
この声にはとても聞き覚えがある。そう、旗艦の大和だ。俺は腰を起こし、伸びをする。そんな姿を困ったような顔をした大和が見ていた。
「さぁ、行きますよ。みんな待ってますから」
大和は俺の右手をつかみ、無理やり引っ張った。
「イタイイタイ。やめてくれぇ~」
それでも、大和は引っ張る。完全に無視された。俺は引っ張られたまま、一階のリビングへ向かった。途中、階段付近で目に入ってきた太陽がとてもまぶしかった。そんな、すがすがしい日だった。俺は、リビングに入るとすぐに掘りごたつの中へ入った。大和は俺の右隣に座った。ちなみに、掘りごたつといっても中は暖かくない。仮についていたとしても、夏に差し掛かろうとしている今では地獄である。そんな普通の机と化した掘りごたつに座り、うとうとしていた。左隣に座って新聞を読んでいる人が声をかけてきた。
「今日も眠たそうだな。はぁ…。早く寝ろとあれだけ言ったものの…」
と言って新聞を閉じる。そこには黒髪でロングの女性の姿あった。そう、長門である。
「いやぁ…課題が難しくて…」
「そうなら、素直に長門か誰かに聞けばいいのに…」
また別の声がした。すると、向かい側に茶髪のショートヘアーの子が座る。彼女が陸奥だ。お茶を4つもってきてくれて、俺、大和、長門にも配ってくれた。
「いやぁ…迷惑になるじゃん?ね?」
すると、大和がお茶を一口飲んで言った。
「もー。どうせ、ゲームやっていたんでしょ?知ってますよ」
「げっ」
バレバレだったようだ。俺の動揺した姿を見て、陸奥がくすくす笑っていた。長門は相変わらず困った表情だった。その時、ソファーの方から声が聞こえた。
「イタイイタイイタイ。もうちょっと弱くできない?」
「こ、こうですか?」
「そうそう、あー、生き返るなぁ…」
祖父と若い女の声だ。気になったので、目をこすり、祖父がいる方を見た。祖父はとても気持ちよさそうな顔をしていた。その隣に座っている祖母を似たような顔だった。俺は言った。
「またかよ…二人に迷惑かけるなよ…」
祖父は比叡に、祖母は榛名に肩をもまれているのだった。
「ん?いいじゃないか」
「そうよ、本当は私、遠慮したんだけどね。でも、是非やりたいって言われたからやってもらってるのよ。しかも二人とも、マッサージが上手いのよ」
祖父母は答えた。俺はため息を一つして言ってやった。
「こんなことしなくてもいいのに…。あまり甘やかさないでよ。比叡。榛名」
「大丈夫ですよ、提督。ていうか、こんな二人を見たらやらずにはいられません!!」
「提督の家族も提督と同じくらい大切なんですよ。そんな二人を放っておくわけにはいきませんよ」
もんでいる二人も何気に楽しそうだった。この四人をみて、なにかいい雰囲気であることに気か付いた。昔みたいに、三人でいたころにはなかった家族の暖かさのようなものを感じた。そんな様子を見ながら俺は少し笑みを浮かべていた。その時である。
「テーーーーーーーーーイーーーーーーーーーーートーーーーーーーーーークーーーーーーーーーー」
台所からとても元気な声が近づいてきた。金剛だ。猛ダッシュで俺の元とまで来た。手には皿を持っていた。
「私が愛情込めて作ったBreakfast持ってきたネー。その名も、“特製目玉焼きのせ特製トースト”ネー。召し上がれー!」
特製が二回ついているくらい特製の朝ご飯らしい。金剛には悪いが見た目は普通の目玉焼き付きのトーストだった。まぁとりあえず食べてみた。
“サクッ”
パンがこんがり焼けていて、とてもいい音がした。とてもおいしい。さらに、上に乗っかっている目玉焼きが上手い具合に半熟に仕上がっており、トロッとこぼれ落ちそうな黄身とトーストの相性も抜群だった。
「とてもおいしいよ、これ。金剛も料理うまくなったな」
ここに来た数日間はトラウマになるくらい金剛の料理はまずかった。しかし、金剛は料理本で学び、今は違いとても料理がうまい。シンプルな料理しか作れないのだが、俺が作るよりもおいしく仕上がっていることがわかる。すると、彼女は嬉しさあまり俺に飛びついてきた。
「テイトクー!おかわりならいくらでも作りますからねー!!」
「わかった、わかった。だからやめろ」
それでも金剛は俺を離さなかった。
「金剛ちゃん、やめなさいよ。もし提督がのどに詰めたらどうするんですかぁ?」
大和が止めてくれた。金剛は俺から離れ、椅子に座った。さすが大和。と俺が思った瞬間、後ろから大和が抱き着いてきた。
「しかも、提督は私のものなんですからねぇ!」
「は!?」
そんな俺ら二人の姿をみて、みんな慌てだした。まず、長門が立った。
「おい大和。ひっつきすぎだぞ。私だって…愛しているんだぞ、提督を!」
「あらあら…長門ってば慌てちゃって…。ちなみに私も提督、好きよ」
陸奥も言う。すると、肩をもんでいた二人も仕事を中断し、この会話に入っていた。
「は、榛名も…大好きなんですからね」
慌てて叫んでいた。
「私も、お姉さまと同じくらい、提督、大好きです!」
姉と同じくらいなんかい!と突っ込みを入れてやりたかったが今はそんな状況じゃない。すると、金剛がふと質問をした。
「じゃあ提督、一体誰が一番好きネ?」
「「「「「「は!」」」」」」
みんなが俺を見る。俺は冷や汗をかいてきた。この状況は逃げられないらしい。
「おっ俺は…」
緊張の瞬間だった。しかし、俺はプレッシャーを抑え、言おうとする。
「おっ、俺は!」
その瞬間、辺りが真っ白になった。
*
「だっ、ダメだぁ…」
俺は震えていた。
「だ、大丈夫ですか!?提督!!」
大和が隣にくる。
「大丈夫だよ・・・。今のところは」
「今のところってどういうことですか!?」
大和は、俺を揺さぶった。だが、反応はない。というよりも、俺は、朝からの疲労もあり、この後1時間くらいは意識がなかった。
「提督、本当に大丈夫ですか?」
「おう、多分な・・・」
あんな事考えなければよかったと後悔し始めた。俺はソファーでだらし無く座っていた。大和は冷たい麦茶をたまに飲みつつ、こちらを心配してくれていた。こんな感じでしばらく時が過ぎていた。すると、突然変な音楽が鳴り出した。
「提督、この音は?」
「風呂ができた音だ」
俺は立ち上がった。
「大和」
「はい?」
「ちょっと来てもらっていい?」
俺達は、2階に上がり俺の部屋に行った。
「ここが提督の部屋?」
「おう、そうだ」
俺の部屋は綺麗ではないのだが、そこまで汚くもなかった。多分掃除したのが昨日だったからだと思う。部屋に入ってすぐにクローゼットを開いた。そして、少し大きめの段ボールを取り出した。
「提督、何してるんですか?」
大和が言ったとほぼ同時に俺はとある服をとりだした。高校の体操服だ。長袖・長ズボン・Tシャツ・短パンの四点セットだ。高校に入る時、背が伸びると思い長めに買ったのだ。高校の卒業直前にでもガボガボだった服なら俺より大きい大和にも着られるだろう。悪いがこの服しか大きいのがないのだ。
「大和、寝間着ないでしょ?これどうぞ。ちょっと汚いかもしれないけど」
体育以外では使ったことないし、特に汚れるようなこともやってない。でも、三年間使っていた服だ。決して良い服ではない。だが、大和は受け取った。
「ありがとうございます、提督。大事に使わせていただきますね!」
笑顔で答えた。とても嬉しそうだった。すると、大和が胸元のボタンを外しだす。
「「あっ」」
二人揃って赤面した。すぐに着替えだそうとする大和の行動がとても恥ずかしかった。この状態はまずいと思い、慌てて声をかけた。
「お、俺は風呂行ってくる!」
俺はクローゼットから着替えを取り出して、自室を飛び出した。
俺が風呂からあがって次は大和の番である。彼女は俺が渡した長袖、長ズボンに着替えており、いっしょに下へ降りた。降りると、彼女に風呂の位置、タオルの場所を教えた。そして、俺は一人で、自室へ戻った。戻ると、ポケットからスマートフォンを取り出し、またメールを確認した。すると、一件着信が入っていた。つい、5分前だった。
『大渋滞にはまってしまったから遅くなります。』
祖母からだ。このメールを見て、とある事に気づいた。
――大和のこと、どう言えばいいんだ・・・
正直に言うのはだいぶマズイ。そりゃあ、ゲームの世界からやってきたといったら、まず信じないだろう。もし、この事が事実だと分かると、とても慌てるに違いない。じゃあ、なんて言おう・・・。ガールフレンド・・・というのはいろいろまずそうだ。友人という形なら大丈夫そうだが、友人をずっと泊める事に関してはマズイだろう。悩んでいるが、一向に良い案が出てこない。しかし、このまま言わずでは、またこれでややこしくなる。とりあえず、適当にメールを返す。
“了解です。後、だいぶ前に言ってた父の兄貴の嫁さんの妹の子供が京都で働くから家がしっかり来ますまでは泊めるっていう約束してたよね?その人が来たから泊まってもらうからね”
超ごり押しである。とりあえず、父の兄貴の嫁さんの妹の子供なんているかどうかも知らないし、そんな関係の人を泊めるなんてありえない。てか自分で考えつつ、父の兄貴の嫁さんの妹の子供って誰だよ!?遠い親戚すぎるだろ…。
「やっぱりだめか。全文書き換えないとな」
とぼそっとつぶやいた瞬間、俺は口を大きく開けた。
「ああああああああああ」
誤って送信ボタンを押したのだ。この明らかにおかしい全文嘘メールは送信された。次はこのメールの返信が返ってくるのを待つだけだ。さて、どうなることやら…。
その間、俺は大和用の布団を取りに行った。布団セットは三階の物置にある。俺はかけ布団と敷布団、枕を出した。この布団セットを二階に空き部屋に移動させる予定だ。布団セットを抱え上げ、三階から二階へ運んだ。その時、風呂上がりの大和にあった。
「提督、上がりました」
タオルで神をふきながら話してきた。俺は一回布団セットを床に置いた。
「お、おう…」
大和は半袖、半ズボンに代わっていた。これにより。体のラインが際立ったような気がする。そんな大和の姿をちらっと見て、俺はもう一度抱え上げた。すると、大和が声をかけた。
「提督、手伝いましょうか?」
「いや、お客さんに用意を手伝ってもらうわけにはいかないよ。部屋、準備するから俺の部屋ででも待ってて」
「はっ、はい…」
暗い表情だった。俺が尋ねる。
「どうした?」
すると、大和が恥ずかしそうな表情をして、小さな声で言った。
「別々の部屋ですか?」
「そうだけど?」
俺は普通に答えた。それは特に間違ったことを言った気がしていないからだ。いくらゲームで面識があるとはいえ、さすがにお互い、気まずくなると思い、別々にしたのだ。こんな気遣いをしたつもりなのに大和はうれしそうな表情ではない。ここで、俺は察した。俺は、少しやらしい顔をして言った。
「大和って、一人じゃ寝られないのかな?」
大和は焦っていた。やはり、図星のようだ。
「いや、違います!」
「じゃあ別々でいいよな?」
「でも、それは…」
大和はモジモジしていた。俺は、ニヤニヤが止まらなかった。ゲスイゲスイ…。すると、大和は大きめな声で言った。
「私は、提督と一緒に寝たいです!!」
ド直球で言われた。不意に言われたので俺はとてもびっくりした。すると、俺は笑い出した。
「何がおかしいんです!?」
大和が聞いた。
「いや。まさかそういうとは思ってなかったから…。まぁいいや。じゃあ、今日は一緒に寝ますか?」
すると、大和は嬉しそうに答えた。
「はい!」
部屋に戻り、布団を引く。大和には悪いが俺は隣のベットで寝る。俺も大和も寝床につき、照明一つつけて、話していた。ゲーム世界でのこと、今日の昼の事、俺の家の事情などいろいろ話した。そんなある時、俺はスマホを取り出した。そう、メールの返信である。一時間前だが届いていた。俺は唾を飲み、内容を確認する。
“そうか。そうだったわね。こちらも了解です。先に寝ておくんだよ”
俺は今日一番驚いた。こんなわけもわからんメールが通っていたのだ。その時、俺は思い出した。俺の祖母は酒に弱い方だ。コップ一杯で、だいぶ酔う。それで、わけもわからなくなっているのだろう。なぜか、お酒に救われた。そんな感じだった。俺は、安心した。
「提督?どうかしました?」
「いや、何も」
と言った。すると、大和があくびをした。
「そうか、大和って疲れてるよな。そろそろ寝ようか」
「申し訳ないです。じゃあ照明消しますね」
と言って照明を消した。部屋は薄く、月明かりが入ってくるだけだった。しばらく、無音だった。不意に俺が訊ねた。
「なぁ、大和」
「なんでしょうか?」
またしばらく静かな時間があったが、俺が言った。
「俺のこと、提督って呼ばないで。拓海でいいから」
すると、大和は答えた。
「わかりました。タクミ。じゃあおやすみなさい」
「おう、おやすみ」
5分くらいして、隣を見る。彼女は寝ていた。俺の隣にはとてもきれいな大和撫子のようだった。とある七月の日。俺は最高の出会いをした。こんな生活はいつまで続くのだろう。いや、こんなこと考えたくない。俺はいろいろな思いを持ちつつ、静かに眠りに入った。