夏祭りが終わって、次の日。今日で夏休みも、もう後半に入る。そんな中、午後俺たち三人は俺の家へ集まって勉強会をしていた。まぁ、俺はもう終わってるけど。
「そういえば、昨日の祭り楽しかったよね」
「ああ。というかその髪飾りそんなに気に入ったのか?」
「うん!」
涼子は笑顔で頷く。まぁ、気に入ってくれたなら、いいんだけどさ。
すると、ジュニアが俺の宿題を見ながら、聞いてきた。
「何で亮太は普段授業真面目に聞かないくせに、こんなに勉強できるの?」
「三年生の勉強もできるし……それ、私も気になる」
「えっ?天才だからじゃね」
「「……」」
二人の絶対零度の視線が、俺に突き刺さる。はっはっは、いい気分。
俺が一人、最高の気分を味わっていると、玄関の扉が開く。聞いていないが、親父が帰って来たようだ。
「ただいま」
「おかえり」
「「お邪魔してます」」
「おう、亮太の友達か。すまんが仲良くしてやってくれ」
「大きなお世話だ……。今日は速いね」
「いや、この後直ぐにまた出なきゃいけないんだよ。だから、今日の夕飯はお金置いとくから、出来たもの食べてくれ」
「了解」
親父は俺との会話を終えると、自分部屋へと向かって行った。
「すごい、茂野選手だ」
「すごいか……わからん」
涼子はなんか喜んでいるが、やっぱり俺にはその辺分からない。確かに、最近活躍してるけどさ。
「そういえば、涼子はともかくジュニアはプロの野球の試合とか見るの?」
「あんまり」
「だと思ったよ。俺もニュースくらいでしか、見ないし」
「えー、面白いよ」
涼子がもったいないと、俺たち男子二人に言ってくる。うーん、今度親父の試合でも見てみるか。
俺が一人が考えていると、親父が自分の部屋から出てきた。
「もう、行くの?」
「ああ、出来るだけ早く帰って来るよ。それと、えーっと……」
「涼子です」
「ジュニアです」
「涼子ちゃんにジュニアくん、うちのバカ息子をよろしく頼むぜ」
「だから、大きなお世話だって」
「はっはっは、じゃあな」
親父は最後に一言告げると、仕事へと向かって行った。
「いいお父さんだね」
「そうか?」
「うちのお父さんはもっと無愛想だよ」
「ギブソン……」
なんか今度、ジュニアの家に行ってみたいな。
それから数日後、俺たちは朝早くに俺の家の前に集合していた。
「おはよー」
「おう、おはよう」
「何でこんなことに……」
涼子は朝だが元気な挨拶をし、俺はそれに返事をする。ジュニアは頭を抱えて、唸ってる。
さて、なんでこんなことになってるのかというと、それは一日前に遡る。
「……もう、夏休みも終わりだな」
「色々あったよね。野球したり、祭りに行ったり、皆で集まって宿題したり」
今日も俺たちはキャッチボールや軽いバッティングをしていた。そんな中、俺は突然宣言した。
「山を登ろう」
「突然、どうしたの?」
「嫌な予感がする……」
涼子は俺の言葉を聞くと、首を傾げる。ジュニアは毎回俺のこのような発言を聞いて、ムチャなめにあってるいるので顔を青くした。
「いやさ、なんか山を登りたくなってさ。で、頂上でお互いの夢とか叫ぼうぜ」
「それ以外にも、どうせ理由があるんでしょ?」
「後、最近山ガールが流行ってるらしい。きれいなお姉さんがいるはず」
「いないよ」
俺が一言告げると、涼子は怖い笑みを浮かべて、俺の言葉を否定してくる。なんか涼子が俺たちと関わって少し変わってきているような気がする……ホンマに怖いわ。
「というわけで、明日の朝登ります」
「明日の朝!?」
「また突然に……」
俺の発言に涼子は驚き、ジュニアは呆れている。ふふふ、俺は決めたことは即実行なのだ。
「じゃあ、明日の朝八時に集合。分かってると思うけど、動きやすい格好でな」
「はぁ、分かったよ」
「……分かった」
こうして、唐突に山登りが決定したのであった。
「以外にきつい……」
「言い出しっぺが、何を言ってるのさ」
「はぁ、はぁ」
山登り始めて三十分、早くも俺のスタミナ切れが近い。バカな……最近運動してるから、いけると思ったのに。
俺たちが登っている山は近所の裏山である。さすがに、大きな山は登れないからな……富士山とか。
「あと、何分くらいだっけ?」
「二時間くらいだよ……」
「なんやて!?」
俺の質問に涼子が答える。どうやら先は長いようだ……。
「亮太、ガンバ」
「ほら、もう少し頑張ろうよ」
「んじゃ、頑張りますか」
俺は渾身の力を振り絞り、山を二人とともに登って行った。
「着いたーーー!」
「やったね!」
「はぁ、はぁ。死ぬ」
やっと、着いたか。しかし、この二人は本当に体力あるな。
「じゃあ、最後に将来の目標を叫ぶだっけ?」
「ちょっと、冗談半分で言ったんだ が……まぁ、ほかに人もいないし、大丈夫だろう」
「やろう、やろう」
もう、二人ノリノリである、仕方ないな。しかし、目標か……。ギブソンはメジャーリーガーで、涼子はギブソンみたいなピッチャーかな。ギブソン……ね。そういえば、ジュニアはこれからのことどう思ってるのだろうか?。
俺は気になったことをジュニアに聞いてみた。
「なぁ、ジュニア。ギブソンはこれから日本で野球をするつもりらしいが、お前はアメリカに帰りたいのか?」
「……僕は一度帰りたいと思ってる。妹や母に会いたいしね」
「そう……」
「まぁ、当然だよな」
涼子もジュニアがいつかアメリカに帰ってしまうことを、うすうす気付いていたんだろう。あえて、触れなかった感じかな。恐らく、妹や母と会いたいだけじゃなく、日本という国と合わないから、という理由もあるのだろう。例え俺たちという存在がいても……。
俺がジュニアにこのタイミングでこの事を聞いたのは、最近抱き始めた将来の目標を固めるためだ。
「アメリカに行ったら、めったに会えないな」
「そうだね……」
「よし、決めたぞ。俺」
「えっ?」
「俺もメジャーリーガーになってやる。そして、メジャーリーグの舞台でお前と再会する」
最初はただ構ってやるぐらいの軽い気持ちだった。しかし、この二人と野球をしているうちに、前世を持っているこの俺にも、この二人との時間は掛けがいのないものになっていた。
確かにメジャーリーガーは簡単になれるものじゃない……それでも俺はこの時、なりたいと思ったんだ。全く、まるで子供だな……ああ、今は子供だったか。
「まぁ、メジャーでも軽く捻ってやるぜ」
「負けないよ……」
俺とジュニアで火花が散る。しかし、ここで涼子が声を出した。
「いいな……」
「涼子……」
「だって、私メジャーリーガーになれないから、二人と戦えない……」
「確かに……」
女子はメジャーリーガーになれない。俺たちがメジャーリーガーになる頃に、ルールが変わってるとも思えない。
俺とジュニアは思わず、無言になる。
「なら……」
「えっ?」
「なら、私はあなたたちの勝負を見届ける。だから、あなたたちが勝負する時、絶対私を呼んでよね。約束よ」
涼子が、俺たち二人に元気よく告げた。
たく、そんなの言われるまでもない。
「いいに決まってるだろ!」
「もちろん!」
俺たちは山の山頂の近く、俺たちは一生忘れることのない約束をした。
「そういえば、亮太はどこのポジションやるの?」
「俺は……」
「「俺は……?」」
ジュニアと涼子が興味しんしんで聞いてくる。
実はどこやるかは大体考えてある。こんな面倒くさがりやか俺ができるポジション……そう。
「俺は最強の外野になる」
「「……」」
二人は俺に冷たい視線を送ってくる……何故だ?
あくまでもオリ主の主観です。
後、ギブソンの三年間、日本で野球するという設定を、ずっとし続けるに変更しました。ジュニアがギブソンに抱く感情も、恨みから嫌いに変更しました。