あの約束を   作:厨二王子

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10話 クリスマス

 山で約束を結んでから時が過ぎ、冬になった。あの日から俺はランニングや筋トレなど、朝の日課として行っていた。ちなみに、親父にはまだメジャーリーガーになるとは言ってない。いや普通に恥ずかしいし……。

 そして今日はクリスマスの数日前、俺は涼子と共に壮絶な計画を練っていた。

 

「本当にやるの?」

 

「ああ。今日こそジュニアの高級マンションに進入する。そこで、クリスマスパーティーをやるんだ!」

 

「えーっと、どんな作戦だっけ?」

 

「なに、簡単だ。俺が独自のルートで入手したジュニアの合鍵を使い、部屋に進入する。そして、そこでクリスマスケーキを置いて、待機するんだ。あっ、クリスマスプレゼントも忘れるなよ、二人分」

 

「それって犯……」

 

「言うな。その先の台詞は予想できる」

 

「そう……」

 

 涼子は俺の言葉を聞き、納得する。いや、納得して貰った。涼子は溜め息を吐きながら、頷く。……何故だ?

 俺は涼子に今日の日程を伝えて、自分のクラスに帰って行った。

 

 

 

 

 

「今日の遊びはここまでかな」

 

「うん……そうだね」

 

「じゃあ、解散するか」

 

 俺たちはいつもの公園で野球をして、お互いの家に帰ろうとする。

 

「お先に」

 

「また明日な」

 

「じゃあね」

 

 ジュニアが先に帰って行く。俺と涼子は帰るふりをして、公園に残った。

 

「涼子、親から許可は取ったか?」

 

「特別に貰ったよ」

 

「よし、こっちも同じくだ」

 

 俺は涼子にしっかり親の許可を貰ったのか、確認する。今日は帰りが遅くなるので、親の許可が必要だったが、まぁ取れて良かった。

 俺は涼子の話に頷くと、近くに置いてあった段ボールを持ち出す。涼子はそれを見て、首を傾げた。

 

「それで何するの?」

 

「これで、隠れながら行くのさ。とりあえず、駆け足で先回りするぞ。ルートは確認済みだ」

 

「……分かったわ」

 

 俺と涼子は段ボールを被りながら、駆け足でジュニアより速く、彼の家に向かった。

 

 

 

 

 

「……」

 

 僕は無言でマンションの玄関の扉を開ける。今日も父さんは仕事で、家にはいない。僕は部屋にあがっていく。そして家には誰もいない筈なのに、部屋に明かりが点いていることに、気がついた。

 

 ……泥簿?

 

 僕は玄関に置いてあったバットを持って、そっとその部屋へと向かう。部屋の前に着くと、緊張で少し固まる。

 そして僕は、勇気を振り絞り、思いっきり勢いよく部屋の扉を開けた。

 

「よっ、ジュニア。お邪魔してるぜ」

 

「……お邪魔してます」

 

「……」

 

 その部屋にはいつも遊んでいる二人が、当たり前のようにそこにいた。亮太に限っては寝転びながら、テレビを点けて見ている。とりあえず、亮太はムカついたので勢いよく殴っておいた。

 

 

 

 

 

「いやー、悪い悪い。ちょっとしたでき心で」

 

「どうやって入って来たの?」

 

「ジュニアの机の中にあった合鍵で」

 

「だから合鍵がなかったのか……」

 

 ジュニアは溜め息を吐きながら、片手で頭を抑える。なるほど、なるほど。溜め息を吐くほど、嬉しかったのか……納得だな。

 

「いやー、一回でもいいから、ジュニアの家に来てみたかったんだよ」

 

「マンションなのに、広いんだね」

 

「まぁね……」

 

 俺と涼子は部屋を見回す。俺は直ぐにある場所に向かった。

 

 

 

 

 

「何してるの?」

 

「んっ?ああ、ギブソンもお宝本持ってるかなーと思って」

 

 俺はギブソンの部屋らしき所に行くと、ベットの下をチェックした。

 

「お宝本?」

 

「ふっ、ジュニアにはまだ早いかな」

 

「なんか、むかつく」

 

 ジュニアは俺の一言を聞いて、少し機嫌が悪くなる。俺は気にせず捜索を続けた。

 

「というか、ここ父さんの部屋で、入ったらまずいから」

 

「はいはい、分かったよ。直ぐに……んっ?」

 

 俺は部屋を出てこうとしたところで、ある写真を見つけた。

 

「これ家族の写真?」

 

「そうだよ」

 

「ふーん」

 

 家族の写真を見るにそこには四人写っていて、皆仲が良さそうだった。

 

「仲よさそうだな」

 

「この時はね……」

 

 ジュニアの顔が曇る。仕方ないな……話題変えるか。

 

「まぁ、いいや。それよりジュニア、ケーキ食べようぜ。買ってきたんだ」

 

「相変わらず、準備いいね」

 

 俺はジュニアを強引に連れて、涼子のいる部屋に向かった。

 

 

 

 

 

「そろそろプレゼント出そうぜ。あっ、ジュニアのは高価なものだぞ」

 

「楽しみにしててね」

 

「僕は何も用意してないけど……」

 

「ああ、それは気にしなくていい。この家に入れてくれたことと、このお菓子がプレゼントってことにしておくから」

 

 ジュニアが申し訳ない顔をすると、俺は気にしなくていいと声を出した。

 

「じゃあ、俺から。涼子にはこれな」

 

「野球ボール?」

 

「こないだ公園で、俺がお前のボールなくしゃったからな。そのお詫びもかけて」

 

「気にしなくていいのに……」

 

 そういうわけにもいかないしな。それに、ボールは沢山あって俺も困らないし。

 

「次にジュニアのだが……あれだ」

 

「あれ?」

 

 俺が指差した先には、ジュニアと会ったばかりの頃、ジュニアにあげたグローブがあった。

 

「それって……」

 

「ああ、確かあれ貸しているってことだったけど、あれをプレゼントするよ。どうだ、嬉しいだろう」

 

「なんか、悔しいけど……ありがとう」

 

「はっはっは、どういたしまして」

 

 ジュニアは顔を俺から反らしながらお礼を言ってきた。うん、ツンデレだな。

 そして、次に涼子が俺たちへのプレゼントを取り出した。

 

「ブレスレット?」

 

「おー、洒落てるな」

 

 見たところそのブレスレットはシンプルなデザインのものだ。値段は高そうでもないが。

 

「三人お揃いよ。しっかり、お小遣いで買ったわ」

 

 涼子がその小さな胸を張り、答える。なんか、こういうのもいいな。

 

「じゃあ、有り難く貰っておくよ」

 

「……ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

 俺とジュニアはさっそく着けてみる。うん、なんかしっくりくる。そして、プレゼント交換かが終わると、テンションを上げて、俺は声を出した。

 

「じゃあ、ケーキ食べようぜ!」

 

「それが亮太の目的でしょ?」

 

「まぁ、私もお腹空いたし、いいじゃない」

 

 この後は、夜八時くらいまで俺たちは夜通し、クリスマスを楽しんだ。後、地味にギブソンと遭遇することを期待していたんだが、ギブソンが俺たちがいる間、家に帰って来ることはなかった。


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