前原 ショート
長谷川 セカンド
小森 キャッチャー
吾郎 ピッチャー
田辺 ファースト
清水 レフト
亮太 ライト
沢村 センター
夏目 サード
はい、ということで鶴田くんがいなくなりました。まっ、覚えてないか……。
最初はいじけていた吾郎だが、監督の話を聞くと立ち直り、ほかの皆とも仲直りしたようだ。ちなみに試合の後に聞いたんだが、あの美人は吾郎の保護者で、桃子さんというらしい。保育園の先生だとか……うらやま。俺は自分の保育園の先生を思い出し、悲しい現実に涙を流した。
「どうやら、立ち直ったみたいだな」
「ああ。本田吾郎、完全復活だぜ!」
「次の回は俺の攻撃があるし、完全に追い討ちかけますか」
「期待してるぜ」
俺は吾郎と話すと、次の打順の清水に話し掛けた。
「緊張してるかーい?」
「うっせ、話し掛けるな」
「まぁまぁ。もしも、ボールを当てたら、全力で一塁まで走れよ。あっ、バットはしっかり置くんだぞ」
「分かってるよ!」
清水は俺に怒鳴ると、打席に向かって行った。
……さてさて、次は俺の打席だし、バット振っておきますか。
俺は清水が打席に向かって行ったのを見送ると、バットを振り始めた。
俺がバットを振っていると、バットに球が当たる音が聞こえた。どうやら、清水がヒットを打ったようだ。しかも、さっき俺が言った通り、バットを置いてきてる。
清水がバットに当てた球はサードの方に飛んでいく。しかし、サードは取り損ない、少しバランスを崩した。吾郎は大声で清水に叫ぶ。
「突っ込めー!」
清水は一塁へ着く寸前、体が前向きに倒れる。しかし、その先には……。
「セーフ」
審判の声が、グラウンドに響き渡った。
「おいおい、やったぜ。次の打席は……」
「亮太、続けー!」
吾郎が俺に大きな声で叫んでくる。まったく、そんなでかい声出さなくても聞こえてるって。
俺はやれやれと言いながら、打席を立った。
俺が打席に立つと、敵のベンチでなにやら沢村の親父が大きい声で話しているようだ。沢村の親父の話を聞いた相手の監督が、敵のピッチャーに指示を出す。すると、ピッチャーの顔つきが変わった。
……なるほど、ついに本気出しますか。
相手のピッチャーが大きく振りかぶり投げると、その球は先程までの山なりの球なんかではなく、100キロ以上は出ている速球だったコースは見事にど真ん中。
どうやら、そう簡単には終わらせてくれないようだ。
「ちっ、くそう。そこまでして勝ちたいのかよ。きたねーぞ」
「そうよ、そうよ」
沢村と清水が相手のピッチャーにブーイングの声をあげる。しかし、俺は先程から亮太のバッティングホームについて考えていた。
「おい、どうしたんだよ本田」
「ここで決まるな」
「えっ?」
「お前らじゃ、分からないか。あいつのスイング、半端ないぜ」
俺は沢村の質問に答えると、再び視線を打席に立つ亮太に戻した。
「……」
俺は徐々に集中力を上げて行く。ピッチャーは再び手を大きく振り上げて、投げた。
俺はまたストレートだと思いバットを思いっきりスイングする。しかし予想ははずれ、球は右に曲がった。
……ちっ。
俺はバットを振る途中で、強引に球を当てに行く。俺が当てた球はファーストよりも、思いっきり右にはずれて……。
「ファール」
これでストライクが二つ、追い込まれた。
俺は慌てることなく、冷静になる。俺はあの二人と約束してから、決してただ遊んできたわけじゃない。筋トレやランニングと同じくらいにやってきた。外野を選んだ理由も楽そうだったという理由だったが、決して楽じゃなかったしな。親父の特訓も地獄だったし……。そして今日、俺はメジャーへの始めての小さな一歩を踏み出す。
「ふぅー」
俺は軽く息を吐き、自分を落ち着かせる。俺は直ぐ次に来るコースを予想し、打つ球を絞り、相手の球に食らい付いていった。
「おいおい、どんだけ粘るんだよ」
「ほえー、すごい」
沢村と清水は亮太のバッティングを見て、驚きの声を上げる。しかし、俺はあることに気づいた。
「沢村、清水。気づいたか?」
「えっ、何に?」
「距離だよ。どんどん伸びてるぜ」
「そういえば……」
どうやら、二人も思い当たったようだ。すると、監督が俺に声を掛けてきた。
「吾郎くん。先程の肩といい、このバットコントロールといい、彼は一体何者なんだい?」
「なに、俺と同じ只の野球少年ですよ」
俺はそんな監督の問いに、笑って答えた。
俺は一回ファールになる度に、球の飛ばす距離を伸ばしていく。狙うはあの一球。そして、ついに十球目、俺の狙った球がやってきた。そう、少し浮いたカーブ。俺がその球を見逃すはずもなく、フルスイング。そして球はバットに当たる。そして、俺のバットに当たった球は外野方面に飛んでいき、ついにバックフェンスを越えた。グラウンドに一瞬静寂が訪れる。そして、こっちのチームのベンチに大きな歓声が上がった。
「俺の……いや、俺たちの勝ちだ!」
このホームランにより、相手のチームに勝ち越しの二点という大きな打撃を与えた。
この後、相手のチームに覚醒した吾郎から点を取ることができず、試合終了。四対一で今回の試合は幕が閉じる。
こうして、俺たち三船リトルは初勝利という、新たな一歩を踏み出した。
ちなみに、この後桃子さんの胸へ飛び込んでいったら、吾郎に殴られて阻止された。……何故だ?
試合終了 4対1 三船リトルの勝利
さて、次回ですが吾郎くんの横浜リトルの話はとばします。この時ですが原作通り、涼子と吾郎は会わないことにします。
そしてアメリカですが……オリ主は行けるのか。次回をお楽しみに。