あの約束を   作:厨二王子

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23話 合宿

 海堂高校での対決から一週間後の日曜、俺はいつも通り、グラウンドで練習をしていた。

 

『ひび割れて、全治3ヶ月?』

 

 ドルフィンズの皆の声が一斉にハモる。吾郎が左腕に包帯を着けて、グラウンドに現れた。彼いわく、どっかのバカなやつにベットから突き落とされたらしい。すると、俺が清水の方を見る、彼女はあからさまに目をに反らした。

 

 ……何故だろう、その現場が簡単に想像できる。

 

 そして、吾郎が来てメンバーが揃ったことで、ドルフィンズの練習が本格的に始まった。

 

 

 練習が終わると、吾郎が監督にある提案をする。

 

「えっ、合宿?」

 

「うん。せっかくの夏休みだし、皆もっと集中的に練習すればもっと上手くなると思うんだ」

 

「合宿か……。このチームが強かった頃は山梨の方でやっていたんだが」

 

「いい、じゃん。そこでやろうよ」

 

 そして、この話が聞こえたのか、小森たちも集まって来る。しかも皆も意外と乗り気なようだ。もちろん、俺も合宿には賛成なのだが、俺的には海が良かった。やっぱ、水着っていいよね。

 しかし、監督は困ったような声を出す。

 

「しかし、そこは強豪が集まる共同合宿所なんだよ」

 

「共同合宿?」

 

「まぁ、監督が言いたいのはそんな強豪が集まるところに行っても、俺達は弱いから心良く思われないし、実力差を実感してモチベーションを無くして欲しくないのさ」

 

 俺は首を傾げている清水たちに向けて、少し解説した。

 

「亮太くんの言う通りだ。しかも、強豪同士で練習試合も行われるからね……」

 

 監督は暗い感じで、俺達に告げて来る。しかし一人、そんな空気を吹き飛ばす子供がいた。

 

「なんだよ、おじさん。そりゃあ、すっげーいい場所じゃんか」

 

 吾郎が一言告げるが、皆はドン引きである。

 

「しかし、吾郎くん。亮太くんも言っていたけど、今の自分達のチーム状況じゃ、差がありすぎて……」

 

「全然OK。一気にレベルアップするチャンスじゃねぇか!」

 

「それはどうかな……」

 

 沢村が呆れたように言った。俺や吾郎はともかくとして、他の皆では自信……あるかどうか分からないが、力の差を感じなくなってしまうかもしれない。

 そんな中、吾郎は冷たい言葉を俺達に投げ掛ける。

 

「えっ、お前らってそんな無くすような自信、あったっけ?」

 

 正論ですね、はい。まぁ、実力を知れるにはいい機会か……。

 

 吾郎の言葉を聞いた清水と沢村は静かに固まる。そんな中、小森が元気な声で賛成の声を上げた。それから、他の皆からも賛成の声が聞こえてくる。

 

「まぁ、いいんじゃないんですか。本人たちが行くって言ってるんだし」

 

「うーん……よし!」

 

 監督はなにやら、考える仕草をした後、皆と同じく元気の良い賛成の声を上げる。

 こうして、俺達三船ドルフィンズの夏合宿が決まった。

 

 

 

 そして、時があっという間に経ち、夏休みに入り、夏合宿当日になった。今俺はドルフィンズの皆と共に、バスで合宿所に向かっている。

 

「いい景色だな」

 

「ああ」

 

「おいおい、楽しみですって顔に書いてあるぞ」

 

「なっ……」

 

 バスの中で皆がババ抜きなどのゲームで盛り上がっている中、俺は隣に座っている吾郎をからかっている。

 すると、バスは合宿所に到着した。そして、着いたのはいいが……。

 

「まぁ、少しは予想してたよ……」

 

「あんまり、期待はしてなかったけどさ~」

 

「ここに一週間泊まるのかよ」

 

 そこは誰でも見れば理解できるほどの、ボロアパートだった。俺達はそんな合宿所に驚きながらも、中に入って行く。そして、部屋の中に入ると何故かデブが寝ていた……えっ?

 

「誰か寝てるぞ」

 

「おじさん、部屋間違えてるんじゃないの?」

 

 吾郎が監督に部屋の確認を取るが、どうやら間違ってる訳じゃないらしい。ということはこのデブが間違えているのか?

 

「おい、おっさん。ここはおっさんの部屋じゃねぇ、三船リトルの部屋なんだよ」

 

 吾郎は怒鳴りながら、デブを踏みつける。

 すると、デブが反応した。

 

「おっさんって僕のことかな?」

 

『えっ?』

 

 皆がデブの突然の声に驚きながらも、デブは立ち上がった。

 

「ひどいな、君。ちょっと太めな野球少年に向かって、おっさんはないよなぁ~」

 

「えっ、野球少年……?」

 

 吾郎が顔をひきつらせながら呟いた。

 

 確かにどう見ても、少年には見えない。というかあの体型で野球できるのか?

 

 そして、この後は吾郎が何故かお尻叩きをされて、デブは去っていった。

 

「何だったんだ?」

 

「さぁ?」

 

 俺は沢村の問いに質問を問いで返す。ちなみに、吾郎と監督と小森はデブを追って行った。残ったそれ以外のメンバーはベランダでたむろっている。……んっ?

 

「たく……がは!?」

 

 なんと、突然外のグラウンドから、球が飛んできて沢村に当たった。怖っ!

 よく見たら吾郎たちも、そのグラウンドにいる。しかも、吾郎はマウンドに立っていた。勝負でもしているのだろうか。

 俺は倒れている沢村を無視して部屋に戻り、荷物の整理をしに行った。

 

 

 

 夜になると、皆で部屋に届いた夕食を食べる。部屋は汚いが、飯は旨かった。

 そしてこの時、吾郎たちから北関東の代表であり、あの太めの野球少年(どうみてもデブ)のいる久喜というチームと練習試合をすることを伝えられた。聞くところ、吾郎があのデブを三振させて、練習試合を認めさせたようだ。

 

 ……さすがだな。

 

 まぁ、あの球を簡単に打てる小学生の打者はそうはいないだろう。

 しかし、北関東代表か……相手に取って不足なし。

 

 俺は子供のように、明日の練習試合を楽しみにしていた。




投稿ペースは遅めですが、こんな感じで投稿していこうと思っています。後、結構先になると思うんですが、これから他作品……というより、ダイヤのAとかの要素を少し入れようと思ってます。主に敵とか……。後、アンケートを活動報告に書いたので、目を通してくれると嬉しいです。回答もそっちでお願いします。
では、次回もお楽しみに。

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