海堂高校での対決から一週間後の日曜、俺はいつも通り、グラウンドで練習をしていた。
『ひび割れて、全治3ヶ月?』
ドルフィンズの皆の声が一斉にハモる。吾郎が左腕に包帯を着けて、グラウンドに現れた。彼いわく、どっかのバカなやつにベットから突き落とされたらしい。すると、俺が清水の方を見る、彼女はあからさまに目をに反らした。
……何故だろう、その現場が簡単に想像できる。
そして、吾郎が来てメンバーが揃ったことで、ドルフィンズの練習が本格的に始まった。
練習が終わると、吾郎が監督にある提案をする。
「えっ、合宿?」
「うん。せっかくの夏休みだし、皆もっと集中的に練習すればもっと上手くなると思うんだ」
「合宿か……。このチームが強かった頃は山梨の方でやっていたんだが」
「いい、じゃん。そこでやろうよ」
そして、この話が聞こえたのか、小森たちも集まって来る。しかも皆も意外と乗り気なようだ。もちろん、俺も合宿には賛成なのだが、俺的には海が良かった。やっぱ、水着っていいよね。
しかし、監督は困ったような声を出す。
「しかし、そこは強豪が集まる共同合宿所なんだよ」
「共同合宿?」
「まぁ、監督が言いたいのはそんな強豪が集まるところに行っても、俺達は弱いから心良く思われないし、実力差を実感してモチベーションを無くして欲しくないのさ」
俺は首を傾げている清水たちに向けて、少し解説した。
「亮太くんの言う通りだ。しかも、強豪同士で練習試合も行われるからね……」
監督は暗い感じで、俺達に告げて来る。しかし一人、そんな空気を吹き飛ばす子供がいた。
「なんだよ、おじさん。そりゃあ、すっげーいい場所じゃんか」
吾郎が一言告げるが、皆はドン引きである。
「しかし、吾郎くん。亮太くんも言っていたけど、今の自分達のチーム状況じゃ、差がありすぎて……」
「全然OK。一気にレベルアップするチャンスじゃねぇか!」
「それはどうかな……」
沢村が呆れたように言った。俺や吾郎はともかくとして、他の皆では自信……あるかどうか分からないが、力の差を感じなくなってしまうかもしれない。
そんな中、吾郎は冷たい言葉を俺達に投げ掛ける。
「えっ、お前らってそんな無くすような自信、あったっけ?」
正論ですね、はい。まぁ、実力を知れるにはいい機会か……。
吾郎の言葉を聞いた清水と沢村は静かに固まる。そんな中、小森が元気な声で賛成の声を上げた。それから、他の皆からも賛成の声が聞こえてくる。
「まぁ、いいんじゃないんですか。本人たちが行くって言ってるんだし」
「うーん……よし!」
監督はなにやら、考える仕草をした後、皆と同じく元気の良い賛成の声を上げる。
こうして、俺達三船ドルフィンズの夏合宿が決まった。
そして、時があっという間に経ち、夏休みに入り、夏合宿当日になった。今俺はドルフィンズの皆と共に、バスで合宿所に向かっている。
「いい景色だな」
「ああ」
「おいおい、楽しみですって顔に書いてあるぞ」
「なっ……」
バスの中で皆がババ抜きなどのゲームで盛り上がっている中、俺は隣に座っている吾郎をからかっている。
すると、バスは合宿所に到着した。そして、着いたのはいいが……。
「まぁ、少しは予想してたよ……」
「あんまり、期待はしてなかったけどさ~」
「ここに一週間泊まるのかよ」
そこは誰でも見れば理解できるほどの、ボロアパートだった。俺達はそんな合宿所に驚きながらも、中に入って行く。そして、部屋の中に入ると何故かデブが寝ていた……えっ?
「誰か寝てるぞ」
「おじさん、部屋間違えてるんじゃないの?」
吾郎が監督に部屋の確認を取るが、どうやら間違ってる訳じゃないらしい。ということはこのデブが間違えているのか?
「おい、おっさん。ここはおっさんの部屋じゃねぇ、三船リトルの部屋なんだよ」
吾郎は怒鳴りながら、デブを踏みつける。
すると、デブが反応した。
「おっさんって僕のことかな?」
『えっ?』
皆がデブの突然の声に驚きながらも、デブは立ち上がった。
「ひどいな、君。ちょっと太めな野球少年に向かって、おっさんはないよなぁ~」
「えっ、野球少年……?」
吾郎が顔をひきつらせながら呟いた。
確かにどう見ても、少年には見えない。というかあの体型で野球できるのか?
そして、この後は吾郎が何故かお尻叩きをされて、デブは去っていった。
「何だったんだ?」
「さぁ?」
俺は沢村の問いに質問を問いで返す。ちなみに、吾郎と監督と小森はデブを追って行った。残ったそれ以外のメンバーはベランダでたむろっている。……んっ?
「たく……がは!?」
なんと、突然外のグラウンドから、球が飛んできて沢村に当たった。怖っ!
よく見たら吾郎たちも、そのグラウンドにいる。しかも、吾郎はマウンドに立っていた。勝負でもしているのだろうか。
俺は倒れている沢村を無視して部屋に戻り、荷物の整理をしに行った。
夜になると、皆で部屋に届いた夕食を食べる。部屋は汚いが、飯は旨かった。
そしてこの時、吾郎たちから北関東の代表であり、あの太めの野球少年(どうみてもデブ)のいる久喜というチームと練習試合をすることを伝えられた。聞くところ、吾郎があのデブを三振させて、練習試合を認めさせたようだ。
……さすがだな。
まぁ、あの球を簡単に打てる小学生の打者はそうはいないだろう。
しかし、北関東代表か……相手に取って不足なし。
俺は子供のように、明日の練習試合を楽しみにしていた。
投稿ペースは遅めですが、こんな感じで投稿していこうと思っています。後、結構先になると思うんですが、これから他作品……というより、ダイヤのAとかの要素を少し入れようと思ってます。主に敵とか……。後、アンケートを活動報告に書いたので、目を通してくれると嬉しいです。回答もそっちでお願いします。
では、次回もお楽しみに。