あの約束を   作:厨二王子

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タグを追加しました。何かつけた方がいいと思ったタグとかありましたら、構わず報告してくれると有り難いです。それと字下げしました。
では、どうぞ!


4話 キャッチボール

「そういえば、ジュニアはギブソンが嫌いなのか?」

 

「何でそう思うの?」

 

「なんとなく」

 

 俺とジュニアは教室で話した後、校庭でキャッチボールをしていた。しかし、グローブがないので、柔らかい小さなボールを近距離で投げ合っている。

 因みに俺は両利きだ。前世では右利きだったけど、折角だからとこの世界では左手も使ってみることにした。箸は右手、字を書くときは左手みたいな感じで。ボールも最初は左手で投げていたのだが、なんか変な回転が掛かって、取りにくいらしいので、今は右手で投げていた。

 

「……」

 

「何かあったのか?まぁ、別に無理に聞く気はないけどよ。友達なんだし、話したら少しは楽になるかもしれないぜ」

 

「……父さんのせいで家族がバラバラになった」

 

「……なるほど」

 

 家族がバラバラ……ね、離婚でもしたのかな。間違いなく、あの事故が一枚絡んでいるんだろうけど。まぁ、詳しい理由は分からないが……。

 

「それで嫌いなのか。そして、そんな父が許せないと」

 

「……」

 

「ならさあ……ギブソンが得意な野球で倒してみたら?」

 

「えっ……」

 

 ジュニアが俺の言った言葉に驚いた。

 

「まぁ、今のは例えばだけど。そのくらいの意気込みがないと、お前ずっと今のままだぞ」

 

「……」

 

 ジュニアが難しい顔で考える。しかし、野球で倒すねー、俺もよくそんな言葉が出たよな。まぁ、俺はプロ野球選手なんてならないけど。なれる奴なんて凄い少ないんだし、大変だからな。面倒くさがりやな俺には、不向きだ。

 やがて、暫く投げ合っているとジュニアがなにやら決意した顔になる。どうやら、答えが出たようだ。

 

「決めたよ。メジャーリーガーになって、父さんを倒す」

 

「そうか……まぁ、頑張れよ」

 

 俺はジュニアの答えを聞く。まぁ、こいつだったら、ギブソンの息子なんだし、センスもあるから、メジャーリーガーになれるだろう。

 

 この後は普通に投げ合って時間は過ぎ、昼休みは終わった。

 

 

 

 

 

「ジューニーア、一緒に帰ろうぜ」

 

「……」

 

「だから、そんなゴミを見るような目で見るなよ」

 

「はぁ、分かったよ」

 

 今日の一通りの授業が終わり、放課後になった。俺は帰りのホームルームが終わると、真っ先にジュニアのもとに向かう。いやー、友達いるっていいね。

 

「ジュニアって、この後も暇?」

 

「特にやることないけど……」

 

「じゃあさ、グローブを付けて、キャッチボールしようぜ」

 

 俺は元気よく、ジュニアを誘った。

 

「どこで?」

 

「俺の家の近くの公園で、グローブは俺の家のやつが二つあったと思うから」

 

「分かった……」

 

 俺はジュニアの返事を聞くと、ジュニアの手を取り、とりあえず俺の住んでいるアパートへ向かった。

 

 

 

 

 

 アパートへ帰ると相変わらず誰もいない。俺は親父が俺がいつでも野球を始めてもいいように用意していたグローブとボールを持って、外で待っているジュニアのもとへ向かい、近くの公園に向かった。アパートの近くの公園はそれなりに広くて、野球の試合ができるくらいはある。実はここ以外に、もっと施設が豊富なここより大きい公園があって皆がそこに行っているからなのか、この公園には人が少ない。

 公園に着くと、俺とジュニアは軽く肩を動かしす。すると、ジュニアが話し掛けてきた。

 

「いいの、これ使って?」

 

「いいんだよ、グローブの一つや二つ。それより速く始めようぜ」

 

 俺はジュニアに一言告げると、手に持っていたボールをジュニアのグローブに向かって投げる。距離が学校の時とは違いそれなりに離れているので、ボールがそれる。

 

「あっ……」

 

「どこに、投げてるの」

 

「わりぃ、わりぃ」

 

 届くことはできたが、コントロールは難しい。俺はジュニアに軽く謝り、ジュニアは後ろにいったボールを取りに行く。

 

「じゃあ、今度は僕が投げるよ」

 

「こい!」

 

「えい」

 

 ジュニアが投げたボールは俺の時とは違い、しっかりと俺のグローブのところへ向かう。

 俺はそのボールをキャッチした。

 

「すごいな。一発でこのコントロール」

 

「そうかな」

 

「だが、俺のコントロールはその上をいく!」

 

 俺が自信満々で投げると、そのボールは前に投げた時とは違い、しっかりとジュニアのグローブの中へ収まった。

 

「そのうち、また乱れるよ」

 

「ありえないね」

 

 俺はジュニアの言葉を否定し、ジュニアが投げたボールを、またキャッチする。

 

「そういえば、あまり気にしなかったけど、日本語話せるんだな」

 

「それなりに、日本にいるからね」

 

「ふーん」

 

 結局、俺たちは日が沈むまでキャッチボールを続けた。

 

 

 

 

 

 夕方にジュニアと別れてアパートに帰ると、珍しく親父が帰って来ていた。

 

「あれ、今日は帰り速いね」

 

「ああ、今日の会合が速く終わってな。お前こそ珍しく夕方まで……んっ、それグローブか」

 

「そうだよ。あっ、もう一つの友達に貸しちゃった」

 

「全然大丈夫だぞ。それにしても、お前に友達が出来て、野球を始める日が来るとは……感動だな」

 

「うるさい、大きなお世話だ」

 

 親父はよほど嬉しかったのか、感動して涙を流す。……そこまでなのか。

 

「……よし。それじゃあ、いっそのことプロ野球選手になるか」

 

「いや、ならないよ」

 

 俺は基本的に面倒くさがり屋だし、あきっぽいから無理だな。 後、ジュニアがギブソンの息子だということは、一応隠すことにしておいた。まぁ、知っても問題ないと思うけど。

 その後、俺と親父は久し振りに楽しく話し、夜親父のエロ本を見て、一日が終わった。


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