あの約束を   作:厨二王子

9 / 28
8話 夏祭り

 涼子が仲間になってから数ヵ月が過ぎて、夏休みになった。明日には子供達の夏休みの代名詞であるあの行事が開かれる。

 

「親父、明日夏祭りだから、お小遣い頂戴」

 

「あっ、そういえばそうだったな。ていうか、お前去年まで興味ないって、感じだったじゃないか」

 

「ああ、そうだな」

 

「やっぱり、友達ができれば、変わるもんだな」

 

 親父はにやにやしながら、俺にお小遣いを渡してくる。

 

 ……なんか、うぜぇ。

 

「楽しんでくるんだぞ」

 

「分かってるよ」

 

 親父にからかわれた次の日、ついに祭りの日はやって来た。

 

 

 

 

「後は涼子だけか……」

 

「そうだね」

 

 夜、俺とジュニアは待ち合わせをした、祭りが行われる神社に来ていた。俺とジュニアは待ち合わせの時間、五分前に来たんだが、涼子の姿が見えない。

 

「やっぱり、女性はこういうの準備に時間がかかるって言うけど……」

 

「どうかね」

 

「おまたせ」

 

 俺とジュニアが会話をしていると、後ろから声が掛かる。どうやら、涼子が来たようだ。

 

「遅かったな、俺らが……」

 

 俺はその服装を見て驚いた。浴衣だったのだ。

 祭りの日に浴衣は当たり前のようなものだが、これが涼子にはまた似合っていた。

 

「わお、浴衣似合ってるよ」

 

「……似合ってる」

 

「亮太は素直じゃないね」

 

「うるさいわ」

 

「ありがとう」

 

 ジュニアと俺は浴衣が似合っていることを伝える。涼子は笑顔で、お礼を言った。

 

 

 

 

「どこから回るの?」

 

「どうしようか?」

 

「ただ屋台を回るだけじゃつまらない、ゲームしながら回ろうぜ」

 

「「ゲーム?」」

 

 俺の発言に二人が首を傾げる。

 

「そう。金魚すくい、輪投げ、射的、玉当てで一番成果を出した奴が勝ち」

 

「面白そうだね」

 

「うん、やろう」

 

「じゃあ、決定」

 

 最後に俺が一言告げると、俺たちは屋台の方へ走って行った。

 

 

 

 

 

「へへへ、甘いなジュニア」

 

「僕、三匹」

 

「私は二匹」

 

「俺は十匹だ。金魚すくいは俺の勝ちだな」

 

「悔しい」

 

 金魚すくいは大差で、俺の勝ち。こいつらもまだまだのようだな。

 

「そういえば、何で金魚貰ってこなかったの?」

 

「んっ、……ああ、貰っても育てるの面倒くさいしな」

 

「僕も似たような理由かな」

 

「そうなんだ。私は大事にするけど……」

 

 涼子は手に持っている金魚の袋を大事に抱えた。

 

「次は輪投げだな……ついてこれるか?」

 

「もちろん」

 

 俺とジュニアはその一言を告げると、勢いよく走り出した。

 

 

 

 

 

「くそ……勝てたの玉当てだけって」

 

「はっはっは、これで俺の勝ちは確定だな」

 

 俺はジュニアに向かって、大きく笑う。とても、大人げない。そして、俺はあることに気付いた。

 

「そういえば、涼子は?」

 

「あれ?さっきまで付いてきてたけど……」

 

「「……」」

 

 俺とジュニアは思わず、顔を見合わせた。

 

 アカン……。

 

「はぐれた?」

 

「そうみたいだね」

 

「マジか……。俺は輪投げの方を見てくるから、ジュニアは玉入れのところを頼む。とりあえず、見つけたら奥のお賽銭箱のところに集合な」

 

「分かった」

 

 俺とジュニアは、涼子を探すためそれぞれ行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 私がほかの屋台を見ている間に、二人は走ってどこかへ行ってしまった。私は必死になって、二人を探す。

 

「もう、どこ行っちゃったのよ……」

 

 私はひたすら、探す。しかし、一向に見つからない。私の目から涙が出てくる。

 私は男子にも負けない強い子なんだから……こんなところで泣かないもん。

 私は精一杯、涙をこらえた。

 

「……」

 

「おっ、やっと見つけた。ここにいたのか」

 

 すると、私の後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「勝手に……どこか行かないでよ」

 

「わりぃわりぃ、ちょっと興奮しちゃって」

 

 そこには、いつも私を……いや、私たちを導いてくれる男子……茂野亮太がそこにいた。

 

 

 

 

 

「ずっと、探してたんだから」

 

「ごめんって。今度ははぐれないように手でも、繋いでおくか」

 

「……」

 

 亮太は私に手を差し出してくる。私は無言で彼の手を取った。すると亮太は私の手を引き歩き始めた。

 

「しかし、どうして付いてこれなかったんだよ」

 

「……ほかの屋台見てた」

 

「なんだよ。言ってくれれば、止まったのに」

 

「んっ、まさか泣いてるのか?」

 

「泣いてないもん」

 

「本当か?」

 

「男子にも負けない強い子だから、泣かないもん」

 

「はいはい、すいませんでした」

 

 亮太は軽い感じで謝ってくる……バカ。すると、私はある屋台で止まった。

 

「……」

 

「んっ、もしかしてこの髪飾りが欲しいのか?」

 

 私の目に止まったのは、くじの屋台の景品の花柄の髪飾りだった。

 

「というかこれ、ハズレの景品じゃん。これがほしかったのか?」

 

「……うん」

 

 私は亮太の質問に、頷く。

 

「しゃあない、そこで待ってろ」

 

 亮太は私に一言告げると、屋台の方に行き、くじを引いていた……えっ?

 

 私は亮太の突然の行動に、驚いた。

 

「ほら、あげるよ。しかし、本当にこういうくじって当たらないものだな」

 

「……ありがとう」

 

「んっ?ああ、気にするな。今日の侘びだと思っていいよ」

 

 亮太にとってはくじのはずれくらいしか、思ってないだろうけど、私にとってはとても大切な宝物になった。

 亮太は再び、私の手を取って歩き出す。私には何故か、年下である亮太の背中がとても大きく感じた。

 

 

 

 

 

 暫く歩いていると、ジュニアの姿を見つける。

 

「おう、ジュニア。見つかったぜ」

 

「よかった、それとごめんね。……涼子大丈夫?」

 

「うん……」

 

 ジュニアが心配して、声を掛けてくる。私は静かに頷いた。

 

「これで一件落着。後は花火だな」

 

「もう、始まるみたいだよ」

 

「楽しみ!」

 

 私は先程までの迷子がなかったかのように、声を出す。

 そして、その声を出した同じタイミングで、花火が打ち上がった。

 

「きれい……」

 

「今日は楽しかったね」

 

「ああ」

 

 今日は色々あったけど、私にとっては思い出に残る最高の夏祭りだった。




すいません、オリ主とジュニア、涼子の年齢を変更しました。
オリ主とジュニアが一年生。涼子が三年生です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。