半端者の半生   作:八連装豆鉄砲

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二十一話

星の案内で寺の本堂へと案内されて行く。

 

その途中でさまざまな妖怪を目にする。殆どの妖怪は京の道脇にでも見かけるような弱小妖怪が占めているようだが、やはり中にはそれなりの妖力を持った強力な妖怪も居るようである。

今私の目の前を歩いている毘沙門天代理の虎妖怪も中々の妖力ではある。

しかし、何かどことなく抜けている風に感じるのは否めない…。

 

これで本尊代理など務まるのであろうか?と思えるのが正直なところ。

 

そんなとりとめのないことを考えていると不意に前の星から声がかかった。

 

「常葉さんは、京から来られたとおっしゃってましたが、元々京ではどう御暮らしになっていたんですか?」

 

この身なりはどう考えても百姓とかではないだろう、身なりで察すれば良いのに、とは思いつつそういう事は口にはさすがに出さない。少し立ち止まり京のある北側の空を見上げる。

 

「一応、これでも地下(じげ)の末席でしたから…。私は…」

 

◆◆◆◆◆

 

「…それで元々妖狐であった母上は小さい時に居なくなってしまいましたし、つい最近まで私を育てて下さっていた父上も先日亡くなってしまいましたので、京の邸にはもう居れなくなってしまったんです。

こんなに弱い妖力では、もし露見してしまったら自分の身すらも守れませんからね。」

 

同情を誘うように俯く。

 

「それで途方に暮れていた頃にこの寺の話をふと耳に入れまして、喪が明けたので決心して、それでこの寺に。」

 

真実と嘘を織り交ぜ言葉を継ぐ。

 

こういった嘘を吐く際には真実の中に自然に嘘を混ぜることで容易に嘘であるとは判らなくなる。

 

静かになっている星の方を向きなおると、

 

「すみません…、そんな事を無神経に聞いてしまって…。」

 

涙目になりしゅん、となっている星の姿があった。

先程の真実六割・嘘一割・話していないこと三割の身の上話が相当効いてしまったようだ。

 

「そんな、私が勝手に話しすぎただけですから…、お気になさらないで下さい。それにしても、寺ノ中にそれなりの数の妖怪が修行なさっているみたいですが、あまり、といいますか、全く人は居ないんですね?」

 

「え?、ええ…、つい最近までは人間のこの寺を信奉する方々も多く居て参拝にも来てはいらっしゃったのですが、隠れて妖怪を匿っているという噂が流れたみたいで、それでそれから人間の信者の方々は誰一人として来なくなってしまったんです…。」

 

「そ、それは、大丈夫なんでしょうか?」

 

白々しくならないように心掛ける。

 

「今のところ大丈夫みたいなんですが…。」

 

「…どことなく緊張感があると思ったら、そういうことだったんですね…。」

 

「はい…、とりあえず聖の所に案内しますね!」

 

聖?ここの住職だろうか?

 

「聖?さん?、というのはどなたなんですか?」

 

「ああ!すいません!聖というのは、この命蓮寺の住職をしている尼の聖 白蓮という方なんです!こちらにどうぞ!」

 

◆◆◆◆◆

 

星に続いて本堂の奥にある部屋の前に着いた、

すると星が、

 

「聖!居ますか!?」

 

と大きめの声で尋ねると、

 

「ええ、居ますよ、入っても構いませんよ?」

 

中から返事が返ってきた。

 

「では入りますね。」

 

と言って星は戸板を開けた。

中には濃紫で毛先が金色の変わった髪色の法衣を纏った心優しそうな女がいた。

 

だが晴明はその女を一目見て、師から聞いた住職があのとか命蓮とか言う聖のの姉だという噂に半ば確信に近いものを得た。

 

なぜならば目の前に居るこの尼を称する女は、すでに魔道に堕ちた人為らざる身であったからだった。

 

白蓮が此方に目をむけた刹那、怪訝な目を浮かべたがすぐにもとの慈愛に満ちた目に戻った。

 

「あら、そちらの方は?」

 

白蓮が星に尋ねる。

 

「この方は京から来られた狐の半妖の常葉さんです。」

 

「そう京から…。」

 

白蓮が呟く。

 

「星さんからも紹介が有りましたが常葉と申します。」

 

軽く会釈をする。

 

◆◆◆◆◆

 

「…それで信貴山に妖怪でも受け入れていただける寺があると風の噂で聞きましたので、こちらの寺に足を運んだのです。」

 

先程星に伝えた話を白蓮にもする。

感触は星程は良くもないが悪くはない。

 

「わかりました、それでは貴女のこの寺への入門を許可します。」

 

隣に座っている星が胸を撫で下ろした。

 

「ありがとうございます。これからよろしくお願いします。」

 

そう言って晴明は頭を下げた。

 

◆◆◆◆◆

 

先程、寺にやって来た常葉と言ったでしょうか、若い狐の半妖を思い出す。

 

長い黒髪の色白で線の細い、壷装束の女性。恐らく本当に京で暮らしていたのでしょう。

 

彼女の話はとても同情を禁じ得ないものであって嘘を語っているようには見えませんでした。

 

だが彼女の話の中には重大な懸念すべきことも有りました。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()です。

 

 

この寺に人が寄り付かなくなってまだそこまで期間は経っていません、京で例え噂が伝わっていたとしても、大きく広がることがなけれ良いでしょう。

 

ですが、()()()()()()()()、どうでしょうか?

 

寺に新しい方が入って来たことは良いことなのですが、さらに同時にかなり厳しい事態になっているようです。

 

「はぁ、何も起きなければ良いのですが…。

 

ナズーリンはどう思いますか?」

 

先程と別の方向の戸板が開く。

 

「気づいていたのかい?とりあえず私は、相手が狐だからあまり信用はしてないが、まずは京の動向が気がかりだね。」

 

「やはり、そうなりますね…。」

 

やはりナズーリンの言うように、この時期に来たことが少し引っ掛かりますね…。

 

 

 

 

 

 

 

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