インフィニット・ストラトス ~ぼっちが転校してきました~   作:セオンです

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第1話 そして彼はISに乗る

青春とは嘘であり、悪である。

青春を謳歌せし君たちは常に自己と周囲を欺く。

自らを取り巻く環境のすべてを肯定的に捉える。

何か致命的な失敗をしても、それすら青春の証とし、思い出の1ページに刻むのだ。

例を挙げよう。

彼らは万引きや集団暴走という犯罪行為に手を染めてはそれを「若気の至り」と呼ぶ。

試験で赤点を取れば、学校は勉強するためだけの場所ではないと言い出す。

彼らは青春の二文字の前ならばどんな一般的な解釈も社会通念も捻じ曲げてみせる。

彼らにかかれば嘘も秘密も、罪科も失敗さえも青春のスパイスでしかないのだ。

そして彼らはその悪に、その失敗に特別性を見出す。

自分たちの失敗は遍く青春の一部であるが、他者の失敗は青春ではなくただの失敗にして敗北であると断じるのだ。

仮に失敗することが青春の証であるのなら、友達作りに失敗した人間もまた青春ど真ん中でなければおかしいではないか。

しかし、彼らはそれを認めないだろう。

なんのことはない。

全て彼らのご都合主義でしかない。

なら、それは欺瞞だろう。

嘘も欺瞞も秘密も詐術も糾弾されるべきだ。

彼らは悪だ。

ということは、逆説的に青春を謳歌していない者のほうが正しく真の正義である。

結論を言おう。

 

ーーーリア充爆発しろ。

 

「おい比企谷。」

「な、何でしょうか。」

 

目が死んだ魚のように腐って、立っている生徒、比企谷八幡の目の前にいるのは、この女尊男卑が当たり前になったこの世界に置いて、最強と言われている女教師、織斑千冬が青筋を立てながら、1枚の紙を見ていた。

 

「貴様、爆発したいか?」

 

ギロリと八幡を睨み付ける。

 

怖いって後怖い。

 

そんなことを思いながら恐怖で押し黙っていると、千冬は盛大にため息をついた。

 

「ちなみに、比企谷このレポートのお題はなんだった?」

「ひゃ、ひゃい!」

 

盛大に噛んでしまった。

 

だって目の前にいるこの人めっちゃ怖いんだもん。

どれだけ怖いかって?

そりゃお前、肉食獣を相手にしていた方がいいって思えるレベルだぞ。

こういう人が行き遅れたりするんだよな。

 

「おい、なんか失礼なこと思ってないか?」

「そ、そんなことないですよ?」

 

ナチュラルに心を読まないでほしい。

 

「まぁそんなことはいい。それよりこれはどう言うことだ?」

「青春ということを書き綴ったレポートですが。」

 

千冬は頭を抱えながら、また盛大にため息をついた。

 

そんなにため息ついてたら幸せが逃げちゃうぞ。

あっ、だから…。

 

八幡がそこまで思ったところで再び千冬の死の宣告、凶悪な睨みを受けた。

 

やめて‼

僕のライフはもうゼロよ‼

 

「ったく…。とりあえず比企谷、今から言うことのどっちかを選べ。」

「出来ることなら。」

「よし、一週間後に織斑と模擬戦をするか、オルコットとするか、さぁ選べ。」

 

2択と思わせた1択でした。

ありがとうございました。

 

「どっちか選ばなきゃダメですか?」

「当たり前だろ。こんな舐め腐ったレポートに目の腐った生徒を教師である私が見過ごすわけないだろ?それとも何か?二人とやりたいのか。」

「喜んで選ばせていただきます。」

 

即答だった。

 

ばっか、二人とやったら泣いちゃうだろ、俺が。

当たり前だな。

 

気の進まない事ではあるが、選ばないと目の前にいる鬼教官に絞め殺されそうなので真剣に選ぶことにした。

織斑一夏。

男で初めてISを起動させた人物である。

今ではクラス委員をしている。

そして専用機は近接格闘型の白式。

実力はあのセシリア・オルコットを敗北一歩手前まで追い込んだほど。

だが、それでもIS自体の操縦技術は素人とあまり変わらない…はず。

そして次に、イギリスの代表候補生セシリア・オルコット。

専用機は遠距離射撃型のブルー・ティアーズ。

実力は言わずもがな。

だが、本人が自分自身の事をエリートと言っている辺り、プライドが相当高い。

ではその鼻っ面を叩き潰してしまえば、あるいはと言ったところ。

 

よし。

決まったな。

 

「決まったか?」

「えぇ。」

「どっちだ?」

「セシリア・オルコットとやります。」

「ほう。理由を聞いてもいいか?」

「いいですよ。選んだ理由は負けても特に自分へ不利になることはありませんし、それにビギナーズラックがあるかもしれないと思ったからですね。」

 

自分で言っといてあれだけど、ビギナーズラックはないわー。

マジないわー。

無さすぎて口調が可笑しくなっちまったじゃねぇか。

 

「わかった。なら、オルコットには私から言っておこう。」

「お願いします。」

 

そう言うと、八幡は職員室を後にした。

そして、職員室を出た瞬間、心の中で盛大にため息をつき、どうしてこんなことになったのか、つい最近の出来事を思い返していた。

 

***********************************************

 

総武高校へ入学する日だったあの日、八幡は犬を助けた事で交通事故を起こしてしまい、入学早々、ぼっちな高校生活が確定した。

その後、退院しようやく高校へと登校することが出来たその日、なぜかIS適性のテストが行われる時であった。

それについては八幡は知っていた。

何故なら、今では知らない人はいないとされるほど世界で初めてISーインフィニット・ストラトスを起動させた男がいると、世間が騒いでいる。

 

ちなみに俺はそれを小町から聞いた。

 

という訳で他にも男でISを起動できるやつがいるんじゃね?

って感じで世界単位で調査を開始した。

だが、見事に誰にも反応を見せなかった。

そう、女性にしか反応のしないISに男が乗ること事態、おかしいことなのだ。

だが、どこにでも例外、イレギュラーな存在はいるもので、どうせ起動しないとわかっていながら、日本の量産機である打鉄に触れた瞬間、起動させてしまった。

そしてその後は黒いスーツに身を包んだ人達に囲まれ、リムジンに乗せられ、家に強制送還させられた。

 

いやまぁ、今日の授業は終わったからいいけどね?

でももう少しゆっくり家に帰りたかった…。

 

家に帰ってからは、何故かIS学園の関係者が両親が帰ってくるまで家におり、小町が「お姉ちゃん候補がいっぱいだよ‼小町的にポイント高いよ‼」てな感じで騒ぎになり、そして両親が帰ってきたと思ったら、勝手に転校手続きをし始めた。

 

うん…。

とりあえず誰か俺の意思を尊重して?

そうじゃないと泣いちゃうよ、全俺が。

 

という訳でIS学園へ転校したのだが。

転校してきたやつは俺以外にも一人いた。

 

「今日は転校生を紹介します。」

 

1年1組の副担任、山田真耶がそう言うと、扉が開きそこから二人の少年が入ってきた。

一人は金髪の美男子、もう一人は目の腐った気だるそうな男子。

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不馴れなことが多いかもしれませんが、皆さんよろしくお願いします。」

 

にこやかにそう自己紹介した。

それを見ていた八幡は、こう思った。

 

守りたい、この笑顔。

なにこの生き物。

めっちゃ可愛い。

ヤバイ。

何がヤバイってヤバイぐらいヤバイ。

ヤバイ、ヤバイしか言ってないよ俺…。

 

その時、不意に声がした。

 

「……谷‼比企谷‼」

「ひゃいっ‼」

「早く自己紹介せんかバカ者。」

「はい…。」

 

うわぁ…俺もしなきゃいけないの?

それ誰得だよ。

いやマジで。

まぁ、いいや。

っていうかいつからいたの?

 

「えっと、比企谷八幡です。よろしくお願いします。」

 

無難な挨拶と共に軽く礼をする。

教室の中がやけに静かだったのだが、八幡は気にした様子もなく、目の前にいる男子生徒、織斑一夏にこっそり目を向ける。

その瞬間、八幡は悟った。

 

うわぁ…こいつリア充じゃん。

なに今年1年こいつと一緒のクラスなの?

死んじゃうよ俺が。

何でって、そりゃお前ストレスでだよ。

決まってんだろ。

 

そんなことを思っていると…。

 

「「「「「キャーーーーーー!!!!」」」」」

 

いきなりだったので八幡は一瞬体がビクッと動いた。

 

え?何?

俺の目が腐ってるからって皆ビビりすぎじゃない?

 

ところが、クラスの反応は八幡の思っていたのと全然違っていた。

 

「男子‼それも二人‼」

「しかもうちのクラス‼」

「しかも守ってあげたくなる系とヤサグレ系‼」

「私、このクラスでよかった!」

「比企谷くん、私を罵って‼」

「デュノアくん、優しく抱き締めていい!?」

 

一気に教室がカオスとなる。

呆然とする八幡と苦笑いを浮かべるデュノア。

そんな彼を見ながら、八幡は思う。

 

可愛い。

マジ天使。

小町と同等以上に可愛い。

 

そんなことを思っていると、千冬が手を打ちならして場を沈めにかかる。

 

「静かにしろお前ら!これから2組と合同で実技訓練を行う。全員第2アリーナに集合。以上解散!」

 

そう言い終わるのと同時に、一夏は八幡達のところへやって来る。

それに気づいたシャルルが一夏に挨拶しようとするが。

 

「そう言うのはまた後からな?まずは移動が先だ。女子が着替え始めるから。」

 

そう言うと、一夏は八幡とシャルルの手を取り、教室から出た。

 

いきなり手をとるなよ。

友達かと思っちゃうだろ。

あ、でもデュノアの赤くなった顔可愛い。

マジデュノア天使。

養ってくれないかな。

 

そんなことを思っていると、周りに女子が集ってくるのが見えた。

 

「おい、なんか周り人多くねぇか?」

「そりゃあ俺たちが男子だからだろ?」

「なるほどね。要は俺らは客寄せパンダみたいな感じってことか。」

「例えがなんか嫌だけどそう言うことだな。」

 

一夏はそう言うと、少しペースをあげながら走っていく。

前から後ろから女子が集ってくる。

 

マジ怖い。

これだけでトラウマになるレベル。

羨ましい?

バッカお前、飢えた獣の目をして、逃がさないと言わんばかりに追ってくるんだぞ?

 

そんなことを思いながらも走っていき、目的地についた。

ここが俺らの着替えるところだ。

と、そう一夏は言った。

場所はアリーナの更衣室と言ったところだ。

なかなか広い。

シャワー室なんかもある。

八幡が辺りを見渡していると一夏から声をかけられる。

 

「とりあえず、早く着替えようぜ。千冬姉を怒らすと怖いからな…。」

 

そう言われ、服を脱ぎ出したのはいいが、なにやらデュノアが顔を真っ赤にしてこっちを見ている。

八幡はなんとなく声をかけた。

 

「どうした?」

「え!?あ、いや、何でもないよ!?」

「そうか。」

 

八幡は服を脱ぐと、水着のようなISスーツを着る。

黒のISスーツに着替え、後ろを振り向くとすでに着替え終えているデュノアの姿があった。

 

「早いな、シャルル。」

 

一夏がそう言うと、デュノアはわざとらしく笑いながらこう答えた。

 

「そ、そうかな?」

「俺なんか下が引っ掛かってなかなかはけないんだよな。」

「引っ掛かる!?」

「引っ掛かるよな?八幡。」

 

おい、いきなり名前呼びすんなよ。

友達と思っちゃって思いっきり引かれるところだったじゃねぇか。

だが、俺はそんなことは思わない。

最強のぼっちだからな。

 

「まぁな。ところで、時間は大丈夫なのか?」

「え?ヤバッ!二人とも早く行こうぜ。」

 

八幡は一夏に頷き返すと、デュノアの方に顔を向ける。

 

「行くぞ。」

 

短くそう言って一夏の後を追いかける。

しばらくすると、デュノアが待ってよと言いながら小走りにやって来た。

 

いくらでも待っちゃう‼

この先ずっと待つまである。

 

3人は第2アリーナに着くとそこにはすでに大半の生徒が集まっていた。

八幡は並ぼうと最後列へ行こうとしたのだが、千冬に呼ばれ渋々そちらに向かった。

 

「比企谷、お前にはこのISに乗ってもらう。山田先生。」

 

山田先生は他の教員とISを装備して、コンテナを運んできた。

そこには、比企谷八幡専用機と書いてあった。

 

「先生、これは?」

「お前の専用機、朧夜だ。」

 

コンテナが開き、中から漆黒のISが出てきた。

八幡はそれを見て、少し高揚を覚えた。

だがそれを隠し、千冬に質問をした。

 

「先生、ちょっと早くないですか?」

 

千冬は八幡が何が言いたいのか、何を思っているのかわかったような感じで頷いた。

 

「あぁ。確かに一週間位しか経ってないしな。お前がISを起動できると分かってから。」

「だったらなぜ?」

「元々、この朧夜は開発されたのはいいが、乗り手がいなくてな。そこで、白羽の矢が比企谷にたったというわけだ。」

 

なんとなくはわかった。

だが、なぜ自分に専用機を与えるのか、それがわからない。

 

「ちなみに、お前が専用機を持てたのは、男のIS操縦者のデータが欲しい、からだそうだ。」

 

つまりモルモットになれと言っているようなものだ。

あまり気は進まないが、貰えるものは貰っておこう。

 

「わかりました。」

「よし。だったら朧夜に触れてみろ。」

 

言われた通り、朧夜へ右手を差し出し、触れてみる。

するとそこから光が発し、頭の中に記録とも言える何かが駆け巡っていき、そして、八幡の体にISが装着された。

全身は漆黒で、所々に黄色のラインが走るわりと軽そうな見た目だ。

そして、八幡の顔は口許が出ている以外、隠されていた。

 

「比企谷、初期化と最適化のやり方は分かるか?」

「たぶん。」

「ではやっておけ。」

 

そして千冬は八幡のもとを離れ、生徒達の元へ歩いていき、何やら色々やっていた。

一方で八幡は単純に見えそうで決して単純ではない初期化と最適化をやっていた。

どれだけ時間が経っただろうか。

ようやく初期化と最適化が終わり、体に馴染んできた気がする。

これをファーストシフトと言うんだとか。

 

「終わったか。」

「はい。どうにか。」

「よし。では、凰‼」

「はい。」

 

八幡はこの少女を知っていた。

中国の代表候補生、凰鈴音。

専用機、甲龍を駆る努力家。

なぜこの事を知っているのかは、今はまだ秘密なのだが。

 

「では凰、比企谷と模擬戦をしろ。」

 

は?

今この人なんて言った?

ハチマンヨクワカラナイ。

 

「何でですか?」

 

凰よ、それは俺の疑問である。

 

「朧夜の機能性を見たいだけだ。」

 

えぇ…。

ただ自分が見たかっただけかよ…。

 

口許しか出ていないが、八幡の顔はすごい嫌そうだった。

 

「なんだ、その顔は。」

 

千冬に睨まれる。

八幡は咄嗟に顔を背ける。

大量の冷や汗をかきながら。

 

「異論、反論、抗議、質問、口答えは一切受け付けないからな比企谷。」

 

比企谷はため息をつきながら諦めたように頷いた。

 

「わかりましたよ。」

「よし。ではこれより比企谷と凰の模擬戦を始める。他の者は離れてよく見ておけよ」

 

八幡と鈴はアリーナの中央辺りまで進むと相対した。

八幡は敵のスペックを目の前に写し出されているものを見ていた。

 

甲龍、か。

左右の翼にある龍砲が厄介だな。

ただ、何とかなるか?

いや、まぁここは無難に機体の性能を見せるだけでいいだろう。

 

八幡はそう思い、甲龍のスペックデータを消した。

 

「二人とも準備は出来たか?」

「はい。」

「もちろんです。」

「では、始め‼」

 

その声と同時に鈴は2本の青竜刀、双天牙月を取り出す。

それを見た八幡は背中についている3基の流星を鈴に向けて放つ。

それぞれが独自の動きをし、鈴を取り囲む。

そして、その先端からビームが放たれる。

 

「え!?何よこれ‼」

「見て分かるだろ?ビットだよ。」

 

八幡はそう言うと、狙撃用ビームライフル、彗星を取り出し、鈴から距離を取り、その銃口を向ける。

そして一閃。

ビームが空を裂く。

鈴は何とかそれを避けるが、その先には流星が控えていた。

そこからもビームが空を凪ぐ。

鈴は苛立ちを隠せなかった。

近寄ることさえできず、あまつさえブルー・ティアーズでさえできない他の攻撃をいとも容易くやってきた。

 

「あんたそれってセシリアと同じBT兵器じゃないの!?」

 

その叫びはセシリア達のいるところまで聞こえていた。

そしてそれはセシリアも同じ事を感じていた。

 

あれはいったい何ですの?

わたくしと似たような兵器であることは確実です。

ですが彼の攻撃はビットと連携ができています。

そんなのはわたくしの中ではあり得ませんわ。

何故ならわたくしのブルー・ティアーズがいい例ですわ。

ビットを展開しているとき、それに集中するため、他の攻撃ができませんわ。

それが弱点のはずです。

ですが、今彼は普通に攻撃しましたわ。

ということはその弱点を克服した、と言うことなのですね。

厄介ですわね。

 

結論を出したのと、八幡が口を開くのはほぼ同時だった。

 

「あんまりベラベラしゃべるもんでもないが、この流星は第三世代型ISのBT兵器を参考にして、創られた自動追尾システムを搭載したビットだ。つまりは自分で制御させなくとも対象者へと攻撃する時と、自分のもとに戻すときに命じるだけで攻撃の時は勝手にやってくれるってことだ。凰、質問は以上か?」

 

そう言うと、八幡はビットを背中に戻し、武装を変換させた。

十六夜と朔光を装備し、鈴へ肉薄する。

十六夜は普通の刀だが、朔光はエネルギー刃の剣だ。

両方とも特に特殊能力はない。

 

「行くぞ。」

 

刀と剣の猛攻に鈴は防ぐことしかできない。

 

「くっ‼」

「どうした、中国の代表候補生。」

 

八幡は挑発の意味を込めそう言うと、鈴が反撃してきた。

それは不意討ちだった。

 

マジかよ。

やっぱ強ぇな…。

でもーー

 

「星影。」

 

八幡はそう呟くと、左から切りつけてきた青竜刀が受け止められた。

 

「何!?ビームシールド!?」

 

鈴の驚いた顔が八幡の目の前に浮かぶ。

一瞬、隙が出来たそれを狙って八幡は右に持っていた十六夜を鈴へと切りつける。

 

「きゃあ‼」

 

さて、ここでもう1つ見せておくか。

 

八幡は十六夜と朔光を戻し、サブマシンガンの新星を右手に持ち、鈴へ銃口を向け、無慈悲に撃つ。

すると、やけくそになったのか、鈴が龍砲を放つ。

 

マジかよ。

あれって無茶苦茶痛いんだろ?

当たったら死んじゃうって、マジで。

 

八幡は何とか回避する。

そして左手にオートマチックガンの鬼星を持ち、肉薄する。

そして、サブマシンガンで滅多打ちするが、鈴が距離をとって離れていった。

 

「あんた、なかなかやるわね。」

「まぁな。ちょっと短期間で色々叩き込まれたからな。」

「へぇ、でも、これで終わりよ‼」

「あぁそうだな、終わりだな。」

 

そう言うと八幡は背中の流星を消すと、そこに現れたのは、ずいぶんと砲身の長くデカイランチャー、月華を呼び出した。

そして、鈴へとその銃口を向ける。

ビームが収縮していくところを見ながら鈴は恐怖を覚える。

本能があれを受けたらヤバイ。

そう告げている気がした。

 

「行くぞ。」

 

そう言うと、足からパイルバンカーが出てきて地面に突き刺さる。

その姿はまるで固定砲台の様であった。

そしてーー

 

「ファイア‼」

 

その叫びと共にビームの奔流が空を焼く。

だがそれは、鈴のすぐ横を流れていった。

 

「あ…。ヤバッ…。」

 

八幡のそんな間抜けな声がしたと思ったら、鈴が急降下。

そして動けなくなっている八幡に怒濤の攻撃を仕掛け、鈴が勝利した。

 

「そこまで‼勝者、凰鈴音。」

 

勝者宣言があっさりと出る。

それを受けて八幡は盛大にため息をつき、空に目を向ける。

 

負けちゃったよ…。

まぁ、いいけどね。

負け惜しみじゃないよ?

ほんとだよ?

 

そんなことを思っていると、鈴がISを待機形態にすると、こちらに歩み寄ってきた。

 

「ちょっと、最後のは何?あれヤバイ気しかしないんだけど。」

「あぁ、あれか。超高火力のビームキャノン、月華だが?」

「そんなことを聞いてるんじゃないの‼何で動けなかったのかを聞いてるの‼」

「バッカお前、あんな高火力なランチャー撃ったら無事じゃすまねぇって。しかもほぼ全てのシールドエネルギー消費しちまうしな。」

 

そう、あれは一撃必殺であり、こちらのシールドエネルギーがなくなる諸刃の剣なのだ。

だからこそ、あまり使いたくはなかったのだが、今回はその性能を確かめるための模擬戦だ。

使うしかないだろう。

だからといって直撃させてしまっては鈴の命に関わるかもしれない。

そう、それでわざと外した。

威力を見せるだけならそれだけで十分過ぎるからな。

 

「そう。ということは、雪片弐型のシールドエネルギーを消費して発動するワンオフアビリティーの零落白夜みたいなものね。でもよくそんなのがあって拡張領域がいっぱいにならないわね。」

「まぁな。白式は第一形態からワンオフアビリティーを発動できるからであって、俺の朧夜はそんなことないからな。ま、と言ってもどんなワンオフアビリティーなのかは知らんが。」

 

実際知らない。

わずかなときとはいえ、さすがにこれからどうなるかは設計者でさえ知らないという。

そんなので大丈夫かとは思ったが、実際IS何てのは不思議なパンドラの箱の様なものだ。

完全に説明がつかないのは分かる。

 

八幡はISを待機形態にすると身体を少し伸ばす。

左腕をチラリと見るとそこにはバングルとして朧夜がはめられていた。

 

そして、何やかんやあった後、今に至る、というわけだ。

っていうか何で作文を書かされたのかよくわからんな。

まぁいいや。

さて、帰るか。

 

そう思うのと同時に寮に向かって歩いていった。

 

 




という事で始まりました。

これから亀更新かもしれませんが、投稿していくのでよろしくお願いします。

誤字脱字があれば指摘してください。
ですが、酷評だけはマジで勘弁してください(笑)

という事で頑張ります。

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