インフィニット・ストラトス ~ぼっちが転校してきました~   作:セオンです

10 / 28
夏休み編Part2です、はい。

前回から話は続いております。

って言うか、八幡が八幡じゃなさ過ぎて僕も驚いてます。
でも、投稿しちゃいます!

では、どうぞ。




第10話 彼は16度目の誕生日を迎える

八幡が起きると、外はもう大分暗くなっていた。

スマホを手に取り、時間を確認する。

結構いい時間だった。

 

…起きるか。

 

そう思いはするが、なかなかベッドから出られない八幡。

 

俺は悪くない。

このすべすべで少しひんやりした夏用シーツがいけない。

気持ちいいから出たくなくなる。

 

モゾモゾとしていると、部屋の扉が開いた。

そこからジメッとした空気がクーラーの効いた部屋に入り込んできて、少し不快感を感じる。

 

「お兄ちゃん、起きて。晩御飯出来たよ。」

「おう。いつもすまないねぇー。」

「いいよ。だらしないし、捻くれてるし、屁理屈言うけど、小町の好きなお兄ちゃんのためだからね。あ、今の小町的にポイント高い!」

「俺も小町の事好きだぞ。好きすぎて愛してるレベル。あ、今の八幡的にポイント高い。」

 

八幡はそう言いながら、ベッドから抜け出し、熱い廊下に出て、リビングへと向かう。

そして、リビングの扉を開けると、突然、発砲音が響いた。

八幡はいきなりの事でビクッとなり、硬直する。

それと同時に八幡の頭に細長い紙が乗っかる。

 

「「「「「「お誕生日おめでとう‼」」」」」」

 

八幡は目の前にいる6人を見ながら、今だ混乱している頭を稼働させようとしていると、後ろから肩を叩かれ、思考が停止する。

肩を叩いたのは小町だった。

 

「お兄ちゃん、今日は何の日か知ってる?」

「は?え?何?」

「やっぱり。」

 

納得し、笑っている小町を見て、今日が何の日だったか考えるが、特にめぼしい答えは見つからない。

 

「今日はお兄ちゃんの誕生日でしょ。」

「は?そうだっけ?」

 

誕生日?

そう言えばそうだったような。

 

「何言ってるの。今日は8月8日だよ?」

「そうだったな。これは友達の友達の話だが、そいつだけが呼ばれなかった誕生日会。そいつが参加した誕生日会では、自分のためかと感動していたら同じ日に生まれたクラスメートのために歌われていたバースデーソング。名前が間違ってる誕生日ケーキ。って言うか最後、母ちゃん何やってんだよ。息子の名前間違えるなよ。俺の誕生日はトラウマの誕生とか。ちょっと傷ついちゃうだろ。」

「お兄ちゃん…みんなの前でトラウマ公開しなくていいから。」

 

おっと、自分の心の中だけに留めておくつもりが、口に出ていたぜ!

……何かテンションがおかしいから、落ち着くために一句読むことにしよう。

病気かな?

病気じゃないよ

病気だよ

…これは病気ですね。

もう一句詠んでる時点で病気。

何かデジャヴ…。

ってか以前にこんなこと言った覚えないんだけどね。

 

そんなことを考えながら、目をさらに腐らせていると、背中を押される感覚がした。

 

「そんなことはどうでもいいから、はい、席について。」

 

強引に座らされた後、目の前にケーキが置かれた。

そこにはHappy Birthday 八幡!と書かれていた。

 

お、名前間違ってない。

 

変なところで感動してしまった八幡。

 

「これは僕が作ったんだ。」

 

ケーキを眺め、若干感動している八幡にシャルロットが声をかけた。

 

「マジか。すげぇな、これ。」

「ありがとう。喜んでくれて嬉しいよ。」

 

飛びっきりの笑顔で答えられ、顔を赤くしながら目を背ける八幡。

そんな姿が可笑しかったのか、周りは微笑んでいた。

 

「さて、では火を着けるとするか。」

 

箒が蝋燭を立てていき、それにラウラが火をつけていく。

 

おお、はじめての体験だから知らんけど、自分の誕生日を祝われるのってこんなに感動するものなのか?

いや、マジで。

 

火をつけ終わると、小町が部屋の電気を消すと、辺りが暗くなる。

だが、蝋燭だけは仄かに暖かい灯りを照らしていた。

そして、あのバースデーソングを合唱していた。

八幡は妙な照れ臭さと、感動で皆から目をそらす。

 

本当に、こいつらは…。

俺はこいつらと一緒に過ごしていきたいな…。

 

柄にもなく、そんなことを思い、今年の誕生日は初めてトラウマが生まれなかった。

その事を嬉しく思いながら、目の前にいるやつらに目を向け、歌が終わるのと同時に、蝋燭の火を吹き消した。

一息で消すことが出来、八幡は何となくよかったとか思いながら、心の中で感謝をした。

 

本当に、ありがとう。

 

「よし、じゃあ八幡、俺からプレゼントだ。」

 

一夏が八幡の目の前に笑顔で小さい箱を差し出す。

 

「お、おう。サンキュー?」

「何で疑問系なんだよ。」

「しょうがねぇだろ。慣れてねぇんだから。」

 

顔をそらしながら、一夏のプレゼントを受けとる。

そのそらした顔は嬉しそうであった。

 

「じゃあ私たちからもあげるわ。」

 

鈴がそう言うと、箒、セシリア、シャルロット、ラウラが八幡の前に立つと、一人ずつ渡していく。

 

「比企谷、気に入るかは知らんがこれ。」

「お、おう。」

 

箒はぶっきらぼうに、尚且つ押し付けるように渡すと少し目をそらす。

八幡は呆気に取られながらも受けとると、箒の態度に少し笑みを浮かべる。

 

「では、次はわたくしですわね。八幡さん、これをどうぞ。」

「八幡さん…?まぁ、いいや。サンキュー?」

 

少し大きめの箱を笑顔で渡す。

八幡はセシリアに名前で呼ばれ、驚きつつも受け取る。

 

「じゃあ次は私ね。ほら、受け取りなさいよ。」

「おう。えっと…何だ、サンキューな。」

 

言葉とは裏腹に優しく差し出す鈴。

八幡は少し吃りながらもプレゼントを受け取る。

 

「八幡、僕からも、プレゼント!」

「サンキューな。ケーキも作ってもらって悪いな。」

「いいよ。僕がやりたかっただけだから。」

 

シャルロットは少し元気よさげにプレゼントを八幡に渡す。

八幡はプレゼントとケーキのお礼を共に言うと、顔を少し背ける。

その顔は赤く染まっていた。

 

「嫁よ。私からのプレゼントだ。」

「…何だこれは。」

「指輪と言うものだが?何だ、嫁はそんなこともわからないのか?」

 

ラウラはくすりと笑うと、八幡にそれを差し出す。

八幡は受け取るべきかと悩み、小町の方を見るが、小町はにっこり笑顔だった。

 

ボーデヴィッヒさんのプレゼント重いよ。

それと小町ちゃん、何で笑顔なの?

受け取ったら怖いんだけど。

受け取らなくても怖いんだけど。

どうしたらいいかわからないよぉ~。

 

「安心しろ。高いものじゃないからな。それに、私は渡したいんじゃなくて貰いたいのだ。」

 

モジモジしながら顔を赤くして、八幡の方へ目を向ける。

 

何でそんなにモジモジしてるの?

デュノアさんがこっち睨んでるんですが。

怖い、怖い、怖い。

後怖い。

 

「いや、安心できんのだが…。」

「そうか…。私のプレゼントは受けとれないのか…。」

 

落ち込むラウラを見て、八幡は少しオロオロする。

 

「いや、その、何だ、サンキューな。」

 

結局受け取るしかなかった。

 

何で受け取ってしまったんだ?

まさか、俺は落ち込んだ相手とかの頼みは断れないのか?

なにそれ俺性格良すぎ?

 

八幡は全員から貰ったプレゼントを自室に持っていき、机の上に置く。

そこへタイミングよく小町が部屋に入ってくる。

 

「お兄ちゃん。」

「何だよ。」

「どう?」

「まぁ、良いんじゃないか?」

「何でそこで疑問系…。」

 

少し項垂れる小町を見ながら、近づいていく八幡。

 

「これを企画したの、お前だろ?」

「バレた?」

「ったく、余計なことを。」

「いいじゃん。小町は、あの人たち好きだな。真っ直ぐで、お兄ちゃんの事をわかろうとして、近づこうとしてる。だから、小町はそのお手伝いをしたかったの。ダメだったかな。」

「…ありがとな。ちょっと…いや、だいぶ嬉しいわ。」

 

確かに慣れてないし、まだ俺自身が完全に信じているわけでもない。

でも、それでも、あの蝋燭の火のように呆気なく消えるような希望の光でも、そこにあるのなら手を伸ばしたい。

その手伝いを小町がしてくれたのだ。

だったら俺は、それを断る理由も、拒否する理由も、何もない。

それに、裏切られたら小町に癒してもらえるだろうしな。

 

「そっか。って言うか最近お兄ちゃんのひねくれ具合が無くなってきて、お兄ちゃんがお兄ちゃんじゃないみたい。」

「何言ってんだよ。俺は俺だ。人間早々変わるもんじゃねぇよ。」

「そんなことないよ。お兄ちゃんは変わったよ。ずっと見てきた小町だから、一緒に過ごしてきた小町だからわかることなんだよ?」

「そうか。」

「うん、そうだ。」

 

二人は顔を向け合い、微笑む。

 

確かに変わったのかもしれない。

他人だと言われても、しょうがないと思う。

チョロいって言われても仕方がないとも思う。

でも、例えそうだとしても、裏切られるかもしれないし、あいつらが影で何か言ってるかもしれない。

それでも俺は俺の信じた道を突き進む。

それに、せっかく小町が背中を押してくれたんだ。

答えなきゃ、カッコ悪いとこ見せることになっちまうだろ。

 

心の中でそう宣言すると、小町の頭に手をおき、リビングへ戻ろう。

そう言って離れようとした。

だが、それは小町に袖を掴まれ、出来なかった。

 

「小町?」

「お兄ちゃん、これ。」

 

小町はポケットから小さな箱を差し出してきた。

八幡はそれを受け取り、吃りながらも感謝の言葉を言う。

 

「その、何だ?ありがとう?」

「何で疑問系なの?小町的にポイント低いよ。」

「うっせ。慣れてねぇんだよ。」

 

頭を掻きながら、照れた顔を見られないように背けていたが、小町はバッチリ見えていた。

小町はそんな彼を見て、優しい笑みを浮かべて、心の中でこれからも頑張って、とエールを贈った。

その後、二人はみんなが待つリビングへと戻っていくと、人数が少しおかしかった。

数えると二人多い。

 

「あ、はちくんだ。お誕生日おめでとう‼何か欲しいものはある?あ、欲しいものって本物だったっけ?手に入るといいよね。私もはちくんと本物が欲しいな~。」

「へぇ、八幡くんは本物が欲しいのか~。おねぇーさん初めて知ったな~。」

「は?何で二人が?って言うかそれ、忘れてください。」

 

イヤマジで。

篠ノ之博士にあれを言った後、何であんなこと言っちゃったのか悶絶しちゃってたから。

あれはものすごい黒歴史だから。

だから生徒会長、聞かなかったことにしてくださいね。

って言うか二人とも何で知ってんの?

それよりどうやってここに来たの?

 

八幡の疑問よりも『本物』に食いついた二人だったが、束は案外早くそれを話題から外した。

と言ってももう一人は追求してきたが。

 

「えー何でさー。ま、いいや。」

「私はもう少し聞いちゃうぞ。」

 

僕は今すぐにでも逃げちゃうぞ。

こう見ると、篠ノ之博士が天使に見える。

うん、生徒会長はこれから悪魔って言おうかな。

 

束はそう言うと、箒のもとへ行き、出されている料理の数々を食べている。

一方の楯無は八幡にすり寄ってくる。

 

ちょっと?

何近寄ってきてるの?

何も言わないよ?

 

その時、八幡の腕が引かれ、廊下に連れ出された。

 

「お兄ちゃん、あの水色の髪の美人さん誰!?新しいお姉ちゃん候補なの?」

「違うから。あの人は更識楯無生徒会長。IS学園最強の人。」

「ふーん。」

 

小町はそう返事すると、中に入っていき、楯無と会話していた。

 

ちょっと小町ちゃん?

その人は危ない人だから、会話しちゃダメだよ?

主に俺が犠牲になるから。

 

心の中で小町にそう言うが、その言葉は届かない。

諦めて八幡は料理に手を伸ばそうと、そちらに顔を向ける。

 

って言うか今気づいたんだが、誕生日会の料理ってクリスマスとおなじなの?

何かすごいんですけど。

って言うか、誰が作ったのかわからんけどすごく旨そうなんですけど。

 

八幡は一人で料理に手を伸ばし、口に運ぼうとしたとき、シャルロットの視線を感じた。

 

デュノアが作ったやつなのか?

 

そう思いつつも口に運び、食べる。

 

「ね、ねぇ、それどう?」

「普通に旨いな。」

「そっか、よかった。」

 

ホッと胸を撫で下ろしているシャルロットを見つつ、箸が進んでいく。

 

旨いな。

小町の方がちょっと勝ってるか?

ま、何にせよ旨いからいいや。

 

そんなこんなで時間は過ぎていき、夜が更けていった。

後から聞いた話だが、束も楯無も玄関から入ってきたらしい。

 

…気付かんかった。

って言うか他のやつらは何にも言わなかったのかよ。

…言っても二人が帰るわけないか…。

 

*********************

 

いつの間に眠ってしまっていたのだろうか。

小町は目を擦りながら顔を上げ、昨日の八幡の誕生日会を思い返していた。

あれからシャルロット、箒、鈴の三人が作った料理を食べつつ、ゲームをして遊んで、楽しい時間が過ぎていった。

何だかんだで八幡もぶっきらぼうで、いつものように何でもないような顔をしていたが、小町は八幡が楽しんでいることを見抜いていた。

 

お兄ちゃんの楽しそうな顔久しぶりに見た気がする。

よかったね。

お兄ちゃんが欲しいもの、手に入るかもね。

 

そう思いながら、小町は立ち上がり、八幡を探す。

探すまでもなく、ソファで座って寝ている姿を見つけた。

 

「お兄…。」

 

声をかけようとしたが、八幡の左右の肩に頭を乗せているシャルロットとラウラの姿を見て、声をかけるのを止めた。

それによく見ると、足元には束、楯無の二人が頭を向けあって寝ていた。

小町は携帯を取り出し、カメラモードにする。

 

「よかったね。本物、近くにあるじゃん。」

 

そう言いながら、五人をフレームの中にいれ、シャッターを押す。

 

「はい、ぴーなっつ。」

 

そこには、幸せそうに眠っている五人の姿が納められていた。

その後、その写真を見せると、顔を真っ赤にして、シャルロットとラウラはあたふたしていたそうだ。

束と楯無はその写真を欲しいと小町に詰め寄り、八幡にはすぐに消すように言われた。

 

こうして、八幡16歳の誕生日は小町と楯無の危険な組み合わせが完成したり、騒がしさに包まれながら誕生日会は終わった。

 

 




誤字や脱字があれば指摘してください。

楯無さんと小町ちゃんが会っちゃいましたね。
束さんの事スルーなのは、後に説明します。
なのでお楽しみに。

という訳で、また次のお話でお会いしましょう。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。