インフィニット・ストラトス ~ぼっちが転校してきました~ 作:セオンです
もうしばらくは文化祭が続くのでご了承下さい。
そして、本当に今更ですがキャラ崩壊してますので、その点もご了承下さい。
では、どうぞ。
今の状況を説明しよう。
二日間の文化祭初日、ファントム・タスクの襲撃により、一時混乱となったが、すぐにその混乱は収まり、今では普通にクラスでの出し物をしているし、部活に入ってるやつは部活の出し物の方に行っている。
そんななかで俺は、生徒指導室に織斑先生と一緒にドキドキしながら座っている。
何でドキドキしてるかって?
そりゃお前あれだよ、殺されるかもしれないのにドキドキしない方がおかしいだろ。
そんなことを考えながら、八幡は千冬と対面しあう形で机を挟み座っていた。
まるで事情聴取を受けるような形であるが。
「それで、何か言うことはあるか?」
「な、何がでしょうか。」
「お前、勝手に戦闘したな。それに、貴様は私たちとの通信まで切って、さらには私の指示を聞かずに勝手にしたが、いい度胸してるな。」
「いえ、これはですね、事情がありまして。」
「ほう?言ってみろ。」
「まず第一にですね、織斑が目の前でいなくなりまして、それで探していたら戦闘に巻き込まれまして、それで仕方なく交戦してました。第二に、現場の状況から判断して別にいいかなと思い、織斑と篠ノ之を応援に向かわせました。」
一通り早口で捲し立てるように事情を説明すると、千冬は静かに足を組み直し、八幡を睨み付ける。
いや、だから怖いって。
そんなに睨み付けてももう俺の防御力はとっくにゼロだから。
むしろ防御力どころかHPまでゼロになってるまである。
「そうか。なら、もし怪我人がいたら責任は取れたか?」
「…すいませんでした。」
その言葉を聞いて、地面に正座し頭を下げる、見事なまでの流れ作業で土下座をした。
ヤバイ、土下座までの動きがスムーズ過ぎてヤバイ。
何がヤバイって、土下座世界選手権があったら金メダルとれちゃうぐらいヤバイ。
…色々ヤバイな。
そんな事を考えながら頭を下げ続けていると、頭上から千冬のため息が聞こえた。
「まぁ、いい。とりあえず、今日はグラウンドの整備な。」
「え、マジですか?」
「何だ?文句あるのか?」
「ありません。喜んでやらせていただきます。」
ギロリと睨まれ、八幡はすぐにそう言うと千冬に背を向ける。
え?手の平返しが早いって?
バッカ、お前ブリュンヒルデを怒らしたら、俺の命がいくらあっても足りないぞ。
って言うか俺は誰にいってるんだ?
八幡は失礼しますと言って退室すると、いつの間に戻っていたのかは知らないが、生徒と外部から来た人たちが学園祭を楽しんでいた。
八幡はクラスに戻る気になれず、グラウンドの整備をしようと、足を出したとき背後から名前を呼ばれた。
「比企谷くん。」
おい、比企谷くんとやら呼ばれてるぞ。
…俺か。
八幡は後ろを振り返るとそこにいたのは、ナターシャだった。
「何か用っすか、ファイルスさん。」
訝しげな表情でナターシャを見ながら不機嫌さを前面に押し出しながらそう言った。
ナターシャは少し寂しげな表情をしながら、口を開く。
「ひどい。比企谷くんに会いたくてここに来たのに。」
「会いましたね、それでは。」
そう言って素早く立ち去ろうとしたのだが、肩を思いの外強く掴まれ、逃げることができなかった。
「比企谷くん、どこ行くのかな?」
怖いって。
何で俺の周りの女子は強い奴ばっかなの?
え?俺が弱いだけ?
その通りです。
「織斑先生にグラウンドの整備をやれと言われてるので、そちらに行きますが…。」
「ふーん。じゃあそこまで行くのに付き合っちゃうね。」
「は?」
いや、何でだよ。
そこは、頑張ってね、と言ってどっか行っちゃうパターンだろ?
何でそうしないんだよ。
その思っているのが、顔に出ていたのかナターシャは微笑みながら八幡にこう言った。
「さっき言ったよね?比企谷くんに会いたいからここに来たって。ちょっと話そうよ。」
「…うす。」
渋々了承すると、笑顔でそれに答えるナターシャ。
「ところで、さっきの事だけどさ。」
「何ですか?」
「比企谷くんも戦ったの?」
「はい。戦いましたが?」
「そっか。」
そこで会話が途切れたが、彼女は八幡の横から退こうとしなかった。
八幡は気恥ずかしさと共に疑いの面持ちで歩いていく。
すると、ナターシャがいきなり立ち止まる。
「ねぇ、比企谷くんはどうしてあの子を助けたの?」
あの子?
あぁ、福音の事か…。
どうしてってそれは…。
「相棒に頼まれたんすよ。あいつを助けてやれって。」
「その相棒って誰?」
「わかりませんよ。ただ、何となく自分でもなんでかは知らないし、その相棒の事を信じてるわけでもないんですけど、その相棒ってやつは意外と近くにいそうなんですよね。」
「そっか。」
そこで一旦区切ると、ナターシャは口を開く事なく八幡を見つめた。
八幡は恥ずかしくなり、目を背けるとナターシャが近づいてきた。
「じゃあ、もうひとつ、いい?」
上目遣いで見上げるナターシャを見て、八幡は頬を染める。
「べ、べちゅにいいでしゅよ。」
何で噛んじゃうんだよ‼
恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい!!
…死にたい。
その反応を見て、くすりとナターシャは笑い、八幡から離れる。
「比企谷くんはさ、何でそんなに目が腐ってるの?」
…は?
最後に聞くとこそれですか?
もっと他にないの?
…ないな。
って言うか最初に聞かないだけマシか?
「…元々ですよ。生まれつきです。」
「ふぅーん。ホントに?」
「…はい。」
「違うよね。比企谷くんは私には見えないところまで見えてる気がするの。」
「いや、俺も見えないものは見えないですよ。」
「そう言うことじゃなくて、この世界の事とか、人の事。」
「見えませんよ。何も。」
八幡はそう言うと、ナターシャに背を向ける。
それを見たナターシャは、八幡のそばに駆け寄る。
「何か隠してない?」
その問いには何も答えなかった。
ナターシャは答えが帰ってこないとわかると、八幡の前に出ると、行く手を塞いだ。
「話して。」
そして、真っ直ぐな目を向けながら、八幡を見つめる。
八幡はそれを真正面から受けると、諦めたかのようなため息と顔をして口を開いた。
「わかりました。簡単に話しますよ。」
そして、八幡はこれまでの事を簡単に簡潔に話始めた。
その話はナターシャにとって、予想外の事だった。
全てを聞いた後にナターシャは深刻な顔をしていた。
「比企谷くん、どうしてそこまでされてるのに、そんなに心が強くいられるの?」
「強くないですよ。弱すぎて豆腐より脆すぎるレベル。」
少し冗談を挟んだが、ものすごく睨まれた。
え?何で睨んでるの?
真剣に答えないとダメなの?
泣きそうなんですが…。
泣いていいんですね、そうですか。
「じゃあ仮にそんな弱いメンタルで、よく今まで生きてこれたね。」
「…そうですね。親にもお前はゴキブリ並みだなと言われましたからね。」
何で車に轢かれて病院にいった後、親が来てからの第一声がそれって…。
それにいじめを相談しようとしたときも、お前ならなんとかなる、とかもうちょっと息子を労れよ。
そう言いながら目をさらに腐らせていると、ナターシャが少し笑うと口を開いた。
「そっか。じゃあそのゴキブリ並みの強さの源は何?」
「小町とマッカン。」
八幡は即そう答えると、ナターシャは少し引いていた。
え、何かまずいこと言った?
俺まともなこと言ったよね?
「比企谷くん、小町って誰?」
「妹です。」
「じゃあマッカンは?」
「マックスコーヒーです。」
「マックスコーヒーってなに?」
「最高の飲み物ですよ。俺のソウルドリンクです。」
珍しく目を輝かせながら力説する八幡。
マッカンは千葉県民なら嫌いなやつはいないとされるソウルドリンクだぞ。
異論は認める。
…認めちゃうのかよ。
って言うか、IS学園に来てショックだったことは小町に会えないし、マッカンはないし、全生徒女子だし。
…俺よく生きてたな。
話それたよ。
「そんなことはいいですが、他に聞きたいことがないなら俺は行きますね。」
そう言ってナターシャの横を歩いていく途中、首根っこを掴まれ動きを止められた。
「待って。最後に、比企谷くんは何を信念にしているの?」
「…働いたら負け?」
「本気で言ってる?」
はい。とは言えないんですけど。
何でこんなに怖いの?
睨んでるだけでしょ?
HPが減っちゃうよ…。
冷や汗を大量にかきながら、返答する。
「そ、そんなことはありませんよ?冗談いってみたくなっただけです。」
必死に弁明を図るが、今もなお睨み続けるナターシャ。
やめて!!
僕のライフはもうゼロよ‼
…いや、ほんとやめてください。
土下座でもお金でも何でもあげますから。
「じゃあ真剣に話して。」
「俺の信念は、欺瞞なんていらない、ですかね。」
「欺瞞がいらないなら何が欲しいの?」
「…恥ずかしいので言わなくてもいいですか?」
「言わなきゃ君のクラスの女子に他の女と遊んでたって言っていい?」
「それだけはやめてください。」
そういわれて八幡はすぐに土下座へと行動を移した。
何かIS学園に来てから土下座の回数が増えた気がする。
俺の頭ってすごい安いんだな…。
自分で言ってて泣けてきたぜ。
「じゃあ言って。」
八幡は一瞬言葉を詰まらせたが、自分の命と恥ずかしさ、どちらがより大切なものか、すぐに計算して口を開く。
「…本物…ですかね。」
「本物?それはなに?」
「いや、俺もよくわからないんですよ。ただ、それはとても大事なことだと思うんですよね。」
「そっか。うん、ありがとう。私も、ひとつの答えが出たかもしれない。」
「それは?」
「…まだ内緒。」
「そうですか。」
「うん。それと、もうひとつ。私、比企谷くんの事好きだな。」
「そうですか…はぁ!?」
何を言ってるのか八幡よくわかんない。
って言うかそんなこと言わないでほしい。
勘違いして告白して振られるから。
しかも十秒かからずに。
…振られちゃうのかよ。
しかも十秒以内とか…。
内心ではそんなことを考えていたため、ある程度は落ち着いていたが、顔は真っ赤になっていたり、ちょっぴり挙動不審になっていたりしていた。
「どどどど、どういう意味でしゅか?」
噛みまみた。
恥ずかしい。
死にたい。
埋まりたい。
「そのままの意味だよ。何か君といると私は素直になれて、励まされて、前を向ける気がする。それに、比企谷くんは言葉は悪いし突き放すような言い方をするけど、優しいって感じもするし。会ったばかりで、お互いの事を知らずにこんなことを言うのは間違ってると思うけど、私は比企谷くんの事、好きだな。」
「…えっと…。」
「答えは別に今じゃなくていいよ。ただ、私の気持ちは本物だよ。」
「…っ!!」
本物と言う言葉を聞いたとき、恥ずかしさからなのか驚いたのか、はたまた両方なのかはわからないが、八幡は息を飲んだ。
黙っている八幡を見て、ナターシャは彼に背を向けると、最後に一言言って、去っていく。
「じゃあね。また、どこかで会いましょう。」
八幡はただ、突っ立っていることしか出来なかった。
最近、俺の周りの奴らが俺にたいして好意的に接してくるのはなぜなのだろうか。
デュノアやボーデヴィッヒ、篠ノ之博士や更識会長、ファイルスさん。
特に彼女らはその好意が強いような気がする。
でもわからない。
なぜそんな風にいられるのかが。
俺にはわからない。
そんなことを考えていたため、立っていることしか出来なかった。
やがて、ある程度気持ちの整理がついたところでグラウンドへ向かい、整備をしていく。
その間も彼女達の事を考えていた。
そして、ひとつの結論へと至った。
この好意はきっと優しさなのだろう。
あいつらはお人好しだ。
だから皆、の中に俺もいて、だからこそ優しくするのだろう。
なら、その優しさは嘘なのだろうか。
答えは否である。
何故なら、彼女らははじめから個人だけに対してではなく、全員に優しいのだ。
最初から自分にだけに向けられてないとわかるその優しさは本物なのだろう。
きっと慈悲とか憐れみとかではない、本心からなのだろう。
だから彼女らのそれは好意ではなく、優しさと言うことになるのではないか。
それにしても俺なんかに優しくしたって特に何にもならないのにな。
ったく、奴らは本当にいい奴過ぎるだろう。
そう思いながら、若干赤らんできている空を見上げながら、そう思いを馳せた。
その空は八幡が今まで見てきた空よりも、綺麗な気がしていた。
そうして、IS学園の学園祭一日目は過ぎていった。
ナターシャさんの口調とかキャラとか間違ってたりするかもしれませんが、目を瞑ってくれると助かります。
という訳で次回も文化祭ですね。
次も読んでくれると嬉しいです。
予想以上にお気に入り件数が多くビックリしてしまいました。
八幡の人気やべぇ…。
八幡に負けないように面白い作品にしたいと思いますのでこれからもよろしくお願いします。
それでは、また次回にお会いしましょう。