インフィニット・ストラトス ~ぼっちが転校してきました~ 作:セオンです
感想やそんなに高い評価ではないですがもらえて嬉しいです。
これからも感想や評価をつけてくれると嬉しいです。
という訳で、どうぞ。
八幡が修羅場に突入しているとき、その後ろから突如現れたのは、この学園の教師である千冬だった。
「比企谷は…いたな。」
八幡を呼ぼうとしたのだが、すぐに見つけ彼のもとに歩み寄っていく。
よく見るとシャルロットとラウラに腕を引っ張られていた。
「何をやっている。」
少しあきれたような口調でそう言うと、三人はこちらに気づいたようで、一瞬身を固めた。
「いや、これから休憩なので、どこかに行こうと。」
「僕も八幡と一緒に休憩しようと。」
「私も同じです。」
「なるほど。だが比企谷、お前にお客が来てる。ちょっと着いてきてもらおうか。」
千冬は八幡にそう言うと、彼の顔が分かりやすいぐらい嫌な顔をしていた。
これ絶対厄介なやつだろ。
嫌な予感するもん。
え?あてにならない?
バッカ、俺の悪い予感は当たるぞ?
当たりすぎて回避不可能なまである。
何それ、俺の人生辛すぎ…。
千冬の後ろをついて歩いていくと、進路相談室の前で立ち止まる。
「ここにお前に会いたいと言っている来賓がいるんだが…。」
そういった瞬間、扉が開き勢いよく中から人が飛び出してきた。
「はちくーん、会いたかったよ~。」
「束…。」
八幡はよくわからないうちに抱き締められ、千冬に呆れられていた。
え?これ俺が悪いの?
悪いの博士じゃね?
織斑先生、だからそんな、女をたぶらかしやがってとか言う目で見ないでくれます?
たぶらかしてないから。
なんならこれから先もたぶらかさないまである。
勝手に自己完結していると、千冬が束の頭を鷲掴みにすると、八幡から引き剥がした。
「ちーちゃん、痛いよ~。」
「離れろバカ者。早くこの部屋に入れ、見つかったら面倒だ。」
「え~。もう少しはちくんとはぐはぐしたい~。」
「いや、結構です。」
「え?やりたいの?」
いや、話聞いてた?
結構ですっていったよね?
まさか、否定的な意味でとらえてないの?
えー…この人バカなの?
いや、バカじゃないだろうけど、バカだよね?
あれ、矛盾してる。
「はちくんひどい!!この私の事をバカって思ってる!!この束さんは天災発明家なんだぞ!!」
頬をぷくっと膨らませながらぷんぷんとでも言わんばかりに怒っていた。
あざとい。
確かに、そう言うところは天災かもしれん。
男子高校生の心を揺らしちゃうから。
俺は揺れないのかって?
バッカ、この人バカだけど外見は物凄くいいからたまにドキドキするんだぞ。
大半は何やらかすかわからないからドキドキするけど…。
って言うか、何ナチュラルに心読んでんだよ。
怖ぇよ。
「おい、お前もさっさと入れ。」
千冬に声をかけられ、八幡も部屋の中に入っていく。
部屋にはいると、千冬と束が対面して座っており、少し異様な光景に見えた。
八幡は手近な椅子に腰かけると、右側に千冬、左側に束という席順となった。
その光景を見て、八幡は少し変な感じがしたがそれも千冬が口を開いたことでそれが消えた。
「さて、比企谷に来てもらった理由だが、先日お前があの福音の操縦者と一緒にいるところを目撃してな。」
え?いたの?
ステルスヒッキーよりもステルス性能高くね?
ブリュンヒルデともなるとそれも規格外のスペックになっちゃうのか。
八幡が少し恐怖を覚えている間も千冬は続けた。
「それで、少し尾行していたんだが。興味深いことを聞いてしまってな。」
まさか、まさかまさかまさか?
いやいやいや、あれじゃないよね?
本物とかじゃないよね?
もしそれだったら今日はベッドに入って悶えることになる。
あれほんとに恥ずかしいからね?
って言うかもしかしてあいつ等も知ってるのか?
うわー…学校行きたくないよぉー。
…死にたい。
心の中で悶絶していると、八幡の予想通りのワードが千冬の口から飛び出した。
「本物、それが欲しいみたいだな、比企谷。」
「うぐっ…。」
頬を若干赤く染め、目をそらして答えないでいると、束が口を開いた。
「ちーちゃんの言うとおりだよ。はちくんの欲しいのは本物だよ。」
「お前も知ってるのか。」
「うん。だって、それを一番最初に聞いたの私だし。それに、ちーちゃんより前に箒ちゃん達にも福音の事件の時に言ったしね~。」
「は?篠ノ之博士、それ本当ですか…?」
「うん♪」
いや、うんじゃねぇよ!!
何言っちゃってんの!?
恥ずかしい死にたい恥ずかしい死にたい恥ずかしい恥ずかしい!!
バカじゃねぇの!?
何で言っちゃうの。
俺が恥ずかしがるってわかってないの!?
…わかってませんね、わかりました。
ヤバイ、恥ずかしすぎてアイデンティティがクライシスして、個性が崩壊しちゃう。
あれ、何かデジャヴ…。
って言うか、これ言うと小町が俺の真似してこう言ってたな。
『アイデンティティ?はぁー?往々にして個性個性言ってるやつに限って個性がねぇんだ。大体ちょっとやそっとで変わるものが個性なわけあるかよ。』
いや、これ名言だろ。
誰だよ最初にいったやつ。
俺だよ。
って言うか、俺混乱しまくってんな…。
八幡が混乱している間も、二人が勝手に会話を進めていっていた。
途中途中、束が八幡の台詞をそのまま言っていたりしたが、聞こえない振りをして何とか発狂せずに済んだ。
だが、聞こえない振りも千冬が話しかけてきたため、やり過ごすことができなかった。
「比企谷、お前の言う本物は何だ?理解したい、というお前の願望か?それとも、理解し会える関係ということか?」
「……正直、俺にもまだわかりません。ただ、俺は嘘で塗り固められた欺瞞の関係が嫌なんです。だから、俺は理解したい、知って安心したいんだと思います。その本物自体も欺瞞なのかも知れないっすけど。」
「そうか。お前は面白いやつだな。それに、どこか私に似ている。」
「そうだね。ちーちゃんとはちくんは、どこか似てるね。」
八幡はそう言われて首を振ることで否定した。
「いや、そんなわけないっすよ。俺は織斑先生と全く違いますよ。織斑先生は俺みたいな事をしないでしょう?」
八幡は福音の時のような事を、というニュアンスを含めた口調でそう言うと、千冬はあっさりと頷き、肯定した。
「確かに、お前のような事をしたくはない。福音の時ような自分を大切にしない行動はな。だが、それこそ大事な人、お前風に言うなら本物の関係を築きたいと思うやつを助けにいくなら、私は何でもするつもりだ。だが、それでもお前のやり方は理解できないし、行動もしたくない、肯定したくない。」
「別に俺は理解して欲しいとは思いませんし、正しいことをやっているつもりもないですよ。ただ、それが一番効率的で、何よりそれしか思い浮かばなかったのでやっただけです。」
「お前は自分の命を何だと思っている。」
「俺は俺自身が好きです。ただ、俺が死んだって悲しむ者なんているはずないでしょ、ぼっちっすから。」
そう言うと、千冬は我慢できなかったのか机を思いっきり拳を叩きつけると、八幡を思いっきり睨み付けていた。
「ちーちゃん、落ち着いて。」
束が宥めているが、その怒りは収まらなかった。
「お前は自分への存在価値を卑下しすぎている。お前がいなくなったら悲しむやつはいるだろ!」
「確かにいますね。小町とか、まぁたぶん両親もじゃないっすかね。」
「あいつ等はどうだ。」
千冬のその声音には静かな怒りがこもっており、八幡は恐怖を覚えたが、それを必死に隠し平静を装う。
怖い、怖いっていや、マジで。
ほんとなんで俺の周りにいる女子ってこんなに怖いの?
俺のHP削るのがそんなに楽しいのん?
色んな意味で死んじゃうよ?
心の中でおどけながら、千冬へ回答した。
「悲しむでしょうね。でも、それが演技ってのは考えないんですか?」
「あいつ等はそんなやつじゃない。」
「人間の心なんてのはわかりませんよ。わかるというんでしたら、いさかいなんて起きませんからね。」
「お前はあいつらをどう考えている。」
「俺はあいつ等となら本物を見つけられると思ってます。」
「なら…。」
「でも、信用も信頼もしてません。まだ、あいつ等の事なんて何一つわかってないんですから。」
その言葉を聞き、口を閉じる千冬だったが、その目は八幡を鋭く射抜いており、外そうとはしなかった。
八幡はその視線に気づきながら、目を合わせようとはしなかったが、その目からは何か意思があるように感じられた。
千冬は何故かそれに引き付けられ、口を開く。
「お前は何を感じて、何を考えている?」
「別に何も考えてないっすよ。」
「ちーちゃん?」
「束、こいつと一緒にいたとき、何か感じなかったか?」
千冬はこれ以上八幡に何かを聞いても無駄だと感じたのか、束に八幡の事を聞き始めた。
束は少しだけいきなり話しかけられたことに驚いていたが、すぐに考え、八幡の事を思い出す。
「そうだね~。何を思っているのかわからないし、私の事をどう思っているのかもわからない。でも、自分の意思を曲げない強い心と信念を突き通す力を持っているね。それに、はちくんはよく誤解されるけど、とても優しいんだよ。その点ではちーちゃんにとっても似てるね。」
「信念?束、こいつの信念は何だ?」
「それははちくんがさっき自分でも言ってたけど、上辺だけの関係、馴れ合いは必要ない、だと思うよ。その他にもあるのかもしれないし、何のかもしれない。でも、これが信念だってわかるよ。」
「どうしてだ?」
「だって、はちくんは本物が欲しい、そう言っていたから。」
千冬は納得したのか、沈黙している。
束は更に続けて言葉を紡ぎ出す。
「ちーちゃん、さっきはちくんが優しいって言ったよね?」
「あぁ。想像つかないがな。」
「福音の時、はちくんは何で箒ちゃん達から福音を遠ざけたと思う?」
「それは…。」
「ちなみに自己犠牲なんかじゃないよ?はちくんはそれが最善だと思ったからそれをやったんだよ。」
「何が最善なんだ?」
「普通に考えてみてよ。あの時、いっくんと箒ちゃんがやられそうになったとき、はちくんがとった行動。それと、福音へ一人で立ち向かったときの行動。ちーちゃんならわかるはずだよ。」
千冬は束にそう言われ頭を回転させる。
計算して、計算して、間違っては計算し直し、必死で考える。
そして、ひとつの回答が出た。
「まさか…。」
「ちーちゃんの思った通りだと思うよ。まず一つ目、いっくんと箒ちゃんから自分に福音の狙いを変えさせた理由、それは後の事を考えて一撃必殺を持ついっくんと、第四世代の専用機を持っている箒ちゃんの二人を失うより、過失が少ないと思ったから。」
束はその考えに自信を持っていた。
だからこそ、目線だけで八幡に確認を取るため、彼の濁った目に合わせる。
八幡は恥ずかしいのか、小さく頷きそれを肯定した。
「そして、もう一つ。一人で福音を倒しにいった理由、これは推測だからわからないけど、福音を破壊しないためと、もし自分がまたやられたとしても、戦闘データの回収と福音のエネルギーを減らすことができるから。違う?」
「まぁ、そんなとこっすかね。」
何でそんなにわかっちゃうの?
理解され過ぎてて逆に怖い。
俺は理解できてないんだけど…。
八幡は自分の考えとほぼ一緒だったので、驚きつつもそれを肯定した。
すると、束は少しだけ微笑むと更に続けた。
「はちくんは最後まで他の人のことも考えて行動していたんだよ。」
「だが…。」
「ちーちゃんの言いたいことはわかるよ。誉められたやり方じゃないのはわかる。でも、それ以外に何もなかった。確かにそんなやり方じゃ本当に守りたい人を守れないかもしれない。でも、何かやらないと何もできないまま終わっちゃう。」
「確かにな。だが、どうして相談しなかった、比企谷。」
「相談したら皆でやれ、とか言うんでしょう?そりゃ、皆でやることは理想です。でも、理想は理想です。現実じゃあない。現実では誰かが貧乏くじを必ず引く。今回はそれが俺だった、それだけですよ。」
なんならこれから先も貧乏くじしか引かないまである。
何それ、俺の人生終わってるじゃん…。
そうやって自虐していると、千冬が口を開く。
「だが、私としては全員無事にやりたかった。」
「全員守るなんて無理です。誰かが傷つかなきゃ守れませんよ。」
「だからと言ってお前が傷ついていい理由にはならない。」
「いや、別に俺は…。」
「…そうか。私はお前の事を理解していなかったのだな…。束、何だ、その、ありがとう。」
「ううん。ちーちゃんならわかってくれると思ったよ。」
「そうだな…。私はお前のことが心配になってきた。比企谷、お前はこれからどうする?」
「どうするとは?」
「これからもそういう方法をとるのか?」
「…そうですね。それしかないのなら。」
「そうか…。だが、これだけは覚えておけ。お前が傷ついて悲しむやつがいる、ということをな。」
「…うす。」
「悪かったな。こう言った話になってしまって。」
優しい顔でそう言うと、千冬は立ち上がり未だ座っている八幡の肩に手を置くと、最後にこう言った。
「だが、お前に私、教師としてではなく個人として気になっていたからな。少しだけ、お前を理解できた気がするよ。お前の事を知って少しだけ自分と重ね合わせてしまったよ。」
「……何か格好いいっすね。」
「そうか?」
「えぇ。」
「そうか。…早く教室に戻れよ。」
「うす。」
八幡の返事を聞いて、束と共に教室から出ていった。
あれ?目立つからここにいたんじゃなかったっけ?
いいの?
え、俺の気にしすぎ?
しばらく疑問を浮かべていた八幡だったが、すぐに立ち上がり、教室へと戻っていく。
その途中、ちゃんと休憩できなかったな、と思いながら。
千冬が八幡の事を少し知りましたね。
最初から思ってはいたのですが、二人って似てると思うんですよね。
と言っても完全に理解し会えるわけではないとは思いますが…。
何はともあれ、文化祭も次回で終わらせるつもりです!
その後はたぶんアニメを沿っていくかな?
出せればですが、ダリルとフォルテを出そうかと考えています。
口調とかわからないので他のSSを見たりして、研究します。
では、次のお話でお会いしましょう。