インフィニット・ストラトス ~ぼっちが転校してきました~ 作:セオンです
とはいえ、もう大体は決めてるんですけどね。
それは置いといて、お気に入り件数とUAが思った以上にあってびっくりです。
感謝感激雨霰です。
という訳で最後までお付き合いしてくださると嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。
では、第18話、どうぞ。
八幡は今、自分の部屋なのにも関わらず、休むことすらままならない戦場にいた。
部屋の中にはあられのない姿の楯無。
部屋の扉の向こうにいるのは恐らくシャルロットとラウラ。
ヤバい。
何がヤバいってこれ俺が血を見ることになるぐらいヤバい。
何とかしなきゃ♪
キモいな…。
自虐し、精神的にダメージを受けていると、バスタオルで身体を隠した楯無が扉の方へ向かっていく。
八幡は彼女を止めるべく立ち上がり、慌て気味に近寄ったが、時すでに遅し。
扉を開き、満面の笑みを浮かべていた。
「ごめんね。今からお姉さんと八幡くんはお話しするから、邪魔しないでね?」
終わった…。
だってデュノアさんのあの怒気を含んでるあの目怖いし。
ボーデヴィッヒさんもあの目はヤバい。
俺を殺そうとしてるよ。
ふぇぇ…。
俺の平穏な日々はどこ行った?
絶望しきった顔をしていると、シャルロットとラウラが八幡に目を向け、満面の笑みを浮かべながらこう言った。
「八幡、明日聞かせてもらうからね?」
「貴様は私の嫁という自覚がまだ足りないようだな…。その身にしっかり刻み付けてやるとするから、明日覚えていろよ。」
八幡にとってその言葉は死刑判決だった。
デュノアさんのハイライトちゃんと働いて!?
めっちゃ怖いから。
怖すぎて悪夢を見るまである。
それに、ボーデヴィッヒさん、俺は君の嫁になった事実はないんだが?
って言うか刻み付けるって物理的じゃないよね?
いや、そうじゃなくても嫌なんだけどね?
俺Mじゃないから。
そう言うのは材木座にやってあげて?
誰だよ、材木座って…。
そんなわりとどうでも良いことを考えていると、楯無は部屋の扉を閉めベッドのところまで歩いていく。
その時、外から何やら物騒な声が聞こえてきたが、八幡は無視して奥の方に逃げていく。
窓の前に立ち、外を眺めていると、楯無が口を開いた。
「ちょっと頼みたいことがあるの。」
その顔は真剣そのもので、八幡は軽口を言える状況ではなく、真面目に答えることにした。
「何ですか?」
「明日、生徒会室まで来てくれない?そこで用件を話すわ。」
「…分かりました。」
受けないという選択肢もあったのだが、八幡は少しの間をおいて、承諾した。
まぁ、この間の襲撃の時助けてもらったしね?
そのお返しというか、借りを作ったままにしたくないから、しょうがなく引き受けるからな。
そこ注意しろよ?
テストに出るから。
…何のテストだよ。
自分で突っ込みを入れつつ、話が終わったのかと思ってベッドへ入ろうとすると、突然楯無が目の前に立ち塞がった。
あれ?さっきまでベッドに腰かけてなかった?
運動能力高すぎない?
逃げる暇なんてなかったんですけど…。
「まだ話しは終わってないんだけどな~。」
そうだった?今の終わってたようにしか感じなかったけど。
「終わったでしょう?」
「終わってないの!明日の事なんだけどさ、放課後にシャルロットさんとラウラさんと戦うじゃない?」
「そうでしたね。」
「2対1なんて不利だと思わない?」
「いえ、全く、全然。」
仮にも学園最強と言ってんだから、勝てるでしょ?
無理だったら何で受けたんだよ…。
「ひっどーい!八幡くんがいじめる。」
…どことなく篠ノ之博士に似てるな。
泣き真似とか、仮面被ってるとことか。
「八幡くん、何か失礼なこと思わなかった?」
え?口に出してなかったよね?
エスパーなの?
怖いって。
後怖い。
「思ってましぇんよ?」
噛んだ。
しょうがないじゃん、怖いんだもの
はちまん
楯無は噛んだ八幡を見て、くすりと笑うと彼の隣にやって来きて頭を八幡の肩にもたれさせた。
ちょっと!?
近い近い近いいい匂い!!
そんなことすると、あれ?俺の事好きなのかな?って勘違いしちゃってから告白して一瞬で振られちゃうからやめてくださいね。
一瞬って…短すぎだろ。
当たり前なんだけどさ。
「八幡くんは私の事どう思う?」
「どうとは?」
「うーん…腹黒いとか、性格ドブスとかって感じの。」
「それを聞いて何すんですか?」
「ん?別になんでもないよ。」
根拠はないし、顔も見れないから何を思っているのかわからないけど、何かを諦めようとしているように見えるな…。
それが何かはわからないけど。
「そうですね…。まだ、よくわからないですね。確かに何か仮面をつけて人との距離を開けているように見えます。その点では、腹黒いでしょうね…。」
「そっか。そうだよね。」
「でも、あなたは自分を探してほしいように見えます。」
八幡のその言葉を聞き、ハッとしたような顔をしている楯無を見て、八幡は自分の言葉があっているのだと確信した。
「そんなこと…ないよ。」
「そうですか?」
無理して否定してくる彼女を見ながら、簡潔に疑問としてぶつける八幡。
楯無はその疑問には答えず、黙って立ち上がった。
八幡は立ち上がってくれたことにホッとしながら、彼女の顔を目だけで追う。
何を心の中に抱えているのかは俺は知らない。
知りたいとも思わない。
所詮、その人が背負わなければいけないものだからな。
だから、俺からは何も聞かない。
そう思い、八幡は彼女から目をそらした。
楯無は扉を開けようとするが、開かれることはなかった。
その代わりに口を開いた。
「ねぇ、八幡くん。」
「なんすか?」
「私の本名知ってるわよね?」
「そうですね。」
「いつか本当の私を…見つけてね…。」
八幡はその真相を知るため、後ろを振り返るがそこにはすでに誰もいなかった。
*************************
楯無は自室に入ると、ベッドに力なく倒れ込む。
そして、なぜ彼にあんなことを言ってしまったのか、考えた。
何であんな事を言ってしまったのだろう…。
わからない。
彼のことは少しは理解しているし知っている。
ただ、なぜ彼にあんなことを言ったのかわからない。
信用しているのかと言われると、していると思うと答えるだろう。
なぜ、と言われると答えられない。
ただ、これだけはわかる。
彼ならば、比企谷八幡という男ならば、本当の『更識』でない更識楯無を見つけてくれる。
いや、更識刀奈を本当の私を見つけてくれる、そんな気がする。
もう、そんな希望など、捨て去ったはずだと思っていたのに…。
彼の第一印象は写真で見ただけだが、最悪だった。
目は腐っているし、怠そうにしているし、何より写真からでもわかる卑屈そうな雰囲気を出していた。
それと同時に興味が出てきた。
だから彼を生徒会室に来てもらって、彼の事を知ろうとした。
だけど、知られたのは私だけ。
私はあまり知ることができなかった。
あれだけ罪人と言われても反論できない更識の仕事をしている私ですらも。
幾重にも重ねた仮面を掻い潜って彼は私の事を見ていた、気がした。
そして、今日その事がわかった。
彼は私の事を、理解していた。
私は彼の事をきちんとは知らない。
だからこそ、何度も接近した。
その結果、私は彼のほんの一部を知った。
捻くれてるくせに優しいところや、本物が欲しいと願っていること、そして最後に、彼は何か隠していることがあるということ。
これらだけでは彼の本当のことはわからないだろう。
理解できないだろう。
だからこそ、私は彼に興味を引かれたのだろうか。
違う、と思う。
この気持ちが何なのか、初めてのこの気持ちを理解できない自分がいる。
いや、本当はわかってる。
でも、私がその気持ちになるのはダメな気がする。
だけど、彼ならそれすら許すような気がする。
彼は誰よりも優しくて真っ直ぐなのだから。
楯無を初めての気持ちに動揺しながら、ため息を切なそうに吐き出すと、再び思考の海へと旅立つ。
私は更識になってから、いろんな仕事をした。
非合法なこともした。
それらをしていくにつれて、最初はいつかなれるだろう、いつか何も感じなくなるだろう、そう思った。
でも、現実は違った。
ひとつ、またひとつと仕事をしていくたび、私の心は鎖で縛られていった。
そしてそこから痛みを生じた。
だから私は、幾重にも重ねた仮面をつけ、道化となった。
痛みは嘘のようになくなった。
私はホッとした。
けど、なぜか心にぽっかりと穴が開いてしまった気がした。
そして私はその仮面が自分ではずせなくなってから気付いた。
虚無だ、偽物だ、私は何もない、と。
私は彼に会うまでずっと、本当の自分を見てくれるものはいなかったと結論付け、諦めた。
ただ、私はこんなことに妹を巻き込みたくないと、こんな風になって欲しくないと思い、距離を置き守った。
だから、こんなことを思うのは本当にらしくないし、そんな気持ちなど、もうないのだと思っていた。
けど、彼がそうさせなかった。
正確には彼と出会ってしまい、私がその気持ちを封印から解除したのだ。
「本当にらしくないな…。」
楯無はそう呟き、目を閉じて彼の事を想像しそのまま眠りについてしまった。
最後までらしくないと思いながら…。
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楯無のいなくなった部屋を静かだな、と思いながら窓越しに空を見ている八幡は、彼女が立ち去り際にいった言葉の意味を考えていた。
生徒会長が最後にいった言葉、あれは本当なのだろう。
だとしたら今の彼女は本当の自分ではないのだとしたら、偽物なのだろうか?
その答えは、否だ。
それ自体も彼女自身だ。
ではなぜ、彼女は本当の私、と言ったのか。
それは俺が感じた違和感、更に言えばオリハルコンで作られた仮面を誰かに外して欲しいのではないか?
その可能性は大いにある。
ならば、なぜ俺に言ったのか。
それはわからない。
ただ、可能性があるのならば、俺が彼女の仮面に気付いたからだろう。
だからこそ、俺なら外せる、そう思ったのだろう。
だが、残念ながら俺はそんな器ではない。
それは彼女にもわかるだろう。
…本当にわからない。
だったら、俺にはどうしようもない。
そう結論付けながらも、気になってなかなか諦めることができなかった。
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次の日、楯無、シャルロット、ラウラの三人が模擬戦する日、三人の目覚めは良好だったが、楯無は昨日の事を思い出し、顔を少しだけ赤面させた。
何であんな事を…。
楯無の黒歴史がひとつ、できた瞬間であった。
気持ちを改めるため、洗面器の前まで歩いていくと、冷たい水を顔に当てると小さく声を出した。
「よし。」
その後、制服に着替えると朝食をとるため食堂まで行くため、自室から出ていった。
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眠たい目を擦りながら、千冬に物理的教育をされないようにアラームで起きる八幡は、のそのそとベッドから降りると、そのまま洗面所へいき、水を貯め、そこに顔を突っ込んだ。
…冷たい。
当たり前だけどね?
いや、でもなんか気持ちいいな。
ずっとこうしていたい…。
あ、怖い教育者がいるから無理だわ。
いい加減にやめとくか…。
水から顔をあげ、栓を抜くとその様子を見ずに制服に着替え、食堂へと向かう途中、八幡の今一番会いたくない二人が目の前からやって来た。
「あ、八幡。一緒にいこうよ。」
デュノアさん、目が一緒に行かないとわかってるよな?って感じで超怖いです。
「一緒に行くぞ、嫁。」
いや、だったらその前にその威圧的な雰囲気を消してくれませんかね。
怖いから、マジで怖いから。
当然のごとく、断れるはずもなく八幡は彼女らについていくことにした。
三人は食堂につくと、各々朝食を頼み椅子に座る。
その時、さりげなくフェードアウトしようとした八幡だったが、シャルロットに殺気込められた視線を受け相席した。
男なのに情けないって?
バッカ、デュノアが本気出したらやべぇぞ?
何がヤバイって命が何個あっても足りないと思うくらいヤバイ。
「ところで八幡、昨日の夜の事なんだけどさ?」
「あ、あぁ。」
「あれはどういうことか、説明してくれるよね?」
「嫁よ、夫婦とは包み隠さぬものと聞いた。話してみろ。骨ぐらいは拾ってやる。」
怖いって、後怖い。
いやマジ怖い。
ヤバイ、怖い。
あれ、怖いしか言ってなくね?
八幡は彼女らに睨まれ、冷や汗をだらだらとかきながら、弁明しようと口を開く。
「いや、あれはでしゅね、生徒会長しゃんがなぜか俺の部屋にいましてでしゅね、シャワーを浴びていたわけでしゅよ。決して俺からしゃしょった訳ではないでしゅよ?」
噛みまみた。
わざとではありません。
デフォルトです。
何それ、色んな意味で終わってない?
「そっか。ならいいや。」
「そうだな。あの生徒会長を叩きのめせばいい話だ。今日の放課後が楽しみだな。」
八幡は少しホッとしたが、目の前で好戦的になっている彼女達を見て、少し体を震わせた。
あれ、風邪引いたのかな?
引き込もっていいよね?
ダメ?
ですよね~、なーんかわかってました~。
何かキモいな…。
自虐して、精神的に更にダメージを受け、今日の放課後に模擬戦があると想像すると、自分がやるわけでもないのにげんなりしてしまった。
そして、八幡は小さく、誰にも聞こえないようにこう言った。
「どうしてこうなった…。」
八幡の最後の言葉じゃないですけど、作者自身もどうしてこうなった…。と言いたいです。
シャルロットとラウラの二人がヤンデレになりすぎてる気が…。
気のせいですよね?
気のせいですとも!!
気にしたら敗けです。
それに、あんまり話が進んでない気が…。
まぁ?あんまり話が進みすぎても、わけわかめになっちゃうところもあると思うので、いいんですけどね?
次回、話はちょっと進んで会長とヤンデレ化した二人が戦うところまで持っていくつもりです、はい。
ですが、予定は未定と言うことで…。
では、また次回お会いしましょう。