インフィニット・ストラトス ~ぼっちが転校してきました~ 作:セオンです
今回はオリキャラが最後の方に出てきます。
…そうしないと箒ちゃんがタッグマッチに出れないので(笑)
という事で、今回のお話は題名の通り、ヒロイン達の目線からという話となります。
では、どうぞ。
八幡と特訓をはじめて数日が経った。
彼の指導は的確で私もどんどんとうまくなっている…と思う。
今回は負けられない。
…色々と。
簪は、再び八幡との練習をするため、ピットからISを纏いつつ飛び立っていく。
すでに八幡は上空を飛んでおり、簪を見た瞬間、彼は流星を飛ばして応戦してくる。
今回はどうやら、ブルーティアーズを真似ているようだ。
なかなか、接近できない…けど前に進むんだ。
私だって強くなりたいから!
簪はミサイルをあらゆる方向へ打ち出し、流星を落としにかかるが、なかなか当たらず思うようにいかなかった。
どうしたら…どうしたら…?
…迷ってる暇はない。
私にできることは、感覚を掴むことだけ。
だったら、足掻いて意地でも八幡の元へと行く!
夢現を手に取り、近づいてきた流星を斬っていこうとするが、動きが早くて捉えきれずにいた。
簪の顔に焦りの色が見え始める。
そして、段々と冷静さを失い、動きが鈍くなっていく。
八幡はそれに気づくと、小さくため息を吐きながら彼女にどうやってアドバイスを言おうか迷っていた。
そんなことをしていると、簪のシールドエネルギーが切れ、そこで練習は終了となった。
「最後の方、ダメダメだったな。」
「わかってる。」
「なら、どう改善すればいいか自分がよくわかってるんじゃないか?」
「うん。冷静さが足りない。こんなんじゃ八幡達に追い付けない。」
「ま、少しずつ自分のペースで強くなっていけばいい。ただ、あまり遅すぎてもダメだけどな。」
「うん。八幡の足を引っ張らないように頑張る。」
「んじゃ、今日はここまでだな。」
「明日も…よろしく。」
「わかってるよ。ったく、何で俺が…。」
ふふっ…。
文句言いながらでも、結局八幡はやってくれる。
これは…捻デレ?
新しいデレの種類が追加された。
本当に八幡は優しい。
それでいて、どこか厳しい…気がする。
どこが、といわれてもわからない。
でも、優しくて厳しいような気がする。
だから、だからこそ私は、八幡の足を引っ張らないように、八幡と肩を並べるように練習する。
追いかけるだけは、もう嫌だから。
簪はそう思いつつ、更衣室へ戻っていくのだった。
タッグトーナメントまで、残りは一週間を切っていた。
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八幡をめぐる競争相手が増えたことを危機的に感じているシャルロットは的に向けてラピッド・スイッチを駆使しながら次々と中心を撃ち抜いていく。
何で、八幡は僕を選ばなかったんだろう。
僕はそんなに弱いのだろうか。
だったら、このトーナメントで証明する。
八幡の横にふさわしいのは僕なんだって!
最後の的も真ん中を撃ち抜き、地面に降り立つとこう呟いた。
「僕は強敵だよ、八幡。」
そして再び、的が出てくるのを確認すると、遠距離射撃や近接格闘を織り混ぜながら撃ち抜いたり、破壊したりしていく。
シャルロットはそれをこなしながら、このトーナメントで優勝したら八幡に何をしてもらうかを考えていた。
何してもらおうかな。
あ、ナニでも…これはさすがに早いかな。
ご褒美は最後まで考えおこうかな。
あ、それとも八幡に考えてもらおう。
うん、そうしよう。
それがいいに決まってる。
楽しみだな~。
だから、絶対に勝つ!
勝手にそう決めると地面に着地し、残りの的を射撃で撃ち抜くとISを待機形態にしてアリーナから立ち去っていく。
その顔はなぜか幸せそうであった。
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全く、嫁はまだ自覚が足りんようだ。
だが、そこがまた嫁のいいところではないだろうか。
いや、やはり浮気は許せん。
ラウラはそう思いながら、ロッカーを見つめそこに偶像の八幡を想像する。
その目はロッカーを射貫くかのように鋭く、殺気が籠っていた。
比企谷八幡、貴様は私が唯一認めた男なのだ。
だからこそ、私の嫁にならなければならない。
第三者からすると、この思考はいささか疑問に思うところではあるのだが、ラウラのその目、そのオーラ、全てが本気であることを物語っていた。
そして、そんなラウラは軍事用のナイフを取りだし、目の前を縦一直線で振り切った。
のはいいのだが、ロッカーを切りつけてしまい、少し慌ててしまっていた。
「ど、どうする…というか、ここって…。」
ラウラは何かを思いだし、恐る恐るといった風にロッカーの扉の裏側を見た。
そこには真っ二つに切り裂かれている八幡の隠し撮りした写真があった。
「あぁ…えっと…テ、テープが確かこの辺に…。」
震える手で少し散らかっているロッカーへ手を伸ばすが、それが更なる悲劇を生んだ。
テープを取り出したはいいもの、手が震えているため今にも落ちそうなナイフに触れてしまい、雪崩のごとく中のものがラウラを襲った。
何とか脱出したものの、どうにもならないことを察してこう叫んだ。
「衛生兵、衛生兵ー!!」
そこには涙目で座り込んでいるラウラの姿があったそうだ。
****************
うーん…何かつまらないなー。
一夏くんは一夏くんでいいんだけど、やっぱり比企谷くんの方が面白いな。
…はっ!
まさか、これが俗に言う比企谷菌に感染した状態と言うの!?
一夏との練習の最中にそんなことを考えながら、楯無は水で標的を作りながらダメ出しをする。
「ほら、また無駄な動きがあった!もっと早く近寄って斬りなさい!そうじゃないとやられるわよ!」
「わかってます!くそぉぉ!」
意地で食らいついている状態の一夏を見ながらも、思考は八幡の事を考えていた。
比企谷くん、私たちが優勝したら私と色々しましょうね。
あんなことや、こんなこと、果てにはそんなことまで。
うふふ。
あん、もう楽しみ♪
妄想を膨らませながら一夏の標的を作る姿は何とも異様な光景だった。
何故なら、今の楯無の口許には幸せそうな笑みが浮かんでいたからだ。
そんなことをしたら、家族にならなきゃ。
子どもは何人がいいかしら。
私の幸せの為にも、一夏くんを立派にしなきゃね。
もし、成長しなかったら、そうね。
一夏君に惚れてるであろう人達に色々あることじゃつまんないから、ないことないことを吹き込んじゃおうかしら。
ふふっ。
そう思うのと同時に一夏は何やら悪寒を感じた。
そして、キョロキョロしていると楯無が作った標的に顔が当たり、墜落した。
それに気づいた楯無は絶対に言おうと心に誓ったのであった。
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わたくしの誘いを断るだなんて男としてどうかと思いますわ!
全く、年上の女性の色香に惑わされるなんて!
わたくしもそれなりのプロポーションを…一夏さん、破廉恥ですわ!
シャルロットと同じように的を射撃で撃ち抜きながらそんなことを思っていると、顔が赤くなるのがわかる。
それを振り払うかのように頭を強く振り、ビットを射出させ的の真ん中を次々と撃ち抜いていく。
「一夏さん、覚悟していてください!絶対にこのわたくし、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズが優勝いたしますわ!」
そう強く誓ったセシリアだったが、その前に立ちはだかるであろう強敵のペアを思い浮かべる。
その前に、倒さなければならない相手がいますわね…。
比企谷八幡さん。
彼と、そのペアの方は侮ってはなりませんわ。
…きっと彼らが負けることはないでしょう。
わたくし達以外には。
その自信がいつまで続くのかはわからないが、セシリアは自信満々に自分の心に刻み付けるかのように決意した。
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幼なじみを放っておくなんて、幼なじみの風上にも置けないやつね、全くもう!
あーもう、イライラする!
鈴は苛立ちをぶつけるかのように的に向かって龍砲を撃ちまくる。
それらは綺麗に的の中心を撃ち抜いていた。
だが、それに反して鈴の気持ちは綺麗とは言い難かった。
ほんっとにあいつは美人に弱いんだから!
べ、別に嫉妬なんてしてないわよ!?
いつか騙されるんじゃないかって心配…どうでもいいけど!
…でも、あたしってそんなに魅力ないのかな。
表情がコロコロと変わるその姿は見る人によっては守ってあげたくなってしまう姿であった。
少し落ち込んでいたが、すぐに立ち直り、こう決意する。
見てなさい、一夏!
必ずあたしが優勝して見せるんだから!
その後、鈴はセシリアと練習するために、セシリアのいるアリーナへと向かっていった。
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外にあるベンチに座り、定まっていない太めの三つ編みの髪型の少女を膝枕している金髪のホーステールが特徴的な彼女、ダリル・ケイシーは膝に寝ている小柄な少女、フォルテ・サファイアの頭を撫でながら目の前のアリーナで練習しているだろう漆黒のISを見ながら歯噛みする。
「ちっ…あんなやつがいやがったか…。」
その呟きに気づいたのか、フォルテは眠たそうな目を擦りながらそれにこう返した。
「大丈夫ッスよ。ウチらは誰にも負けないッス。」
「あぁ、そうだな。俺らが負ける訳ねぇよな。」
ダリルは自分の恋人であるサファイアの一言に微笑みながらそう返した。
そして、サファイアも漆黒のISを乗りこなす彼の事をじっと観察するかのように眺めていた。
その心の中にある一抹の不安を拭いきれずに。
本当にあんなのに勝てるのか、と。
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このままでは、タッグマッチに出れないではないか。
内心で焦りつつも、専用機持ちが見つからない今、箒は落胆の色をその顔に宿していた。
はぁ…これでは何もできないではないか。
戦闘狂ではないが、彼女も一夏をめぐって戦っている一人なのだ。
その為になにもしていないのは致命的だった。
そう、勝ったら一夏に何かご褒美を貰うと言う事ができなくなってしまう。
…誰かいないものか。
「はぁ…。」
小さくため息をつくと、後ろから声をかけられた。
そこにいたのは真耶と背の低い小動物のような少女だった。
「篠ノ之さん、ちょっといいですか?」
「山田先生、どうしたんですか?」
「篠ノ之さんはまだタッグが決まっていませんでしたよね?」
「はい。そうですが…。」
「なら、彼女と組んであげてください。」
「え?えっと…彼女は?」
「彼女は1年3組、エレオノーラ・セラミさんです。」
「イタリアの代表候補生…。よろしく。」
赤みがかった茶髪はもとから癖っ毛なのか跳ねており、本人も気にしていないところを見るとそう言うことに疎いと言う事がわかる。
「えっと…なぜ私が?」
「篠ノ之さんもタッグマッチに出たいかと思いまして。」
「私は…出たく…なかった…。」
「エレオノーラさん、目立ちたくないのはわかりますけど、せっかくの機会ですよ?」
「私には…関係ない。」
「もうっ!ダメですよ、そんなことを言っては。」
可愛らしく怒る真耶を見ている箒は本当に怒っているのか疑問に思った。
「しょうがないな…。真耶ちゃん、うるさいし…。やってあげる。」
箒はその言葉に少しだけ頭に来た。
「私はやる気のないやつとはやりたくない。」
「えぇっ!?篠ノ之さん、何言ってるんですか!」
その言葉を聞いたエレオノーラは野性の肉食獣のような力強い瞳を箒に向けた。
箒はその目を真っ正面から受けとめ、睨み付けていた。
その二人の様子を見た真耶はおろおろとしているだけだった。
と、そこへ救世主がやって来た。
「山田先生、この状況は?」
「織斑先生!えっとですね…。」
一通りの説明を終えると、千冬は頭を抱えため息を盛大に吐き出した。
「お前ら…。しょうがない。なら、こうしよう。エレオノーラ、篠ノ之、模擬戦をしろ。それでお互いの実力を知ればいいだろう。」
「…めんど…。」
「エレオノーラ、何か言ったか?」
「い、いや、何もいってない…。」
「私はそれでも構いません。」
「よし、ならば明日の放課後、第四アリーナで行う。それまで準備しておけ。」
そう言うと、彼女らに背を向け立ち去っていく。
そのはずだったが、千冬は不意に立ち止まりエレオノーラに顔を向けると、こう言い放った。
「そういえばエレオノーラ、私に向かってめんどくさいって言おうとしたよな?」
「え、あっ…いえ…。」
「言おうとしたよな?」
「…はい。」
「ふむ、ならば貴様はタッグマッチに出ろ。」
「にゃっ!?」
「異論反論抗議質問口答えは一切受け付けないからな。では。」
千冬にそういわれ、しゅんと座り込むエレオノーラは捨て猫を彷彿とさせる姿があった。
しゅんとしながらも、エレオノーラは本気を出すことを心に決めた。
その一方で箒は彼女の隠れていたその牙に気づくことはなかった。
どうも、遅筆で有名な作者でございます。
こんなダメ作者ですが、最後まで完結させますのでお付き合いくださいませ。
さて、新しいキャラとして、エレオノーラ・セラミを出しましたが、どうでしょうか(笑)
無口で動物的な性格にしたいのですが…難しいですね(笑)
上手く書けているかわかりませんが、皆さんに愛されるようなキャラになってくれることを祈ってます。
そんな彼女が使う専用機は次回のあとがきで詳しく書きたいと思います。
エレオノーラ・セラミ
1年3組所属。
イタリアの代表候補生。
赤みがかった茶髪で、瞳は黒っぽい茶色。
髪の毛は癖っ毛でお洒落っ気がなく、放っておいたまま。
基本的に無口で動物的な行動をする。
制服はとくに改造はしていないためそのままなのだが、サイズが少し大きいため、萌え袖みたいになっている。
愛称はエレン。
という事で、エレオノーラの詳細を今回書きました。
ではでは、次回のお話でお会いしましょう。