インフィニット・ストラトス ~ぼっちが転校してきました~   作:セオンです

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はい、サブタイからもわかるかと思いますが、福音登場です。
この話での福音はアニメ同様無人機となりますが、夏休み明けの学校に来賓と言う形でナターシャさんが登場する予定ですのでお楽しみに。

という訳で、どうぞ。




第6話 彼ら彼女らは任務を任される

次の日、起きて朝食を取ると、千冬に専用機持ちが個別に呼ばれた。

宿の裏側にあるちょっとした庭のようなところから少し下がった所へ向かう。

八幡がいったときにはすでに全員集まっていたが、そこには専用機を持たない箒までいた。

 

「織斑先生、何でここに篠ノ之が?」

「それはだな、これから説明するが…。」

「ちーーーーーいちゃーーーーーん!!!」

 

騒音が響いた。

その歩く騒音機はものすごい勢いで走って来た。

 

うわぁ…。

来たよ…。

めんどくさいことになるなぁ~。

関わりたくないからフェードアウトしよう。

そうしよう。

 

八幡はこっそりと逃げようとしたが、その歩く騒音に捕まってしまった。

 

「はちくーん‼久しぶりだね。元気にしてた?私が特訓してあげたから大丈夫だと思うけど、負けてないよね?それともわざと負けちゃってる?あはは、はちくんは相変わらず優しいね~。だから好きなんだけどね。」

 

矢継ぎ早に次々と質問するが、八幡はため息をつくだけで質問には答えなかった。

それは千冬も同じようで束の頭をアイアンクローしながら八幡から引き剥がすと、呆気にとられてる他の専用機持ちの前へ差し出した。

 

「お前は先に自己紹介ぐらいしたらどうだ。」

「えー、はちくんともっとおしゃべりしたかったのに~。」

「早くしろバカ者。」

「バカってなにさ、この天災発明家篠ノ之束さんをバカ呼ばわりするなんて‼」

 

ちゃっかり自己紹介しちゃってるよ…。

しかも天災の字がちょっと違うしね。

歩く災害だなありゃ。

 

八幡がそんなことを思っていると一夏と箒以外のメンバーが驚きの声をあげる。

 

「篠ノ之束って…。」

「IS設計者にして開発者…。」

「今や全世界が探してる張本人…。」

「なぜ博士がこんなところに?」

 

セシリア、鈴、シャルロット、ラウラの順に説明していた。

 

君たち仲良いね。

まさか全員揃って篠ノ之博士の自己紹介するとは。

八幡ビックリ。

 

「今日ここに束が来ているのは他でもない。束、例の物を。」

「はいはーい。」

 

ラウラの質問に千冬はそう答えると、束は何かのスイッチを手に持ち、それを押した。

すると、何か赤い物が落ちてきた。

 

「篠ノ之、お前の専用機だ。」

「え!?」

 

驚きの声は全員共通だった。

だが八幡だけはさほど驚いてはいなかった。

 

「箒ちゃんの専用機、白に並び立つ赤き機体、その名も紅椿‼この機体は第四世代型で、専用武装展開装甲が搭載されている束さんのお手製ですぶいぶい‼」

 

そう説明すると全員唖然としていた。

無理もない、各国は今第三世代型の試験運用ていっぱいいっぱいなのに新しく第四世代型を作ってしまったのだ。

研究者や操縦者でなくとも唖然とするであろう。

そんなものをたった一人で造作もなく作ってしまうのと同時に、今フィッティングしているがその早さは尋常ではないため、それに関してもただただ驚くばかりである。

 

相変わらずだな。

篠ノ之博士の技量は。

そりゃ各国が血眼になって探すわけだ。

 

八幡はその状況を少し懐かしみながらじっと見ていると、束が八幡を見るとその顔に笑顔が弾ける。

 

「はちくんが見てる‼頑張らないとね~。」

 

なぜかやる気になった束。

その言葉を聞いて、シャルロットとラウラが八幡を睨む。

 

え?俺なんかやった?

俺悪くなくない?

そんなの関係ない?

理不尽過ぎるでしょ…。

 

「よし、じゃあ箒ちゃん、細かいセッティングもやっちゃうからね~。後からちゃんと動くか確認しないとね。」

 

そう言うと細かな作業に取りかかる。

それも手際がよくて次々と終わっていくなか、千冬の元に真耶がやって来た。

 

「織斑先生、これを。」

 

真耶が持ってきたタブレットを受け取り、そこに書かれてる内容を確認すると、千冬の顔が険しくなる。

それを見ただけで八幡は良くないものだと感じ取った。

 

「束、細かいセッティングが終わったらテスト運転は中止にしてくれ。特命任務レベルAの任務の通達が今入った。学園上層部はお前ら専用機持ちにやってもらいたいそうだ。詳しい話しは宿に戻ってから行う。」

 

千冬はそう言うといち早く宿に戻り、対策を考えることにした。

専用機持ちとはいえまだ学生。

ならばいくつか作戦を考える必要があると考え、頭をフルに使う。

それは宿の宴会場に着いてからも続いた。

 

*********************************

 

専用機持ちは全員宴会場に集まると、畳の上に写し出されている画面を囲むように座り、千冬の説明を待っていた。

やがて、千冬は襖に写っている画面を背景にして座っている全員の方を向くと、説明を始めた。

 

「今から二時間前、ハワイ沖で試験稼働にあったアメリカ、イスラエルの共同開発のIS『シルバリオ・ゴスペル』通称『福音』が制御下を離れて暴走、監視空域より離脱したとの連絡があった。」

 

その言葉を聞いた瞬間、この部屋の空気が一気に張り詰める物へと変わる。

 

「情報によれば無人のISらしい。」

 

その言葉で八幡は確信した。

どこかの国がハッキングしたのだと。

となるとだいたいの予想は出来るが、それだけでは証拠としては不十分だろう。

ならばここはその事に長けている人物にやらせるのが一番効率がいいだろう。

その事を言おうとしたのだが、その前に千冬が説明の続きを行った。

 

「その後、衛星での追跡の結果、福音はここから2キロ先の空域を通過する事がわかった 。

時間にして、50分後。 先にも言った通り、学園上層部の通達により我々がこの事態に対処することになった 。教員は訓練機で海域、空域の閉鎖を行う。」

 

その詳細データは自分達の目の前にある画面に写し出されていた。

動いている矢印が福音だろう。

その周りにある海域や空域に配置されている赤い点は教員の部隊だろう。

これを見て八幡は大体の事が予想できた。

 

「と言うことは俺達が福音の討伐をすると言うことですか。」

「その通りだ。」

 

厄介なことになったな…。

これが本当の事なら実戦経験のある専用機持ちならばまだ対処できるかもしれないが、織斑や篠ノ之は正直そんなに経験があるわけではない。

更に言えば俺もそんなにある方ではない。

ならどうするのか、織斑先生はどう考えているんだ?

 

八幡が思考しているとき、一夏が何か言っていたらしいがそんなことに気を取られず、まずは作戦内容を聞くことにした。

それと同時に、福音のスペックデータも要求する。

 

「織斑先生、福音のスペックデータと作戦内容を聞きたいんですが。」

 

セシリアも同じことを言おうとしたのか挙手していたが、八幡がそう聞いたため手を下げることとなった。

 

「比企谷、何か質問があるときは挙手をしろ。まぁいい。福音のスペックデータだが、口外するな。情報が漏洩した場合、諸君には査問委員会による裁判と最低2年の監視がつく。それを忘れるな。」

 

そう言うと千冬は体を少し横にずらし、背後のディスプレイにデータを写した。

それを見ながら各々が福音のスペックについて口々にする。

 

「広域殲滅を目的とした特殊射撃型でわたくしのブルー・ティアーズのようにオールレンジ攻撃が可能ですわね。」

「攻撃と機動力が高いわね。この両方を特化した機体か、厄介ね。」

「この特殊武装が特に厄介だね。連続しての攻撃だから防御するのが難しい気がするよ。」

「この情報では格闘性能が未知数だな。偵察は行えないのですか?」

「それは無理だろ。最高時速が2450キロだからな。出来てアプローチ一回きりってとこだろうな。」

「比企谷の言う通りだ。」

「チャンスはたったの一回。一撃で決める必要がありますね。」

 

摩耶が最後にそう言うと、視線は二手に別れた。

その先にいたのは、一夏と八幡だった。

一夏はそれに気づいていないのか、腕組みをして頷いているだけだったが、目を開けたとき、視線が集まってるのを見て驚いていた。

 

「俺!?」

「当たり前でしょ。あんたの零落白夜で落とすのよ。」

「いやいやいや、八幡もいるだろ?」

「俺のもそうだが、今回は分が悪いな。誰かが足止めしてくれないと撃てないからな。」

「えー…。」

「織斑、これは訓練ではない。実戦だ。覚悟がないなら無理強いはしない。」

 

千冬のその言葉を受け、一夏は少し考える。

そして目を開くと、そこには覚悟を決めた目をしている一夏の姿があった。

 

「やります。いえ、やらせてください。」

「よし。なら作戦を考えよう。」

 

千冬がそう言うと、待ってましたと言わんばかりに天井から束が出て来て、作戦の内容をいい始めた。

 

「ちーちゃんちーちゃん、私の頭の中にいい作戦がなうぷりーてぃんぐ~。」

「束…部外者は出ていけ。」

「うわぁーん、ちーちゃんがいじめるよ~。はちくん助けて~。」

「嫌です。」

「即答だね。さすが言い合いで私を泣かせただけあって容赦ないね~。ま、いいや。後からはちくんとハグハグするとして、ここは紅椿と白式の出番だよ。」

「何だと?」

 

そう言うと思った。

篠ノ之博士の事だから紅椿はすごいスピード出るんだろうな。

それに展開装甲が搭載されているとか言ってたな。

それがなんなのかわからんがスゴいのは勘だけどわかる。

え?勘なんてあてにならない?

バッカ、お前俺の勘なんて当たりすぎて怖いぞ。

小町が風邪引きそうになったとき誰よりもいち早くわかるからな。

なんか話が反れたな…。

 

「紅椿のスペックデータを見てみてよ。」

 

そう言うと束はみんなの元に紅椿のスペックデータを写し出すと、その場にいた全員が唖然とする。

そこに書かれてあるスペックが本当ならば紅椿は高速戦闘をいとも容易くこなせてしまう。

それに、イグニッションブーストの比ではないほどに加速ができるため一気に間合いを詰めることもできる。

 

「ねぇ?このスピードさえあれば白式を紅椿が運ぶこともできる。白式はその分、エネルギーを零落白夜に注ぎ込むことができる。」

 

それを聞いたとき、千冬は腕を組み、何かを考えていた。

そして結論が出たのか、箒に視線を向ける。

 

「篠ノ之、出来るか?」

「やります。」

「そうか。では、30分後、この作戦を開始する。それまで各員、準備にかかれ。」

 

そう締め括り、作戦会議は終わった。

だが、八幡は千冬と束を呼び止め、その他の事の対策、いや、対抗をしようと切り出した。

そこには八幡達以外、誰もいなかったが。

 

「織斑先生、篠ノ之博士、ちょっと良いですか?」

「何々~?」

「手短に頼むぞ。」

「はい。まずは篠ノ之博士、福音がどこからハッキングされているか調べてください。それと織斑先生、この作戦は失敗する確率があるので俺もサポートに回って良いですか?」

「はちくん、どうしてそんなことを?」

「理由としては福音が広域殲滅を目的としたISだからです。今でこそアラスカ条約で軍事利用出来ないようになってますが、どう考えたってこの福音は軍事利用が目的で作られている可能性が高いです。だからこそ、どこかの国がそれを排除するためにハッキングしたっておかしくないでしょう。ハッキングして暴れさせてそれを問題にし、解体、もしくは凍結処理させるでしょう。」

「だったら、兵器がなくなるからいいんじゃないの?」

「それはそうですが、そのハッキングした国がそのあと何かしてこないとは限りませんからね。その為の予防です。」

「なるほどな。一理ある。束、頼めるか?」

「いいよ。はちくんとちーちゃんの頼みだもんね~。頑張っちゃうよ。」

 

八幡はその後、千冬たちと別れ、時間まで休むことにした。

何事もなくこの作戦が成功するようにと願いを込めながら。

 

*********************************

 

作戦実行の時間が来た。

一夏と箒は昨日みんなが遊んでいた砂浜にいた。

 

「行くぞ、紅椿。」

 

箒は手首についている2つの鈴がついている赤い紐へ手を伸ばすと、紅椿を展開する。

そこに赤い機体を纏った箒の姿があった。

それを見た一夏も白式を展開する。

展開が完了した二人に通信が入る。

 

「織斑、篠ノ之、聞こえるか?」

「はい。」

「よく聞こえます。」

「よし。今回の作戦をもう一度言う。篠ノ之が織斑を上に乗せ福音の元まで運び、織斑の零落白夜の一撃必殺で討ち落とす。今回は短時間で決着をつけることが必須だ。わかったな。」

「はい。」

「わかりました。織斑先生、私は一夏のサポートをすればよろしいですか?」

「あぁ。だが、お前も紅椿も初めての実戦だ。大丈夫だとは思うが、何か問題が起こるかもしれん。くれぐれも無茶だけはするなよ。」

「わかりました。ですが、出来る範囲で支援していきます。」

 

千冬はそれを聞き、箒が少し浮わついてるのを感じ、一夏にプライベートチャネルを繋ぎ、通信を行う。

 

「一夏。」

「は、はい!」

「そう緊張するな。これはプライベートチャネルだ。篠ノ之に聞かれる心配はない。」

 

若干声音に愉快そうな色が混ざっていたが、次に発せられた声は緊迫した色を含んでいた。

 

「どうやら篠ノ之は少し浮かれているな。あんな状態では何かしらやらかすかもしれん。いざとなったらサポートしてやれよ。」

「わかりました。」

 

一通り話し終え、千冬は作戦開始を宣言した。

その時、宴会場から一人の人物が出ていく。

千冬以外誰も気づいておらず、さして気にするものもいなかった。

 

 




はい、束さんがいい人ですね。
それに、ヒロインっぽい感じですね。
感じではなくヒロインですよヒロイン‼
大事なことなので二度言いました。

という事で次回はたぶん福音との戦闘ですね。

ではまた次のお話で。

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