武装神姫 《Another/Side》   作:夜斗

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第一章 第3話

『さぁて、いよいよ始まります! ルーキーズたちによる神姫バトルトーナメント! 今回の大会の実況は私、ハーモニーグレイス型のメリッサが担当します! まずはこちらをご覧ください!』

 

 彼女が示した先、このラウンジのメインモニターに全16名によるトーナメント表が表示される。真琴を始め、連やねねもトーナメント表に名前を連ねている。残念ながら、七海は抽選で外れてしまったため不参加だ。

 

『戦闘ルールに関しましては公式戦のルールと同じ、加えて武装制限もありません! 参加者の皆様には思い思い自由に戦っていただきます! とにかく勝って、勝ちまくるだけ! 難しいことなんてありません! ただそれだけです! 例え負けたって気にしちゃいけません! 涙は神姫と分かち合って明日への糧とするのです!! えー、では諸注意をば――』

 

「……とはいえ、勢いで参加しちゃったけど大丈夫かなぁ」

 

 モニターに表示された自分とガーネットの名前を見上げながら真琴は小さく呟く。

 つい数分前、トレーニングモードとはいえ真琴は練習相手である七海のプリュイーを派手に吹き飛ばし、結果その派手さで多くのギャラリーを集めてしまい勢いでこの神姫バトル大会に参加してしまった。いざ本番前になると緊張するのは真琴の癖のようなものだ。

 

『ココまで来て何言ってんのさマスター。初戦闘であれだけ動けたんだし、このままバシッと優勝決めようよ!』

 

 真琴の手の平の上で闘志に燃えているガーネットはグッと握り拳を作っている。頼もしい、本当に頼もしい。マスター(真琴)よりも頼もしく感じてしまうことに、少々情けなくもあった。

 

「ガーネットの言うとおり、やってみなきゃ分からないよ真琴君」

『それに、今日は神姫バトルの練習に来たんじゃないか。この大会も少し早い実践経験だと思えばいいんだ』

「うん……」

 

 いまいち踏ん切りがつかないまま時刻は進み、いよいよ神姫バトルトーナメント開催の時が迫る。

 

「あぁ! さっきのカッコいいお兄ちゃんじゃん!」

「え……あ、君はさっきの」

 

 真琴の初戦の相手は、つい今しがたヴィジュアライザーの隣で囃し立てていた少年だった。歳は……小学4年生くらいだろうか。バッサリと切り揃えられたショートヘアと頬っぺたについた絆創膏がやんちゃそうな雰囲気を醸し出している。

 

「いきなりカッコいい兄ちゃんと戦うなんて、ツイてる! オレもあんな技使ってカッコよく決めたいなぁ」

『あはは……私に変形機能はないんですけど、よろしくお願いしますね』

 

 彼の手の平に乗る神姫はそう柔らかく微笑っていた。白い素体がシンプルで綺麗な神姫で、何処となく見覚えのあるようなデザインだった。

 

「あの神姫は……」

『初代アーンヴァル型だね。素直だけど融通が利かないっていうか、私はちょっと苦手なタイプかなぁ』

「アーンヴァル……そっか。ウチのアイリスの元になってる神姫だね」

 

 アーンヴァル型とは、武装神姫の最初期にリリースされた神姫である。ガーネットの言うとおり素直な性格設定が施されており初心者オーナーにもおススメできる神姫だ。真琴の家のアイリスことウェルクストラ型神姫は量産型アーンヴァルと想定されている神姫で、デザインが似通っているのは当然のことである。見覚えがあるのはその所為だろう。

 

「オレとクリーム、手加減とか出来ないから覚悟してくださいよ!」

『……って、まだ神姫バトルを初めて1週間なんですけど、お手柔らかにお願いしますね』

『マスターより6日多くたって、私の実力でカバーすれば大丈夫さ!』

「よ、よろしく」

 

 自分より年下相手だというのに、ガチガチに緊張しながら真琴はガーネットをステージの上へと乗せる。彼もまた同様にステージへクリームを乗せると、腕に装着しているROGを起動させた。

 

『では、衝撃の第一回戦スタートです!』

 

「「ライド・オン!」」

 

 メリッサの声を合図に、各ヴィジュアライザーが一斉に作動しそれぞれのバトルフィールドが展開されていく。

 真琴たちの戦うステージは『渓流ステージ』。ステージ自体はそれほど広くはないものの、ステージ中央を清らかな渓流が分断している。水深もそれほど深いわけではなく、ちょうど神姫の膝ほど程度までしか浸からなかった。

 

「足が冷たい……ような気がする。ガーネットはどう?」

『うぅん……少し戦いづらいかもしれない。でも安心しなよマスター。ゼッタイ勝って見せるから!』

「わかった。僕も、出来る限りサポートするから」

 

 会話もほどほどに対戦相手へと視線を移す。武装したクリームの手にはハンドガンとシールド、それから背部に大きなブースターとウイングユニットを装備していた。

 

『トランシェタイプ……空中での高機動戦闘を想定された武装パターンだね。ライフルで撃ち落として、ナイフで追撃ってのが一番のパターンだけど……』

「……じゃあ、まずは様子を見よう。牽制でライフルを撒いていく感じで」

『了解だよ、マスター』

 

 試合のゴングは既に鳴り響いた後。今すぐにでも撃ち合いが始まってもおかしくない状況下――先に動いたのはガーネットだった。

 脚部のホイールを回し、ローラーダッシュで相手と一定距離を保ちながら円を描くようにして走り出す。

 

『こっちも行きましょう!』

「よぅし、いつも通りで行くよ!」

 

 ウイングユニットに装着していたブースターが火を吹くと一気に上空へと舞い上がり、あっという間にガーネットの射程距離外にまで逃げられてしまった。これではいくら撃っても弾の無駄である。

 

『行きます!』

「何か来る……? 気を付けて、ガーネット!」

『動きまわりゃ当たらないよ!』

「よーし、撃てぇ!」

 

 ヴィジュアライザーの表示限界高度から、クリームはハンドガンを放り捨てシールド内側に隠していたランチャーを装備し腰だめに構えた。瞳に映る照準を真下にいるガーネットへと目がけ――トリガー。

 圧縮されたエネルギーが一筋の光弾となって上空から降り注ぐ。狙いは少々ずれていたものの、ガーネットの足元に着弾と同時に爆発。直撃に比べれば多少ダメージが少なかったものの先手は取られてしまった。

 

「上空からのレーザーランチャー!?」

『ってて……マトモに当たってたらひとたまりも無かった……ッ』

「続けて二発目!」

『はい!』

「また来る! トライクモードで走って!」

『わかったよ!』

 

 第二射が来るよりも先に変形し思い切りアクセルグリップを捻る。渓流を厭わず走り続けながら、ガーネットは高高度からの射撃を回避していく。

 

『避けるのはいいけど、これじゃ試合に勝てないよ!』

「……ランチャーにはランチャーで対抗するしかない。ガーネット、こっちの武器に交換して!」

 

 ROGに表示されたガーネットの武装一覧から、彼女にも搭載されている大型ランチャー『シルバーストーン』をタップする。トライクモードの前方部分に取り付けられているランチャーユニット、トライクモードでももちろん使用することが可能で、ジェネレーターと合体させれば高出力を誇る『スーパーシルバーストーン』へと組み替えることが出来る。

 

『いいね! 私のランチャーはアーンヴァルのランチャーと違って実弾だし、射程距離も速度もこっちが上だ!』

「ただ、チャージに時間が掛かるしその間無防備になるから少し不安が」

『だったら、肉を切らせて骨をぶっ飛ばせばいい!』

「……わかった。任せるよ、ガーネット!」

『オッケー!』

 

 トライクモードを解除と同時にシルバーストーンのロックを解除すると、その隙を見計らったかのようにまたレーザーランチャーが降り注ぐ。だが直撃には至らない。相手が同じ初心者ということもあって命中精度は良くないらしい。脚部ホイールを全開で回し高速移動。ある程度距離を離したところで、ガーネットはシルバーストーンをジェネレーターと直結させスーパーシルバーストーンの射撃体勢に入る。チャージ時間はそれほど長くは無いが、少なくとも相手に一発撃たせてしまう時間を与えてしまうのは痛い。

 

「止まってる……今なら当たるよ、クリーム!」

『了解です、マスター!』

「ダメだ、やっぱり危ない!」

『私を信じて、マスター!』

「……ッ」

 

 上空に輝く青い光点がこちらを睨んでいる。お互いにランチャーのチャージに時間が掛かる。ガーネットが先か、クリームが先か。一触即発の状況下――ROG越しにチャージ完了を知らせる音が響く。

 タイミングは、同時だった。

 

「いっけぇええええ!」

「伸るか反るか……! ガーネット!」

『これで私の勝ちです……ッ!』

『悪いね、私もマスターも勝ちたいんだよ!』

 

 両者がトリガーを引き、互いの砲身から銃声が吠える。スーパーシルバーストーンの赤い閃光とレーザーランチャーの青い閃光が交差し一直線に流れていく。初速の速い赤い閃光が先にクリームへと伸び、彼女のウイングユニットをバラバラに砕き、正しく飛ぶ鳥を落とす勢いで落下していく。青い閃光は、直撃こそしなかったもののガーネットの左肩をかすめその熱で装甲が焼かれてしまった。

 

「ガーネット!?」

「クリーム!」

『っつぅ! もう少しずれてたら腕持ってかれてたね。……でも』

 

 ガーネットは負傷した左肩を右手で庇いながら立ち上がると、撃ち落としたクリームの方へと視線を向ける。彼女はうめきながら立ち上がろうとするが――やがて行動不能(ダウン)となり戦闘終了となった。

 

『す、すみません……不甲斐ない神姫で』

「いいよクリーム! すっごく頑張ったじゃん!」

『ははは……お褒め頂き光栄ですよ、マスター』

 

「ガーネット!」

『どうよ! ちょっとダメージ負ったけど勝てうおわぁああ!?』

 

 ステージに上がるや否や、真琴はガーネットの身体を両手で抱きとめる。神姫の小さな体を全身を使うようにして抱きしめ、当のガーネット本人は困惑して目をパチパチとしばたたいていた。

 

「っはぁ! し、心臓に悪過ぎたよあれは……」

『ちょちょ、マスター! あの、その、公衆の面前でこれはその……うわぁ、恥ずかし……』

 

 自分の機体以上に染まる頬と、手の中の熱を帯びる感触にガーネットは完全に慌てふためき、真琴の手の中から強引に身体を引き抜くとステージへ逃げるように飛び出した。

 

『そ、そそ、そういうのは時と場合を考えてよマスター! しかも、まだ一回戦を勝ち抜いただけで大袈裟すぎ! 狙うは優勝だって言ったじゃん!』

「そ、そうだったね……ごめん。その、終始緊張しっぱなしでその……はは」

『それに……その、ほら、そういうのはこ、心の準備とか……出来てな……と』

 

 全身が真っ赤になったガーネットを、対戦相手である少年が反対側ステージから羨望の眼差しで見つめていた。

 

「うわぁ……ああいうの、いいなぁ……」

『マスターと神姫の絆、ですか?』

「それもだけど……ほら、ああいうカッコいい人にギューッてされるの」

『へ……? あぁ、そっちですか? ふふ、マスターってば意外と乙女ですね』

「そうだ名前! 名前聞いておかないと! おーい、お兄ちゃん!」

 

 立ち去りかけていた真琴を呼びとめると少年はスッと右手を差し出す。

 

「オレ、『陽向居(ヒムカイ) (リン)』って言います! 今日は負けちゃったけど……また今度戦ってくれますか?」

「あ……う、うん。僕なんかでよければよろこんで」

『締まらないなぁマスター! そういう時はもっとバシッと決めるんだよ!』

 

 真琴はガーネットに促されるまま凛と固い握手を交わす。少年らしい華奢で小さな手は手汗でびっしょりだったが真琴もほとんど同じだった。

 

『次も頑張ってください! 私たちも応援しますから』

「うん、ありがとう」

『次は二回戦! どんな相手だって、私とマスターなら勝てるに決まってるよ!』

 

 真琴たちの試合が終了と同時、各ブロックの試合も終わりトーナメント表が更新されると次の対戦相手の名前が真琴の隣に表示される。

 

「君が、ボクの対戦相手になる者か!」

「……はい?」

 

 突如として目の前に現れたのは、フォーマルな白いスーツに身を包んだ真琴と同い年くらいの少年だった。ただでさえスーツ姿で奇抜だというのに、それを際立たせるかのようにその手には薔薇の花が一輪。言い方は古いかもしれないが、一昔前の漫画で出てくるような成金のような姿だった。

 

「ボクの名は大道寺! 大道寺(ダイドウジ) 高正(タカマサ)だ!」

「え、えと……よ、よろし」

「あーあー、いや、名乗らんで結構! 君は既に敗北が約束されているのだから、名乗られてもらっても無意味なのだよ!」

『な……んだとぉ! おいお前、いきなり失礼なヤツだな! 私とマスターがそう簡単に負けるわけないだろう!』

「ハッハッハ! いくら吠えてもらっても構わないが……今のうちに棄権することをお勧めするよ。無惨に負けて生き恥を晒したくもないだろう?」

『き、棄権なんかするもんか! 勝負ってのは、やってみなきゃ分からないだろ!』

 

 大道寺と名乗ったスーツ姿の少年はやれやれと、大袈裟な挙動で首を振る。

 

「まぁ……一応忠告はしたよ。生き恥を晒したいどM君相手というのは少々面倒だが致し方あるまい。精々首を洗って待って」

「ま、真琴く~ん!」

「あれ、西園寺さん?」

 

 真琴の元へと駆けつけてくれた七海は手にジュースの缶を抱えていた。その中からオレンジジュースを取り出すと、そっと真琴に差し出す。

 

「あ、あの、おめでとうございます。その、さ、差し入れにこれをと思って」

『ガーネット様にもヂェリカンのご用意を』

『お、気が利くね。ちょうど飲みたかったなぁって思ってたとこさ』

「ありがとう、西園寺さん。僕も緊張しちゃって喉が乾いちゃって」

「西園寺……だと?」

 

 オレンジジュースのプルタブを開けている真っ只中、大道寺は何故か七海の姿に釘付けとなっていてわなわなと体を震わせる始末。流石の真琴も怪訝な視線を送らざるを得ず、その視線を追いかけた七海はハッと顔を上げ目にも止まらぬ速さで真琴の背後に隠れてしまった。

 

「え、わ? どうしたの西園寺さん?」

「ふふ……くくく……ハーッハッハッハ! どうやら運命の神はよほど二人を強く結びつけていたいと見える! 僥倖! 正に僥倖!」

『さっきから何なのこの人。頭のネジが吹っ飛んでんじゃないの?』

『無礼者! マスターを侮辱する不届きなものは、成敗いたしますです!』

 

 ガーネットの言葉に反応するように、大道寺の背後から小さな影が飛翔する。青と白とを基調とした優雅なデザインに金髪を揺らす神姫は、彼の肩に着地するとガーネットをキッと睨みつけた。

 

『私のマスターは、頭のネジもボルトもキッチリ締まってるです! 全知全能の神がありとあらゆる才能を与えた究極のマスターなんです!』

『うわ、何かアホっぽいのが出てきた』

『アホっぽいのじゃないです! 私は、大道寺様の神姫コーディリアです!』

「アルトレーネ型の神姫……で、あの、西園寺さんはどうして隠れてるの?」

「ハッハッハ! 相変わらず奥ゆかしい人だ! 故にそそる!」

『……マスター、アレ通報した方がいいんじゃないかな』

「あの、あの……あの人はその……うぅ」

「何を遠慮している! 堂々と、ありのままの事実を言ってしまえばいいのだぞ」

 

 言い淀む七海を前に、何故かテンション上がり気味な大道寺が声を張り上げていく。

 

「ならばボクが代弁しようではないか西園寺七海! 君は、この大道寺正孝の許嫁であると!」

「……許嫁?」

 

 高らかにそう宣言した大道寺は、そのまま勢いで体を反らしながら無駄に大きな声で笑い始めた。




初代アーンヴァル欲しいんですが……近辺のお店には全く並びませんね;
というか買い取り価格が低過ぎて、あれじゃ誰も手放さないっすよ……(初代あんばるさん1200円買取
……っと、いけない話が脱線してしまった。

突如現れた七海の許嫁を名乗る少年、大道寺正孝とその神姫コーディリアの実力は如何に?
では、次回をお楽しみに。


※ブログに神姫の写真飾ってみました。
 なろうの方からアクセスいただければ見れるんで、興味ある人はどうぞ。
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