44層
草原のフィールドで、ゴブリンの大群を相手している2人組みが入た。
「師匠。大丈夫ですか?」
短い銀髪を揺らしてゴブリンの腕を切り裂いていく。
「大丈夫に決まってるだろ」
俺は後ろからの攻撃を見ずにしゃがんで避ける。
そのまま、見ずに剣で後ろのゴブリンを刺す。そのまま横に切り裂く。ゴブリンは後ろに倒れそうになったが耐え、次の攻撃に出る。
「大丈夫でないとこといえば、攻撃力がないことくらいか」
いったん、攻撃したゴブリンと距離をとり、ゴブリンにめがけてトップスピードで剣を突き刺す。ゴブリンは叫び、消えていく。
「きりがないですね」
俺の後ろに来て呟く。
「周りを探る。時間を稼げ」
スラルに言って、目を閉じ集中する。音だけの世界に入る。
剣撃と足音が聞こえる。あまりの大きな音に耳が痛くなる。このスキルに集中するといつでもこんな感じだ。遠くからの足音を聞き取った。
「まだ集まってくる。俺から見て、正面から2、後ろ1右2。もしかしたら、こいつら、死んだときに仲間を呼ぶ特性があるかもな」
目を開けながら言う。
「どうします?」
スラルがゴブリンを切り殺しながら問う。
「当然、撤退だ。左側を切り崩してそこを突き抜ける」
《リニアー・スラッシュ》
一直線に走り、ゴブリンを切り裂く。そこにスラルが飛び込み俺が切ったゴブリンに止めを刺す。
「つかまれ。行くぞ」
新たな武器を取り出し、スラルが俺の手を取ってることを見てからもう一度スキルを発動。
《リニアー・スラッシュ》
一直線に移動するこのスキルは攻撃だけではなく。移動としても使っている。
戦線から離脱した俺たちは大きな岩を見つけそこで一休みをしていた。
「ゴブリンたちの特技に仲間を呼ぶものでもあるのか」
「どうでしょ…。運が悪かったのかもしれませんね」
「どっちにしても、気をつけて戦うしかないな」
隣に置いている剣を掴む。
「お客のようだ。まぁ、何の用かは知らないがな」
俺の耳が捉えた足音。ゴブリンのものではない。よって、人だと判断できる。
正直な話、マップを見たら人がこちらに近づいているのがわかる。
「師匠、そんな警戒しなくても」
「警戒するさ。失いたくないものがあればな」
俺の見た先に現れたのは、白の服に赤を加えた最強ギルドKoBの服…。
「警戒するのはいいことだ。この世界での死は本物の物だ。警戒をするべきだろう」
真鍮色の目を持った最強の騎士にて最強のギルドの団長。前にしただけで圧倒されてしまう。
「ヒースクリフ…」
ユニークスキル『神聖剣』を会得した最強の剣士は表情を変えずにこちらを見つめている。
「団長、1人で進んでいくのはやめて下さい」
後ろからは閃光の二つ名を持つ副団長のアスナが現れた。
スラルはいきなり二人の出現に圧倒され動けない。
「最強のギルドの団長と副団長が2人でデートですか」
冗談交じりに言うが、緊張でがちがちでかんだり詰まったりしながら言った。
「違います。団体で移動してるんです!」
割と真剣にアスナが否定した。
「移動している途中で軍の中で噂にされている人物を見つけて、追ったのだ。そう、君だ」
心当たりはあった。軍の中で話してしまった43階層でのボス部屋の出来事。
「ソロでボス部屋攻略なんていう夢物語を聞いたのだよ」
「何のことだよ。ソロで攻略なんて出来るはずがない」
俺は、嘘を吐く。
「なら、君が見せたという氷の剣はどこで手に入れたのか教えてもらおう」
俺の嘘を否定するのではなく、別のところを責めてくる。
俺は意外な問いに黙ってしまう。
「それに、君が43階層でボス部屋に入っていくのを見たものが入る。それでも君ではないのかい」
これは質問なんてものじゃない。逃げ道を切っていく拷問のように思えた。
後ろを見ればスラルが震えていた。どうすればいいのかとパニックになっているのだろう。
「正解だよ。あなたの言うとおり。俺が1人でボスを殺した」
氷の剣を取り出す。
「この剣はそのときに入手したものだ」
「そうか…。なら、君をKoBに招待したい」
最強の騎士が俺に手を出す。
俺は一瞬戸惑った。
前は、名乗りださないとか言っていたが俺もネットゲーマー…。最強の名に興味がないといえば嘘になる。
その時、スラルが後ろから俺の腕を掴む。まるで、「行かないで」と言う様に…。
「はぁ…。その誘いには乗れない」
「なぜだね」
ヒースクリフは不思議そうに首をかしげる。
「すべてに理由が必要だと言うのか?」
俺はいつもの調子を取り戻し言った。
「団長。こんな人誘うべきではないと思います」
隣でアスナが怒ってらっしゃる。俺の態度のことでだろう。
「いや、彼の力はこれから先必要になるだろう。しかし、無理にとは言えない」
「団長は過大評価しすぎです。先ほどのゴブリンとの戦いを見る限り実力なんて…」
「きっと彼は、あの戦いでは本気を出していない。いや、出せる状況じゃなかったと言うべきなのかな?」
ヒースクリフはすべてを悟ったように聞いてくる。
「他人のスキルを探らないのはマナーじゃないんですか?」
俺の言葉ではなく、後ろのスラルが言った。
「そうだな。失礼した」
ヒースクリフは頭を下げる。アスナも軽く「ごめんなさい」と誤った。
「気にしてないので大丈夫です」
そういって場は収まったと思ったが…。
「なら、クオン君。私と勝負をしてみよう」
「え?」
まさかの誘いに聞き返してしまう。
「団長が相手することないです。私で十分です」
「そういうことになったのだが良いかな?」
いつの間にか場はそんな雰囲気になっていた。
44層の町
そういや、この町の名前なんだっけな。
そんなことを考えながらKoBの連中についていく。
「師匠、何で勝負受けたんですか」
スラルが囁く。
「いや、断れる雰囲気じゃないからさ」
「師匠は甘いんですよ」としかられていると前の連中が足を止めた。
「この辺で良いだろう」
ヒースクリフが言う。
「はい」「はぁ…」
対戦相手のアスナはやる気満々に返事をするが俺はため息が出てしまう。スラルが言うように俺は甘い。
決闘の申請ウィンドウが現れる。それを申請。
前と同じカウントダウンが始まる。
「何でこうなったんだろうな…」
始まる直前言葉を漏らした。そして、『DUEL』システムが知らせる。
「そんなに私の相手が不服ですか!」
俺の態度に怒りを溜めていたアスナの猛攻。
細剣の突きを避け続ける。
俺よりは少し遅いがかなりの速度だ…。まじめに避けないとあたる…。
「避けるばかりでどうやってボスを倒したんですか!」
言いながら先ほどより速い攻撃。
「師匠危ない!」
スラルが言うがそれほど危ないわけじゃない。後ろに飛びながら剣で横からはじく。
まっすぐに突く攻撃など横に弾けば簡単に攻撃を逸らすことが出来る。
攻撃を失敗したアスナが後ろに下がろうとしたところを足を蹴り倒れさせる。
「きゃ」
地面に倒れこんだところを容赦なく剣で刺す。
「師匠酷いです…」
弟子の言葉が俺の胸に刺さった。
俺の剣が刺さったアスナは直撃にも関わらずHPが1割もなくなっていないことに驚く。
「本当にボスを倒したのこれで…」
倒れたまま目を丸くする。「通常攻撃が剣技に劣るとはいえこの威力はないだろう」と周りの人が思っただろう。
「まぁ、いつもの俺はこんなもんで」
刺したまま武器を手放す。アスナは刺さった剣を抜いて捨てる。
「武器を捨てて良いの?」
「あぁ、たくさん持ってるからな」
ウィンドを開き武器を取り出そうとしたとき…。
アスナが次の攻撃を仕掛けてきた。閃光の名はだてでなくかなりの速度だ。
だが、俺のほうが速い。剣を取り出しアスナに切りかかる。アスナは剣先を切りかかっている腕に変わっていた。
振り下ろされる前に腕に剣が刺さる。
「あぁ!」
「師匠!」
スラルは飛び出しそうになる。それをヒースクリフが止める。
「あぶね…。紙な防御力にはつらいな」
次に何を受けても負ける。それに比べて相手はぴんぴんしてる。
「こりゃ…、まずいな…」
弟子の前で負けるのは嫌だからな。
「ねぇ、本当にボスを倒したのうそをついてなんになるの?」
アスナがやさしく聞いてくる。なんか、嫌にむかつく。
「悪いが…。お前の勝利、殺させてもらう!」
《リニアー・スラッシュ》
一直線に高速移動。アスナは驚きながらも避けた。
「良く避けれたな」
空振りをしながら言う。空振りをしてもそのまま高速移動でアスナの間合いから逃げる。
「速いだけじゃない」
強気だが次の瞬間、驚いて動けないほどである。
武器を捨て武器を拾う。
《リニアー・スラッシュ》
周囲がざわつく。剣技は普通同じスキルを連発できないようにクールタイムがあるがそれを無視して俺は使ったからだ。
アスナも驚いて避けることが出来なかった。
「なんで、連続で使えるの…」
「さぁね。何でだろうね」
アスナに向かって剣を投げる。それを避けるが次の《リニアー・スラッシュ》を避けれなかった。
「速すぎる…」
俺の速度についてこれない。
俺の《リニアー・スラッシュ》よる連撃が続いた。
アスナのHPもあと少しで半分まで来た。
「止めだ」
《リニアー・スラッシュ》
俺の一直線の高速攻撃に対してアスナは…。
俺に向かって剣を向けて、立ち止まる。
まさか…。
俺は方向転換できずに自分から剣に刺さった。
「対人向けじゃないな…まったく…」
俺はシステムが知らせる敗北を聞いた。