ソードアート・オンライン『疾風の狂戦士』   作:神滅

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生き残った勝利

 負けた…。これが戦場であれば俺は死んでいる。いや…。俺の切り札は使えていない。

「団長。本当にこの人がボスを倒したんですか?」

 実力不足というかのように言われた。

「ふむ。ボスを倒せるようには思えない。今のままならだが」

 すべてを見透かしたように言われる。

「団長はこの人の何を期待してるんですか」

「私は、クオン君のスキルの中にあのスキルがあると思っているのだが」

「あのスキルとは?」

「バーサーク。もっとも不要といわれたスキルだ」

 俺は思わずヒースクリフの顔を見た。ヒースクリフは「そうだろう?」と確認をしてきた。

「スキルを探るのは「いや、やっと意味が解った」

 スラルの言葉を遮る。

「軍が教えたのは、俺がボス攻略をしたことだけじゃなく。俺の切り札も教えたってことか」

 軍の奴は俺のスキルを知っている。それをヒースクリフに教えたということだろう。

「そうだ。知っているんだ。君のスキルにライフを1で止めるものとバーサークがあり、それによって考えられないほどの力を得ると」

 俺は降参といった感じに両手を挙げる。

「そのとおりだ。何も間違っていない。俺はバーサークで強くなる」

「団長。信じられません。そんな話」

 アスナが話しに入ってくる。

「俺の本当の力を出す」

 そういい残して一度その場を離れた。

 圏外に出てHPが半分を超えてることを確認して…。

 自分の心臓を突く。

 悲鳴を殺して…。町に戻る。

 俺のHPを見てヒースクリフとスラル以外のその場にいた者が驚く。

「決闘したいが、HPがこれだから出来ないない。これから、あんたに向かって攻撃をしていく。10回攻撃が当たる前に俺に攻撃を当てる。あたれば一撃だからな。それでどうだ?」

「いいわ。実力見せてもらおうじゃない」

 アスナは団長に合図を頼み剣を構える。

「勝ってくださいね」

「あぁ、この状態で負けたら完全敗北だからな」

 スラルの応援に答える。

「始め!」

 合図と同時にアスナが走る。俺は武器を持ったまま棒立ちする。

「やぁ!」

 アスナの鋭い突き。

「一回」

 アスナの後ろに素早く移動して後ろから刺す。

 まぁ、システムコードが弾くんだけどな。

 振り返る前にアスナの間合いから出る。

「この状態の俺は攻略組の剣技の3?4倍の威力まで増している。HP1にしなければならないって事を考えればそれだけの価値があるんだろうな」

「ふざけないで、今の速度は何!?目の前からいきなり消えたように見えたわよ」

「それが、速さを求めすぎた俺の速さだ」

 アスナは素早く移動して3連の突きを放つ。今までと比べ物にならない速度を考えれば剣技だとすぐに解る。

 だが、今の俺にとってはそれですら…。遅い。

 3連突きが終わるころには、

「4ヒットだ」

 アスナの横に移動して剣の猛攻で4回切っていた。

「嘘…」

 細剣であったがアスナは横に振る。

 《リニアー・スラッシュ》

 俺は直線移動をしながらアスナを切る。

「その程度の速度では、俺を捕まえることなど出来ない。悪いがお前の勝利は死んだ」

 いつもの勝利宣言をしながらアスナの方を向く。

「参りました…」

 アスナは剣を鞘に入れ頭を下げる。

 

 自分たちの副団長の敗北であたりがざわついているころ。

「これで世界の5本指くらいに入ったかな」

「目立つのは避けたかったんじゃないんですか」

「ヒースクリフに見つかった時点で無理だな」

 弟子と楽しく話していた。

「話しているとこすまないが。今度は私の相手をしてもらおう」

 まだ、俺の戦いは終わっていなかった。

「まさかの…。世界一か…」

 笑いながら剣をオブジェクト化する。

「師匠、行くんですか…」

「行くしかないよ。ここで引いたら、だめだ。あの剣士ならここで引かないと思うと俺も対抗してしまうんだよ」

「あの剣士って?」

「名も告げなかった。HP1バーサーク状態の俺を殺すのではなく、止めた剣士だ」

 剣を取り、HPを確認する。自然治癒はされておらず。1のままだった。

「先ほどのルールでいいかな」

 世界最強の騎士が問う。騎士の前で剣を構え。

「あぁ、それでいい」

 答えた。「すまないが、合図を」ヒースクリフがスラルに言って、スラルはあわてて手を上げ、「始め」と同時に振り下ろした。

「せぁぁ!」

 スタートダッシュで突っ込んでからの高速の2連撃。

 ヒースクリフはそれを十字盾でガードし逆の手で持つ剣を突こうとしたが、その頃には間合いには俺はいない。

「さすがだな、反応するなんて」

「もう少しで切られていた。疾風と呼ばれるだけのことがある。集中しなければ切られてしまうな」

 その瞬間、ヒースクリフの雰囲気が変わった。

 ヒースクリフは地面の土をえぐるような一歩でこちらに突っ込んで来た。

「あぶね」

 横に動いて剣を避け、攻撃硬直をしている瞬間を狙うが目の前には十字盾しか見えない。

 盾を持った手をこちらに伸ばして盾で目隠しをされている。

 攻撃しようにもヒースクリフが見えず下手に攻撃すればカウンターで決められる。俺は後ろに下がるしかなかった。

「ハァ!」

 力強い声と共に盾が迫ってくる。盾による突進攻撃。

 いきなりのことに驚いたが、対処できない速度ではない。

 横に素早くステップして突進するヒースクリフに横から剣で突く。

 システムコードによって剣は弾かれ、俺は後ろに下がる。

「まずは1回」

「素早いとは厄介だな、ヒットアンドウェイで攻撃されるとどうしようもない」

「だから、俺は速さを極めた。まぁ、バーサークがなければ中途半端な速度と非力なキャラクターになっただろうがな」

「スキル相性は抜群か」

 ヒースクリフの地面をえぐるような一歩での移動速度には驚かされたが筋力を使っての一歩だけの高速移動という話は聞いたことがある。実際に使ってくるプレイヤーを見たのは初めてだが。

「次で決めよう」

「驚かされたがあの方法じゃ俺を殺せない。悪いが、お前の勝利は死んでいる」

 ふざけてる訳じゃない。バーサーク状態ならばヒースクリフに勝てる。あの速度なら負けるはずがないと確信した。それを聞いて最強の騎士は笑った。

「なら、長期戦も無用だな。次の一撃を入れた者を勝者としよう」

 言い終わると同時に駆け出す。筋力を使った移動方法。

 それよりも速く後ろに跳ぶ。

「一歩だけの移動方法なんて初見でしか通用しないんだよ」

 着地してすぐに前に駆け出す。

「なら、二歩ならどうだ」

 奴は筋力を使う移動方法を連続で使った。もともと、一歩だけと言われているのは、両足に力を集中させ、両足で前に向かって飛ぶためである。それを目の前の男は片足で実行した。

「だが、遅い!」

 《リニアー・スラッシュ》

 最速の直線移動をする剣技。

 HP1バーサークの状態でこれを受け止めれるはずなどない。

 次の瞬間…。

「私の勝ちだ」

 地面に手を着く俺に騎士が言った。

 

 剣技を発動した瞬間からあたりはコマ送りのように見えた。

 盾で防御しようとしているが遅い。たとえ、反応することができても、防御を間に合わせることができない。俺の速さ。

 勝利を確信した。間に合うはずがないと。

 ヒースクリフはコマ送りで動く世界で俺と同等の速度で動き出した。

 結果、俺の攻撃を十字盾で防ぎ、神聖剣を振り俺に命中させた。

 

「なんだよ…。今の速さは…。あり得ないだろ!」

「君の剣技は一直線で読みやすい。だから防ぐことができた」

「違う!あんたは反応ができていても盾で防御する事も剣を振るもできない。いや、間に合うはずなどなかった!」

 何を言っているのかさっぱりといった。ヒースクリフの態度に見物していた者に問う。

「おかしいだろ、ヒースクリフのあの動きは!」

 周囲は敗北を認めない俺を悲しい目で見つめた。

「師匠。残念ですが…」

 スラルは目を伏せて言う。

 そこで気づいた。あの速度の攻撃など、速すぎてはっきり見れるものが少ない…。そして、地面を着く俺の姿と騎士のあの言葉、それによって勝敗はついていたのだと。

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