ソードアート・オンライン『疾風の狂戦士』   作:神滅

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黒の剣士

「さぁ、殺そうか」

 俺の間合いに入ったゴブリンを切り殺す。HP1バーサークの俺には通常攻撃でゴブリンを余裕で殺せる。

「やっと来たか!死ぬかと思ったぞ」

「クライン、生き残ってたのか」

 黒の剣士(以下:剣士)とクラインが話している。

 その間に周囲のゴブリンを殲滅した。

 一直線上に走り、切り裂いていく。一撃の刃の連撃。殲滅するのに時間はかからない。

「おぃおぃ…。クオンはそんなに強いのかよ…」

「今だけだ。いつもの俺は弱い」

「そうか、それでも頼もしいぜ」

「クラインは休んでて良いぞ」

「あぁ、そうさせてもらう」

「俺とお前で大丈夫だろ」

 剣士が聞いてくる。

「俺一人でも十分すぎるくらいだ」

「だそうだ。クライン達は町で休んでいていいぞ」

 そういうとクラインは「少しの間だけ頼む」といって、街に歩いていった。

「ゴブリンたちが来てどれくらい経つんだ?」

「50分くらいだ」

「そろそろ…。終わりか…」

 どうやら、一時間で終わると見込んでいるらしい。まぁ、それくらいだと俺も思う。

 考えていると次のゴブリンが現れた。

「どうやら、終わりのようだな」

「あぁ、こいつが最後だろう」

 普通のゴブリンは俺の身長より少し低いくらいだが、現れたゴブリンは俺の1.5倍程度の身長を持ち金棒を持っている。名前は隊長ゴブリン。

「隊長か、ならボス部屋は将軍か?」

「はじめは俺が行こう。変に当たって死ぬのは嫌だろ?」

「あぁ、頼もう」

 剣士が前に出る。

 ゴブリンが金棒を振るのを軽く避けて反撃する事で戦闘が始まった。

 

 

 行動パターンを見ていたが大きく分けて2種類しかない。金棒を縦横に振るのと前方への突進。

 1分ほど見続けていたからこれですべてなのだろう。

「そろそろ参戦する」

 剣を構えゴブリンに向かっていく。まずは金棒を持つ腕を下段から切り上げる。

 それと同時に剣士は地面を蹴り腕に乗ってさらに高くジャンプする。

 この状況で繰り出されるとしたら≪メテオ・スラッシュ≫確か空中からすると威力が上がるらしい。

 なら、俺がすることは敵の隙を作る。

≪バーチカル・スクェア≫

 四角に攻撃する4連撃。最近のお気に入りだ。

 注意が俺に来たところで剣士の剣技がゴブリンの頭に命中。バランスを崩し倒れてくる。下敷きにならないように離れた。

「危ないな」「すまん」

「一気に決めるぞ」「言われなくてもな」

 二人の剣士が駆ける。ゴブリンの体を切り刻みながら進む。

「はぁぁぁ!」「うぁぁぁ!」

 切られながらもゴブリンが立ち上がり金棒を持って回転する。

「終わりにしよう」

 金棒が来る前に大きくジャンプし、

≪メテオ・スラッシュ≫

 最大の一撃を放つ。

 ゴブリンは地に膝を着け消えていった。

「終わったな」

「あぁ。だが、ここからが本番だ」

「それでどうする?ここでやるのが望みか?」

「あんた相手にそんな勇気はない。前にヒースクリフと戦った時と同じ方法で良いか?」

 簡単にその時のルールを説明した。

「それで良い。10発もいらないな。3発で十分だ」

 剣士は強気で言った。

 街に戻るとすぐに戦闘態勢だ。

「名乗っていなかったな。俺はクオンだ」

「俺はキリト。ソロだ」

「それじゃ、あのときの借りを返させてもらう!」

 あの時と同じHP1の状態で戦いは始まった。

 

 俺はこの時を待ち望んでいた。

 あの時から…。

 

 

 32階層でオレンジを殺した頃の話である。

 オレンジを殺して俺は戦意を失っていた。

 戦う理由がなくなっていた。仇を取った俺には何も残っていなかった。

 迷宮の最上層でひたすらに狩を続けた死を待つかのように…。

 寝る時は迷宮で野宿だ。寝ている時に死ねば自身の運命はそこまでと感じられるからだ。

 だが、寝ている俺を襲うモンスターもいなければプレイヤーもいなかった。

 おきている時にはモンスターを狩りつづけた。いつか俺を殺す敵が現れるだろうと…。

 何時までも俺を殺す敵は現れなかった。オレンジのプレイヤーが俺のうわさを聞きつけたのか殺しに来た。しかし、俺を殺す者は現れなかった。

 無抵抗で殺されれば良いんじゃないかかと思ったこともあるが、これまで戦ってきた俺の生存本能がそんな死を認めなかった。

 そうした日々の中で俺を攻略組に誘う者が何人か出てきた。それらすべてを断った。しつこい奴には切りかかった。

 俺は死を求めて戦ううちに、自分の命と他者の命を賭けた殺し合いは心を躍らせるようになっていった。

 狂っていく自分が嫌にもなった。

 

 

 ある日、出会った。俺を殺す存在に。

 黒い服を着た剣士だ。

「お前がうわさの剣士か」

「あぁ、そうだろうな」

 最上層でずっと狩りを続けてる剣士と言う噂が広がっているのは前々から知っていた。

 もちろん。俺のことだ。

「かなり、強いと聞いた。手合わせしたい」

「だめだな。手合わせなんて、俺が剣を振るなら殺し合いだけだ」

 下らない、手合わせなんて。

「聞いた話通りだ。まるで、自殺志願者だな」

「どんな噂になっているかは知らないが、命ある間に帰れ」

「死にたいなんて、仲間が殺されたのか?」

 その瞬間から始まった。殺し合いが…。踏み出し、一瞬で距離を詰める。剣を抜いて横に切り裂く。

 とっさの事な上に、俺の速さに反応できず何もできずに切られる。

「死なすぞ」

 殺気を放つ。

「なるほど、死にたい気分になるのはわかるが…。そこで死んだら、仲間達が悲しむ事になるぞ」

 こいつも俺と一緒で片手剣を持つ。

「殺し合おうか」

 近接して剣撃を放つ。それを剣で弾かれる。

「仲間のことを想うなら!生き残るべきだろ!」

「お前に、すべてをなくした者の気持ちが解るか!」

「お前だけが、そうだと決め付けるな!」

 思いの乗った剣を激しく打ち合う。

 振り下ろし、振り上げ、回転斬り。

 それをすべて剣で受け流す。

「はぁぁぁ!」

 渾身の一撃を放つ。それをやすやすと受け流す。

「やめとけ、速いだけだ。それじゃ、俺には勝てない」

「あぁ、そうだな。命を賭ける戦いだったな」

 思い出すように言って剣で自分の心臓を貫く。

「な!?」

 これを始めて見て驚かない奴はいないだろう。

「さぁ、戦おう」

 HP1の状態でこれから本番が始まる。

 一歩踏み出す。先ほどと同じだが速さが比べ物にならない。今度は反応できているが遅い。

「遅い!」

≪ダブル≫

 剣技の最初に覚える二連続攻撃、初級技は威力がないが攻撃が速い。それをこの状態の俺が放てば一撃目の上段攻撃の後の下段攻撃がすぐにくる。

 こいつも片手剣使いでどんな攻撃かは解ってる。しかし、速すぎて二撃目を防御できず直撃した。

「な!?バーサークか…。とんでもない力だな…」

「今なら、生きて帰れるぞ」

 最後の救いを出す。

「いや、一発目だから驚いたが、次はどうかな?」

 剣士は笑った。

「なら、死んで行け!」

 前に走りながらの回転斬り。

 それを俺と逆の回転斬りで受ける。

 攻撃に反応できていることに驚かされるが最上層で一度見れば十分なのかしれない。それが生き残る力となる。

 だが、攻撃力が違う。

 剣士の剣を砕いた。そのまま、回転してもう一度、回転斬り!

「これでどうだ!」

 剣士は砕かれた剣を投げ捨てる。

 

 パン

 

「な…」

 驚いて動けなくなった。真剣白刃取り。俺にだってできる体術スキルの中の下のスキル。武器を手で挟めばダメージをゼロにして攻撃をキャンセルさせる。驚くのは俺のHP1バーサークを真剣白刃取りしたことだ。

 俺の速度にバーサークを加えれば目で追えるものとは思えない。

「俺の勝ちだ」

 蹴り技が来る。俺は目を瞑った。

「俺が勝った。こんなことをやめてもらおう」

 剣士が剣を離して言う。

「殺さないのか」

「あぁ、だから、こんなことやめろ」

「解った。勝者に従う。次ぎあったときはこの借り返すぞ」

 言い残して俺は転移結晶で街へ戻った。

 それからは、迷宮に篭ることなく街の宿で休むようになった。黒の剣士を倒すために生き続ける。

 

 弟子が現れるのはもう少し先の話。

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